当審議会は、本意見により、2年間にわたる調査審議の結果を取りまとめ、これを内閣に対して提出するとともに、これまで高い関心と期待を持って調査審議を見守り、当審議会に宛てて多くの意見や要望などを寄せてこられた国民各位に対して、調査審議の帰結を報告するものである。
本意見は、司法制度の全般にわたり、その根幹にかかわる大幅な改革を提言するものとなっている。今般の改革は、昭和22年に施行された日本国憲法に基づいて発足した現行の制度を、半世紀を経て初めて、利用者である国民の視点から抜本的に改革するものであり、これほどまでに重大な改革を一時に実行しなくてはならなくなった要因の一つとして、これまでの司法制度の改革、改善の在り方の問題性が挙げられるべきことは明らかであろう。当審議会では、昨年秋の中間報告において触れたとおり、今般の改革実現後において、司法制度の現状を常に注視、評価し、必要な改革、改善を恒常的に進めていくための責任ある体制の在り方についても検討を重ねてきた結果、次のような結論に達した。法曹三者は、これまで法曹三者を中心に進められてきた我が国の司法制度改革が社会・経済の変化等に柔軟に対応してきたとは言い難いことについて真摯に反省しなくてはならない。、今後の司法制度の改革、改善は、過去の経緯にとらわれることなく、責任の所在の明確化、社会・経済の状況や国民のニーズへの的確な対応、説明責任や透明性の確保・強化を旨として、司法制度の改革・改善のための新たな体制を整えるべきである。その具体的方向性は、その設置法に基づいて司法制度等の企画・立案を担当すべき法務省の所掌事務と責務を改めて確認し、今後の司法制度の改革・改善は、司法の独立に十分配慮しつつも、国民に対する責任の所在を明らかにしながら、国民の目に見える分かりやすい形で進められるべきということである。なくてはならない。
新たな体制の下においても、法務省は、もとより、裁判所、検察庁及び弁護士会や法律学者などの実務的・専門的意見を参考としつつ制度の改革・改善を進める必要があるもののが、従来の経緯にかんがみ、司法制度の在り方が、従来のように、いやしくも法曹三者の意向のみによって決定されるようなことがあってはならず、また、そうした受け取られ方をされることがないよう十二分な配慮をすべきである。そのためにも、何より重要なことは、司法制度の利用者の意見・意識を十分汲み取り、それを制度の改革・改善に適切に反映させていくことであり、る(当審議会では、前記のとおり、民事司法の現状を把握するため、専門家の協力を得て、民事訴訟の利用者から、利用経験を踏まえた意見について大規模な調査を行った。国民の期待に応える制度等の改革・改善を実現していくためには、同種の調査を行うなどして、今後とも利用者の意見を実証的に検証していくことが重要である。)。ために
同省は、以上のことを実現するために適切な仕組みを整備するとともに、必要な調査等を定期的・継続的に実施し、国民の期待に応える制度等の改革・改善を行っていくすべきである。
当審議会としては、本意見が我が国の司法制度にとって新たな出発の機会となり、その提言する改革が着実に実行に移され、司法制度が一日も早く、利用しやすく国民の期待と信頼に応えるものとなることを衷心より切望してやまない。
最後に、本意見を取りまとめるに至るまで当審議会に対して力強い協力と支援を寄せてこられた国民各位に、改めて深い謝意を表するとともに、将来に対して大きな意味を持つこの改革を確実に成し遂げ、司法制度を我が国が新たな発展に向かって前進して行くための礎とするためには、国民一人ひとりが、共通の課題として改革の実現過程を冷静かつ厳格に見つめ、内閣を中心とした推進体制に対して忌憚のない意見、要望等を寄せるとともに、絶えず改革のための力を与え続ける必要があることを申し上げて、本意見を閉じることとしたい。