司法制度改革審議会

第60回司法制度改革審議会議事録


 
 
日 時:平成13年5月22日(火) 13:30 ~17:55 

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者

(委 員(敬称略))
 佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子

(事務局)
 樋渡利秋事務局長

  1. 開 会
  2. 最終意見に関する審議(第一読会)
  3. 閉 会

【佐藤会長】 それでは、ただ今から第60回会議を開会いたします。本日も昨日に引き続きまして、最終意見の原案について意見交換を行うということにしておりますので、よろしくお願いいたします。
 今日は、5時までというふうになっていますけれども、5時まで必ずしもやる必要もございませんので。何の他意もございませんが。

【藤田委員】 牽制球ではないですか。

【山本委員】 強烈な牽制球ですね。

【佐藤会長】 早速、意見交換に入ることにしたいと思います。昨日は、御承知のように「Ⅲ 第1 民事司法制度の改革」まで御審議いただいたわけであります。今日は、37ページの「第2 刑事司法制度の改革」から最後まで御審議いただきたいと思います。
 昨日、この「訴訟手続への新たな参加制度の導入」につきまして、後の国民的基盤の方に移すということで御決定いただきました。できれば、この部分を組み替えて、それに基づき御審議いただこうかとも思ったんですけれども、事務局でいろいろやっていますとなかなか大変でございまして、間に合わずに、昨日お配りしたペーパーに基いて御審議いただきたいというように思います。そして次回29日の第61回審議会におきましては、そのように組み替えたもので御審議いただきたいと思います。勿論、それは事前に皆様のお手元にお送りいたしますので、それを御覧いただいた上で29日に御審議賜りたいと考えております。
 そこで、今日は37ページからでございますけれども、一応、ここでその参加の問題も含めて御議論いただきたいと思います。ただ、前文を含め全体をまとめてペーパーにしてみませんと、なかなか審議しにくいところがあろうかと思いますので、今日はいろいろ意見が集中しておりますところを中心に御審議いただき、それから刑事司法固有の問題も御議論いただいて、先に進みたいというように思っております。
 議論が集まっておりますのは、38ページの「基本的構造」です。一つは「裁判官と裁判員との役割分担の在り方」、又は「裁判体の構成」辺りに御意見が集中しているように思われますので、その辺から御議論いただければと思います。この案は、これまで御審議いただいたものをできるだけ忠実にまとめさせていただいたというように理解しておりますが、最終意見としてこの辺はどうか、という辺りから意見交換を頂戴したいと思います。

【鳥居委員】 簡単なことなんですけれども、37ページの左下の「刑事訴訟手続への新たな参加制度」というのは突然すぎて、何が新たな参加制度なのか分からないように思うんですけれども。

【佐藤会長】 その辺も含めて、全体の組み替えを次回29日の審議会にお掛けするペーパーで記しますので、いきなりそこからどうかと言われると、ちょっと厳しいのですが。
 どうぞ、吉岡委員。

【吉岡委員】 裁判員の数について、4行目に書いてあるのですけれども、数につきましては、結論に至ってはいなかったと思います。少なくとも裁判員の数は裁判官の数の数倍とすること、という意見を、私も言いましたし、他の方も言ったと思うんです。
 やはり数の問題は、国民が主体的、実質的に関与をしていくという考え方で裁判員制度を入れていくということであるとすれば、やはり国民が参加したということを認識できる程度の数が必要ではないかと思います。その点で、私は前回の審議で、国民の一人ひとりが、いつかは自分にも回ってくるかもしれないという、回らないかもしれないけれども、回ってくるかもしれないということが意識できるという、その程度の数が必要ではないかと申し上げました。私は12人と言っていますけれども、それにこだわるつもりはありませんが、やはり裁判員の数は、中間報告では陪審、参審にとらわれない、日本的な制度ということで、裁判員という、これは仮称かもしれませんけれど、そういう制度にしようということは合意ができたと思っておりますので、そういうことから言うと、相当程度の数が裁判員として加わるということが大切ではないかと思いまして、その辺のところを報告の中で御配慮いただきたいと思います。

【佐藤会長】 その辺を具体的に表現するとなると。水原委員どうぞ。

【水原委員】 国民の参加の意義ですけれども、これは、ただ今、吉岡委員のおっしゃるようなお考えもございましょう。しかし、我々が3月13日までに議論したところでは、国民の刑事司法手続への参加の意義は、職業裁判官と裁判員がそれぞれの長所や持ち味を活かして、信頼関係に基づく十分なコミュニケーションを取りながら議論を尽くして、協働することによって、より質の高い刑事司法を実現する点が、最も重要であるという点においては、もう既に全員の合意ができていたと思います。
 そうしますと、国民が主体的に、実質的に関与するということとは違った視点で国民と裁判官との協働ということが、やはり相当考えられなければいけないという気がしますので、そうしますとそれぞれの長所を生かして、十分審議をすることができるためには、やはりある程度、数には限界があるのではなかろうか。多ければ多いほど国民の声が代表されるというものではない、より良い裁判ができるものではないと私は考えております。
 そういうところで、いろんな意見がございましたけれども、この審議会の意見は、私の感じたところでは、多く数を増やせという御意見もございましたが、それは大多数の意見ではないように私自身は受け取っております。もし、それが違うと言うのならば、ここで何名が相当かということで、それぞれに意見を述べていただくということはどうかと思いますが、そこまではおやりにならないでしょう。しかしながら、やはり、国民の刑事司法手続への参加の意義が、職業裁判官と裁判員が協働してより良い裁判をするということだとするならば、そこには自ずと数には限界があるんではなかろうかという気がいたします。
 現段階というのは、もうまとめの段階でございまして、今まで議論をし尽くしたところをもう一遍繰り返してやるということになりますと、これはとてもじゃないけれどもまとまらないだろうと思います。3月13日までの御議論で、それを前提にこの37ページからずっと、あるべき姿ということで1から4までいろんな構想を書いていただいておるわけで、私はこういう考え方でよろしいのではなかろうかというふうに思います。

【吉岡委員】 私は12人にしろとは今回は言っていないつもりなんです。ただ、やはり素人が裁判員として参加する場合には、それなりの数がないと、何のための国民の参加かということが見えなくなってしまう、そういう意味では、少なくとも裁判官の数と同じではいけないということで、専門家である裁判官と全く素人の裁判員が同等程度の数で決めていくということになれば、協調し協議してやっていくと言っても、勿論裁判官は経験も豊かでいらっしゃるし、そういうことは配慮しなければいけないでしょうけれども、これからの裁判の在り方とは、国民が参加して、参加したということが認識されるような、そういう参加の仕方である必要があるということから考えれば、裁判官の数の数倍程度とか、あるいは数字が今までに出てきたわけです。今日はまとめだから、そういう意味ではある程度妥協するつもりで、もうここまで来ているんだから、妥協してでもまとめていかなければいけないということは、私も認識して発言しているつもりです。ただ、経緯としてはそういうことがあったということを踏まえて、やはり国民が裁判に参加していく、ここでは仮に裁判員制度というふうに言われていますけれど、裁判員制度というのにふさわしい数の考え方というのがあるのではないかという意味で申し上げたので、3人の裁判官に対して1人や2人の裁判員が参加したからと言って、それでは全く意味をなさない、そういうことから言うと、少なくとも素人なんですから裁判官よりは多い数で、それで考えていく。そういうことでトレーニングされていくことによって、より積極的に国民が司法について考えるようになる。裁判に関与しなくても、いつかは自分の番が回ってくるかもれしないということも、司法に対する関心は変わってくると思うのです。
 やはり、今までの国民と司法の立場というのは、裁いていただく、あるいは弁護していただくということで、主体性がなかったわけです。そういうことが具体的に裁判に関わるかもしれないという意識、それが認識できることによって、やはり司法に対しての関心が違ってくる。その程度の数を考えていくべきではないかということで申し上げました。数をあえて何人と申し上げませんけれども、そういう考え方を入れていかないと、制度を改革するという考え方が国民に伝わらないのではないかと思います。

【佐藤会長】 髙木委員どうぞ。

【髙木委員】 せっかくこういう新しい発想のものを、とりあえずは刑事事件の一部から始めるわけなんで、できるだけ論理的にもしっかりしたものを、それから制度的にも国民に信頼されるものをということだろうと思っております。
 そういう意味で、今、吉岡さんが提起されました問題について、国民参加のそもそもの基本理念というのは何なんでしょうかということで、この審議会では一つは司法を国民により身近で開かれたものに、また司法に国民の多元的な価値観や専門的知識を取り入れるべくという、一つのコンセプトがあったと思います。それから、国民が統治主体であり、権利主体として司法の運営に優位的に参加するという議論も、我々はしてきたと思います。
 また、一方で国民は統治客体意識から統治主体意識に自分たちの意識も切り換えながら、そういう意味では自律性と責任感を持って参加をするということを、国民は求められてきたと思います。
 そういう、今回の司法制度改革の基本的なコンセプトみたいなものをベースにいたしましたときに、この裁判官と裁判員の数の問題を考える要素として、この38ページの枠の中の2番目の(マル)の項は、「国民の主体的、実質的関与を確保という要請」、それから「評議の実効性を確保するという要請」、その後に「等」が入っておりますので、この「等」をどう読むかという問題がありますが、それに加えまして「国民の多元的な価値観を反映できるという要素」、勿論これにより何十人ということを申し上げているわけではございません。あるいは、国民が自律的に責任感を持って参加をするという、それは逆に言えば裁判官の影響を裁判員が過度に受けないという面も含めてのことだろうと思っておりますが、表現の仕方等はいろいろ、今、水原委員もおっしゃったような御意見もございますので「確保するという要請等」の「等」のところを、今、申し上げました国民の多元的な価値観の反映とか、自律性と責任感といったような、この数を判断するに当たって要請されるであろうロジックと言いますか、コンセプトをもう少し丁寧に書き込んでいただいたらいいのではないかなというふうに思います。
 それから、発言をさせていただくついでに、関連としてもう一つ申し上げてみます。
 38ページの一番上の方の、具体的な制度設計においては、憲法、それで括弧して第六章司法に関する規定ですが、その括弧の中の第六章の言葉の前に、前文第一章の国民主権といった項は必ず入れておかなければいけないんではないかなというふうに思います。
 全体的には、先ほど冒頭に会長が言われましたように、全体的な修文が行われるようですので、細かい表現振りに書き換えてくださいというのはもう申し上げません。
 それから、行ったり来たりであれですが、基本的構造のところに書いていただくのか、他のところに書いていただくのかということなんですが、私は何度かにわたりまして、一定の場合に裁判員だけで評決する制度を導入していくべきではないかという意見を申し上げてまいりました。どうぞ御検討ください。

【井上委員】 遮って悪いのですけれども、そこまでを一まとまりとして議論した方がいいのではないでしょうか。

【佐藤会長】 評決の方法については、次に御議論いただきます。

【髙木委員】 分かりました。

【佐藤会長】 では、今までのところについてでありますが、井上委員どうぞ。

【井上委員】 吉岡委員が言われたことは、二つの事柄が混在していたのではないかと思います。一つは、できるだけ多くの国民が参加の機会を与えられるべきで、そのためには一つの裁判体に参加する裁判員の数を多くすべきだということ。もう一つは、国民が参加した意味が評決の結果に表れるような数にすべきだということ。しかし、この二つは別の事柄だと思うのです。
 前者については、対象となる事件がどれくらいの範囲かとの兼ね合いにもよると思うのですけれども、よぼと大きな数にしないと、国民一人一人にとって回ってくる確率が大幅に増えるということは、それほどないと思うのです。そこのところは、むしろ象徴的な意味、あるいは観念的な意味しかないのではないかと思うのです。
 後者の方については、これは数だけではなくて、評決方法とか評議の仕方などとの組み合わせによるということは、これまで何遍も議論してきましたし、これまでのまとめでも、おっしゃるような意味も十分入っているのではないかというふうに私は思うのです。
 もう一つ、髙木委員の言われる基本的コンセプトについてなのですが、司法参加全体のところではそういうことを書いてあるのですが、この刑事訴訟手続への参加のところでは、随分議論して、こういうまとめにしたわけですね。ここに新たに「自律」とか「多元的」ということを入れるということになれば、もう一回議論し直さないといけないことにおそらくなると思うのです。特に多元的という点については、3月13日の審議の際に、御説明をさせていただいた中で、そういう御意見もあったけれども、しかし違う意見もあって、まとまらないということを申し上げたつもりなのですが、そこのところを更に詰めて議論をするということにならざるを得ないのではないか思われるのです。
 後、もう一つ、国民主権の点は、中間報告をまとめるときに、最初にあった文章を削るかどうかということで、かなり議論があって、国民主権ということから直接、国民の司法参加ということは、出てこないのではないかというような御意見も、竹下代理を始め、強かったわけですから、そこを入れて議論し出すと、また振出しに戻るように思うのです。ですから、この辺は、やはりあれだけ議論してまとめたところですので、これを最終報告とすべきではないかというのが私の意見です。

【藤田委員】 両様の意見があるわけですが、基本的には裁判員と職業裁判官との関係をどう見るかということに起因しているんではなかろうかと思います。両者が対立・対抗するというような考え方を取りますと、職業裁判官に圧倒されないぐらいの数の裁判員が必要ということになると思いますが、私は現在の刑事裁判手続に基本的、制度的な欠陥があるという前提で考えているわけではありません。更により良く改善するために国民の意思を反映させる方策として、裁判員制度を入れるというふうに考えているわけでありますが、そういう点から言うと、水原委員がおっしゃったような形が一番いいのではないかと思います。
 裁判員は、職業裁判官の知識・経験を学び、職業裁判官は、裁判員の国民の良識の反映を受け取って、それを裁判に反映させるという協働関係が裁判員制度の目指すところではなかろうかというふうに思うわけであります。
 昨日、全体的な意見の中で申し上げたんですが、幾つかのかなり対立が激しかった点、この裁判員の数の問題もその一つなのでありますが、例えば、判事補の他職経験とか、特例判事補制度についても同様でありますけれども、そういう点について公約数的な意見でまとめる。これはもうやむを得ないことではありましょうけれども、今の裁判員の数の議論で出てきておりますように、両方から不満が出てくる。そうすると全体については必要ないと思いますけれども、特に見解が分かれて対立した点については、その内容とか経過とかというのを注記という形でも、やはり付けるべきではなかろうかと思います。そうでないと、公約数的なものだけで改革本部の方へ引き継ぐということになりますと、ぼんやりした方向性しか出ないということになると思いますので、そういう点も考えていただければいいのではなかろうかと思います。

【中坊委員】 私は、今の裁判員の数とかいうのは、確かにいろいろな意見があって、こういうまとめになったというふうに思っています。ただ、今、藤田さんがおっしゃった言葉の中で、注記をするという物の考え方については反対です。もうそんなことしたら、これ命取りになるんではないかという気がするわけです。
 ということは、確かにこの審議会そのものは、内閣には出しますけれども、全国民にメッセージを送る、発信するものだと思うんです。だからこそ私たちも、いろいろおっしゃるように、この表現だっていろいろ両説があって、しかしこの程度なら我々として一致した、というところにおいてこそ意味があるし、そのところを国民にメッセージとして送るというところに意味があるんで、もらった人が分からないと言われるけれども、もらった人がこの審議の結果はもうみんな公開して、どれだけ意見が出ていたかということも全部分かっているわけです。内閣だって、当然この紙1枚だけ見るわけではないんだから、そういう経過はもう全部、今までにどれほど激しい意見が出たかというのは、見ればすぐ分かることであって、それをことさら注記の中に入れてしまうと、どれだけかメッセージを送るという迫力そのものをなくしてしまう。確かに藤田さんのおっしゃる気持ちは分かるけれども、だから我々としてはこの間、髙木さんもおっしゃったけれども、せめて論点整理と中間報告は、それはもう一度考えていただくことになっていましたけれども、一体として出したらどうかと申し上げたわけです。その中でも、もうかなり最終意見までにまた違っているところもあります。だからこそ我々としてもいろいろ、意見がありますよ。しかし、最大公約数としてまとまったんだというところを、国民にメッセージとして送るということで意味があるんで、そこだけはやはり我々としても守らないといけない。だからこそ一応おおむね会長がおまとめになって、それだからということで従ってきた。みんな大なり小なり、言い出せばもう切りがないぐらいあるんですよ。最後のところだから、協調的にやりましょうということだから、そこを大事にしないといけない。そういう意味では吉岡さんのおっしゃる気持ちも分かる、みんなのおっしゃる気持ちも分かる、だからといって今ここでこの議論をしたら、もうこれまた前の議論を蒸し返すだけで、しかも、最後は、藤田さん怒ったらいけないけれども、「注記」なんて議論になってしまって、それこそ骨格自身に狂いが起きてきて、我々の60回までやってきた審議の結果が非常に無意味になるから、私はやはり、先ほど水原さんがおっしゃったように、せっかく大体まとまったものは、このようにして確定しないといけない、言いたいことはみんなあるというのは分かっている、分かっているけれども、込められて今までの審議会の議事録は公開になっているんだから、みんな見たら分かるということで前へ行っていただかないと、この読会の趣旨が失われてしまいます。

【佐藤会長】 私が申し上げたいことを言っていただいてありがとうございます。

【水原委員】 全くありがたいお話でございました。私が最初に申し上げたのも、3月13日の時点でもう既に議論をし尽くして、それでまとめてこういう方向で行きましょうという合意に達しておったということです。それを蒸し返されるようなことになると、これは大変だなということで意見を申し上げましたが、私は中坊委員の強大なる御支援と言うよりも、正しい御意見に心強く思います。ありがとうございました。

【藤田委員】 形勢非なるものがありますが、すべての事項についてと言っているわけではなくて、幾つかの重要な事項について、次の具体的な制度設計する人にメッセージを送った方がいいような問題もあるんではないか、そういうことで申し上げている趣旨であります。

【竹下会長代理】 確認なのですが、私も皆さんの意見が一致したところをメッセージとして出すという、中坊委員のお考えに全く賛成なのですが、今、問題になっている数の点で言いますと、意見がまとまったのはこの39ページの「イ 裁判体の構成・評決の方法」の第3パラグラフにある、「評議の実効性を確保するという要請からは、裁判体の規模を、実質的内容を伴った結論を導き出すために、裁判官及び裁判員の全員が十分な議論を尽くすことができる程度の員数とする必要がある」、これがまとまったところではないかと私は了解しおります。どこがまとまったのかが、人によって考え方が違ったのでは、これはメッセージになりませんので、それだけ確認的に申し上げます。

【佐藤会長】 髙木委員どうぞ。

【髙木委員】 誤解なきようにお願いをしておきたいんですが、いろいろ議論してきた経過があり、かねてより水原さんはそういう御意見をおっしゃっておられた。井上さんは3月13日にけりを付けたはずだとおっしゃっております。ただ、今、私が申し上げたことは、論点整理なり中間報告なりを全部もう一度ずっと読み返してみての議論ですから、私どもは何も議論を混乱させようとかいうことではなく、せっかく2年間も苦労をみんなでしたわけですから、できたらより良いものを作りたいという思いで申し上げていることなんです。
 今、藤田さん、中坊さんのいろんな御論争ですが、まとめるという段階のときに、もう、後、何回かしかないときに、こんな議論し出してしまったら、くしゃくしゃになるなというようなことをあえて言うのかというのは、議論としては分かりますが、いずれにしても、これから実施について推進体制の中でいろいろやっていただく中で、できるだけそういうお仕事に関わる人たちに読み違えが起きないような、それからまた逆に裁量の余地が余り多いようですと、その分がブラックボックス化するでしょうから、できるだけそういうところを、限度があるにしても、極力クリアーにしておくという、その辺は我々の責任の一つではないかなという思いで申し上げています。

【佐藤会長】 分かりました。これから、こういう調子で最後までやっていきますと、100ページを超えていますんで、なかなか大変でございます。かと言って、議論すべきところを遮ろうと思っているわけでありません。
 ただ、私のこの問題についての率直な気持ちを申しますと、それぞれの委員がそれぞれのお考えをお持ちで、これまでいろいろ御意見を開陳していただいたわけでありますが、できるだけ共通の基盤を見出しながら、我々としての骨太の考え方を示そうではないかということで、今までそういうスタンスで議論してきたと思うんです。この問題も、従来に比べれば、画期的な仕組みを考え出そうとしているんだと私は思います。陪審制、参審制にこだわらずに、日本にふさわしいものを作り出そうではないかということで、そして裁判員制度という名称に落ち着いてきていますけれども、そういうものを作ろうという点では、皆さん一致していらっしゃるわけでありまして、この原案はそれぞれの思いを集約し、ほぼ共通の理解を表現しており、骨太の制度の仕組みとして、この辺ならば、ということではないかと思います。
 ただし、勿論具体的に設計していくときには、更にいろんなことを考えなければいけないかもしれません。けれども、我々として骨太の考え方を発信しようという場合は、私は、これまでの議論を踏まえるとこの辺に落ち着くのではないかというように思います。そして皆さんのそれぞれの思いは議事録で掲載されているわけでありまして、具体的な制度設計のときにはその辺もまた参照されながら行われていくものと思います。我々の手を離れた後、そこでそういうようにやっていかれるものと思いますので、我々の最終報告のまとめとしては、この辺で御理解いただけないものだろうかというように思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

【佐藤会長】 ありがとうございました。

【髙木委員】 会長、くどいとお叱りを受けてはかなわんのですが、こういう意見を申し上げたということで議事録なんかどこかで、将来の検討課題かもしれませんし、制度は未来永劫にこれで良いということではないはずですから、かねてから私の意見なりいろいろお願いをしてまいりました。

【佐藤会長】 よく分かります。今の「数」を中心とする議論は、今のまとめでよろしゅうございますか。
               

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】 どうもありがとうございます。

【髙木委員】 裁判員制度、みんなこれで終わるのかと思ったもんですから。

【佐藤会長】 それで、次の議題に移りたいと思います。いわゆる独立評決制についても、いろいろ御意見をちょうだいしておりまして、その辺の気持ちは、実は38ページの上から2段落目「また、この制度が所期の機能を発揮して」云々、そして、実施後においても、「当初の制度を固定的にとらえることなく、その運用状況を普段に検証し、必要に応じ、柔軟に制度の見直しを行っていくべきである」というようなところに、表現しているつもりなんです。自民党の司法制度調査会の報告書を見ましても、陪審制については、まずやるべきことをやってその上でまた更に考える余地があるかもしれない、というような趣旨のことが述べられているわけですけれども、そういった趣旨をこの文章に込めているつもりです。ただ、髙木委員から御覧になったら、もう少し何か工夫の余地がないかということかもしれません。
 そこで、髙木委員、御意見をどうぞ。

【髙木委員】 今、会長にそんなふうに引き取っていただきまして、まさにもう少し工夫していただく余地がないのかということについて御検討いただきたいということです。
 とりあえず、何年後かはともかくとして裁判員制度が動き、動き始めたら直ちにということにはとてもならないのかもしれませんが、やはりこういう国民が参加する裁判制度の本質論の中には、独立評決制の必要性が否応なしに、論理的に考えると含まれざるを得ないだろうという意見を私は強く持っております。

【吉岡委員】 私も最終的には独立評決権は非常に大切だと思っています。本当に国民が参加するというには、そういうことが入っていかなければいけないと思っていますけれど、やはり国民がそれなりに熟してきて、参加にふさわしい状況になったならば考えるというようなことで、将来的な課題としては考えておく、文章にしてくださいとは申しませんけれども、その程度にさせていただいたらと思いますけれども。

【佐藤会長】 よろしゅうございますか。井上委員どうぞ。

【井上委員】 会長のおまとめで結構なのですけれども、今の問題は一番根本のところに関わってくる問題でありまして、独立評決という、全体としては一緒にやるのだけれども、一定の場合に事実認定についての評決だけは裁判官を除くという形が、果たしてその御趣旨をストレートに表すものかどうかについては、疑問がある上、制度の根本のところに関わるものですから、なかなか難しいという意見を前にも申し上げたつもりなのです。
 むしろ、将来的には、純粋陪審型の制度も選択肢に入ってこないわけではないと思いますので、熟してきたら独立評決制だというふうな含みということですと、かえってせばまることにもなると思うのです。ですから、まずここから始めて、それを根付かせて、次のステップとしてまた違う形がありうるかもしれない。それは、幅広く検討していくということでしたら結構です。

【吉岡委員】 そういう趣旨で申し上げました。

【佐藤会長】 将来の課題として、ということもおっしゃっているので。

【井上委員】 その点だけを、ちょっと念のために申し上げました。

【佐藤会長】 この問題について、この文章で十分かどうかということも含めて、そうすると全体を書き直すときに、もう少し考えさせていただきますけれども、今のいわゆる独立評決制の問題については、そういう取扱い方でよろしゅうございますか。

【竹下会長代理】 ちょっと念を押すことになりますけれども、私は、今、井上委員がおっしゃられたとおりだと思うので、先ほど会長が引用された38ページの表現は、全くこの通りで、いろんな可能性を含んだ、非常に含みの多いまとめになっていると思うのです。ですから、何か独立評決制も含むような形にここを修文するというようなことについては、私は反対です。むしろこのままの形にしておいていただいた方が良いのではないかと思います。

【佐藤会長】 せっかく、この含みを含みとして、もう少しステートメントして上品なものがあれば、そうしようと言っているだけであって。

【髙木委員】 私は独立評決制という言葉を入れてくれと申し上げているわけではないんです。そういう意味では、やはり国民が裁判官とともに審判するという仕組みでスタートしているわけですから、その中でやはり、憲法やら何やらの、これを言い出すとまた井上さんからその辺はけりがついているというふうに言われてしまうかもしれないけれど、私はもしそういうことでけりがついているとしたら、それはどう考えてもおかしいと思います。だけど、その議論をするとまたややこしいから、もう言うまいということです。

【佐藤会長】 先ほどから井上委員、髙木委員、吉岡委員は、将来的な課題として、とおっしゃっておられるんですから、もうそれでいいではないですか。余り細かなことを言い出すとまとまらなくなります。

【井上委員】 もっと豊かな可能性がありうるので、そこをふさがないでおきましょうということなのです。

【佐藤会長】 では、そういうことにさせていただきます。

【髙木委員】 分かりました。

【佐藤会長】 それでは、あと細かなところについていろいろ御意見を頂戴しているんですけれども、よろしいでしょうか。

【竹下会長代理】 主なものがあれば、おっしゃってください。

【佐藤会長】 刑事司法固有の問題は後ほど議論いたしますので。
 髙木委員どうぞ。

【髙木委員】 40ページの「裁判員の選任については」の後に「第一次的には」と書いている、この言葉は第二次的には何があるのか、とかいうことになってしまいませんか。

【佐藤会長】 この部分は誤解を招くかもしれませんね。井上委員、どうですか。

【井上委員】 これは、選任のプロセスの一番最初の第一段階は、という意味なのです。その上で、いずれにしろ適切な仕組みを設けるべきであるという点は、髙木委員の言われるように、忌避とか除斥だとか、そういうもので考えるという意見が多かったわけですが、水原委員のように、そこにももうちょっと違う、より適任の人を選んでいくような方法があるかもしれないという御意見もあり、そういうものはないとは直ちには断定できないものですから、そういうものがもしあればそういうものも考えていきましょうということで、「適切な仕組み」ということにしたと思うのです。ですから、中心というか、必ず入ってくるのは、その下にある「欠格、除斥、忌避」ということで、今のところ、それ以外に何か思い当たるものがあるわけではないのですけれども、そこは、今の段階で一概にないというふうにも言えないので、こういう書き方にしたということです。
 ですから、「第一次」と書こうと何と書こうと、最初に無作為抽出して、その上で何らかの形で、不適任の人を除外していくというプロセスになるのは変わらないので、その第二段階として、除斥だとか忌避以外に何かもう少し積極的に選ぶ方法があれば、それも検討しましょうというまとめになっているということなのです。

【髙木委員】 印象の問題なんで、御検討ください。

【井上委員】 「第一次的には」という文言を削るのは全然構わないと思います。

【佐藤会長】 我々としてそういう問題があるということを理解していればいいわけですね。

【井上委員】 まずそれを母体として、更に選別する、という趣旨ですから、削ってもいいと思います。

【鳥居委員】 「母体」というのは、どういう意味ですか。

【井上委員】 候補者選任の最も基本となるリストということです。

【鳥居委員】 そういう意味ですか。前から申し上げているように、一般の方には無作為抽出というのは理想形のように見えますが、無作為抽出の恐ろしさというのがありまして、要するに、さいころでやるわけですから、10人選んでみたら、10人全部20歳の女性になったとか、18歳の男になってしまったとか、あるいは80歳のおばあちゃんばっかりになってしまったとかということは必ず起こるんです。そのときどうするかということを考えると、この表現は「第一次的には」というのを取って、「選挙人名簿からの無作為抽出を基本とすべきである」という程度の表現にしておいて、実際のシステム自体のデザインは、実施段階で考えられるようにした方がいいように思うんです。

【井上委員】 そこまでいきますと、合意事項をまた変えることになるものですから。

【佐藤会長】 確かに、鳥居委員がそうおっしゃったのは記憶しております。

【井上委員】 その母体になるところはかなり大きな数だと思うのです。そこから何段階か経て、最終に絞っていくというのが合意だったわけです。

【鳥居委員】 結構です。

【中坊委員】 ただ、確かに髙木委員のおっしゃるように、「第一次的には」という言葉は、それなら第二次的は、とすぐなってしまうから、多少そこはちょっと考えてもらうことにしたらどうですか。

【井上委員】 「第一次的には」は削りましょう。

【吉岡委員】 「第一次的には」という言葉は、そのままですと誤解を招く恐れがありますので、そこのところを御配慮いただきたいと思います。

【佐藤会長】 検討させてもらいます。

【中坊委員】 今日は一切変えないで、みんな「検討する」というふうにしておいたらいいですね。
 みんな検討しておいてください。

【竹下会長代理】 本当にします。

【中坊委員】 今日すぐ変えてしまったらまたあれだから、検討しておいてください。

【藤田委員】 協調的ですね。

【中坊委員】 私は協調的です。この前から変わっていますからね。

【佐藤会長】 ありがとうございます。そうしたら、以上で大きなところは確認できたと思います。まだ、いやこれも重要だ、とおっしゃるところがあればあれなんですけれども。そこで、今の御意見を踏まえて、国民的基盤のところも含め、きれいに訂正したものを、できれば次回29日の審議会でお諮りします。
 次に、43ページの「刑事裁判の充実・迅速化」以降のところについて、ちょっと御意見を頂戴できればというように思います。

【水原委員】 その前に一点だけすみません。42ページの文章調整の点を考えていただければと思っています。

【佐藤会長】 ちょっと考えさせていただきます。

【水原委員】 意見書では出しておきましたけれども。

【佐藤会長】 拝見しております。ちょっと考えさせてください。

【水原委員】 ありがとうございました。

【佐藤会長】 そうしたら、43ページ以降のところについて、何かありましょうか。

【山本委員】 ずっと後ろの方でもよろしいですか。

【佐藤会長】 はい、結構です。

【山本委員】 余り重たい話ではないんですが、53ページに「犯罪者の改善更生、被害者等の保護」というのがございますね。刑事司法の分野とは違うんですが、被害者保護の観点を含めたマスコミの犯罪報道の在り方ですね、これについて今回意見を申し上げているんですが、今度の裁判員制度のことも含めて、これはやはり多少我が審議会としてメッセージを出しておいていいのではないかという感じがするんですが、いかがなものでしょうか。

【佐藤会長】 山本委員からその旨の意見書が出ていますね。

【鳥居委員】 賛成です。

【吉岡委員】 私も賛成です。

【井上委員】 報道の問題は、裁判員制度との関係で若干頭出しをしていたわけですけれども、一般の犯罪報道による被害については、ほとんど立ち入って議論してないのですね。だから、この読会の段階で、果たして入れていいものかどうか、入れるとしてもどこまで書けるのかは、私はかなり疑問に思います。他の問題についても同じなのですけれども、余り実質に立ち入るのは。

【佐藤会長】 申すまでもなく、一方から見ると確かによく分かるんですね。ただ、他方から見たときに、その調整の取り方についてどの国も極めて苦労してきてやってきているわけで、ここに書くとなると少し議論しないといけないという感じがするんですね。

【井上委員】 この問題は、政府の別の機関でかなり議論をしているところでもあり、ちょっと慎重にした方が良いところもありますね。

【山本委員】 問題提起だけでもと思ったんですが、分かりました。固執しません。

【佐藤会長】 お気持ちはよく分かるんですけれども。

【中坊委員】 だから、今、山本委員のおっしゃったように、この審議会でそういう発言があったというのは、全部議事録に残っていくんだから、やはり基本的に問題提起し出すと、これはまたそれだけで非常に大変な問題でしょうから、とにかく私は現状維持で良いということです。

【佐藤会長】 48ページのところで「被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべき」とあります。これはどなたの御意見だったですかね、何か参考にして。

【井上委員】 ここは、他のところにあったのを持ってきて、全体のバランスを取ったというだけのことだと思います。

【佐藤会長】 そうでしたか。後、髙木委員の方から「透明性」のところで御意見をいただいているわけですけれども、従来のまとめで合意が取れたところは大体この辺ではなかったかなという感じなんですけれどもね。

【髙木委員】 もう余り言うなという雰囲気だから。

【竹下会長代理】 いやいや、髙木委員の御意見は十分議事録に残っていますから御安心ください。

【鳥居委員】 蒸し返すようですけれども、やはり53ページの山本委員の御指摘は、確かに議論してないといえばしていないんですが、例えば下から2行目に「被害者等への精神的、経済的ケアをも含めて」と書いてありますね、その1行上から読むと「この問題については、刑事司法の分野のみにとどまらず、被害者等への」とありますが、その次に、例えば「社会的保護」という一句を入れて、「社会的保護、精神的、経済的ケアも含めて」とするだけでも、我々がここで語り合ったという痕跡は残るんではないかと思うんです。

【竹下会長代理】 どうでしょうかね、そのぐらいのことならばよろしいのではないでしょうか。

【井上委員】 私も、実質的に反対しているわけではありません。

【佐藤会長】 では、この表現をとり入れてもいいような感じでありますので、とり入れる方向で検討させていただくということにします。ありがとうございました。
 刑事司法は、そのぐらいでよろしゅうございますか。
 国際化のところでございますけれども、鳥居委員の方からもう少し強調してしかるべきではないかというような御趣旨の御意見を頂戴しているかと思います。54ページのところでございます。具体的にここをこういう表現にしたらいいというような、何か御意見ございますでしょうか。

【鳥居委員】 ここをこういうふうにと言われると、どうも困るんですが、要するに、日本の世界における立場というようなものが変わってきている、という言葉がどこかに入れられないかなと思ったんですけれども。
 強いて申しますれば、私の意見書の文章をそのまま申し上げますと、54ページの原文の方の「21世紀にあっては」の後に、いきなり「情報通信の革新と相まって」となっていますが、そこに例えば、「日本があらゆる意味でグローバルな世界の中に入りつつある現実を国民が強く意識し」というような言葉を入れて、「情報通信(IT)技術革新とも相まって」云々というふうにしていただくと、幾らか違うのではないかと思います。

【佐藤会長】 では、それを参考させていただいて、少しここのところを工夫することにいたします。

【北村委員】 この中に書いてあることは、国際化だけではなくて、専門性の強化というようなことが一緒に書いてあると思うんです。ですから、ちょっと表題に「専門性の強化」ということも入れた方がいいかなと思います。かといって、例えば、民事司法の国際化とか、そういうところには余り入っていないようで、何かその国際化という言葉と専門化という言葉が混ざって使われているのかなというような気がするんです。だから、もうちょっと整理するか、というのは、隣接なんかもここに入ってしまって、一つの柱として国際性、専門性への対応というものを考えていきましょうということでしたから、そういうふうに表題を変えてもいいのかなというように思っています。

【佐藤会長】 今、鳥居委員がいみじくもおっしゃったことなんですけれども、グローバル化の中で、いろんな局面がありますけれども、専門的な知恵を働かせての対応ということが非常に大事だということがあるんですね。今、おっしゃっていることもそういう趣旨だと思うんです。中身の方ではその趣旨が出ているんですけれども、表題のところでそれをうまく表現できるかどうか。専門性だけだとちょっとなんですね。

【北村委員】 それだけではだめなので、国際的に比較するということ、これも必要なんです。その二つを並べるというように、ちょっと御検討いただければと思います。

【佐藤会長】 では、検討させていただきます。

【鳥居委員】 55ページの上の方に「さらに、経済活動のグローバル化や国境を超えた電子商取引の急速な拡大に伴い、国際的な商事紛争を迅速に解決する」となっていますが、これはもっと広い意味の、国際的な民事商事紛争全体を表わす言葉の方が良いと思います。

【竹下会長代理】 確かに、直接問題になっているのは商事紛争なんですが、何もそれに限定する必要はないというのは、おっしゃるとおりだと思います。

【鳥居委員】 この間の理化学研究所がやられたようなケースは、まさにそういうケースなんです。

【竹下会長代理】 そうですね。おっしゃるとおりだと思いますので、ちょっと工夫しましょう。

【佐藤会長】 では、ここの箇所は、このぐらいでよろしゅうございましょうか。
 そうしたら、次に、57ページからの「司法制度を支える法曹の在り方」の方に移らせていただきたいと思います。ここのところも、いろいろ御意見を伺っているところでありますが、まず、大きなところは、57ページの「2010年頃には」という点と、59ページの「裁判所、検察庁等の人的体制の充実」の2か所だと思います。61ページの方の文章も関係しているわけですけれども、この辺に御関心が集中しているところかと思いますので、この2か所について御意見をちょうだいしたいと思います。

【水原委員】 3,000人達成の時期につきましては、昨日発言いたしましたので、重複になりますけれども、もう一回お許しをいただきまして述べさせていただきます。
 原案では、2010年には3,000人とすることを目指す、というふうに時期をはっきり示しておりますけれども、昨日も申しましたとおり、3,000人の目標達成時期については、必ずしも委員間に意見の一致があったとは私は思っておりません。しかも、新たな法曹養成制度の整備状況等々を含めて考えますと、そこにはやはりある程度幅を持たせておく必要があるのではないかという意味で、確定的な目標設定ではなくて、「2010年から2015年頃までの間には」という表現にしていただいた方がよろしのではなかろうかというふうに思います。

【吉岡委員】 私も幅を持たせるということは必要だと思いますけれども、ここでは「頃」と入っているんですね。ですから、これはもう既に幅があるということではないでしょうか。

【藤田委員】 やはり、「頃」が付いていても、平成22年と言われると、そこに視線がいっちゃいますから、「平成22年以降できるだけ早い時期に」というような、ある程度の含みを持たせたような表現の方がよろしいのではないか。基本的には水原さんに賛成なんですけれども。

【吉岡委員】 ちょっと、それには反対なんです。幅を持たせるのはいいですけれども、以降というと、それまでやらなくていいということになってしまいますから、「2010年には」と言うと、確かに実現の可能性を考えないといけないということになりますが、「頃」の場合は幅がありますから、それをつけておけばいいのではないかと思います。

【藤田委員】 2010年までに3,000 人達成はちょっと無理ではないかという認識が前提にあるものですから。要するに法曹の能力的レベルの低下、倫理的レベルの低下を防ぎ、社会的な需要の動向を見て段階的に増やしていくべきであるということを考えているものですから、無理のないように増やしていかないと混乱が生ずるのではないかという懸念がありますので、そういう言い方をしているわけです。前提においてちょっと吉岡委員とは認識が違うのかもしれません。

【吉岡委員】 前提というよりは、文章の読み方だと思います。

【竹下会長代理】 3,000人の達成の時期を明らかにするべきではないという御意見が、元々あったところですから、今、水原委員がおっしゃったぐらいの幅を持たせるというのはどうでしょうか。
 現在、1,000人ですから、そうすると2010年ぐらいまでと言うと、この新しい制度が発足してすぐに3倍にするという話になる。制度が発足してからというより、今から10年足らずで3倍にするというのは、やはりかなり無理があるのではないでしょうか。

【吉岡委員】 その議論は、夏の集中審議のときにさんざんやりましたね。

【井上委員】 確たることは何とも言えないのですけれども、法科大学院の立ち上がり状況として、最初にあるまとまった数が立ち上がるとすれば、そこの段階で飛躍的に数が増えて、後はそれほど大きくは増えないかもしれない。その立ち上がり状況と、そこからどのぐらいのスピードで、例えば4,000人なら4,000人というところまでいくか、そこの見込みの問題だと思うのです。そこが御意見が分かれるところだと思うわけです。
 もう一つは、あくまで「目指す」ということでして、それを目指していろんな関連の制度を整備していきましょうということであるわけですが、目標なんだけれども、独り歩きしないかという御懸念がある。そこのところの感覚が人によって違うのかなと思うのですが、目標だからその辺に設定しておいて努力しましょう。できなかったら、それよりずれても仕方がなく、できるだけ早い時期に達成するように努力しましょうと、そういう姿勢でいくのか、最初から難しいのだったら、むちゃな数を掲げると、逆に拙速になっちゃう。質を考えないで、どんどん増やすということになりかねないので、もう少し後に設定しようというのか。ただ、「2010年から2015年の間に」ということは、縮めて言えば、「2015年までに」というのと変わらないと思うのですけれども、姿勢としてどちらでいくのか、そういう問題だと思いますね。

【吉岡委員】 2010年から2015年と言うと、それに更に「頃」と付けるのはおかしい。

【井上委員】 だから、ぎりぎり言うと、2015年までにはとにかく達成しましょうと言うのに等しいのではないかと思うのです。

【佐藤会長】 やはり、早く達成したいんですけれども。

【吉岡委員】 できるだけ早く達成したい、だけれどもそれは目標だから目指すべきであると言っているわけで、5年とかそんなことをプラスするとかしないとかということは、余りこだわることではないと思いますけれども。

【髙木委員】 やはり、これは「頃」もあるし「目指す」もあるし、特に日本の法曹人口を増やそうということですから、これは、鳥居先生や井上先生がおられるけれども、法科大学院を設立しようと考えている人たちには、できるだけ早くそういう体制で法曹が生まれるようにという努力をお願いするわけだし、これは全くはしにも棒にも掛からぬ話が書いてあるということでもない。だから、ある種こういうものは、メッセージが社会的に何か動きを誘導していくという面もあるわけですから、私は原案のままでいいと思います。

【竹下会長代理】 おっしゃることはよく分かりますけれども、冒頭、この問題を議論したとき、昨年の春ごろから申し上げているのですが、どうも議論が先走りしているという傾向が否めないように思うのです。ですから、やはりここはちょっと地に足を付けた考え方を入れておいた方が良いのではないかという気がするのです。

【吉岡委員】 これは、含みが二重、三重に入っているんですよね。最初のところで「法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら」と書いてあるんですよ。それで、2010年ではなくて「2010年頃には」となっていて、しかも「目指すべきである」と、3段階になっているんですよ。それ以上緩めるというのは、私には意図が分かりません。

【竹下会長代理】 ですけれども、3倍にするのですよ。実際にできるのでしょうか。

【吉岡委員】 3倍にするのでも、できるとかということではなくて、法曹養成制度の整備の状況を見定めながらということですから、状況がうまくいかなければ当然延びていくわけですよ。それを「頃」というところで言っています。でないと、せっかくあの夏の暑いときに集中審議をして、3,000人合意したのは何だったんだと、私は言いたいです。

【佐藤会長】 それは、水原委員の御意見もその中に入って、「2015年まで」という御趣旨だろうとは思いますけれども。

【吉岡委員】 そんな5年のことでこだわることない。

【中坊委員】 今、我々が司法制度改革を大きく国民にアピールしていくというところにおける3,000人問題の意味を考えると、その時期をある程度特定していくということが必要なんです。確かに竹下さんのおっしゃるように地に付いていないというきらいがないわけではないけれども、同時に、今のところ我々が唯一の牽引車なんです。この審議会が発信することによって議論が初めて前へ動き出しているわけです。だから、そういう我々の置かれている立場全体を考えたときには、やはり今おっしゃるように、我々の審議会は人口問題について積極的に提案して牽引していきますよという姿勢を示しているんだから、それが今吉岡さんのおっしゃるように、余り意味が分からんものになってしまうと、牽引車たるものの役割が薄れてしまう。確かに竹下会長代理のおっしゃる趣旨はよく分かるけれども、しかし同時に、司法制度改革についてこの審議会は一体どういう位置付けにあるのかということを考え合わせたときには、確かにそういうきらいはあるけれども、同時に牽引車としての役割を果たしていくという姿勢が必要なんで、またさっきのように戻りますけれども、なるべく原案通りでいくというのがいいのではないでしょうか。

【鳥居委員】 これは2015年というと、私は80歳ですよ。とてもじゃないですけれども、私が80歳になるまで放って置くのか、という感じはあるね。

【北村委員】 私は、そもそも何年に、というのは難しいだろうというのが基本的な意見なんですが、もし入れなければならないとするならば、「新司法試験合格者3,000人」ということになるのではないかなと。というのは、法曹人口を毎年生み出す人たちが3,000人になるようにしましょうというふうに言っていましたので、新司法試験だけになるのかどうなのかというようなことも、ちょっとまだ余り分かっていないのではないかということです。

【佐藤会長】 その点については、井上委員。

【井上委員】 「法曹資格の新規取得」という表現ですと、厳密には司法修習を経た後ということになりますので、今の制度ですと、プラス1年半後にずれるのです。ですから、それが「2010年」ということになると、司法試験を通るのはもっと前に持ってこなければならなくなるものですから、そこを正確に書くために、「新司法試験の合格者」という表現に一応してあるわけです。
 しかし、それにプラスして他のルートがあるかもしれない。それが、新司法試験を最終的には受けるという形になるかどうかによりますが、そういう形ではないとすると、数も当然そこにプラスしてくることになるだろうと思うのですけれども、その辺は未確定なので、確実なところで3,000 人ということで、こういうふうに修正したということだと思うのですけれども。

【北村委員】 そうなっているのではないかと思うんですけれども、まだ、制度設計がはっきりしていない段階のときにこのように言うと、法科大学院の卒業者だけで3,000人というふうに読めますよね。

【井上委員】 ただ、そうとしか書きようがないのです。

【北村委員】 だから、書きようがないからちょっとぼかしたらどうかなというふうに思ったんですが。

【井上委員】 具体的な代替案はありますか。

【北村委員】 だから、「そのときに見定めながら」とか、何て言えばいいのかな、難しいんですが、「法曹資格新規取得」となっているんですよね。

【井上委員】 それだと、正確に書くと「2012年頃」というふうに、目標の年を後ろにずらして書かないといけないわけです。

【北村委員】 「2012年頃」とも書けないと思うんですけれども、非常にこの辺難しい。だから年数を入れるのはどうかなというふうに思ったんですよ。

【井上委員】 文章表現が難しいということと、年数を目標として打ち出すべきかどうかということは別問題で、どっちが大事かというと、後者の方だと思うんです。後者の方で、我々として打ち出すべきだということになれば、それに向けて文章表現を工夫する。今の表現がベストかどうかは分かりませんけれども、そういうことでやらないといけないのではないかと、私は思います。

【北村委員】 私は、打ち出すことはちょっと問題かなというようなところがあるんです。

【竹下会長代理】 それは、前からそういう御意見ですね。北村委員ばかりではなくて、藤田委員や水原委員も言っておられた。しかし、やはりそこは、さっき中坊委員が言われたようにメッセージとして、やはり何年というのを打ち出さないとインパクトが弱いだろうということになって、そこまでは大体の意見がそっちに向いてきた。そこで、明示すべきではないという御意見も入れてまとめるとすれば、少しアローアンスを見た方が良いのではないかというのが、私の意見なのです。私も決して、インパクトが弱くて良いと言うつもりではありません。

【藤田委員】 地に足が付かないという最大の要素は、法科大学院がどういうふうに立ち上がってどういう実態を持つかということについて見当つかないということなんです。中坊さんが一つのアピールとして、と言うのもよく分かりますけれども。

【佐藤会長】 そこは、井上委員がおっしゃったように、立ち上がろうとすれば、最初の5年ぐらいで相当立ち上がるんではないかと。

【藤田委員】 果たして、7~8割合格させてもいいようなレベルに達しているのかどうかというところが、今朝の新聞にも出ていましたけれども、そういうことも含めまして、やはりある程度含みを持たせた表現にした方がいいのではないかなと思いますけれども。

【井上委員】 お言葉を返すようですが、新しい制度を作るときに、どうせレベルが低いだろう、あるいは細々としか増えないだろうと想定してかかるのでは制度設計にならないと思うのです。目標設定にはならないのです。

【藤田委員】 ただ、現実も踏まえなければなりませんから。

【井上委員】 勿論そうです。ただ、その現実なるもの自体が予測なわけですから。一定程度のレベルのものがどのくらい立ち上がるかということだと思うのです。

【佐藤会長】 相当気合いを入れて立ち上がることにならないといけませんね。

【井上委員】 むろん、目標設定として2010年というのが、正しいかどうかは分かりません。2015年の方が、あるいは目標設定としていいかもしれません。

【鳥居委員】 これ5年ずらされたら、教授会はまた5年間議論し続けますよ。

【竹下会長代理】 スタートは早いですよ。

【鳥居委員】 スタートが早くたって、延々と議論していますよ。

【佐藤会長】 個別的な大学がどうしてくるかという話ですね。

【鳥居委員】 ああいう大学をつくろう、こういう大学をつくろうと議論が続くことになると思います。

【佐藤会長】 これはなかなか難しい問題ですね。代理のおっしゃる気持ちもよく分かるんですけれども。

【山本委員】 一切がっさい、この「状況」という言葉の中に入ってしまうのではないですか。

【佐藤会長】 むしろ、と申し上げると悪いんですけれども、59ページの人的体制、こちらの方をちょっと御議論いただきたいと思っています。ここのところは、鳥居先生が80歳になられると聞くと…。
 59ページ、それから61ページとみんな関係してくるわけです。ここをちょっと御議論いただきたいと思いますが。

【中坊委員】 今回のこの部分における「裁判所、検察庁の人的体制の充実」のところで、確かに括弧で括られている中に趣旨は盛られているんですよね。「飛躍的な増大を図っていくべきであって、そのための大胆かつ積極的な措置を講じる必要がある」というふうに表現されているんですけれども、やはり非常に中間報告の中においては、もう少し簡単に分かりやすく「別に他の行政分野とは異なる取扱いをする必要がある」と、はっきり行政改革、定員削減が行われておる最中にあって、「別に取り扱う必要がある」というところまで明記したと思うんです。
 ところが、今度、最終報告になってくると、そのトーンが非常に抽象的な字句に終わってしまって、まさに我々の議論の核である、「人が一番大切だ」というところの、人の数という一番基本の問題がやや薄らいでおるように思うんで、ここはやはり基本的に考え直していただく必要があると思います。
 裁判所と検察庁に関しましては、この下に注記で書かれていますように、それぞれ最高裁、法務省の方からも増員の数の話が具体的に出てきたというふうに思うんです。しかし、それは同時に、それだけでは足りないんで、検察官であれば検察事務官が必ずいるし、裁判官であれば書記官が、併せて同数程度の増員が必要だということも我々は議論してきたわけなんでして、また、裁判所の方は510名か何かという数が書いてあったり、法務省の場合はちょっと多くて1,000名と書いてあったり、いろいろするんですけれども、基本的に我々としては、この本文の所でも、あるいは今日の会長の方の答えでもいいんですけれども、やはり現在の裁判官、検察官の数、そして、ひいては職員の数を増やして、やはり1.5倍ぐらいという具体的な目標というものは持っていたんだということが基本的に明らかになってきて、そして同時にその話がどこかに出てくれば一番いいんですけれども、そして原案の文章そのものも「飛躍的な増大を図っていくべきである。」と書いてある。
 同時に今まさにおっしゃるように、行財政改革の最中にそれと別異に取り扱うとかいう表現が、やはり、ちょっとよそのところとの関係もあることもあったとしたとしても、これは必要不可欠なことだという認識がまず我々としてあって、法的措置を含め積極的な措置を講ずる必要があるというふうに、この括弧書きの文章も、もう少し具体的に書いていただく必要があるんではないか。
 そうしないと、せっかく我々が司法の充実、そのためには、まさに中核となる裁判官、そしてまた検察官というものの大幅増員ということを言っておって、今、言うように、数は3,000名ということも明らかにしていながら、今度、その中核の方については途端に抽象的な字句に終わるのはいかがなものかと思うんで、これは、一旦、中間報告では書いておった趣旨が、もう少し何とか生きるような形に、この部分はより具体的に提案するような形にならないものかと、私はそういうふうに思うんです。

【佐藤会長】 なぜこういう表現になったかについて、皆さん、あるいは訝られるかもしれませんけれども、ここは代理とも相談し、随分悩んだところでございます。
 この審議会は内閣に置かれていて、その内閣は、さっき中坊委員が触れられましたけれども、挙げて行政改革で国家公務員の定員削減を目指している。
 しかし、司法の方は大幅増員を図らなければならないというのは、行政改革の理念と決して矛盾するのではなくて、むしろ行政改革の理念の延長に位置しているのだということを私もかねて申し上げてきましたし、皆さんもそういうお考えだと思います。ただ、さっき申し上げたように、内閣が挙げて定員削減を打ち出しているときに、中間報告のように「別の扱い」ということを正面から書くのはしんどい。そういうことでありまして、その趣旨・実質的な理由は何も変わっていないんですけども、表現振りをこういうように変えさせてもらったんです。しかし、この表現で適切かどうかということは、まさにそれが問題でして、今、中坊委員がそのことを御指摘なさったんだろうと思います。

【石井委員】 私も中坊先生の御意見に賛成です。法曹全体の人口を増やすことになって、増えても逆に行革に従って数が抑制されたら、行革自体が結局推進できなくなってしまうと思います。ですから、「しんどいかな」と会長さんがおっしゃるのもよく分かりますが、やはりそういうことには目をつぶって、どこかにそういう意味のことを表わしておく必要があるではないかという気がいたします。

【竹下会長代理】 今、ちょうど石井委員から、どこかにその趣旨のことを表わしておく必要があるのではないかという御発言があり、また、中坊委員からも、るるお話がございました。その両委員の他にも、ここのところについて、いろいろな方がほぼ同じような御趣旨の御意見を述べておられます。会長もさっき言われたとおり、会長と私と2人で、どうすべきか、ああでもないこうでもない、こういう表現ではどうだろうか、というようなことをいろいろ考えて、一つは13ページの総論のところですが、13ページの下から3行目のところに「そのためにも、これに伴って必要とされる人員・予算の確保には、これまでの経緯にとらわれることなく」という表現を入れたのです。これは、含意としてはおそらく皆さんがお考えになっていることを表わしている。読む人が読めば分かるのではないかと、そういうつもりなのでございますが。

【佐藤会長】 眼光紙背に徹するということですね。

【吉岡委員】 確かに、読む人が読めば分かるのかもしれませんけれども、私の今までの経験からいいますと、例えば行政改革では、一律10%定員削減とか、そういうことを言われます。でも、必要なところは増員する、不必要なところはカットするという、そういう考え方でなければいけないと思うのですが、行政には往々にしてそういう考え方があります。
 それから、特に部を削減するということで、削減をしたことになっています。ですけれども、よく見ると部は課になっていたりということで、ほとんど変わらないという状況もあります。ですから、そういう実態を踏まえる必要があるということと、それから、役所の中で定員を10%削減しなければいけないということになると、中でやりくりをしてしまうということもよくあります。中でやりくりをするということが、勿論、不必要なところはカットしなければいけないと思いますけれども、それが本当に必要なところの増員になってこない。特に司法制度改革の場合は、今までと違いまして、大幅に改革をするという、そういうことが内閣に、この審議会が設置された意味でもあると思います。そういう中で、ただ増員をすると言うのではなくて、むしろ司法を大きくしていくという文脈で考えていく、そういうことが必要なのではないかと思うのです。読む人が読めば、「これまでの経緯にとらわれることなく」というところで読めるということなのかもしれませんが、素人から見ると、今までのいろいろな省庁の動きなどを見ていますと、一律削減という、そこに入ってしまうのではないか、そこのところを私は非常に心配します。

【竹下会長代理】 御心配はごもっともだと思うのですが、他の委員にも発言をしていただきたいと思います。

【佐藤会長】 髙木委員どうぞ。

【髙木委員】 基本的には私も中坊さんの意見でいいのではないかと思いますが、原案の13ページも含めて、これは読む人が読んだら分かるんだということだけれども、行革のいろんな議論に関わった方々、そういう人たちの意見なんか聞いていると、例えば「大胆」というのは、ある人にとっては小さなものも大胆だと、ある人にとっては大きなものも大胆だと、そういうふうにも読めるわけですし、「積極的」だというのは、積極的なつもりだと言われたらそれでおしまいなので、そういう意味では、具体的に、今、吉岡さんが言われた10%削減というか、行政改革の関連法とかにきちんと、これから推進体制で御努力される人たちあるいはその関係の裁判所なり、法務省、検察庁が、ある種対抗力を、こう言うとまた滑った話になるかもしれませんけれども、法的にそういうものを担保し、抗していけるだけの表現にしておく必要があると思います。1,000を1,001にするのも「大胆」だと思う人もいるわけですから。

【藤田委員】 意見の中身は中坊委員と同じなんでありますが、それをどういうふうに表現するかの問題でありまして、私は行政庁に出向して増員折衝を財政当局あるいは当時の行政管理庁の方たちとやったこともあるんですが、いろいろ考えてみて、この原案の表現でいいのではなかろうか。それから、全般的に1.5倍というような言い方もできますけれども、これを見ると、最高裁も事件増ということを考えれば、大体似たような話になっているわけですから、それぞれの人事当局者が積算して積み上げてきた数の方が、大づかみで「全体の1.5倍」というよりも説得力があるのかなと思います。国民にも理解してもらわなければなりませんが、行政当局にも理解してもらわないといけないということを考えると、原案でいいのかなと思います。

【中坊委員】 先ほど竹下会長代理がおっしゃったように、13ページのところに「これまでの経緯にとらわれることなく」と書いてある、また、眼光紙背に徹したら、この「大胆かつ積極的」という表現もそう読めるではないかと。私は、正直に言って、行政庁のいろんな予算の取り合いとか、そういうことと私は関係していません。しかし、通常考えられることは、もっと重要なことがあるんです。
 というのは、中間報告の中で、まさに先ほどおっしゃったように、会長と会長代理が御苦労なさって、ここを13ページの総論のところは変えなかったけれども、まさに各論に書いてある裁判官と検察官の定員のところにきたら、途端にその字句が抜けて非常に抽象的な言葉に変わったというところに、実は大変な問題があります。大変な御苦労をいただいたのは分かります。しかし、同時にそこに大変大きな問題を、この最終報告は残していることになるということを、まずもって私は銘記すべきではないかと思うんです。
 それで、まさに私はこのことは非常に長い、長いと言ったら変かもしれんけれども、いろんなこの審議の過程において、我々この審議をしている間も、御承知のように政府の、かつては太田誠一総務庁長官ですが、ここへいらっしゃって、そのときにはっきりと、この問題については公務員の定員削減とは別枠にすべきであるということを、この審議会でおっしゃっていた。そして、また自民党の司法制度調査会の報告でも、その後も平成12年にも枠外とするとか、そういうようなところまで言われてきた。にもかかわらず、今回ここがどうして変わったのかということが問題になってくる。
 「別枠」あるいは「別に取り扱う」という表現を使ったことが、やはり非常に問題を引き起こす一つの大きな原因になっていたんではないかと思います。私たちの審議の状況ではないですよ。政府の方とか自民党の方が、そういう問題については、やはり非常に神経質、あるいは各省庁もこの問題を見守っておって、何だ、行政が一律10%という、行政各庁が本当に大変な、血の出る思いで減らしている最中なのに、「別枠」だとか「別に扱う」とか、何ということを言うてんねん、という気持ちが非常に強いのではないか。
 しかし、一方において、我々はこの審議会の、今、大幅増員ということを、しかも具体的な数を頭に入れて、それを実現しなければいけないと要請している。そういう要請との間において、この文章をどう書くのかということが非常に問題になってくるんです。だから、今おっしゃるように、しかも中間報告で書いた言葉をそのまま使えば、そういう抵抗もありうる、考えられると。そのような状況の下において我々は今、一番このところをどう書くかということを考えなければならない。
 私の提案としては、先ほども少し文章を具体的に、この59ページのところを具体的に申し上げましたように、飛躍的な増大を図っていくことは必要不可欠なんだということをまずうたっておいて、それだけだったら、今言う行革の大きな流れの中から言ったら、そんなもんそうはいかんがな、何を言うとんねんと、こうなるから、やはり我々の言うていることが実現していくために、やはり法的措置は考えて欲しいということを明確にうたい出さないと、これは実現しないわけですよ。私もそんな具体的な、どういうふうにしたら良いか分かりません。しかし、例えば、何か別の法律、どうせこれは推進体制でも決まっていくんでしょうけれども、推進法か何か、この前に会長がおっしゃってましたよね、何か基本法というのを作られるとか、そういうような中において、これがうたわれていくということが考えられます。だから、行政と司法とは別個だという形が、しかも表現は「別枠」とか、「行政改革とは別に」とかいうところには重点を置かないで、司法は司法としてちゃんと「法的措置」が講じられていきます、という基本的な構想を明らかにしないと、会長、会長代理もいろいろ御苦労いただいただろうけれども、このような字句のままいくと、逆に中間報告からも更にトーンダウンして、抽象的な字句に終わってしまうということになって、それこそ、今回の最終報告書は何だよということになってくるんで、これは非常に重要なことですから、会長、会長代理におかれましても、もう一度よくお考えいただいて、修正をお願いしたい。

【佐藤会長】 鳥居委員どうぞ。

【鳥居委員】 私も、今、中坊先生がおっしゃったこととほぼ同じことを申し上げたいんですけれども、元はと言えば、今の中央省庁の改革、基本法に基づく行革は、橋本内閣が国家公務員の5%削減ということを一つのスローガンとして打ち出されて、その後を受けた小渕さんが、今度はそれを倍にして10%削減ということを言い出したところから始まっているわけですね。国家公務員の数は、アバウト69万人ですから、そのうちの約6万人は国立大学の独立行政法人化だけでもって片付いてしまうぐらいの数ですよ。それに比べて今我々が議論している、裁判官の数を増やして欲しい、1.5 倍にして欲しいと言っているのは、まさに何千人というわずかな数なんです。それを十把一からげに、他も10%削減だから、こっちも10%削減という発想の下で扱うべきものでは全くない。むしろ司法制度改革という100年に一遍の大改革をしようとしていて、その理由はもうここで改めて縷々述べるまでもない、本当に深刻な問題を日本が抱えているから必要だということなんで、そのことを考えると、独立行政法人その他諸々の一連の行政改革と同列に扱うことは明らかに誤りだと思うんです。そのことを是非理解していただきたいと思います。
 もう一つは、中坊先生は歯に衣着せてきれいに表現されましたが、要するにお金の問題なんです。ですから、予算をどう付けるかというお金の問題なんだと思いますが、今私が申し上げた理由によって、予算面で国庫に対する負担をお掛けするという問題は、そんなに大きな問題であるはずがないんで、私はむしろここは筋を通すべきだと思うんです。

【佐藤会長】 鳥居委員が、今、おっしゃった5%はこの5年のことで、橋本行革では10年で10%だったと思いますが。

【鳥居委員】 増えたんですか。

【佐藤会長】 橋本行革は10%でしたね。その後20%に。

【水原委員】 大方の委員が、中間報告の線にまとめるべきだという御意見でございますが、私も全く同感でございます。私は、この問題につきましては、最初から強くお願いをしてきたところでございます。ここに書いてあります「大胆かつ積極的な措置」というのは、その趣旨におきましては、これはもう全く同感でございます。
 ただ、問題は、この「大胆かつ積極的な措置」の必要性というところに、法的に裏付ける意味が含まれているのかどうか、そういうふうに取れるのかどうかということだと思うんです。なるほど、内閣との関係において、会長、会長代理が非常に御苦心なさっていらっしゃることは、痛いほど分かりますけれども、我々はここで議論したところは、やはり司法の人的基盤の拡充を行う必要があるという大前提でございます。
 しかしながら、今、かぶせられております10年10%の削減計画から外すという何らかの担保がないと、これは幾ら大胆かつ積極的な措置が必要だと言ってみても、その法律によって縛られてしまうと思うんです。先ほど中坊委員、それから鳥居委員もおっしゃったとおりでございます。
 もう一つは、仮に裁判官、検察官の増員については、増員が認められたとしても、法的に別枠でございますよということをはっきり言っておらないと、法務省の全体の定員の中から、検察官を増員した分だけ他の職員の定員が削られる。こういうことは、しばしばございますので、是非その点ははっきりとさせておく必要があるだろうなという気がいたします。その点は御苦労のほどはよく分かりますけれども、よろしくお願い申し上げます。

【吉岡委員】 私も水原委員のおっしゃることはよく分かります。何かつじつま合わせをしているという、そういうことがよくありますから、そうではなくて、司法改革の場合には特別なんだという、そういうことを書き込んでいただくということが必要ですし、それから、特別なんだということを書いただけではだめなんで、やはり中坊委員がおっしゃった1.5倍というように数字をおおまかな感じで、このぐらいは必要だという書き方をするというのは、実現可能性という意味から重要ではないかと思います。

【髙木委員】 だから、担保のないものは、そんなものは意味がないということに尽きる。

【佐藤会長】 井上委員、北村委員どうでしょうか。これは非常に重要な問題ですので。

【井上委員】 私も、意見は出してあるので繰り返しませんが、要するに表現上の問題ということですよね。今この場で、こうしましょうというふうに案を出して決められる問題ではおそらくないので、会長、会長代理にもう一苦労お願いできればということに尽きるんでしょうか。

【北村委員】 私も意見を既に出してあるんですが、私はこの審議会の中で、珍しく全員が一致したところではないかなというふうに思っているんです。会長、頑張れ。

【中坊委員】 しかも、これは裁判官、検察官のことでしょう。だから、ちょうどそれだけの数が要るんですから、やはりここは次回の29日までは日がありますから、ちょっと会長、会長代理で頑張っていただいて、この趣旨をもう一度踏まえてお考えいただきますように。

【佐藤会長】 御意見どうもありがとうございました。先ほど、中坊委員から具体的な修文の御提案がございましたが、それについて委員皆様のお考えも承りました。それを踏まえて、代理とまた御相談させていただいて、より良き表現をするように努力してみたいと思います。  それでは、30分まで休憩にしたいと思います。次は、弁護士制度から入りたいと思います。
                 

(休 憩)

【佐藤会長】 それでは、再開させていただきます。
 次は、62ページの「弁護士制度の改革」について御意見を頂戴できればと思います。これについては、既に御提出の御意見を採り入れさせていただいたところも何か所かにわたっておりますが、代理からちょっと御説明願えますか。

【竹下会長代理】 お手元の原案を御覧いただきますと、細かい字句の修正とか語尾の統一というところは別にいたしまして、最初に大きく変わっているところは、「弁護士報酬の透明化・合理化」のところの説明でしょうか。御承知のように、現在は弁護士法の中に会則で弁護士報酬に関する規定を定めることになっているわけでございますけれども、規制改革3か年計画、閣議決定でございますが、そこでは報酬規定を会則記載事項から削除することが定められておりますので、当審議会としても、それに対応する必要があるということで、ここの記述が変わっております。
 あとは弁護士会の在り方、ここもそれほど大きな変更はありません。
 あとは綱紀・懲戒の関係につきまして、いろいろな御意見をいただいております。直接に原案にその御意見を取り入れて修正をしてあるというところはございませんけれども、いろいろな御意見がお寄せいただいておりますので、ここでお決めいただければと思います。

【水原委員】 63ページの「弁護士の活動領域の拡大」でございます。せっかく公務就任の制限、営業等の許可については、届出制に移行すべきである、自由化すべきであると、ここまで弁護士活動の領域を拡大する方向で意見が出ておりますが、それならばついでにと言っては悪うございますけれども、2項が残されておったのでは、ちょっと使い勝手が悪いのじゃないかという気がいたします。ついでにこれも外したらどうだろうかというのが私の意見でございます。公務就任の制限、これは1項で届出制に改め、常時勤務を要する…。

【竹下会長代理】 公務に就いている間は、弁護士の職務を行ってはならないという規定ですね。

【水原委員】 これは自ら公務に就いてはいけないということを言っているだけであって、もし公務に就いてはいけないのであれば、官公庁側が弁護士の職務を行わせることが好ましくないと考えるならば、就任させなければよろしいのであって、弁護士自らが自己規制的に一律にそういうことはだめですよということを言う必要はあるんだろうか。理屈の面においてもこれはおかしいんじゃないかという感じがいたします。

【竹下会長代理】 公務の執行に支障を来さないような形で弁護士業務を行えるならば、弁護士法の規律としては、弁護士業務を行うことを認めても良いのではないかという御趣旨ですね。

【水原委員】 そうでございます。

【竹下会長代理】 確かにこれは今まで余り議論されなかったのですが、そのようにも考えられますね。

【水原委員】 1項、これは公務就任の制限。2項は、「前項但書の規定により」というのは許される場合です。「前項但書の規定により常時勤務を要する公務を兼ねるときは、その職に在る間弁護士の職務を行ってはならない」と定めています。行ってはならないのであれば、それを雇う官庁側が採用しなければよろしいのであって、兼業を許される場合に採用すればいい。自ら自己規制を掛ける必要はないんじゃないかというのが私の考えでございます。

【竹下会長代理】 現在は国会議員などは弁護士の身分を持ったままですね。

【水原委員】 それは但書により全部認められております。

【竹下会長代理】 それと同じ趣旨になるのではないかと私は考えていたのですが、公務員になる場合が非常に広くなるので、すべての場合に弁護士業務を行ってはならないということにする必要はないのではないかということですね。

【水原委員】 今までは許可制であったわけです。これからは届出制にするわけですから、それならば採用する側が、弁護士業務を行うことは公務に支障がない限りはよろしいですよということで採用するならば、自ら何も弁護士業務をしてはならないという規定を置く必要はないのではないかというのが私の考え方です。

【佐藤会長】 この問題は新しい問題なので、ちょっと検討させていただけますか。1項及び3項との関連で整合性があるかどうかですね。

【竹下会長代理】 弁護士会側の御意見も伺っていないので。

【水原委員】 広くなるわけでございますから。

【鳥居委員】 基本的には私も賛成なんです。例えば、国立大学が運営するロースクールに弁護士さんが教官として勤める場合には、今、水原さんがおっしゃったことが起こりますので、自由化すべきだと思います。

【中坊委員】 でも、一律には言えない。というのは、公職に就くというのは、公職専念義務があるでしょう。他方弁護士を営業としてやっている場合とその専念義務との関係が出てくる場合もあると思うんです。
 今、会長がおっしゃっていただいたように、いいのかどうか、私も難しいころがあると思います。確かに法曹資格を持つということと、弁護士という資格ですと、営業ができるでしょう。片一方で公務員になりますと専念義務があります。それと営業との問題が出てきますからね。趣旨は分かるんだれども。

【井上委員】 水原委員がおっしゃっているのは、それはむしろ公務員法の問題であって、そちらがパスすれば、弁護士法の方で制限する必要はないんじゃないかという御趣旨ですね。

【中坊委員】 趣旨は分かるんだけれども、専念義務との関係において、営業との関係が少し出てくるから、もうちょっと検討を要する。

【佐藤会長】 差し支えなければ29日に議論しますし、もし難しければ、更に検討させていただきます。

【吉岡委員】 ちょっと見た感じでは、むしろ公務員法だと思います。

【佐藤会長】 次に、御意見がいろいろございましたのは、弁護士倫理等に関する弁護士会の体制の整備、隣接法律専門職種の活用、それから企業法務のところもそうですね。その辺が、弁護士制度の改革についての御意見があったところです。

【竹下会長代理】 弁護士報酬のところも、本文で64ページの方を直しておりまして、最後に「なお、報酬に関し、引き続き弁護士会が何らかの目安を設ける場合には、その策定過程を透明化すべきである」と言っておりますが、この辺りも独禁法の関係で若干問題があるかもしれませんので、何か御意見があれば承りたいと思います。

【中坊委員】 別にこの程度の表現なら問題ないんじゃないですか。「策定過程を透明化すべきである」ということですから、それはいいと私は思います。

【竹下会長代理】 分かりました。表現等は、会長との相談の中で変えさせていただくかもしれません。

【鳥居委員】 66ページの5番の四角の中なんですが、2番目の(マル)で、「日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うべきである」というんですが、分からないのは、何で「例えば」なのかということと、もう一つは「特定共同事業」というのは何を指しているんでしょうか。

【竹下会長代理】 これは、弁護士法の中で本来弁護士と外国法事務弁護士が共同事業を行ってはいけないという原則があるんですけれども、その例外として、特定共同事業として、日弁連に届け出て、その一定範囲のものについては共同でやれるということに現在なっているわけです。それを「特定共同事業」と言っているんですが、この要件が非常に複雑なもので、外国法事務弁護士側からは非常に使いにくいと言われているものですから、その要件緩和をここで入れているわけです。
 ただ、その問題だけならば、おっしゃるように「例えば」とか「等」とかは要らないわけなんですが、他にもありうるのではないかというので「例えば」という表現になっているわけです。

【鳥居委員】 分かりました。もう一つ、その次の(マル)なんですけれども「発展途上国に対する法整備支援を推進すべきである」というのは、なるほど必要なんですけれども、発展途上国だけではなくて、先進国との関係も両方含めまして、法整備支援だけではなくて、相手国のリーガルな情報の収集体制、例えば私の大学で今実験的にやっているので言えば、キーワードで殺人と入れれば、マレーシアの判例も出てくるし、インドネシアの判例も英語と日本語で出てきてしまうという、そういうものが日本では必要なんじゃないかなと思うんです。前に申し上げたことがあると思うんですが、そういうニュアンスの言葉を付け加えてはどうかなという気がするんです。

【竹下会長代理】 御趣旨は分かりました。それから、場所がこの弁護士の問題なのか、それとも、もう少し広く裁判所なのか。

【鳥居委員】 そうです。裁判所にとっても必要なことです。

【竹下会長代理】 では、入れる場所等については考えさせていただきます。

【佐藤会長】 本体が既に55ページのところに出ているわけです。今、おっしゃったことも含めて、こちらの方で。

【中坊委員】 私、外国法事務弁護士との関係で言いますと、確かにそれが規制緩和されて、非常に多くの外国法事務弁護士が参入してくるということになってきますと、外国法事務弁護士の方が主導権を持って、それを日本国の方に全部持ってこられると、日本法の弁護士資格を持たないがすべて日本法の解釈適用を行うことになる。そうすると、日本国の独立としての問題点が非常に損なわれてくるということのために、今、言ったようなことを言っているのでありまして、勿論、アメリカのUSTRはかねてもっと規制緩和すべきであると言っているんですけれども、それが無制限に認められるとなってしまうと問題である。外国法事務弁護士が主導権を持つ場合、最低限共同事業まではいい。しかし、向こうに雇用されたらいかんというのが最後の歯止めになっているんです。そのために我々としてもいろいろ規定を置いていますので、日弁連が政府とも、あるいはそことも交渉すべきことだろうと思うので、表現として基本的にこういう並びですから。

【佐藤会長】 56ページの一番下のところです。

【中坊委員】 だから、このとおりでいいと思います。

【石井委員】 68ページの弁護士倫理のところですが、これは裁判官と同様に、最後のところに弁護士さんに対しても、法曹の倫理教育についておっしゃっていただいて大変ありがたく思っております。
 それと関連するのかどうかは別として、前にもちょっと申し上げましたが、懲戒処分を受けた弁護士が司法審査を受けられるという話がございました。ところが、逆はだめだという、それについてはどこかに書いてあるのですか。

【佐藤会長】 それは触れておりません。一応議論して、司法審査については、代理の方からもお話があって、今の体系では直ちには、ということになったのではないですか。

【竹下会長代理】 69ページの真ん中辺りでしょうか、「綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化の見地から」これこれの見直しをして、「懲戒請求権者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に、国民が参加して構成される機関に更なる不服申立ができる制度の導入」、ここで止まっているわけでございます。今、石井委員がおっしゃったのは、この国民が参加した審査委員会のようなものではなくて、裁判所に対しても一種の不服申立をすることができる制度を入れるべきではないかという御意見ですね。この前の審議のときにそのようには意見の集約ができていませんでしたので、原案はこの段階で止まっておりますけれども、今日そこは変えるべきだという御意見が多ければ、勿論私どもとして再検討する用意はございます。

【中坊委員】 弁護士の立場からすれば、非常に基本的な法律体系そのものに触れてくる問題ですし、やはり懲戒というのは、基本的に言えば組織の内部における問題ですから、その懲戒手続が司法審査を受けるということになってしまうと、いわゆる弁護士の自治が全部、そこが最終的に監督するということになるでしょう。そうすると、自治というものが全部崩れてきますから、おっしゃるように簡単にはいかない。だから、弁護士自治というのはものすごい長い歴史が、御承知のように元は検事の監督から始まって、監督権者が検事正になって、司法大臣になって、長い間の歴史を経て、やっと戦後に自治を獲得して、法制度の下で認められていることですから、それが今また最終的に裁判所の監督を受けるということにつながりますから、これは法体系も問題だし、過去の歴史から言っても問題なんです。特に弁護士というのは国家刑罰権の行使というものに対してでも闘わないといけないという立場になっているわけですから、これは体系そのものの基本に触れることだからそうは簡単にはいかないと思います。
 そこは、思いつきでちょっと直しましょうか、思いつきと言ったら悪いですが、そういうことにはならないと思います。そこはかなり慎重にお考えいただきたいと思います。

【吉岡委員】 弁護士自治は非常に大切なことですから、それは守られなければいけないと思います。ただ、この仕組みが素人から見たときに複雑で分かりにくいんです。分かりにくいために請求した本人が不満を持つことになりがちなのです。そういう意味で、もう少し分かりやすい図か何か作って、相談にいらした方にお見せして説明するという、そういう工夫をしていただくと、納得しやすくなるのではないかと思います。

【竹下会長代理】 それはこの前のときにも問題になって、フローチャートのようなものを日弁連の方からお出しくださったものを、ここで改めてお示ししたと思うのです。

【吉岡委員】 ここで示してくださいということではなくて、相談にいらっしゃるとか、懲戒請求をするとか、いらした人が不満を持ってしまうことの一つに、内容について理解していないという問題があるので、これは弁護士会にお願いするということです。

【竹下会長代理】 一般の方がアクセスしやすい窓口などに置いておいてほしいということですね。

【吉岡委員】 そういうことで弁護士会が非常に開かれているという感じと理解できるということになるのではないかと思います。

【中坊委員】 確かに懲戒の問題というのは、しょせんはどうしても仲間うちの処分じゃないかと思われがちなものですから、よほどその点に関して、弁護士会側も積極的に開示する必要がある。透明度を持ったものにし、まず国民に知っていただけるとしないと、基本的に仲間うちで決めているんじゃないかということになる。だからこそ、懲戒委員会も8対7というところまで外部委員が入ってくる。これには大変長い歴史がありまして、弁護人抜き法案というのが出てきて、国会で闘われたりとか、いろんな長い歴史があるんですけれども、そこへそれほど気張って神経を使うなら、一般国民に対してもっと開かれた弁護士会にすべきだろうというのは、今、吉岡委員のおっしゃるとおりだと思いますので、これ日弁連の方にも私からよく言っておきます。

【吉岡委員】 今、弁護士会で仲裁委員会というのを各地に持っていらっしゃいます。利用が余り多くないということがありまして、これからADRを広げていこうということを考えますと、もっと利用されるようにならなければいけないと思います。この問題は昨日で終わっていますので、御参考までにペーパーを配付させていただきました。ADR本来の在り方をもう少し考えて、相談員にふさわしいトレーニングを考えていく必要があると思います。どこがやるかは、これから先のことですから、申しませんけれども、本来のADRの在り方を考えていただきたいと思います。

【水原委員】 これまでも綱紀委員会と懲戒委員会の構成について、多くの委員から弁護士以外の者を過半数にすべきだという意見が出た記憶があります。ここでは弁護士以外の委員の増加ということでございますので、これを過半数にするということについては、相当の方からの意見があったような気がいたしますので、この点についてはどうだろうかなという感じがします。
 もう一つは、68ページの(マル)の2つ目の・の3つ目に、「懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に」ということに限られておりますが、綱紀委員会の議決だけで懲戒委員会の議決が棄却・却下された場合は含まれておりませんので、この場合は双方向性としては、司法審査を受けるのは別としまして、せっかく弁護士会が「開かれた弁護士会」ということで、一般の意見を入れた審査会というものを作ろうという御提言をなさっていらっしゃいます。そこには、やはり懲戒委員会に掛かった案件についても、そこへ不服申立をすることができるようにしておくのが、国民により近い弁護士会ということになるのではないかいう気がいたしますので、ちょっと意見を申し上げます。

【中坊委員】 私はそれは困ると思うんです。綱紀委員会の議決について、確かに国民が参加したものをもう一度考えましょうというのは、まさに検察の起訴・不起訴について、検察審査会がやったときに、起訴強制と同じような形で、それは確かに分かるんです。しかし懲戒というのは今度は裁判所ですからね。起訴と違うんです。綱紀というのは起訴の段階ですからね。秩序維持というのは組織内部のことですから、それが懲戒委員会の委員を部外者と弁護士の数をどうするかというのを、長い間弁護人抜き闘争とかいろいろあって、やっと8対7、国民が7となっている。だから、弁護士が勝手に自分たちで決めるなよ、独善になりはしないかということから、8対7という、1人だけの差にまでなってきておる歴史がありますので、これは今、水原さんのおっしゃるようにはいかないんです。

【水原委員】 分かります。したがって、私は今の段階で是非そういうふうに変えていただきたいということを申し上げるのではございません。そういう意見がございましたので、そういうことも考える必要があるのではないかということです。今、弁護士が総力を挙げて開かれた弁護士会、透明な弁護士会ということを目指していらっしゃるわけですから、精一杯自己改革なさろうとしておるときに、私は水を差すつもりはさらさらございません。だから、精一杯やっていただいて、なおかつできない場合にというところを私はちょっと危惧しただけでございますので、あえてこだわるものではないことを申し上げます。

【竹下会長代理】 この問題は非法律家である山本委員や、北村委員も、弁護士以外の者を過半数にすべきであるという御意見ですね。その辺は中坊委員のお答えとしては、今の水原委員に対するものと同じだということですね。

【中坊委員】 例えば、今回、既に日弁連会長がここへ来てお話し申し上げたし、そのとおりの方向で審議していると思うんですけれども、綱紀委員会では参与委員というのは今まで議決権はなかったんです。今回、新たに綱紀委員会においては議決権を持つというふうに変える。こちらも変えなさいという答えになっているし、それだけ弁護士会も、そういう意味においては自分とし、自己改革をして、国民の声を幅広く入れていかなければいけないと努力しているところですから、その結果も見ていただきたい。

【佐藤会長】 分かりました。時間の関係もありますので。藤田委員、どうぞ。

【藤田委員】 水原委員と同じ意見だったんですけれども、国民が参加して構成される機関、以前は懲戒審査会となっていたと思いますが、そこに不服申立てをするという制度が、自主懲戒権の放棄であるという主張をされている方たちもあるようですけれども、そうではないと思います。
 それから、必ずしも外部委員を過半数にしなければいけないということはないと思います。民意が反映できればいいと思うんですが、その他は将来の検討課題ということで結構でございます。
 隣接法律専門職種のところもいいでしょうか。

【佐藤会長】 今のところをちょっと繰り返します。
 一応原案でちゃんとやっていただけるという期待の下に、将来を見定めつつ、それは別途考える可能性は将来あるかもしれないけれども、まず、ここからスタートするということでよろしゅうございますか。
               

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】 では、隣接法律専門職種の方をどうぞ。

【藤田委員】 71ページの上から2番目のパラグラフ、司法書士の簡易裁判所での訴訟代理権のところで、括弧書きがありまして、「(なお、簡易裁判所における調停・即決和解事件の代理の範囲等については、検討が必要)」とありますが、こういう議論はなかったのではないか。また、理念的に言いましても、訴訟代理権を認めておいて、調停・即決和解について制限するという考え方は、理論的な根拠はあるんだろうかということに疑問を持っております。
 もう一つは、税務訴訟で税理士の出廷陳述権を認める点については、税理士法の改正が先行すると聞いていたんですが、まだ、改正はされていないんでしょうか。改正済みだとすると、提言するのはおかしい。

【事務局長】 審議中です。

【藤田委員】 通りそうだという話を聞いているんですけれども、最終意見を出すまでに通ったら、そのように表現したら、ということです。

【佐藤会長】 代理、さっきのところですが。

【竹下会長代理】 その括弧書きのところですね。これはおっしゃるとおり、このように審議会で決めたということはないと思います。ただ、簡裁の訴訟代理権を司法書士にも認めるという議論のときに、調停や即決和解はどうするかというので、たしか藤田委員が、調停や即決和解も簡易裁判所の事件である以上は、訴訟代理権を認めて良いのではないかという御意見を述べられたと思いますし、私もそのように思うと言った記憶があります。
 ただ、全体のコンセンサスになっていなかったのではないかと思うので、考え方としては、和解や調停についても簡易裁判所の事物管轄の範囲内なら良いという、今度の自民党の司法制度調査会のような考え方もあるし、調停についてはともかく、和解については、訴額に相当する金額というものはなかなか考えにくいものですから、事物管轄の範囲内でと言ったのでは、果たして内容が特定されたことになるかどうかということがいろいろありましたので、原案作成の過程では、これは検討の必要があるという書き方にしておこうということになったわけです。決して否定するという趣旨ではありません。

【藤田委員】 分かりました。

【佐藤会長】 では、今の点、それでよろしゅうございますか。

【藤田委員】 結構です。

【佐藤会長】 では、山本委員どうぞ。

【山本委員】 最後の「企業法務等の位置付け」なんですけれども、「少なくとも」云々とあって、非常に明快なんですが、「少なくとも」という形容詞が入る以上は、その前提としてもう少し幅広の検討課題があるということ、要するに、企業側としては、グループ企業の訴訟代理権だとか、有償のリーガルサービスとかいろいろと要望させていただいているわけです。とりわけ、持株会社とか分社化だとか、企業再編の動きが活発になっていますね。元々、一つの会社が形を変えたわけですから、変わっても同じようにやっていきたいという声も強うございまして、審議の中で、こうした要望を認めてほしいという問題提起をしたんですが、それについてはこれからの検討課題の辺りのところに頭出しをしていただければと思います。

【佐藤会長】 今の点ですが、最初に「位置付けについて検討し」と四角の中で修文しています。

【山本委員】 四角の中でなくてもいいですから、そういう要望があって、これについては「検討する」という感じの頭出しをしておいていただければ大変ありがたいんです。結論はこれで結構です。

【竹下会長代理】 これを議論しましたときに、山本委員が指摘しておられる問題は、弁護士法72条の方の問題なのではないか。つまり、法曹資格を認めるという問題ではなくて、親会社の法務部が子会社の法律事務を処理することが弁護士法上許されるという問題ですね。

【山本委員】 そうです。典型的な非弁活動とは違うんじゃないですかということです。

【竹下会長代理】 そうですね。では、それはどこかにそういう趣旨のことを書いておくことにしましょう。

【中坊委員】 私、別に弁護士だから言うわけじゃないんですけれども、簡裁における司法書士の代理権問題については、今まで審議した結果は、大きな枠内で書かれているように、「付与すべきである」というところまで実は決まっておったんだろうかという気がするんです。確かに信頼性の担保措置を講じて検討すべきだということにはなっていたけれども。

【北村委員】 これは私が隣接法律専門職種について報告をして、議論したので覚えているんですが、これは代理権付与が決まっていました。決まっていなかったのは、括弧の中にある「調停・即決和解事件の代理の範囲」、ここが決まっていなくて、先ほど会長代理がおっしゃいましたように、簡易裁判所の事物管轄ということを基準として認めるということで、ここでよろしいんでしょうか。

【中坊委員】 私の手元にある、46回の審議会の議事概要の表現では、司法書士の簡裁代理権を付与することで大方の意見の一致を見たのではなしに、能力担保の措置とともに、「付与を前向きに検討する」ということで大方の認識の一致を見たというふうに表現されています。  それを今の文章によると、付与すべきであるということになっておるのは、この間の審議会で我々の一致したところとは違うのではないかと言われているんです。だから、ここは「付与すべきである」とあるが、「付与することで前向に検討する」にする。

【佐藤会長】 確認はしますけれども、最終的にはこの原案通りになったんだと、私は理解していますが。

【中坊委員】 そう言われたら、私の身内のことだからあれかもしれないけれども、私は「前向きに検討する。その前提として、試験とか研修など能力担保の措置を整備する」といふうに理解しております。

【佐藤会長】 勿論、いろいろな能力担保措置が必要であるということはあるんですけれども。

【中坊委員】 担保措置を措置を講じた上で。

【佐藤会長】 担保措置を講じた上で認める、付与する、ということで。

【中坊委員】 そういうふうに議事概要に書いてあるんで、それは議事録の方が間違っているわけでもないでしょうから、一遍よく検討してください。

【佐藤会長】 分かりました。念のために確認をしますけれども、この審議会での理解は、「付与すべきである」ということだったんじゃないかと思います。

【吉岡委員】 確かに、司法書士さんの中には、レベルがそこまでいっていない方もいらっしゃいます。そこのところは何とかしないと、利用者である国民としては迷惑を被るということもあります。そういう意味でかなり御年配の司法書士さんと、試験を受けて、相当難しいそうですけれども、それで司法書士になられた方とでは、かなりレベルが違っていると思います。それでそこの足りないところは何とかしていただかないと困るということは申し上げたと思いますが。基本的には合意を得たのではないかと思います。

【佐藤会長】 山本委員だったですかね。競争で、弁護士の方が優れているのであればそっちへ行くでしょうという趣旨の御発言もありましたね。

【山本委員】 弁護士についての措置があったので、それはおかしいじゃないですかと。

【藤田委員】 弁理士は共同代理でなければいけないとなっていますけれども、単独出廷可能かどうかというのはこれからの検討に任せるという趣旨ですか。それが問題になっていたような気がします。共同代理だけでいいか、それとも共同出廷でなければいけないかというのが問題になっておりまして、裁判所の現場では共同出廷を望んでいるんですけれども。

【竹下会長代理】 私の記憶でも、共同出廷まで要求していたかどうかと確認した覚えがあるのですが、議事録上は「共同出廷」となっていたように記憶しています。

【藤田委員】 共同出廷でなくてもいいというところまでいっているのかは、これからの検討ということですか。

【竹下会長代理】 そこまではいっていないようです。

【藤田委員】 分かりました。

【北村委員】 でも、議論の過程の中では、共同出廷でなくてもいいんじゃないかというようなことは出てきたんです。

【竹下会長代理】 最終的に、まとめは共同出廷だったと思うのですが、もう一度確認します。

【佐藤会長】 では、それも念のため確認しておきます。

【中坊委員】 私のやつも頼みますよ。

【佐藤会長】 はい。多分違うと思いますが、確認します。

【髙木委員】 土地家屋調査士というのは議論したことありましたか。いきなり出てきたような感じがしますが。

【北村委員】 私がお答えしますが、議論はしていないと思うんです。何か最後の方でぽこっと出てきたんです。髙木委員と意見は同じです。

【髙木委員】 書き込むことについて特段の異論があるということではないんですが、記憶が全然ないなということです。

【北村委員】 最後の方で出てきたという記憶はあるんです。

【佐藤会長】 最後の方で出てきたんです。最初からはなかったんです。

【髙木委員】 他の五士業会はみんなヒアリングをしたんですが。

【事務局長】 ADRの代理のまとめの文書の中にこれが出てきておりますので、議論はされていると思います。

【竹下会長代理】 自分で担当しておいて申し訳ございません。忘れておりました。ADRの勉強会の方では、かなり議論をしまして、これに基づいて私が審議会の場で報告させていただいたという経緯です。

【髙木委員】 代理の御判断では、行政書士、社会保険労務士と同列の位置付けで、現状では、ということ、だからこう書いてあるということですね。

【竹下会長代理】 そういうことです。

【髙木委員】 分かりました。

【佐藤会長】 ここは以上でよろしゅうございますか。

【中坊委員】 事務局作成の第46回審議会の議事概要では、「司法書士への簡裁での訴訟代理権の付与を前向きに検討し、その前提として、試験・研修など、信頼性の高い能力担保措置を検討。なお、簡裁事件の具体的範囲等については検討の余地あり。」と書いてあります。余り予断を抱かれていると困るので、よく確認しておいてください。

【水原委員】 72ページの企業法務等の位置付けのところですけれども、囲みの中の上の(マル)、ここで2行目に「民間等における一定の実務経験を経た者に対して」云々とありますが、これは「民間の企業法務や国会議員等として、一定の職務経験を経た者」という表現にしてはいかがであろうかと思います。
 と申しますのは、司法試験に合格して、司法修習をせずに国会議員になられた方々が、議員立法などに関与して、企業法務関係者にまさるとも劣らぬ貴重な経験をなさっていらっしゃるんで、これをはっきりと文書の中に入れたらどうだろうかなというのが私の考え方でございます。

【吉岡委員】 質問になるかもしれませんけれど、確かに国会議員で立法に関わっていらっしゃる方はたくさんいらっしゃいます。
そこのところは分かるのですが、実際の事件を担当するとか、実際に法律の具体的な、中坊さんがよくおっしゃる現場の経験があるかというと、そこのところは違うかなという気がします。

【水原委員】 実は大学の法学部の教授であれば、実務の経験がなくても、審査の結果法曹資格が与えられることになっておりますので、それとの関係で考えてみますと、実務経験がなくても、そういう試験に合格しておって、なおかつ立法等に関与していらっしゃる方ならば、法曹資格を与えてもいいんじゃなかろうか。

【吉岡委員】 私はその逆で、弁護士が国会議員になるのはいいと思います。国会議員は選挙ですから、参議院は6年ですけれども、衆議院であればいつ解散になるかも分からない。そういう場合で、短期間、国会議員をやったからと言ってできるかというと、私はちょっと違うような気がします。

【井上委員】 大学の教員は実務経験が足りなくてもなれて申し訳ないと思いますが、今の議論はどこかでしましたか。こういう議論をやり出しますと、実質的にまた審議の再開ということになりますので、御趣旨はよく分かるんですが、これまで議論がなかったとすれば、「等」ということでまとめておくのがよろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】 では、以上で弁護士の方は終わりにしたいと思います。
 よろしければ、73ページの検察官制度の改革の方に移らせていただきたいと思いますが。ここについては特段なかったような気もします。よろしゅうございますか。

【鳥居委員】 先ほどの人数を増やすという問題。

【佐藤会長】 そうしたら、76ページの「裁判官制度の改革」の方に移らせていただきたいと思います。
 ここのところもいろいろな御意見が寄せられているところでありますが、まず、76ページから77ページに掛けてのところについてお願いします。

【竹下会長代理】 ここは「法律専門家としての多様な経験を積ませる」というところについて、「法律専門家として」ということに限定をすることに反対であるとしてその文言を削除すべきだとの意見、逆に、裁判官の身分を離れてということを枠内に入れるべきだという意見がたくさん寄せられました。

【藤田委員】 たくさん意見を出しておりますけれども、皆さんがお考えになっている以上に全国の裁判官、特に判事補は非常に深刻にこの問題を受け止めておりまして、判事も判事補を通過してきている人がほとんどありますから、判事補制度というのは共通の問題であります。他の委員の方々の御意見を拝見いたしましても、判事補の多様な経験を必要とするということは結構なことであると、それはそうなんですけれども、弁護士、検事の他に、行政官とか民間企業とか、あるいは留学という御意見もありましたけれども、そういうようなものも記載していただきたい。
 そういうことになると、必ずしも法律専門家とか法律専門職という類型に入らないものも出てきますから、そういう表現を削った方が実態に合うのではないかというようなことを申し上げました。この点については、他の委員の方々の中にも支持していただいた方々がおられました。
 後は、特例判事補制度ですが、判事になるためには10年間の法律専門家としての経験を要求している。これは現在の裁判所法の趣旨はそうでありますけれども、何度か申し上げましたように、キャリア・シテスムを取っている国でこういうような制度がないということです。特例判事補制度解消の方向で検討するということは結構なんでありますけれども、一方において判事補の経験が10年でなければだめなのか。私の考えでは、特例判事補制度が行われて何十年も経っているわけでありますが、現在の各地、特に離島、僻地で司法を担っている特例判事補の実態を考えますと、少なくとも7年ないし8年の判事補経験があれば、その適格性がある者を判事に任命していくということもいいのではないか。そういう意味でいろいろなところで立法論も考えているわけでありますから、判事補から判事の任命資格を再考する余地はあるのではなかろうか。
 それと、他職経験は確かに有益でありますし、私自身も行政官を経験して大変勉強になったということを申し上げましたけれども、この点については、あくまで憲法上の問題があるということで、法的な判事への任命資格という形にはしないということが大方の意見であったように思います。したがって、その意味で判事補から判事への任命という表現では、誤解を招かないかということをるる意見書で申し上げておりますので、御勘考いただければ幸いでございます。

【北村委員】 この裁判官制度の改革のところは、5月8日の日に最終報告のまとめを前提にしてとかということで、ここで詰めたと思うんです。結局、あれは詰められたのか、詰められなかったのか、非常に意見が分かれてしまいまして、曖昧な形にはなっているんですが、一応あれはまとめを前提としてということなんですから、このまとめの部分というのは、5月8日で一応確認されたことというのを前提にして、まとめていただきたいなというふうに思うんです。
 そこで初め私は意見を書いておかなかったんですけれども、今日5月22日の日付で、もしそこのとこをずっと直していくんだったらどのような形になるかという文書を提出させていただいて、これは5月8日の日のそれを前提にしているつもりなんですけれども、やはり自分の意見と他の人の意見とが違っているときに、どうだったのかというので、ひょっとしたらそういうようなことではなかったんではないかという御意見があるかと思いますが、山本委員が出されているようなこととそんなに本質的に違いはないんじゃないかというふうに思っております。
 せっかく、あそこで時間を取ってやったんですから、そういうような形でのまとめにしていただきたいなと思っています。

【竹下会長代理】 具体的には、いわゆる他職経験の中に行政庁とか企業とか、外国留学も含めるべきであるということですか。

【山本委員】 身分を離れるかどうかという議論もありましたね。他職経験というのが、法律専門家という意味が強くなるとこういうトーンなんでしょうけれども、もっと一般的に、刑事裁判の中にも社会的な常識を入れようというわけですから、何も法曹の世界だけに余り固執する必要はないんじゃないかと考えているんです。

【中坊委員】 そういう御意見もあったのは事実でしょうし、しかし、弁護士とか検察官とか当事者としてこれに参加するという経験が中心である、基本であるということまでは一応合意されていたと思うんです。
 それ以外に、それと同視すべきものがあるんだろうかということになって、今おっしゃったような他の留学とかいろんな話が出てきて、そこは議論が詰まらなかったので、その例外として、それに相当するようなものがあるかどうかについては、まさにこの文書に書いてあるように、具体的内容については更に検討する必要があるということで、会長がおまとめになって、それがそのとおりこの文章になっているんだから、私はこの文章で、当日のおまとめのとおり書かれておると私は理解します。

【藤田委員】 他職経験を要求する理由として、裁かれる立場に立たなければだめだという中坊委員の御意見は分かりますけれども、そういう意味で他職経験を入れようというコンセンサスができたわけではないというふうに考えます。
 もし、その点に疑義があるんでしたら、もう一遍それぞれの委員の御意見を確かめていただければと思いますが、私は行政官の経験が有益であったと申し上げましたけれども、むしろ法曹三者以外の経験をする方が役に経つ。留学は非常に有益だという山本委員や石井委員の御意見もありましたけれども、むしろ法曹を外から見るという意味で裁判官の幅を広げるのに役に立つのではないか。そういう前提で他職経験を考えておりますので、その点は中坊委員のような前提がコンセンサスであったとは認識していないわけであります。

【髙木委員】 これは5月8日にやりましたね。最後、会長がそういうまとめを踏まえて、この原案ができていると思うんです。私もいろいろお願いしたもの、私のお願いした通り書いてくださらないところがいっぱいありますから、そのことについて一々申し上げませんが、できるだけ質の高い裁判官を獲得していきましょう、そういう中で経験の多様化を図りましょう、経験の多様化というときに、単にお客さんでなく、実質的に経験の多様化と言えるもの、それも法律専門家として有益な経験をしていただいたらいいじゃないですかと、その辺までがコンセンサスだったと思うんです
 確かに石井さんからも留学の話が出て、留学も全部が全部駄目だということではないという話もありました。

【佐藤会長】 中身次第だと申し上げた記憶があります。

【髙木委員】 企業経験も、前に裁判所で作っていただいた資料の中の例などでは、ここで言う経験の多様化に当たらないような例が今まではありましたね。例えば1週間行かれるとか、1か月行かれるとか、そういう次元のものじゃなくて、本当の意味で企業やお役所に行かれるのも、実質的に、例えば弁護士事務所に行って、ある期間やられるのと、ほぼ等値できるような経験を、という議論には大方の委員は御異論なかったと思うんです。そういう意味でこのの書き振りは、「原則として」と、原則論はこういうことですという書き方になっているわけです。経験の多様化というのを制度的にもちゃんと担保しましょう、絵にかいた餅にしないようにしましょうということも合意をしてきたわけですから、先ほど来、直せだの直さないだのいろいろやってまいりましたけれども、では、こういうことで直しなさいと言ったら、また、そこできゃんきゃんやらなきゃいかなくなる。
 先ほど北村さんも、5月8日の日に、まだこんな議論をしなきゃいけないのと言われましたね。私は今日は5月8日の北村さんの気分でこの議論に臨んでいまして、そういう意味では次の特例判事補の問題についても、段階的になくしていきましょうというのは合意だったと思います。藤田先生、7、8年たったらそういうのはあってもいいんじゃないかというのもおっしゃられましたけれども、そもそもの臨司のときの議論も含めまして、特例判事補問題については、これも弁護士任官との関係があったりとかいろんなことがあるし、だから、「段階的に」と言葉が入っているわけで、解消という、それがいつごろまでにできるかというのは、今、最高裁と日弁連とお話しになっておられる弁護士任官の状況だとか、先ほど2010年だかで議論になりましたことの延長線上の話とか、いろんなことが関わっているんでしょうけれども、これももう一度今のような御議論だということになったら、そもそも論に関わってしまう話じゃないかと思います。私はそんな感じで今の御意見を聞いておりました。

【吉岡委員】 おっしゃることはよく分かりますが、特例判事補はもともとが暫定的に作ったもので、それが何十年も続いてしまっているという、そういうのが現状です。ですから、段階的に解消すると言っている以上は、それがまた何十年も続くということがないようにお考えいただきたいというのが一つです。
 それから、違うことですけれども、同じ77ページの1行目のところで「実のある経験を積むにふさわしい相当程度長期の期間」という表現があります。ただ、この「相当程度長期の期間」については、私の記憶では、数か月や1年では足りないという意見があったと思います。その辺が、やはり「相当程度長期の」と言ったときには、かなりの期間が必要だと思いますし、それから他の今までの議論の中では数値をはっきりと出すという議論が多かったと思うのですが、そういう意味では私は3年くらいが適当と考えます。「相当程度長期」の解釈の仕方がかなり幅があるのではないかと思いまして、これでいいのかということを申し上げます。

【井上委員】 私もさっきのところは、修正意見を出したんですが、他の方とおそらく趣旨がやや違っていて、その理由を自分のペーパーに書いておりますけれども、要するに、他職経験というのは、主としては、弁護士を始めとする法律職であろう。しかし、それ以外にも、いろんな経験があっていいのじゃないか。おそらく、それが、我々の合意したところじゃないかなと思うのです。
 その場合に、まとめの文章の「法律専門家としての経験」という表現が、法律職だというふうに読めるものですから、そうなると、ちょっと決め付け過ぎるのではないか。「原則として」という語句がどこにかかるのかにもよりますが、私などは「原則としてすべての」と、そっちの方にかかると読んだものですから。後ろの方にかかれば、ちょっと違うのかもしれませんけれども。

【佐藤会長】 法律職というが、例えば行政にいったときは。

【井上委員】 企業で言っても企業法務とかに限定されてしまうので、むしろ他の営業とかをやってもいいじゃないかと思うのです。主としてはいいんですけれども、それ以外にもあっていいんじゃないかということです。
 ですから、髙木委員が言われたように、法律専門家としてふさわしいと言いますか、そういう意味だとすれば、目的なんです。あるいは判事補という立場でということなら別なのですけれども、経験すべき職の方、あるいは経験の内容を限定しているようにも読める。そうだとするとちょっと趣旨とずれてくるので、そこの表現振りを工夫すべきだろう。対案はないのですけれども、そういう趣旨で意見を出したつもりなのです。

【水原委員】 井上委員のお出しになったこの意見書、私も趣旨としては同意見でございます。やはりなぜ他職経験を積んでもらわなければいけないのかというところから入るべきだと思います。
 そうしますと、これは74ページの最初の・のところ、「検事に、一定期間、その身分を離れ、一般の国民の意識・感覚を学ぶことができる場所(例えば弁護士事務所等)で執務させることを含む人事・教育制度」ということが書いてある。「他職経験」というのは、一般の国民の意識・感覚を学ばせるということが大事だと思うんで、そういう趣旨が生かされるような記述があるといいのかなという気がいたします。

【佐藤会長】 ここも、さっきの裁判員制度のところとやや似たような問題がございまして、皆さんそれぞれのお考えがあるところを大方の意見ということで、2月27日に、一応口頭でまとめましたけれども、その後その意味などについてなお御意見があり、もともとそのときは後に文書にして正式にお掛けしたいと言っておったものですから、そうしたこととも関連して、5月8日に再度この問題について御議論願ったわけであります。文書としてお示しできなかったんですけれども、その趣旨を確認する議論をしていただきました。人によっては、何回も同じことを蒸し返すような議論をしたんじゃないかという御不満もおありだったろうと推測しますけれども、そこでも最終的に、口頭でしたけれどけも、私が申し上げたことは、結局、2月27日の線を再確認したと言いますか、その意味をよりはっきりさせることができたというものでございまして、それを受けて、この原案を作成させていただいたわけであります。
 藤田委員もおっしゃった立法論としての7年、8年の問題も確かにあるし、それから、髙木委員もおっしゃったと思うんですけれども、特例判事補を今直ちにやめるということはできないとしても、段階的に解消に向けて着実にやっていくべきという議論もあったりして、こういうまとめ方になったので、今日のところは。

【藤田委員】 会長、会長代理の御苦心はよく分かるんでありますが、これは裁判官にとっては大変な問題でございまして、現在、司法制度を支えている裁判官の士気にも関わることてございます。5月8日に議論をいたしまして、そして、いろいろ御苦心の結果、これを作っていただいたわけでありますが、それに対して最終的に皆さんの意見として、意見書が出ているわけでございますから、それを御勘案いただいて、これが動かし難いものであるということではなくて、少し柔軟にお考えいただければと思います。

【竹下会長代理】 私も原則的に皆さんの支持を得られれば一番よろしいと思うのですが、ここはかなり多くの方から御意見が出ているので、妥協案ですけれども、この枠の中は「職務以外の多様な経験」ということにして、「法律専門家としての」というのを消す。しかしそうは言っても、本文の方では、判事補が裁判官の身分を離れて弁護士や検察官その他の法律専門職としての経験を積むのが基本なのですよとの趣旨を明らかにするため、こちらはこのままにしておくというのはどうでしょう。

【中坊委員】 それはちょっと違って、括弧の中に意味があるんだから、ちょっとおかしいんじゃないですか。

【佐藤会長】 さっき、井上委員がおっしゃったことと関連して、井上委員の御懸念のように受け取られるとなんですので、そこはいいワーディングがあるかどうか、もうちょっと検討させていただくことにしましょう。

【井上委員】 そこはそういう限定するという意味ではないんですよということが分かるようになればいいと思います。

【髙木委員】 井上さんがおっしゃったのが、本質論として大きく外れてなければ。今まで議論してきた筋をね。
 ただ、今の井上さんの議論を聞いておって、では、社会経験を積んでから司法試験を受けて、通った人はOKありみたいなね。

【井上委員】 そうじゃなくて、これは。

【髙木委員】 あなたの議論を聞いていると、営業でも何でもいいということも言われたから、判事補から判事になる道程でどういう経験を、ということをやっぱり明確に言わないといけないと思います。判事補になるのに、必要な経験を明確にした上で、それ以外の経験も、というならば、その期間を通算しなくていいということならいいですよ、それであれば何されてもいいわけだ。

【井上委員】 でも、そういう別の意見もあったわけでしょう。

【髙木委員】 そういう議論になるから、きちんと本質論を担保したことでないといけないと申し上げているのです。藤田さんが裁判所の中の判事補の皆さんの気持ちなど、いろんなことを御心配されているだろうということは分からんでもないんですが、経験の多様化は裁判所の皆さんのためにもなるんじゃないか、それを逆に何でそんな心配されるのか。だれも知らんことをやるときは、心配ではないというわけではないけれども、現状を変えていこうとして現にいろいろ指摘されているわけだから、それはしんどくても受けてチャレンジしていかないといけないだろうと思うんです。

【藤田委員】 他職経験を積むことに反対しているわけじゃないんで、弁護士、検察官以外に、行政官とか民間企業を入れるべきではないかという御意見が多数出ているわけです。
 裁判官としての身分を離れてという点も、行き先によって違うということがある。先ほど井上委員がおっしゃったように、この本文の中の「原則として」はすべてに関わっているとしか読めないんです。だから、「原則として法律専門家としての多様な経験」というならまだ分かるんですが、後ろの方の「法律専門家としての多様な経験」というのは限定が付いていない。そうすると、弁護士、あるいは検察官という経験でなければいけないということになる。制度的に担保するということが入っているわけですから、これは資格についての法律の規定に入れるわけではないでしょうけれども、これは非常に重いことですね。
 ですから、そういう意味で限定の仕方にも神経を使っていただきたいということであって、他職経験、多様な経験を積むということが裁判官として成長していくためにプラスになるということを否定するつもりでは毛頭ないんです。

【井上委員】 まとめにならないかもしれないですが、法律専門家として有益な経験でないといけないと思うんです。そして、その有益な経験というのは具体的に何かというと、それは主としては弁護士さんを中心とした法律専門職種である。そこまでは合意していると思うんです。しかし、それ以外にもいろんな経験がありうるかもしれない。あってもいいじゃないか。その点も、皆さん、そんなに否定はしていないと思うのです。それを「法律専門家としての経験」と書くとちょっと誤解を生むかもしれない。そこのところ、もしより良いワーディングがあれば修正すべきだし、修正しなくても、そういう趣旨だということが確認できればいいんじゃないかと思うのです。

【佐藤会長】 この76ページの表現も、2月27日と5月8日の審議を踏まえて、こういう文章にしたわけです。そして、個別に、この場合どうだ、あの場合どうだと言われると、それは決め打ちできない。私自身は具体的に考えていることはありますよ、この場合だっていいじゃないかと思うことがあります。けれども、私が申し上げると、いや、それは違うじゃないかという話になってしまうので、具体的には申しませんけれども、心はまさに。

【井上委員】 その心を表現していただきたいということです。

【藤田委員】 その心が誤解のないように伝わるように是非お考えいただきたい。

【佐藤会長】 ワーディングなどを考えさせてください。

【中坊委員】 あえて言うならば、私は別にこだわりませんけれども、ここで他職経験がなぜ必要なのかという一つのメルクマールみたいなもの、裁判の中核としてふさわしい高い質の判事を得るために、ということがはっきり書かれておれば、もう少し指標になって、どこまで広がるのかという場合についても、議論の焦点を帯びたのがあるかもしれない。
 今、藤田さんやみんながいろいろ意見があって、これも一つの苦労の作だろうと思いますけれども、もう一遍お考えいただくのは構いません。

【佐藤会長】 心は分かっていただけたと思います。もう一遍工夫して、いい表現があるかどうか自信はありませんけれども、知恵を絞ってみたいと思います。

【髙木委員】 是非今までの論議の趣旨はちゃんと通してください。

【佐藤会長】 それはおっしゃるとおりです。

【鳥居委員】 大変申し訳ないんですか、私、4時半を大分過ぎたので、法科大学院のところに入ると思うんですが、一言だけ。  私、この法科大学院に関する記述は何も申し上げることはないと思います。一点だけ、かねてから私も申し上げてきて、北村先生もおっしゃっている問題なんですが、89ページ四角の、教育内容、「法科大学院では法理論教育を中心とした実務教育の」云々と書いてありますね。これが柱なんです。ただし、この法科大学院で必ずしも全員が司法試験に合格するわけではないし、学校経営上の問題から言っても、隣接業種とか、広い意味のリーガル・サービスの教科内容を教科目とするコースを併設することができるということをどこかに書いておいてくだされば、学校のデザインがしやすいので。
 また、司法試験に落ちた連中の行く先を考えないといけないんで、そこらでちょっと御検討を皆さんでいただければありがたいと思います。

【佐藤会長】 むしろ承っておきたいと思うんですが。

【鳥居委員】 それはここで書かないで、例えば推進体制の方に任せるということであれば、それはそれで文部科学省と話し合っていただければ結構です。

【井上委員】 その点について一言だけ申し上げますと、ここで我々が言っているのは、最低限必要な、これだけは備えてもらわなければということでありまして、隣接業種を育てるための機能を併有するといったことも、個々のロースクールの判断でできることだと思うのです。しかし、隣接の方だけあればロースクールかといいますと、それは違うと思うのです。やはり、最低限必要なことだけはここで決めておくということだと思うわけです。

【鳥居委員】 よろしくお願いします。

【佐藤会長】 それでは、他の点についてですが。

【井上委員】 78ページの(3)の「裁判官調査官制度の拡充」については、意見を申し上げているんですが、北村先生も同じような御意見でして、これまで我々、その点について十分議論したのだろうか。それと、内容的にも、個々の裁判官に調査官が付くというのは、アメリカのロークラークがそうなんですけれども、日本の裁判官の場合、アメリカの裁判官とは事情が違うので、そういう形に決め打ちするような書き方をしない方がいい。もう少し緩やかな表現にして、これから拡充を検討しましょうというくらいにしておいた方が、多様な選択肢が考えられるのではないか。そういう趣旨で、修文の意見を出したのです。

【佐藤会長】 そういう井上委員の御意見の趣旨で、書いてもいいかなと思っておりますけれども。余り議論しなかったことは確かなんです。

【竹下会長代理】 原案提出者として申し訳ないのですけれども、ここの記述は、ここで議論していた内容に比べて少し詳しすぎるということと、より基本的問題は、一体何を目的として拡充しようとしているのかがはっきりしないということです。臨司のときには、裁判官の補助機構という位置付けであったし、前に私が言いましたのは、判事補の他職経験の一つとしてということだったのですが、この原稿を見ると、弁護士の他職経験の受け皿のようなことも書いてあるというように、何のために裁判所調査官制度を拡充しようというのかがはっきりしない。
 それから、「一部の専門事件に関し」というけれども、それは地裁に裁判所調査官を置く場合には、工業所有権関係と租税関係にしか置けないというのは、元々法律で書いてあることですから、制度を問題にしているのか、それとも運用を問題にしているのかという辺りもちょっとはっきりしない。結論的に言いますと、もっと分量を圧縮して、井上委員が言われたようにコンパクトな形で書いておくということでよろしいのではないかと思います。

【佐藤会長】 確かにどの場合、この場合と議論していないことは確かなんですけれども、例えば大学の教官だって私はありうると思うんです。

【竹下会長代理】 それは何のためにですか。

【佐藤会長】 例えば学者になるときに、実際の裁判について勉強することが意味のあることだと。

【竹下会長代理】 学者にとっては意味があるけれども、司法制度として何を目的に拡充するのかが分からないですね。

【佐藤会長】 この目的のためだと明確にしていないことは確かです。むしろ使い方としていろいろ可能性があるんじゃないですか、幅のある可能性も考えていいんじゃないですかという趣旨です。
 ですから、ここは井上委員の言われる可能性をいろいろはらんでいる。制度自体はいろんな使い方があり、何もこれでなければいけないということではないわけで、その可能性を残しておきましょうと。

【井上委員】 もっとあっさりした表現にしておいていたたければいいと思います。その方が、可能性が広がるんじゃないかという感じがするのです。

【山本委員】 77ページ一番下の「また」以下の文章なんですけれど、ここまで言う必要があるのでしょうか。そもそもが「弁護士任官の推進等」という見出しの中で書いてあることなのに、ここに書いてあるように、「にとどまらず」と、まさしく違うことが書いてあるわけです。しかも、弁護士事務所への研修というのは、裁判官のキャリア・パスの一つですね。ですから、ここにわざわざこういう文章を書く必要があるのか、かなり疑問があります。

【佐藤会長】 日弁連と最高裁の設置要綱か何かのところでこのような趣旨のものが出ていなかったですか。

【竹下会長代理】 要するに2つの異なる問題があるのです。7項の「(2)弁護士任官の推進等」の前段に書かれているのが、本来の弁護士任官の問題で、今、山本委員が指摘された後段に書かれている問題は、さっきの他職経験の問題なのです。ですから、本来の弁護士任官の問題ではないのですけれども、この間の最高裁と日弁連との協議の対象としては、この両方が対象にされているのです。
 しかし、それは別の問題だということははっきりさせておかなければいけないと思います。

【藤田委員】 他職経験の場合、最初から裁判官に復帰することを前提で出すわけですからね。だから、何も円満にするために協議するという必要はないんです。今までも渉外事務所に出した例があるんですけれども、それも当然1年か2年で復帰するという前提で出しているわけです。
 別のところでもいいでしょうか。

【佐藤会長】 はい。

【藤田委員】 「裁判官の任命手続の見直し」のところで、「人事情報の収集、提供等を行う下部組織を地域ブロックごとに設置することを始めとして」とありますが、ここまで煮詰まっていなかったのではないか。というのは、高裁単位で組織を作っても、情報を集めるという点では意味がないということを申し上げましたが、例えば10年間の経験についての資料を求めるとすれば、幾つかの高裁にまたがるということもありうるわけです。したがって、情報収集をできるような適切な仕組みを設けるということであったのではないか。
 ですから、ブロックに組織を設けるかどうかということまでは煮詰まってなかったのではないかということが一つであります。
 もう一つは、80ページで裁判官の人事評価は、裁判官会議の議により決するとされていますが、こういうことはない。

【佐藤会長】 「の議」というのは削って、「会議により」としたんですが。

【藤田委員】 会議の議題にはなりません。

【竹下会長代理】 しかし、司法行政権の一環であることは間違いないのではないですかね。

【藤田委員】 そうですけれども、会議の議題に掛けて人事評価をするということはありません。異動などは掛かるでしょうけれども、人事評価それ自体をこれでよろしいでしょうか、という形でかかることはない。

【竹下会長代理】 最高裁内部のことは分かりませんけれども、理論上は司法行政権のかなり重要な内容の一つだと思うのです。そうすると、司法行政権は最終的には裁判官会議に帰属しているから、裁判官会議の権限だというしかないのではないですか。

【藤田委員】 ただ、人事評価を裁判官会議で決定するわけじゃないですからね。人事についての参考資料でしょう。

【竹下会長代理】 そうすると、どういうふうに表現したら良いのでしょうか。

【藤田委員】 司法行政事務の一環になるかもしれないが、裁判官会議に掛かるというのがちょっと違和感がある。

【竹下会長代理】 もし、何か問題になれば、最終的な決定権者は最高裁の裁判官会議ではないのでしょうかね。

【藤田委員】 こういう評価でよろしいですかという形でですか。

【竹下会長代理】 はい。

【藤田委員】 それはありません。

【中坊委員】 今までもここに意見書を出すときも、最高裁裁判官会議で決めましたと言われていましたね。これは大変言いにくいことですが、事務総局がなさっているのかもしれませんが、制度的にというか、法的には裁判官会議で決めて、いろんな司法行政に関する一般をなさっているというべき筋合いのものじゃないですかね。現実はおっしゃるように、いちいちどう掛けていますかと言われたら、私でもなったことないから分からないけれどもね。

【竹下会長代理】 全く表現の問題ですので、どう表したら良いのですか。

【藤田委員】 所長が部総括の意見を聴き、それに所長、高裁長官の意見を入れたりするわけで、それを人事についての一つの参考資料として使っているわけですから。

【竹下会長代理】 最終的にだれが決めるのですか。

【藤田委員】 決めるということではないんです。例えば所長がある評価をしたとしても、それで決定するというわけではないし、所長はそういう評価をしたことによって評価されるわけです。表現だけですから、一つ検討してください。

【佐藤会長】 分かりました。
 そうしたら、「ブロック単位」について。

【藤田委員】 私はそういうブロックに組織を作っても意味がないと申し上げました。前にまとめたときには適切な仕組みということになっていたと思うんですが、その方がより適切ではないかということでございます。

【竹下会長代理】 「設けることを始めとして」というと、何かこれだけは決まっているように見えるから、「設けることなど適切な仕組みを整備すべきである」というのはどうでしょうか。

【佐藤会長】 「設けることなど」ね。そうしましょう。

【吉岡委員】 確認ですけれども、79ページの囲みの中で、国民の意思を反映させるために、最高裁判所に指名委員会のようなものを作る、となっていて、実質的には諮問を受けなければできないと思いますけれども、ここでは前から議論に出ている推薦委員会のような組織を作ると考えてよろしいですか。

【佐藤会長】 実質的にそこで議論して、指名されるにふさわしい方じゃないでしょうかということをそこで決めるということです。

【吉岡委員】 そういう委員会のようなものを作るということですね。

【佐藤会長】 はい。
 では、今のところはよろしゅうございますか。先ほどの80ページはちょっと確認します。

【竹下会長代理】 何か良い表現を考えますから。

【佐藤会長】 82ページの最高裁判所のところもいろいろ御意見をいただいていますけれども、内閣にこちらからお願いするという立場で、こうやるべき、ああやるべきだと具体的に書き込むのはいかがかということで、こんな書き方になっていまして、その辺御了解いただきたいと思います。
 83ページの「法曹等の相互交流の在り方」のところはどうでしょうか。

【竹下会長代理】 そう御意見がなかったように思うのですが。

【北村委員】 意見書にも書いたんですが、これはなぜここでわざわざこういうふうに言うのかなという感じがして、私はもうちょっと初めの方、ここの部分の総論ですけれども、57ページくらいのところに移した方がいいんじゃないかなと思います。

【竹下会長代理】 法曹人口の前ですね。

【北村委員】 そうです。でないと、これは随分ダブっていると思います。

【佐藤会長】 考えてみます。

【北村委員】 もう一つあるんですけれども、77ページなんですが、上の・の3つ目なんですけれども、「裁判官の身分を離れた判事補が、上記の経験を積んだ後に、裁判官に復帰した場合には、退職手当や共済関係等の面で適切な配慮がなされることが望ましい」というところ、これは言う必要はないんじゃないかなと思うんです。
 というのは、裁判官の身分を離れた者について、どのような形で取り扱うかということは、いろいろと難しい部分があるかと思うんてす。その方で考えていくべきであって、退職手当をどうするとか、共済関係というのは保険だとか何かでしょうか。それとも年金のことですか。

【竹下会長代理】 年金などです。

【北村委員】 保険の方は身分を離れた先でやるということでしょうか。

【井上委員】 これは、復帰した後の話でしょう。

【北村委員】 保険だったら、復帰してからやったって遅いのであって。

【佐藤会長】 切れたり何かしないように配慮が必要だと。代理が強調しておられたことですけれども、そういうことです。

【北村委員】 そういうことなんでしょうけれども。

【井上委員】 外に行っている間の話ではなくて、戻った後、不利にならないように取り扱いましょうということでしょう。

【佐藤会長】 それは当然配慮しなければならないのではないかということではないでしょうか。

【北村委員】 一般的な感覚として、身分を離れて行って、それを考慮に入れるというのが何か。だから、身分を離れてという言葉がちょっと違うのかなというふうにも思うんです。何かなじまないというか、そういう気がするんです。

【吉岡委員】 鳥居委員が転籍とかいうことをおっしゃっていましたが、そんなことですか。

【藤田委員】 不利な処遇を受けないようしてあげなければということですからね。

【佐藤会長】 そういう趣旨として。

【北村委員】 それからその下の部分なんですけれども、(イ)のところで、「なお、以上と同様の視点から」というところ、意味不明と書いたんですが。

【髙木委員】 何ページのことを言っておられるんですか。

【北村委員】 77ページです。これは意味不明と書いたんですが、意味は、多分弁護士や検察官から任官する人も、例えば判事補や調査官として経験を経ていることが非常に有意義ですよということをおっしゃっているんだと思うんですが、これはこれでよろしいんですか。

【竹下会長代理】 これも前に私が申し上げた意見と関係があると思うのですけれども、判事補だけがいろいろな経験を積まなければ判事となる適格がなくて、弁護士や検察官は10年弁護士、検察官のままでも判事となるに相応しいというのは、おかしいということです。

【北村委員】 そうではなくて、お互い様ですよということですよね。私は別にそれでもいいんですけれども、ここでそういうふうな形にはっきりなったのかなというふうに思ったものですから。

【佐藤会長】 それはそうだったと思います。

【北村委員】 そうですか。

【佐藤会長】 それでは、法曹養成の方に移らせていただいてよろしゅうございますか。

【髙木委員】 80ページから81ページのところ、現在も最高裁の裁判官会議の議により決するということに。

【佐藤会長】 さっき議論したところで。

【髙木委員】 私はその意味がよく分からなかったんでお尋ねしようと思っていたんですが、現在そうなっていることを前提にして、その後に「第一次的な評価権者(例えば部総括裁判官など)」、この例えば部総括裁判官、どなたかが第一次的な評価権を持たなきゃいかんというのは、そのどなたかについてはいろんな意見があったんだろうと思うんです。だから、本当の意味で客観的にきちんとした評価が、独立を侵さないように行われるために、どういう評価の仕組みがいいのか。私ども内部の実務は知りませんから、結果的に御検討の上こうなるのかもしれませんが、少なくとも部総括裁判官以外の方が第一次的な評価をする仕組みについて違う意見をここで申し上げたことがあると思います。

【吉岡委員】 私はこの括弧の部分を取った方がいいと思います。

【藤田委員】 意見書で出しましたけれども、部に所属していない裁判官もいますので、例えば支部とか簡易裁判所判事とか、また家庭裁判所はすべての裁判所に部があるわけじゃありませんから。評価の仕組みということですね。

【佐藤会長】 「例えば…等」と言っているんですが。

【中坊委員】 括弧を取ればいい。

【佐藤会長】 取りますか。

【藤田委員】 全体的に評価の仕組みという形にしたらどうでしようか。

【中坊委員】 この字句で、最小限直すということで括弧だけ取りましょう。

【佐藤会長】 髙木委員、よろしいですか。

【髙木委員】 81ページの「裁判所運営の国民参加」ということなんですが、家裁の裁判所委員会が行われているということもお聞きしておりますが、いわゆる司法行政の在り方論という意味で、最高裁の裁判官会議と事務総局との関係だとか、それから、例の民間司法臨調からの提起や、もっといろんな分野からも、いわゆる法曹資格を持たない方も含めてという、最高裁機構論、あるいは裁判所全体の機構論と運営論、特に機構論と、司法行政論についてもいろいろ意見申し上げたことがあったと思うんですが、この辺はどうなったんでしょうか。

【竹下会長代理】 確かに髙木委員がお触れになったことはあると思うのですけれども、ここで正面から議論していただいて、意見としてまとまるというところまでいかなかったのではないでしょうか。

【髙木委員】 例えば事務総局の在り方と裁判所の司法行政の在り方について検討を行うべきであるくらいのことは入れていただいていいんじゃないかなと。

【佐藤会長】 それをやるとなると、それ自体取り上げて議論する必要があるんじゃないでしょうか。確かに髙木委員がかねて御指摘なさっていたところでもありますし、それは承知しております。そのことを言えば、「大法廷、小法廷の在り方」とか、最高裁の全体の仕組みについて、いろいろ議論すべきところがあると私は思っているんです。ただし、ここで従来その問題について直接議題として議論したことはありませんので、この段階でそれを書き入れるというのは、いささかしんどい話ではないかいうのが私の率直な見解です。

【中坊委員】 おっしゃるように、司法行政全体を事務総局が事実上独占するような格好の中で運営されておって、それ自体が大変な国民の批判を受けているということまでは、おおむね問題視されているところですから、検討することとしてはどうか。家庭裁判所の委員会だけじゃなしに、もっと基本的に司法行政の在り方そのものが検討する課題になっているという程度ならば、これはみんなが今までから言っていたんだからいいのではないか。具体的に余り微細に入り出すと、確かにいろんな御意見もあるでしょうし、今おっしゃるように、大法廷と小法廷の分かれ方とか、いろいろ問題が出てくるんですけれども、裁判運営の国民的参加という視点から司法行政在り方全体について、将来は検討していかないといけないという程度なら、別に今まで我々は言葉の前提として言うてきたと思うんです。
 だから、今、髙木さんがおっしゃるように、触れないというのもまた、そこはいいのかなということになってくるからその辺の問題はあるのかもしれません。

【佐藤会長】 事務総局と言っても、それがどういう性質の位置付けで、どうなっているのかということについて少し議論した上でないと。不用意にと言ったらお叱りを受けるかもしれませんけれども、ちょっと議論不足じゃないかという気はするんです。

【竹下会長代理】 最も肝心な任命の問題とか、人事評価の問題というのは、具体的な書いてあるわけですから、それでよろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】 我々の考え方を正面から受け止めていただくと、裁判所には、これは弁護士会にとってもそうですけれども、相当いろんなことをおやりいただかなければならないことになると思うんです。これの全体を正面から受け止めていただくとなればですね。だから、その辺の問題は、おのずから出てくるだろうと思うんです。

【中坊委員】 おっしゃるように、全体としてそういうふにお考えいただけるように、我々がそれを誘導するかというか、誘い水のようにこの審議会で一言言うておく方がいいんじゃないかという気がするんです。

【藤田委員】 司法行政とか事務総局の在り方について、そういうことをおっしゃるんだったら、その前提について言いたいこともあるし、それぞれの委員がどういうふうな認識かということにもなりましょう。そこのところはまだ議論が十分に尽くされていないんじゃないでしょうか。

【中坊委員】 私は司法行政の在り方について国民がより一層参加していくということが総合的に考えられるように検討されるべきだと思います。だから、具体的に言うと、今おっしゃるようにまだ検討はしていないということになるけれども、司法行政一般の運営にも国民が参加していくという形で基本的に必要だということは、我々としては、そういう視点は持っているんじゃないかということを言っているわけです。

【吉岡委員】 私も基本的には中坊委員がおっしゃった通りだと思います。いろんな事情があって後退しているのかと思いますけれども、少なくとも国民審査につきまして、バツだけということは非常に不公平だと思うんです。やはりバツとマルを付けるという、これは前にも意見を言いましたけれども、そういうことでないと、本当の意味での国民の参加にはなりえないと考えております。国民の司法参加であれば、その実が分かるような方法を考えるというのがこの審議会の立場ではないかと思っております。

【髙木委員】 事務総局のあり方について申し上げましたが、例えば司法行政の在り方について触れていただくとか、ともかく、それぞれがどこからどんな話を聞いているかによって受け止め方は違うんでしょうが、そういう意味で例えば個別事件のことを出してどうかと思いますが、例えばこの間の福岡のああいう事件の処理の仕方などについても、これは私個人がというよりも、マスコミ等含めて、いろんな意見も出ているわけです。そんなことも含めて、2年間、司法制度改革の議論をしてきて、その辺のことについてぎらぎらしたことを書いてくれということを申し上げるわけではなくて、いずれにしても、裁判所の立場でも、不断にそういう機構の見直しやらを当然やられるわけだと思いますので、問題の提起くらいはあってしかるべきじゃないかなと思うんです。あるいは御検討いただきたいくらいのことをお願いすることは、そう論理が違っているとは私は思わないんです。

【井上委員】 そういうことになると、司法行政の在り方の前提としての現状の評価がどうこうという議論にどうしてもなるわけです。さっき代理が言われたように、任命と人事について国民の声を入れる、その他、裁判所運営についても国民の声を反映させるということになっているわけですので、その趣旨というのは、かなり入っていると思うんです。
 それ以上に書くということになれば、その前提となる認識のずれといいますか、その点については突っ込んだ議論をしていないので、議論をせざるを得ないということになるんじゃないでしょうか。
 全体として、おっしゃっている趣旨は、かなり反映されているのではないかと思うものですから、この段階に至っては原案でいくというのがよろしいのではないかと思います。

【佐藤会長】 基本的にはさっき申し上げたことであり、井上委員もおっしゃったようなことなんですけれども、29日に出す文書で、何かいい表現があるかどうか、ちょっと考えさせてもらいます。確約はできませんけれども、少し考えて、いい案があればお諮りします。そういうことでここのところは御理解いただけませんでしょうか。
 あと法科大学院の問題がございます。先ほど鳥居委員がおっしゃったところは、さっきのようなことであります。
 それから、一番御意見を頂戴しているのは、特に受験資格のところかと思います。ここのところについてまず御議論いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。他の論点に入っていただいても結構ですけれども、まず、意見が集中しています司法試験の受験資格のところです。

【吉岡委員】 一定年限が経てば当然ロースクールへ皆さんいらっしゃるとは思うのですが、途中段階であっても、事情がある人のことを十分に配慮する必要があるという、それだけ申し上げます。

【水原委員】 この94ページの「3.司法試験」の枠囲みの中の上から5番目の(マル)のところです。この記述では誤解を招くだろうなという気がいたします。
 なぜかと言いますと、適格認定を受けた法科大学院の修了者の新司法試験受験については、3回程度の受験回数制限を課すべきであるという記述でございます。
 そうなりますと、この認定を受けた大学院の修了者でない者については、受験回数制限は全くないのかというふうに読み取れます。そうなりますと、今まで議論してきたところの趣旨と反することになろうと思います。
 なぜかと言いますと、みんな予備的試験ルートの方に行きます。受験回数制限がないわけですから、そちらの方に行って、法科大学院ルートを選ぶ者がいなくなるのではなかろうかという気がいたしますので、これは是非修文願いたい。
 その修文ですが、例えば、⑤の新司法試験の受験については、3回程度の受験回数制限を課すべきである、こうしますと全部引っ掛かってしまいます。ただし、一定の要件の下に、再度の受験を認めることも検討に値する。これはいろいろと議論してきたところです。
 さらに本文の96ページに、「ただし、回数制限内に合格できなかった者が法科大学院の課程を再履修することを妨げるものではない」とありますが、再履修しなかったならば受けられないのかとなりますと、これはちょっと厳し過ぎるだろうと。他のルート、予備的試験ルートがあるわけでございますから、先ほど提案いたしましたような回数制限でやっておけば、こういう記載は必要でなくなるのではなかろうかというのが私の考えでございます。

【井上委員】 その御意見は前にも伺いまして、私も意見を申し上げたんですけれども、別ルート、これは予備試験を経て新司法試験を受けるという方法にするかどうかは決めていない、例えばそういう案があるとしているだけで、決めていない。決めていないので、仮にそうするとした場合に、それについて何からの受験回数制限をするのかどうかということも議論していないわけです。それなのに水原委員の修文案でいきますと、制限するというふうに決定したというように受け取られちゃうわけです。むしろ、そこはオープンだというのが今の状態だと思うのです。そういう形のルートを設けるということ自体、まだ一案にすぎず、それを前提にした場合に、受験回数制限をどうするのかということもオープンだと思うわけです。
 確かに、水原委員がおっしゃるような逆の誤解もありうるものですから、その修文案ではなくて、例えば、その部分はこうしたらどうかと思うんです。正確な文章ではないので後で文章の方はお考え願いたいと思うのですが、適格認定を受けた法科大学院経由のルートでない、それ以外の人について予備試験を経て司法試験の受験を認めるということに仮にした場合に、その人たちに受験回数の制限を設けるべきか否か、その受験回数制限の内容をどうするかについては更に検討が必要である、という趣旨の文章を付け加えるということではどうでしょうか。
 もう一つ、一定期間後の復活の点なのですけれども、これは、ロースクールを経た者について、そこでの教育の成果が身に付いているかどうかということを新司法試験で確認する。それを3回もやってみて、身に付いていないと言わざるを得ないという人について、一定の年月が経ったら、そういうことが身に付いているというふうに言えることがあるのかと申しますと、論理的に見てそうは言えないと思うのです。
 ですから、そういう人たちについても、あとは別ルートしかないと思うんです。しかも、その人たちが当然別ルートを受けられるかと言いますと、そういうことでは別ルートの趣旨からするとおかしいわけで、別ルートの要件というのはそれ自体としてあるはずですから、あくまでそれを満たせばそちらに行けるということでしかない。ですから、復活するということではないのではないかということです。
 3番目の、「ただし」というところは、こうしなさいと言っているわけではなくて、再履修することは別に構いませんということにすぎません。実際にそういう問い合せがあるようなのです。それであえて書いているというだけで、もしそういうふうに誘導しているように誤解されるということでしたら、もう少し扱いを小さくするとか、あるいはどうしてもということならば削ってもいいのではないかと思います。ただし、実質としてそういうことは構いませんよという発信はしておかないと、混乱する人も出てくるのではないかということなのです。

【藤田委員】 質問ですが、予備試験をパスして、司法試験を受験する人にも、受験回数制限をするのは当然の前提だと思っていたんですが、そうではないんです。

【佐藤会長】 そこは議論はしていないと思うんですね。

【藤田委員】 そうだとすると、みんな予備試験に来ちゃうんじゃないでしょうか。

【竹下会長代理】 行きますね。

【井上委員】 その点、予備試験について受験回数制限ができるのかという問題が一つあります。その予備試験の位置付けなんですけれども、検定試験的なものだとしますと、それに受かった人はロースクール修了者と同じということになり、それに基づいて新司法試験は3回受験できる。しかし、入口の予備試験について、では制限できますかというと、できませんということになるかもしれない。そうすると、予備試験を1回通れば3回受けられ、それでだめだったら、また予備試験が受けられるということで、どんどん増えていくことになりかねない。したがってそこのところは、そういうルートを設けるときに、その問題をどうするのかということを全体として議論して決めないといけないと思うのです。
 ところが、今の段階では、まだどういう仕組みにするのかも決まっていず、それを前提にしての議論というのもまだ全然やっていないわけですね。

【藤田委員】 そう聞くと分かるんですけれども、ただ、これだけ読んでそこまで分かるかどうか。予備試験は回数制限なくて何遍でもいいんだと思われちゃうと、ちょっと、穴があいてしまうんじゃないでしょうか。

【井上委員】 ですから、先ほど申したように、なお書きででも、そこのところは今後、検討が必要であるということは明示しておいた方がいいと思いますね。

【佐藤会長】 では、それを入れることにしましょうか。

【水原委員】 私が申し上げたのは、予備試験ルートは、何回でも司法試験を受けられるのかという疑問を持たれると困るので、この文言だけですと、認定を受けた大学の修了者の新司法試験受験回数だけしか書いておりませんので、誤解のないように修文願えればということでございます。

【佐藤会長】 分かりました。そこはそうさせていただきます。
 95ページの受験資格がまさに今議論になったところですけれども、ここのところは、髙木委員とか中坊委員とか、いろいろ御意見をいただいているところですけれども、この書き方、表現でいいのかどうか。

【髙木委員】 ちょっと前に戻って恐縮なんですけれども、87ページに、設置形態のところ、「設置形態としては、法学部に基礎を持つ」という表現があります。法学部の教育と法科大学院というのが連動しておったり、自分のところの法学部卒業者がどんどん入ってしまうみたいな印象を与えかねません。その辺ちょっと言葉を工夫していただいたら良いと思います。

【佐藤会長】 大学院が学部に乗っかっているという構造が通常の形態なものですから、ここはむしろ他にいろいろありますよという趣旨なんですが。

【髙木委員】 先ほど鳥居先生が言われた隣接とか何とか、どういう大学院ができるのかというイメージの問題です。

【井上委員】 中身ではなくて、これは大学院制度の形なのですよ。

【佐藤会長】 趣旨は分かっておられるんですよ。

【髙木委員】 ただ、文章としては、カリキュラムはどうなるんだとか、いやらしく読まれるよということです。

【井上委員】 誤解を招かないような表現にするということですね。

【佐藤会長】 正確に言うと、これは大学院大学で、学部がぶらさがっているものと、乗っかっているものと両方ある。だから、厳密に言うと、言葉が。

【中坊委員】 私たちが受験資格のところで意見を出させていただいているのは、意見書に書いてあるとおりで、基本的には大学院を通って受験資格があるんだと、それ以外の場合は基本的には経済事情ややむを得ない場合に限るんだという趣旨がこの文章で読み取れるだろうかと、先ほど別ルートというのがありましたね、バイパス論が。そのパイパス論の位置付けが、これでは何かバイパス論を認知したみたいな格好になっているのかなという気がしたので、この書き方でいいでしょうかということを言っているという趣旨に御理解いただいたら結構だと思います。

【佐藤会長】 井上委員も含めて非常に苦労したところの表現振りなんですが。

【竹下会長代理】 95ページの下から2つ目のパラグラフですね。「いずれにしても」という、この5行を付け加えたんですね。

【中坊委員】 この前議論したところですね。

【竹下会長代理】 それで、これを付け加えたのですね。この「いずれにしても」というところです。

【井上委員】 大きな筋はこれですよということを言うためにこれを入れたんですね。

【竹下会長代理】 だから、この前御議論いただいた案よりははっきりした。

【中坊委員】 それではっきりしているでしょうかというのが、私らの基本的な問題点の指摘ですという意味です。

【佐藤会長】 いろいろなコンテクストの中で考えたことでして。今の御趣旨を更にここにもう少し表現できないかということですね。なかなか難しい課題ですが。

【中坊委員】 私としては、この文書に書かせていただいたように、要約部分の括弧書きの中で、ここに書いたとおりで、「経済事情や職業上の都合等やむを得ない理由により法科大学院の入学が困難な者に対しては、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねないよう配慮しつつ」と、こういうふうに書いていただいたらいかがでしょうかということを御提案申し上げていますので、もう一度お考えいただいたら。

【吉岡委員】 確認させていただきたいのですが、経済的事情とか、そういうことを言っているのですけれども、例えば、女性の場合に、主婦で、例えば50ぐらいになって、子育てなどが終わって、それから司法試験を受けようという人も現在たくさんいらっしゃいます。それで法曹になられて、大体は弁護士になるわけですけれども、非常にいい仕事をしている女性もいるわけです。ですから、そういう人もこの中に入るというふうに考えてよろしいですか。

【佐藤会長】 ロースクールには行かないんですか。

【吉岡委員】 大体は行くと思いますけれども、行けない人もいる。

【佐藤会長】 大体、子育てが終わってからということですか。

【吉岡委員】 それから働きながら勉強するという場合は経済的事情に入ると解釈してよろしいんですね。

【井上委員】 いろいろな方がおられると思うんですけれども、基本的にはやはりロースクールの枠にできるだけ入りやすいようにする。夜間もあれば通信制もある。インターネットによる、これも通信制の一種だと思うのですが、その他まだ詰めないといけないのですけれども、単位をある程度の期間をかけて分割して取っていくというようなことも考えられると思うんですね。そういう工夫をして、できるだけそちらの大きな枠に乗ってもらうというのが本来の考え方だと思うのです。そういう家庭におられた方もですね。
 ただ、それとは別に、やむを得ない事情だとか、そういうことがある場合には、当然別ルートでいけるだろう。それは、どういうバックグラウンドの人であろうと、そういう事由に当たればそうだと思うのですね。
 ただ、ちょっと難しいのは、そういうやむを得ない事情で行けないということに加えて、実社会の経験を十分詰んでいるので、法科大学院に行く必要はないのではないかという人まで別ルートにすべきかどうかということでして、そこは、何人かの委員からそういう御意見があったので、それも含むような文章になっているんですね。

【石井委員】 最後にちょっとささやかな抵抗をさせていただきたいと思います。日本版のロースクール、法科大学院に「仮称」を入れてくださいという話なのですが、6月初めに決まるわけですから、今から言っても遅いということも理解はしております。
 しかし、私としては、やはり「大学院」という名前がどうも引っかかっております。アメリカのロースクールというのは本当にうまい名前を付けたのだなということをつくづく感じています。プロフェッショナル・スクールだということが良く分かりますし、いわゆる「大学院」とは違うのだということが理解できます。そこが一番私は気になっている点でありますので、いずれにしても、ほんの僅かな期間で日本の正式名称は決まるわけでありますから、私も一生懸命考えてはみるつもりですので、できれば、法科大学院ではない、法曹養成にふさわしい名前を付けたいという気がしております。

【井上委員】 これはいずれにしても、制度上は、大学院制度に乗せざるを得ないのです。
 もう一つ、アメリカでも「グラデュエート・スクール・オブ・ロー」とか、そういう言葉を使う場合もあり、グラデュエート・スクールは御存じのように大学院で、そのグラデュエート・スクールというのは非常に広い概念なのですね。プロフェッショナル・スクールも入っているし、純粋研究型のものも入っている。ですから、そういうふうに広い見方でこの言葉を受け止めていただければ、そんなに抵抗感はなくなるのではないかと思うのですけれども。

【佐藤会長】 これから日本の大学院も位置付け方が大分変わってくると思うんです。従来の姿ではなくて。

【石井委員】 そうなれば良いですが。

【井上委員】 現にあります専門大学院という制度は、まさにおっしゃっているようなプロフェッショナル・スクールを念頭に置いたものなのですよ。

【石井委員】 教育の専門家からの御意見ありがとうございます。

【髙木委員】 こうやって私ども司法の門外漢がこういう議論をさせていただいて、いろいろ勉強させていただいたんですが、これから推進体制のところで具体化されるのに際して、特に利用者、あるいは国民と言うべきなのか、そういう感覚が推進体制とどういうふうにつながっていくのかというのは非常に大切なことではないかと、そういう意味で、具体的にどんなお話になっているのか存じませんけれども、是非、そういう視点がちゃんと書いていただけるようにお願いしたいんですけれども。

【佐藤会長】 どうもありがとうございます。

【吉岡委員】 今の石井委員の御意見は私も正論だと思います。いわゆる法学部の方の大学院、学者を目指す、それと、実務家を目指すものとは違いますから、それが分かるような名称を付けた方がいいと思います。

【佐藤会長】 ただ、ここにも書いてあるんですけれども、いわゆるこのロースクールができて、そして理論と実務との架橋ということが大きな課題になります。それは、研究者になっていく人にとっても、非常に意味があることであって、両者が近づいていくということも十分考えられるわけです。始めから全然別物だという発想はいささか狭い発想ではないかというように私は思っております。

【吉岡委員】 そうであれば、法科大学院(仮称)の中身は、かなり学問的、いわゆる学者になる、そういう人たちの勉強する課題も入れると思ってよろしいですか。

【佐藤会長】 理論的な問題と実務的なものを架橋しようというのがこのロースクールの趣旨ですから。

【吉岡委員】 当然入ると。

【佐藤会長】 研究者になろうとする人にとっても、そういうコースで勉強することが非常に意味を持つことになっていくと私は思うんです。

【井上委員】 それは法律学の性質に関わる問題でして、今までどおりの純粋学究を育てるような大学院というものは、当然ありうるんですけれども、ロースクールもそういうことと全く無関係であるとは思えないんですね。現に、アメリカのロースクールの先生は学者ではないかというと、高度の学問的研究をやっておられる方もたくさんいる。むろん、ロースクール自体はそういう研究者を育てるということが目的なのではなくて、あくまで実務法曹の養成を目的にする機関なのですが、そこで勉強したことが学者としての基礎を作るのに意味がないかというと、十分意味がある。そうだとすると、その出身者を学者としても育てていけるわけで、それはロースクール本来の目的ではないかもしれないですけれども、そこから学者が育ってきたって何らおかしくはないのですね。
 また、ロースクールでは、実務的な技能だけ教えるのかというと、そうではなくて、やはり学理だとか研究というものに裏打ちされた実際志向の法学教育をやっているわけです、アメリカのロースクールなども。
 そういうものなので、水と油くらい違うということにはならないでしょうというのが、佐藤会長の言われたことの御趣旨だと思うんですね。

【佐藤会長】 非常に上手に説明していただいて。

【吉岡委員】 そうしますと、例えば、医学部の場合には、あるところまでは専門という形を取らないで、例えば、外科を選ぶか脳外科を選ぶか、内科を選ぶかというのは自由で、場合によると全部できますと書いてある変な看板もありますけれども、だけど、そういう中で特化して、ここで、今、仮称で言っている、そういう勉強を重点的に何コースか分かりませんけれども、それをした人が司法試験を受ける資格があると、そう考えてよろしいんですか。

【井上委員】 やはり法曹養成に特化したひとまとまりの教育体系にならないといけないと思うのですね。大学院として、組織が完全に別だというところまで行く必要はなく、大きな枠組みとしては、研究中心のところなどと一緒の一つの大学院であってもいいけれど、はっきりカリキュラムだとか教育の考え方が別の組織分化は必要でしょう。ロースクールの方はあくまで実務法曹の養成を目的とする機関ですから、それにふさわしいものとならなければ、ロースクールとしてはだめだと思うのですよ。
 しかし、そこを通ってきた人が学者としての基礎の勉強ができていないかというと、そうではないということなのです。

【佐藤会長】 そうして、実り豊かな学者が育つことになる。

【吉岡委員】 分かりました。

【佐藤会長】 この法科大学院のところは以上でよろしゅうございますか。そうしたら、国民的基盤の方は主なのはもう既に御議論いただきましたので、101 ページから103 ページに掛けてはよろしいでしょうか。

【吉岡委員】 29日の審議のところで意見を言わせていただきます。出てきた第2次案を拝見して、意見を。

【佐藤会長】 そこではまた存分にどうぞ。全体の絵を御覧になってから。

【吉岡委員】 そうします。

【佐藤会長】 そうしたら、先ほど髙木委員が御発言なさったことですけれども、最後と言いますか、推進体制の問題について御意見を頂戴したいと思います。

【水原委員】 これは前回、5月8日の第58回の審議会で申し上げたところでございますけれども、今般の司法制度改革を実現するためには、審議会の意見に沿って司法制度改革の基本理念を定めた法律を制定してほしいと、内閣に司法制度改革推進本部といったものを設置して、一体になって司法制度改革を進めていくべきであるという趣旨のことを、殊に当審議会の意見に沿って司法制度改革の基本理念を定めた法律の制定が必要だというところをどこかに入れていただく必要があろうと思います。是非お願いしたいと思います。

【中坊委員】 私はこの推進体制のところにおける弁護士の立場ということから一つ申し上げたいと思うんですね。それは二つありまして、一つは、この推進本部ができ上がってくる過程の中で、枠囲みの中にも書いていただいたように、最高裁と日弁連、その他の協力が得られなければできないとお書きいただいているということになってくれば、当然のように我々の意見書が現実化する推進体制の中の中枢の部に弁護士も入らないといけない。法務省とか最高裁という、いわゆるお役所の方々、官僚とおっしゃられている方は、当然のように推進の事務局の中に一般的にお入りになるでしょう。行政の方もお入りになる。しかし、日本弁護士連合会というのは、そういう意味では公的な機関でありながら、行政とかそういう機関そのものではないので、いつもそういうところからは排除をされてきておる過去のいきさつがあるので、推進体制という中においても、その意味では、法曹三者という意味では当事者だけれども、同時に利用するという立場から言えば、まさに現実に利用しているのが弁護士なわけですから、推進体制の事務局の中に、日本弁護士連合会が参加するということでないと、ここに書かれているように、協力だけしなさいといったって、その間の切断ができてしまうと思うので、その点をもう一つお願いしたい。
 それから二つ目には、我々が出したこの意見書に沿って推進体制が行われていかなければならない。そういう意味におけるチェックということが、大事な今後の推進体制の中における一つの重要な役割であると。しかも、今後、私が非常に危惧いたしますのは、推進体制まで行きますと、今度は、今の審議会のように、全部が公にはほとんどならない、今の審議会はお分かりになるように全部我々が審議会として公開をしてきていますから、どういうふうに進んでいるかというのが国民にも分かる、ところが、推進体制の中で、法案を立案したり、いろいろなことを立案したりしていくということになると、これはなかなか公開というわけには基本的にいかないでしょうから、その点でも問題がより一層発生してくる危険性が多い。そういう中において、この審議会の意見が反映していくというところをどうして見るかということになってくると、やはり現実に今度は私的な立場というか、公務員という立場ではなしに、そういう意味における私的な立場で関与しておる弁護士というものが、やはり参加していくということでないと、やはりこれは現実の推進体制の中においての弁護士あるいは弁護士会の位置付けというものがおかしくなりはしないかということを危惧しますので、是非、その分もこの本文の中に何らかの形で入れていただくのがいいのではないか。ただ単に、ここに書かれてあるように、日本弁護士連合会、その他の協力と貢献が得られなければできないとだけ書かれておって、その裏付けが必要ではないかという気がするので、一つお考えいただきたいと思います。

【佐藤会長】 御趣旨は分かりました。

【吉岡委員】 私も弁護士が入ることは重要だと考えます。それと同時に、法曹三者と言いますか、それぞれの声を聞くということも大切だと思うのですが、国会議員と法曹三者で構成というと、昔やった臨時司法制度調査会と同じようなことになってしまい、実りがなくなってしまうような気がいたしますので、やはりそれだけではなくて、一般の国民の声が反映できるような、そういう立場の人を入れるということを考えておく必要があるのではないか、そのように考えます。

【中坊委員】 それからまた、これは私らの審議会の関与すべきことではなかったと思いますけれども、いわゆるマスコミというか世論を代表される方は、実はこの審議会の委員にはお入りになっていないわけです。これは私たちが決めたわけではないので、まさにそういうことを前提に我々は出発しているんですけれども、やはりこういうことは開かれた司法と言う以上は、まさに世論というかマスコミというものは非常に重要な役割を果たすわけですから、できれば、そういう方々もどのような形があるにしても参加しうるというようなことができれば、望ましいのではないかという気がします。

【吉岡委員】 反対するようで悪いんですけれども、マスコミが入る場合には、情報は漏れるということを考えた方がいいのではないかと思うんですね。ですから、そこの歯止めを考えていただいて、クローズでやるのであるとすれば、そういうことを配慮していただきたいと思います。

【佐藤会長】 今のお話を伺っていてなかなか難しい課題だという思いがいたします。そして、基本的には内閣で推進体制をお考えいただくことでありまして、審議会としての希望をどういう形で表現するかの問題でありまして、こういうようにしろというようにストレートには言いにくいところがあるということは御承知いただきたいと思います。ただ、髙木委員、中坊委員、吉岡委員の御意見の趣旨は私なりに分かっているつもりですので、表現上どういう工夫があるか自信ありませんけれども、ちょっと考えさせていただきたいと思います。

【北村委員】 前から度々申し上げているんですけれども、こういう改革を進めた場合には、外部評価の機関というものを何か作って、その評価を受け入れるということが必要なのではないかというふうに思うんですね。難しいのは、この外部評価の機関をどういう形で作っていくか、これの検討をお願いするというようなことでどこかに入れておいていただければというふうに思います。何か入れていただくところが消えちゃって、106ページはどこへ行ったんですか。

【佐藤会長】 今、おっしゃったように、どういう機関にして、どういう恒常的な活動を確保するかはなかなか難しい。我々が意図した改革の全体像の推進は、おそらく5年や10年で済まないだろうと思うんです。10年、20年あるいは30年掛かるものもあるかもしれないんです、我々が提起する方策の中には。それを恒常的に評価する機関ということになるとどういうものが考えられるのか、ちょっと自信がありませんで。

【北村委員】 それで消えちゃったんですね。私が考えているのは、ここに書いたんですが、企業にとって監査する、独立した公認会計士というのがいますけれども、そういうようなものです。だから、法曹三者が入らない、何かそういう形のものを作って、そこが常に検査していくというようなものができればいいなと思うんです。これはここで考えなくても、これからじっくり考えればいいのではないかと思っているんですけれども。

【佐藤会長】 問題がある意味では大き過ぎて、なかなかいい案が思いつかなかったものですから。

【北村委員】 106ページから全部消えちゃったんですか、それともどこかへ持っていったんですか。

【竹下会長代理】 「おわりに」の方に持っていきました。

【佐藤会長】 今までのようにいわゆる法曹三者だけで基本的にやっていくというのではもうだめですよと、やはり司法政策を絶えず考えていく中心が必要ですというような趣旨のことは書いているんです。そして、推進体制はまさに私どもの意見をもう真っ正面から受け止めて実現していただく、それを推進体制の整備のところで書くということに切り分けたんです。

【北村委員】 では、「おわりに」のところですね。

【藤田委員】 19日に民事訴訟法学会でボン大学のエーベルハルト・シルケン教授が、ドイツの参審制度について講演されたということだけ申し上げたものですから、一体どういう内容だったのか、どういう意味で引用したのかという疑問を持たれた向きがあるようですので、髙木委員には大学教授の方が通訳したものを差し上げたんですけれども、本当は髙木委員がいらっしゃる前で言うつもりだったんですが、講演の中身は、ドイツの参審制度に対してかなりシビアな消極的意見をお持ちでありまして、5系統の裁判所全部について参審制度があるんですが、少年参審については意義がある、行政裁判所と財政裁判所については、行政事件あるいは租税関係は非常に専門化、技術化しているので、そういう知識、経験のない参審員が入っても余りプラスにならないという御意見でした。労働裁判所、社会裁判所での参審制度については、やはり一つのパーティーの利益を代弁している人が裁判所の中に入るというのは、裁判の公平性についてマイナスの効果を及ぼすというような、かなりシビアな御意見をおっしゃいました。
 それで、昨日、髙木委員が日経連との間で労働参審について合意ができなかったんだけれども、しかし、将来の検討課題として、手厚い表現を会長代理にお願いするということをおっしゃったものですから、せっかくそうおっしゃったのにすぐ水を掛けるのはどうかということで詳しく申し上げなかったんですけれども、実は内容はそういうことでございます。労働委員会でこういう問題を議論すると、いつも労働側と使用者側とで対立するということを申し上げたんですが、参審の本場でのドイツでも一般的な見解かどうか分かりませんけれども、学者の中でそういう意見もあるので、将来の検討課題として取り上げる場合には、表現について一つ慎重な配慮をお願いするという趣旨で申し上げましたので、釈明をいたします。

【佐藤会長】 分かりました。
 これで一通り御議論いただいたということで、第一読会を終わらせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。いろいろ御不満なところがおありだったと思いますが、また私の司会についてもいささか強引にすぎるのではないかという御批判もおありだったかもしれませんけれども、これ以上申し上げません。
 本日はどうもありがとうございました。それで、また代理と御相談させていただきまして原案を修正し、特に国民的基盤のところは全面的に書き改めまして、29日の第61回会議で御審議いただきたいと思います。今週中、できるだけ早く修正したものを皆様にお送りしたいと思っております。これは事務局に大変御苦労をお掛けすることになるんですけれども、そういうように考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 事務局長、配付資料について。

【事務局長】 ございません。

【佐藤会長】 61回は、5月29日、1時半から5時まで、開催場所はできましたら官邸ということで考えております。冒頭に小泉総理からごあいさつをちょうだいしたいと考えておりまして、その後、本日までの経過を踏まえて修正しましたものの最終意見案につきまして、第二読会を行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 どうも今日はありがとうございました。