場 所:司法制度改革審議会審議室
出席者
(政府側)
小泉純一郎内閣総理大臣、横内正明法務副大臣、上野公成内閣官房副長官、古川貞二郎内閣官房副長官
(事務局)
樋渡利秋事務局長
【佐藤会長】 定刻までちょっとございますが、おそろいになられましたので、始めたいと思います。本日は第61回の会議ということでございます。
本日も、最終意見の原案につきまして、前回に引き続き御意見をいただくということでございます。よろしくお願いいたします。
既に事務局から御連絡がいっていると思いますけれども、皆様からの御意見をいただいた後、午後5時10分ころになろうかと思いますけれども、小泉内閣総理大臣と森山法務大臣にごあいさつをいただくという予定になっておりますので、よろしくお願いいたします。
最終意見の原案につきまして、前々回及び前回の審議会において、第一読会を行いましたので、本日は第二読会ということでございます。
第一読会の際にいただきました皆様の御意見を踏まえまして、私と代理で相談させていただきました第一読会用の最終意見原案を修正いたしましたものを、本日お手元にお配りしております。既に委員の皆様にもお送りしてあるものでございます。お送りしてから御検討いただくのに余り時間がございませんで、誠に申し訳ないことでございますけれども、やむを得ないことと何とぞ御容赦賜りたいと存じます。
既にお読みいただいて御存じのことと思いますけれども、第一読会の際にお決めいただいたように、全体の構成を変えております。それから、第一読会用最終意見原案を修正した部分には、アンダーラインを引くなどしております。
そこで、本日は、その修正を加えた部分を中心に、順次御意見をちょうだいしたいと思います。
なお、先ほどお話しいたしましたように、意見交換後に小泉内閣総理大臣などのごあいさつをいただくことになっておりますので、午後5時前までには意見交換を終了できるようにしなければなりません。その点、なにぶん、御協力のほどをよろしくお願いいたします。
それでは、まず最初に、「はじめに」と総論の部分を一まとめにして御意見をいただければと思いますが、「はじめに」のところは、特に中坊委員の方からの御指摘もございまして、1ページ中ほどのところに、最小限度でございましたけれども、その趣旨を入れて修文させていただきました。
それから、総論の4ページの中ほどのところですけれども、線を引っ張っておりますが、こういう趣旨をここに盛り込んだ方がいいだろうということで、その一文を入れさせていただいたわけであります。
総論のところの9ページですが、ここのところは、民事の書き方のところについて少し順序を変えるということにしましたので、それに応じて9ページから10ページに掛けて、そういう形になったわけであります。
それから、11ページの下の方ですけれども、「判事補に裁判官の職務以外の多様な法律家としての経験を積ませること」云々とありますが、これは何か所に同じ表現が出てまいります。前回の御議論を踏まえて、そういうふうにさせていただきました。
それから、12ページでありますが、「責任を分担しつつ」云々、国民的基盤の確立のところです。そこもそういうように変えました。
後、13ページなんですが、一番下の方で「(検討中)」とあります。これは前回そのままにしておるわけでありますが、これは各論のところで一体的に御審議いただきたいと思います。後でまとめて御議論いただきます。
それから、最初の副題なんですけれども、これは最後にお決めいただいて結構かと思います。鳥居委員の方から、「21世紀の日本を支える司法制度」というような御提案、あるいは中坊委員の方からも御提案があるところでありまして、最終的に御議論いただいて、決めさせていただければと思います。
まず、「はじめに」と総論の部分でございますけれども、いかがでございましょうか。
【水原委員】 内容的に異存があるわけではございません。ただ、前後の整合性の問題で、11ページの中ごろからちょっと上ですが、要するに新司法試験の合格者数を年間3,000 人までに増加させる。これをいつごろまでにということについては、「平成22(2010)年には」とあって「頃」が抜けております。というのは、これは56ページにはちゃんと「平成22(2010)年頃には」と書いておりますので、これは意図的なものじゃないんでしょうね。
【佐藤会長】 失礼いたしました。
【水原委員】 分かりました。それから、人員予算の関係は後で議論するということですね。
【佐藤会長】 各論のところでございます。ありがとうございます。
【髙木委員】 意見を出させていただいておりますが、8ページの「国民の役割」のところで、「国民は、司法の運営に」という出だしのところなんですが、その間に、「国民は、統治主体・権利主体として」という言葉を入れていただいたらどうかなと思っております。
【佐藤会長】 中間報告でも書いてあるんですね。全体の文章の中で触れておりますので、いいかなと思ったんですけれども、8ページの下から4行目から3行目に掛けてです。もし、よろしければ入れても良いかと思いますけれども。
【井上委員】 一般論としては異論はないのですけれども、それが後ろの各論とどう結び付くか、その結び付き方によっては、この前と同じような議論にもなりえますので、各論のところを通ってからこちらに戻った方がいいような感じがしますけれども。
【佐藤会長】 それでもいいと思いますし、ここはここでということでも。髙木委員、そっちの方と連動ということではなくて、ここはここで受け止めていいですか。
【井上委員】 ここは、全体を要約した部分ですね。その意味では、全体を見直してから、ここはここでというのも判断した方がいいのではないでしょうか。
【吉岡委員】 私もそこのところは、中間報告とも違っていますし、統治主体・権利主体としてというのは、重要な考え方だと考えておりますので、私も意見を出したのですが、「統治主体・権利主体として司法の運営に」、「主体的に」が重なりますから、今書いてあるところを削除して「有意的に」としたらどうかという意見を出しました。ここで書くことは重要だと思います。
【佐藤会長】 それは分かりましたけれども、ここは理念的な考え方を述べているのであって、ここでこう述べたから、具体的な制度設計と必然的にこう結び付きますと言われますと、ここに入れるということについて、井上委員のおっしゃるように、少しそこは留保させていただかなければいけないということです。
【竹下会長代理】 これは第一読会のときから出ていた御意見ですね。前回の第一読会では原文どおりでいくということだったのだと思います。
【髙木委員】 後の方の議論をしてみた後で、ということで結構だと思いますけれども、ここはまさに理念を書くということならば、今回の一連の論議の非常に大きなコンセプトは、こういった言葉じゃなかったかなという意味で、下の部分に書いていただいてはおりますが、ただ、一番上の書き出しがゴシックになっており、そういう意味でこの3行がこの項目の全体を表象しているとしたら、そういうコンセプトが最初の3行の中に書かれても当然じゃないかなと、そんな感じで御意見を申し上げたわけです。
【佐藤会長】 理念としてということであれば考えようがあると思いますが、ここから具体的な制度を引き出されますと、さっきから申し上げているように、少し議論が難しくなってきます。そこを頭に入れていただいて、後で戻ってもよろしいと思いますので、一応、ペンディングにして、先に進むことにしましょうか。
【鳥居委員】 髙木委員の御意見に私も賛成なのですが、ずっと他のページまで見ていきますと、ゴシックで書いてあるところがほとんどなんですが、例えば、9ページ、ここだけがゴシックがない。私はゴシックの部分は、国民に呼び掛けるキーワードとして本当に大事なものが並んでいる場所で、例えば、マスコミの方などがここだけ拾って報道されることもあると思うんです。そういうことを考えますと、まず、8ページの冒頭のところは、どうせ下の方に書いてあるんなら、「統治主体・権利主体である国民が、司法の運営に主体的に参加し」という言葉が上に出る方が、国民に対して55年間忘れてきたものを思い出してもらうという改革という意味があると思うんです。
【井上委員】 今の点は下の方にも書いていないのです。
【鳥居委員】 下というのは何ですか。
【井上委員】 統治主体云々ということはですね。したがって、その点は、後ろの各論のところを議論した上で戻ってきて、入れるなら両方入れるということになるのではないかと思うのです。
【鳥居委員】 8ページの3は書いてありますね。
【山本委員】 今の鳥居先生が言われたのは、国民の説明ならいいんじゃないですかね。8ページの下から4行目に書いてある「統治主体・権利主体である国民は」ということであれば、意味は何も変わりませんね。そういうことで中間報告の趣旨もよろしいんでしょう。
【佐藤会長】 それでも、意味はそう変わらないかもしれません。「統治主体・権利主体である国民は、司法の運営に有意的」、そうしましょうか。そうしたらここは決まりと。先を急ぐようですけれども、今日は早く決めたいので。
【竹下会長代理】 前回議論して決着を付けたところを一々取り上げると、本日中に第二読会が終わらなくなるおそれがありますので、その点に御留意ください。
【佐藤会長】 そうですね。「統治主体・権利主体である国民は、」、次は「主体的」は取っていいですね、「司法の運営に有意的に参加し」。そこはそういうふうに決めさせていただきます。
【中坊委員】 私の方としては、1ページの「はじめに」、審議の順序のところで、前回言わしていただいたことを繰り返すようですし、確かに、今回、人的基盤の問題「を重視し」、「まず」そこから検討したというふうに2箇所加えられておるわけです。しかし、本日付けの意見書でも出させていただきましたように、私は、「制度を支えるのは人であり、制度を支える人の充実があって、はじめて制度改革も実りあるものとなる。この視点に立って」という、この字句はやはり国民に訴える言葉としても、「重視し」とかいうことだけじゃなしに、重視とは一体何を重視したのかということを、まさに示した言葉で、本当に残るような言葉じゃないといけないと思うし、当時、会長も何回となく繰り返されておった言葉でありまして、それが単に「重視し」、「まず」というだけの言葉になったから、これでいいんでしょうかという問題が一つあると思いますので、できればもう一度御再考いただきたいと思うのが一つ。
もう一つは、これはむしろ弁護士という立場から申し上げたいと思うんですが、同じく審議の順序の問題について、弁護士改革から入ったという意味ですね。まさに「法曹の圧倒的多数を占める弁護士の在り方から審議し」、この言葉は弁護士全体がこの問題をどう受け止めるのかということに非常に密接に関係していまして、弁護士である私としては、弁護士の人たちに、改革を要するのは、まずあなた方自身ですよと確認しておきたい。
一般に、よその批判はしても、自分の批判のところはおざなりになりがちでして、そういう意味で、これも中間報告で入っておった、圧倒的な多数を占める弁護士改革がまず最初なんだということから審議に入っていただいたのも、審議経過どおりであるわけですから、そのときにも、そのような言葉で入れていただいたと思うので、私はこの意見書が本当に弁護士全体に対して自覚を促すという意味において、そこは「重視」し、「まず」というのでは入ってこないので、もう少し具体的に書き込んでいただいてもいいんじゃないかと思います。
これは率直に言って、私たち同じ仲間の弁護士というものを常に頭の片隅に置いて、私はこの審議会の委員として対応してきました。それだけに、私にしてみれば、その弁護士に呼び掛けるという点が非常に重要な点でありますので、無理にとは申し上げませんが、御再考いただきますようにお願い申し上げます。
【佐藤会長】 第1点の方なんですけれども、「制度を活かすもの、それは疑いもなく人」という言葉を、実はここへ入れようと思ったんです。ところが7ページのゴシックの下に一回出てくるのです。これはやはり冒頭に入れたいなと。もう一つは、54ページの冒頭に出てくるのです。「はじめに」の方に入れてもいいかなと思ったんですけれども、7ページも54ページも共に冒頭に持ってきたいんです。
【中坊委員】 二度あることは三度あると言いますからね。
【藤田委員】 仏の顔も三度。
【中坊委員】 だから、三度までは大体いいんじゃないですか。
【竹下会長代理】 本当にここにも入れようかと二人で考えたのですが、どうも3回も同じ表現が出てきては、キャッチフレーズとしてのインパクトがなくなってしまうというので止めたのです。
【中坊委員】 一番最初に入れるのが一番筋ですね。後のところで入れるよりも、最初に、まさに「はじめに」のところに入れていただきたい。
【佐藤会長】 ただ、「はじめに」よりは本文の方に入った方がインパクトがあるんじゃないかと思ったんですけれども、いかがですかね。
【中坊委員】 確かにおっしゃるようなところもあるかもしれませんが。
【山本委員】 書き出しでいいんじゃないですか。
【佐藤会長】 7ページと54ページの冒頭に是非入れたいと。
【井上委員】 私も、原案のように、本文のところに出てくる方がインパクトがあるように思います。また、逆に「はじめに」のところで出してしまうと、他の点もいろんな言葉を足さないとおかしくなるのかなという感じもします。
中坊先生がおっしゃる趣旨もよく分かるものですから、「観点を重視し」というのを「ことが不可欠であるという認識に立って、弁護士の在り方をはじめとする司法の人的体制の充実の必要性や…」というふうに直せばどうでしょうか。御趣旨は、簡潔すぎて不十分かもしれませんが、示されるのではないでしょうかね。余り修文の提案をすると、他のところもごちゃごちゃになるかもしれませんけれども。
【竹下会長代理】 どちらがいいですかね。
【佐藤会長】 今の井上提案に乗らせいただいていかがでしょうか。
【中坊委員】 こんなくどくど言ったら悪いかもしれないけれども、「重視し」とか「まず」という言葉だけで入っているということに、何となく中間報告の際の言葉で言えば、会長はそうおっしゃるけれども、後に入っておるじゃないかと言われても、最初に入っておったところが、なぜ抜けているのかというところが、「まず」とか「重視し」という言葉に変わってしまっているというところに、本当の中身が消えているんじゃないかなという気を持たせるんで、私は言うているのです。
おっしゃるように、整合性から言えば、ここに書いてあるじゃないかと言えばそれまでのことです。しかし、実際、これがどこにどういうふうに訴えるかということを考え合わしたときには、そういう視点も要るのではないかということを私は言っているんです。
【佐藤会長】 その点は私も全く同感なんです。井上案を元にして少し修文を考えさせていただくことにします。
では、「はじめに」のそこのところを修文し、そして、8ページのゴシックのところを「統治主体・権利主体である国民は、司法の運営に有意的に参加し」と改めさせていただきます。
11ページは、水原委員の御指摘の「頃」を入れさせていただきます。
11ページの下の「多様な法律専門家としての」というは、後でまた出てきますので、そこで併せて検討させていただければと思います。
では、先を急ぐようですけれども、13ページの一番下はさっき申しましたように各論で併せて御検討いただきますので、こんなところでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは、14ページの「Ⅱ 国民の期待に応える司法制度」ですが、まず、冒頭から「第1 民事司法制度の改革」、37ページまでを一つの塊で御議論いただきましょうか。代理の方からちょっと御説明していただけますか。
【竹下会長代理】 アンダーラインを引いてあるところの趣旨だけ申し上げます。
「Ⅱ 国民の期待に応える司法制度」の冒頭に8行ばかり制度的基盤についての前書きを入れました。これは前回の北村委員からの御指摘を受けたものでございます。
それから、「第1 民事司法制度の改革」の内容ですが、前回申し上げたように、記載の順序を変更させていただいて、まず、「民事裁判の充実・迅速化」を先に持ってまいりました。細かいところでは、更にその中で順序を変えたりしているところがございますけれども、その説明は御勘弁願いたいと思います。
14ページの民事司法の冒頭を3行削ってありますのは、上の前書きの方に入れたところと重複するからでございます。
その次の5行ばかりアンダーラインがございますが、これは記載順序の入替えに伴う修正でございます。
下の方にある削除部分も、既に書いてあることとの重複のためでございます。
16ページの真ん中に「・人的基盤の拡充」というところがありまして、そこへ2行半くらい追加してございますが、これは前回の髙木委員の御指摘を踏まえて入れたものでございます。
17ページの上の方の第2パラグラフの冒頭、「そこで、専門的知見を要する事件についても、審理期間(医事関係訴訟事件については…」と書いてございまして、本日いただきました吉岡委員の御指摘では、その上の本文にも同じことが出ているではないかということでございますが、これは、その前のところから確かに本文に既に書いてあることなのですけれども、ここだけぱっと見て分かりやすいようにという趣旨でございます。ですから、ダブっているから消した方がよろしいということであれば、勿論、消しても構わないところでございます。
その下の方に「(例えば、手続を透明化するなど)」というのが入っております。専門委員制度について、透明性ということが必要ではないかということを、髙木委員、吉岡委員から御指摘いただいておりますので、こういう形で入れさせていただいたということでございます。
それから、19ページのところは、記載の方法を改めました関係で、ごちゃごちゃアンダーラインがございますが、内容に変わりはありません。
20ページの上の5行目くらいのところの最初の黒ポツから3行目、「上記のような知的財産権関係訴訟の現状を踏まえた」という文言が入っております。これは、前回、中坊委員から、東京・大阪両地方裁判所の専属管轄化について、これで恒久的に決めてしまうよりは、「当分の間」とか、そういう言葉を入れたらどうかという御指摘がございましたので、この専属管轄化は知財関係訴訟の集中度の現状を踏まえたものであり、したがって、現状が変われば改める可能性がありますという含意で「現状を踏まえた」という文言を入れたものであります。
21ページの労働関係訴訟のところは、枠の中に3つ目の○を設けまして、前回、髙木委員から、ここにも労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方、それから広い意味での労働参審制、労働事件固有の訴訟手続の整備を、この枠の中に入れるべきではないかという御意見をいただきましたので、こういう形で入れさせていただきました。ただ、これにつきましては、今日、髙木委員の方から修文の御意見が出ていますので、それにも十分対応することを考えたいと思っております。
26ページの一番御議論の多い弁護士報酬の問題でございますが、前回の中坊、髙木、吉岡各委員の御指摘を踏まえまして、見出しの「弁護士報酬の訴訟費用化」を改めまして、「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」といたしました。中坊委員からは、「負担問題」という御提案をいただきましたが、ちょっと他の見出しとのバランスと、見出しに「問題」という表現は適当ではないと思いましたので、このように致しました。
内容は、皆様方の御意見の趣旨をなるべく活かして、これまで勝っても負けても弁護士報酬を自分が負担しなければならないということのためにというか、勝っても自分が負担しなければならないということのために、訴訟を回避せざるを得なかったような当事者にも、負担の公平を図って、訴訟を利用しやすくする趣旨で敗訴者負担の制度を入れるのだということを、少しくだいて書いたわけでございます。
それから、一律に導入するわけではないということを明示いたしました。本文の方はそれに見合う修正でございます。
後は31ページの「損害賠償の認定」のところですが、これは藤田委員、山本委員から名誉毀損の場合の損害賠償額の認定に限られるのではないかという御意見もございましたが、それだけと断定するわけにもまいりませんので、「全体的に見れば」という表現に変えさせていただきました。
それから、団体訴権のところは、「導入の可否」というのでは少し弱いという吉岡委員の御指摘がございましたので、「可否」は取りまして、より一層前向きの姿勢を示すということにいたしました。
34ページの「ADRに関する共通的な制度基盤の整備」の枠の中の下から2行目でございますが、「隣接法律専門職種の業務内容や企業法務等との関係も含め」としまして、「企業法務等」という文言を入れました。これは山本委員から、前々より御指摘いただいている、親子会社などで、親会社の法務部が子会社の法律問題を取り扱うということは、弁護士法72条に違反しないと考えても良いのではないかという御意見がございましたので、そういうこともここに入れたということでございます。
後は大体前回と同じです。
【佐藤会長】 では、ここの箇所につきまして、いかがでしょうか。
【吉岡委員】 これは項目ごとに発言した方がよろしいですか。
【佐藤会長】 問題だと思われるところを特に。
【吉岡委員】 一応、意見書を昨日お出ししておりますが、16ページの4行目のところに、「・証拠収集手続の拡充」というのがあります。そこで、2行目のところで、「ドイツ法上の独立証拠調べ」という文言で入っていますが、その前にもう少し具体的に文章を入れたらと思いますので、「文書提出命令制度、当事者照会制度、証拠保全手続などの現行手続について、証拠収集の実効化をはかる方向での改善を検討することに加え」という文言を入れたらどうかということ。
そこから3行ほど下になりますけれども、「相手方」の前へ「を参考にした証拠収集手続や」という文言を入れたらいかがかと。
また、2行目の「新たな」というところに、「証拠収集手続の全般的な拡充を図るべきである」ということを入れて、「新たな方策を検討し、導入す」までを外すということに修正したらいかがかと考えますので、御検討いただきたいと思います。
【竹下会長代理】 その点でございますが、ここは全体が証拠収集手続の拡充ということで、証拠収集手続を拡充するのだという方針は出ておりますし、今、おっしゃられた個別のことは15ページのところで新しい民事訴訟法が制定されたときにいろいろ考えた。確かに、新しい民事訴訟法で定めたところだけで十分かという問題はございますけれども、とにかく新しい制度を入れて、その実効性を見ている段階なものでございますから、ここではより新しい証拠収集手続の拡充を考えるという趣旨で、早期化の問題を取り上げているわけでございます。
ここは、そう形式的に、アンダーラインが引いていないことだからと申し上げるつもりはないのですが、前回、一応、これで皆さんの御了解をいただいたところでございますので、かなり大幅にそういう修文をするということは、御趣旨はこれで入っていると思いますので。
【吉岡委員】 具体的に入った方が、私は、分かりやすくていいし、方向も見えるということで申し上げまして、最低限そのくらいは入れたらいかがかしらということで意見を出しましたが。
【佐藤会長】 いろいろあると思うんです。ごもっともであると思いますけれども、この審議会の意見書は、基本的には骨太の考え方、方向を示すということではないかと思うのです。人によっては、民事訴訟のところは細かすぎるんじゃないかという批判さえいろいろあります。骨太のものを示すという趣旨、お気持ちは分かりますけれども、そういう趣旨を基本的に御理解いただけませんでしょうか。
【吉岡委員】 そういうことを含んだ上でこの意見書ができているということだけ確認させていただいて、修文の方は、それ以上強くは申し上げませんけれども。
それから、16ページの枠の中から17ページの下から7行目のところ、いわゆる専門委員制度についてですけれども、これについても、修文をお願いしたい点について、記載したのですけれども、これもそういう意味で駄目だとおっしゃるんでしたら止めますけど、意見だけ申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。
【佐藤会長】 どうぞ。
【吉岡委員】 16ページの最初の○のところですけれども、「裁判所の中立・公平性」と書いてあります。これは前回のときですか、髙木委員が手続の透明性をおっしゃっていたと思うんですけれども、やはり中立・公平性だけではなくて、透明ということは非常に大切だと思っておりますので、「手続の透明性」を入れたらどうかということが1点です。
それから、17ページの同じようなところで、さっき御説明のときに髙木委員の意見を入れましたという6行目くらいですか、これは括弧書きで「(例えば、」になっているんですが、「裁判所の中立・公平性」の後に、「手続の透明性」という表現にして括弧を取る。その辺を御配慮いただけないでしょうか。
それから、医療過誤の問題で、17ページですけれど、医療関係事件については、「患者側、医者側の」云々というのがありますけれども、ここの「医事関係事件については」と、「への導入」というのを取りまして、それから「十分に踏まえて」というのを、「十分に踏まえつつ、導入について検討する必要がある」というように、少し表現を変えられないだろうかということでございます。
それから、私にとっては大きな問題なのですけれども、弁護士報酬の敗訴者負担の問題があります。前回も、私、随分いろいろ申し上げまして、大分修文していただいているわけですが、意見書にも幾つかお示ししました。論文の一部をピックアップするような形で、そのままでは長すぎるので書き替えている部分はあるんですけれども、紹介しました。一つは、新堂先生の「新民事訴訟法」、これは教科書ですけれども、その中で、敗訴すれば相手方の弁護士費用まで負担させられるという心配から、正当な訴訟追行をも抑制しかねないという懸念。それから、全国一律の立法はかえって本人訴訟率の高い地域の一般人を納得させるか疑問であるし、弁護士の都市偏在の結果、その利用が事実上阻害されるような地域では、当事者の不公平ももたらしかねない。弁護士の報酬も画一的に訴訟費用化されると、その額が一般的には引き下げられることにならないか。また、裁判官に額の決定につき裁量を認めるとすれば、弁護士の自主独立性が害されないかなど、解決する難問も多く、立法化の道はなお厳しいし、慎重でなければならないという指摘があります。
それから、平成9年の法務省の民訴費用制度等研究会の中の一部にも、弁護士費用の一部敗訴者負担は、我が国の司法に及ぼす影響が少なくなく、他の制度との関連で導入の可否を検討すべきであり、訴訟救助、法律扶助の他にも、例えば、新民訴法の施行による弁護士業務の変化、弁護士人口の増加問題等とも関連させて検討しなければならない。この点についての国民の一般的な意識を調査・検討する作業も不可欠であるということが書かれております。
そういうことを考えますと、少なくとも現段階で、これだけ反対という声が寄せられている。勿論、民事訴訟法の学者から御覧になると、基本はそうではないんだというお考えの先生が多いというようなことも伺ってはおりますけれども、少なくとも、この審議会では、国民的な合意が得られない、そういう状況を考えると、前回も、私、申し上げたと思うんですけれども、「実情を見定めながら、将来の課題として引き続き検討すべきである」ということで、もう少し弁護士人口と増加状況とか、法律扶助の充実とか、そういうような状況を見て、その状況が良くなってきて、国民的な理解が得られるようなところまで考えて、まず理解が得られるような努力をすることによって理解が得られる、そうなったときに導入するという、そういう含みで、「実情を見定めながら」という修文をしていただきたいと思います。
それから、団体訴権について、これは31ページです。「の可否」という言葉を取っていただいたので、かなり分かりやすくなったと、その点は私も評価しているんですけれど、「団体訴権の導入、導入する場合の適格団体の決め方等」となっていますが、導入する場合の適格団体の決め方等というのを書かなくても、「団体訴権の導入について」というように修文していただきますと、導入するという方向性がかなりはっきりしてまいりますので、そのような修文をお考えいただきたいと思います。
大分、端折って申し上げましたけれども、以上です。
【佐藤会長】 敗訴者負担のところは、中坊委員やその他の委員からも御意見が出されていますので、まず、この16、17ページのところからいきましょうか。
【竹下会長代理】 そうですね。先ほど申し上げましたように、この専門委員の点については、前回、髙木委員から御指摘がございましたので、17ページに括弧書きで「例えば、手続を透明化するなど」との文言を入れたわけです。ここの文脈は、裁判所の中立・公平性を損なわないように十分注意する必要がある。その方法として手続を透明化するなどの工夫を要するのではないかということなので、中立・公平性と手続の透明化とが並んでいるわけではないのです。
訴訟手続そのものが透明でなければならないというのは当然のことで、現在も手続は透明だと思うのですが、ここで申し上げているのは、中立・公平性を担保する方法として手続を透明化する必要があるだろうと、そういう趣旨ですので、この括弧を外して並列させるというのはちょっと趣旨が違うことになります。
それから、その後の17ページの医事関係事件でございますけれども、下から2行目の、「問題点が指摘されている」とございますが、この問題点は、医事関係事件に専門委員制度を入れることにすると、こういう問題点があるということなので、だから、導入についての問題点なのですね。「導入」を取ってしまうと、医事関係事件そのものについて何か問題があるということに読めてしまいますが、そうではないものですから、これを取ってしまうと、ちょっと意味が分かりにくくなってしまうのではないかと思うのです。医事関係事件にこの制度を入れようとすると、こういう問題点があるから、そこで慎重に検討しましょう。そういう必要があるでしょうと言っているわけなので、そこはおそらく吉岡委員がお考えになっているのと同じ趣旨だと思うのです。
それから、弁護士報酬の問題、これは、今、会長が言われたように後回しにして、団体訴権のところを先に申し上げますと、団体訴権を入れる場合に、勿論、そういう制度を認めるか、認めないかということが重要な問題でございますが、同時に、どういう団体に訴権を認めるかということが非常に重要で、かつ難しい問題なのですね。ですから、どうしてもこれは「導入する場合の適格団体の決め方」という文言は残しておく必要がある。これは削ってしまうと、この制度を入れるということ自体が飛んでしまう可能性があります。ただ適格団体の決め方だけが問題だというわけではありませんから、「等」を付して、この文言を入れておいた方が、むしろ吉岡委員がお考えになっているように、この制度を積極的に考えてもらうのにはよろしいのではないかと思います。
以上です。
【吉岡委員】 私が引っかかってしまったのは、「導入する場合の」となっていたので、導入する、しないという、可否と同じことかなという読み方をいたしましたんです。
【竹下会長代理】 そうではなくて、導入するときに、こういうことを考えないといけませんよと、そういうことです。
【佐藤会長】 よろしいでしょうか。17ページは、今、代理が説明されたように、その趣旨は、そういうものとして読める可能性がありますので。それと、31ページもそういうことで御理解いただけますでしょうか。
そうしたら、まだ、労働関係事件などもあるんですけれども、敗訴者負担にも入りましょうか。
【髙木委員】 敗訴者負担のところもいろいろ直していただいたんですが、この間、やはりいろいろな方々から、この敗訴者負担制度について、種々意見が届けられました。論理的に誤解されているとかといろいろあるのかもしれませんが、ともかくいろいろなお声が届きます。それで、こういう議論の趣旨なんですよということを、私が知っている程度ですが、お話ししたりするんですが、それにつけてもやはり不安感は非常に強い。そういう意味では、吉岡さんの重ねておっしゃるお気持ちも分かるような気がいたします。
今までの議論の経過もございますでしょうから、極力そういう不安をマイルドなものにするという意味で、例えば、この前、標題の「訴訟費用化」というのは消していただいたんですが、本文の方に、「弁護士報酬の一部を訴訟費用に含めて」と書かれています。例えば、「訴訟費用に含めて」というのは、結果的にそうなるんでしょうが、これも分かりきった話で、訴訟費用に含めてというのは訴訟費用化みたいに取られる向きもあるとすれば、これは消しちゃったらどうかなと思います。
それから、後、「訴えの提起を萎縮させないよう配慮し」となっていますが、これは、「させないようにし」、というような表現ぶりもあるのかなと思っています。
重ねて申し上げれば、立法上大変難しいお話もあるということですが、導入しない、する、この辺は、立法論上のことは私よく分かりませんので、そういう意味で、そういう御心配になっておられる人たちへの懸念をできるだけ取っておいてあげるということで御一考いただけたらと思います。
【竹下会長代理】 ちょっとよろしいですか。この枠の中の「訴訟費用に含めて」という文言を取ってしまいますと、一体どういう制度をつくるつもりなのだというのが、かえって分からなくなってしまいます。負けたとすると、そのこと自体がけしからぬのだ、負けた当事者は不当なことをやっていたのだというので、言わば制裁的に弁護士費用を負担させるのだという制度のようにも取られる可能性があるのですね。しかし、われわれの意図はそうではないので、これは今度はっきり書きましたように、訴訟に必要な費用の負担の公平を図るということにある。訴訟をやるときには、どうしても両方の当事者に費用が掛かるわけですが、訴訟に必要な費用と認められる限度では、弁護士報酬のうちの一部を、訴訟費用の中に入れて、その負担の公平を図りましょうという趣旨なので、決して、負けた人はけしからぬ訴訟活動をやったのだというので、相手方の弁護士の報酬分まで負担させるというわけではないのですね。
ですから、枠内の方は、「訴訟費用に含めて」というのを取ってしまうと、何かとんでもない制度を考えているように誤解されてしまうので、ここはこれを入れておいた方が良いのではないかと思います。
それから、髙木委員の今日の修正意見を見せていただきました。確かに、細かくいろいろこういう場合は除外すべきだと挙げておられて、その列挙されている種類の訴訟自体はごもっともだと思うところも多々ございますけれども、これはやはり立法段階に任せざるを得ないのではないかと思います。
【佐藤会長】 一つひとつ挙げて決めていくのは難しいということですね。
【竹下会長代理】 とても、ここで、これはいい、これは悪いという選別は、ちょっとできないと思います。ここは何度も御議論いただいたところでございますから、ここの審議会全体の委員の御意見で決めていただくほかない。私の方としましては、事務局の担当の方にもいろいろ知恵をお借りして、かなり誤解のないようにかみくだいて書いたつもりでございます。
【髙木委員】 「配慮し」というのはどうですか。「させないようにし」という、あるいは「するため」でも良いと思いますが。
【竹下会長代理】 それは結構だと思います。
【髙木委員】 配慮というと、若干奥歯に物のはさまったような感じがありますから。
【竹下会長代理】 「萎縮させないようにするため」としますか。
【髙木委員】 文章のつながりはうまくしていただいたらいいと思います。
【竹下会長代理】 では、ここのところはちょっと。
【佐藤会長】 「萎縮させないようにするため」と、そこはそういうふうに修文します。
【吉岡委員】 今の「訴訟費用に含めて」ということは、そういう意味だという御説明だったんですけれども、前のタイトルのところの「弁護士報酬の訴訟費用化」というのとは、これは違うと。
【竹下会長代理】 いや、同じことなのです。ですから、タイトルもこの方がいいと私は思ったのですけれども、皆さんが、何か「訴訟費用化」というと非常にニュートラルな表現で、誤解を招くということでしょうかね。このタイトルは「敗訴者負担」にせよとおっしゃられたのでこう直したわけです。しかし、中身までそれを消してしまうと、何を考えているのか分からなくなってしまうのですね。
要するに、今の繰り返しになりますけれども、訴訟をするためにはどうしても両方の当事者に費用が掛かるわけですね。その費用を、訴訟が終わった段階で、どちらにどれだけ分担させるかを決めるわけですね。その中の一つのファクターとして、弁護士報酬のうちの一部を入れましょうというわけです。それをも含めて分担を決めましょうという、そういう仕組みを考えているのですよということです。
【吉岡委員】 それは、結局、タイトルの方は変えていただいてよかったと思っていますが、内容が、「費用化」とは書いていないのですけれども、「費用に含め」と書いてあると、結局は、敗訴者負担を決めるというふうに私には読めてしまうんですけれども。
【中坊委員】 私も大体同じような意見を出させていただいたんですけれども、要するに、弁護士報酬が敗訴者に負担させた場合の方が非常に訴訟を利用しやすくなるという場合もあるし、逆に萎縮させるという場合もある。その二つの場合について、それぞれ何らかの方法を講じようじゃないかというのが、我々の今まで到達した結論だと思うんです。我々として、ニュートラルにどっちが原則とか例外とか言わずに、要するに、ふさわしい場合はします。ふさわしくない場合はしない。こういうふうにしようということじゃなかったかと思います。
その言葉が、吉岡委員がただ今おっしゃるように、非常に国民一般に新聞の見出しもそうであったかもしれないけれども、訴訟費用化ということで載ったために、誤解を招いて、今おっしゃるように、審議会の敗訴者負担の問題についていろいろ誤解を招いてきたんじゃないかというのが、私が従来から言うてきたことですね。
そのために、「訴訟費用化」という字を、わざわざ見出しの中から抜くという案で再修文していただいたわけですから、要するに、敗訴者に負担させる制度、字句で言うならば、「訴訟を利用しやすくする見地から、これにふさわしい場合に弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させる制度を導入すべきである」で、その間に、今、竹下会長代理のおっしゃるように、訴訟費用に含めるという概念までをつなぐ間のところとして、概念として入れるということは、少なくとも私としては納得しているわけじゃないですから、その部分を見出しの中から削ったのにかかわらず、どこへ行くか分からないとおっしゃるけれども、それはまさに敗訴者に負担させた方が、より利用しやすくなる場合と、させたら萎縮する場合と二つあるから、それぞれについて適当な制度を考えましょうということではないかと思うんです。そこへ訴訟費用という概念を入れられてくると、これは少なくともこの間直したところからも我々が納得しているわけじゃないと思うんです。
【竹下会長代理】 この問題の初めから、外国の制度のこともいろいろ議論してまいりました。どこの国でも、訴訟に負けた方の当事者が勝った方の当事者の弁護士報酬の全部又は一部を負担するというときは、訴訟費用として負担するのですよ。それ以外に、負けたが故に相手の弁護士の費用を負担しなければならないという制度はないと思うのです。外国の例を見ましても。
それは、初めからの前提だったと思うのです。そうではないと、現在でも根拠のない上訴を濫用的に提起して、控訴棄却になると制裁金を課すという制度がございますが、それと同じように受け取られてしまう。どうも私は、弁護士報酬の敗訴者負担という言い方が、まさにこのような制裁金を課す趣旨のように誤解を招いたのではないかとすら思っているのです。
【中坊委員】 今、おっしゃるように、現行法でも現に、損害賠償の一部として負担させるということが実際上行われているわけですからね。今、会長代理がおっしゃるように、訴訟費用化するというのも確かに一つの方法ではあろうと思いますけれども、要するに、そこに至るまでに、今、言うように、現行法の下においても、そのような場合には、例えば、今の交通事故だったら、勝てば自分のところで要した費用を向こうに負担させるということも、損害賠償の一部として導入することによって、実質上、弁護士報酬が敗訴者負担になっているわけです。
今、おっしゃるように、訴訟費用化というルートをたどってそうする方法もあれば、今の損害賠償の一部として、そういうふうに考えて、実質上敗訴者負担という形にさせている場合もいろいろあるわけでして、今、おっしゃるように、訴訟費用化ということだけが唯一のルートではない。その問題について、今、国民は、まさに敗訴者に弁護士報酬を負担させる方が適切な場合はそうしましょう、萎縮させる場合はそうしないでおきましょうと。そうしてくると、例えば、片面的であるとかいろんな問題が出てくるんですよ。この問題は、そういう意味では、吉岡さんも多少今おっしゃったように、私は吉岡さんほど、これから実態を見てから検討してほしいというのは、これは我々が決めたこととちょっと遠すぎると思うんですけれども、我々として、この敗訴者負担問題は、そういう意味におけるニュートラルに考えていますよということであればこそ、この間の見出しの中に訴訟費用化という問題をわざわざ私も提案して抜いていただいて、「取扱い」というふうに変わったわけです。にもかかわらず、依然として見出しは変わったけれども、本文でも、この下にもう一遍出てくるでしょう。26ページの下から7、8行目のところに、「訴訟費用に含めて」と書いてある。そうすると、まさに頭隠して尻隠さずで、何で見出しのところだけ「訴訟費用化」という字を抜いたんだということになってきて、それこそ余計におかしくなるんで、整合性を保つという意味においても、前回、ここの審議で「訴訟費用化」という字を抜いたんだから、しかもこれで文章が、括弧書きの中であっても、「利用しやすくする見地から、これにふさわしい場合に、弁護士の報酬の一部を敗訴者に負担させる制度を導入すべきである」と書けば、別におかしくも何にもないわけです。
一番終わりに、このような敗訴者負担を導入する場合と、導入しない訴訟の範囲の扱い方、負担させる場合にその定め方等については、確かに、おっしゃるように、今、会長代理のおっしゃるようにいろんな方法があるでしょうから、これはもう少しみんなでよく考えたらいいじゃないかということで、私は、全体として、今、おっしゃるように、国民からこれほど敗訴者負担の問題について、集中的な問題提起がなされておるときに、これについて我々の審議会の在り方というものを明らかにしておく方がいいと私は思うんです。
【井上委員】 今、批判がたくさん寄らせれているというのは、中身の問題であってどういう理由でどちらに負担させるかという書き方の問題とは、ちょっと違うだろうと思います。
この前の議論で、タイトルから「訴訟費用化」というのを削ったのは、私の理解では、「訴訟費用化」とすれば、訴訟費用として自動的に負けた方が負担させられると誤解されることになりはしないかという懸念があるので、そういった誤解は解こう。公平にどちらに負担させるのがいいのかという視点から、場合、場合を分けて考えましょうという中身ですので、そこのところをちゃんと伝えるために、タイトルから「訴訟費用化」というのは少なくとも削ろうという趣旨だったと思うのです。
竹下代理が問題にされているのは、公平に負担させる、どちらに負担させたらいいのかという場合に、なぜ負担させられるのかという理由付けの問題で、その点を、負けたというのは理由もないのに訴えたとか、理由もないのに頑張ったということだから、懲罰として負担を課すことにするというのは、考え方として適切ではない。弁護士費用というのは今日の訴訟にとってはほとんど必要経費なので、それをどっちに負担させるのが公平かという考え方でいくべきだろう。そうすると、それは訴訟費用という位置付けだろう、ということだろうと思うのです。
今度の書き方でも、「負担の公平化を図って、訴訟を利用しやすくする見地から、弁護士報酬を訴訟費用に含めて敗訴者に負担させる制度を導入」しようということになっていて、そういう趣旨が付いているわけですので、それでいけば、この前、何人かの方が懸念されていた点も、それで説明にはなっているのではないかと思います。
【中坊委員】 井上さんがおっしゃるように、訴訟費用化しなくても、現行法のように、損害賠償としてできる場合もあるわけです。
【井上委員】 その点は、今、訴訟費用としてはカウントされない制度になっている。ところが実態から見ると、それでは非常に不都合な場合がある。それをどうやって、弁護士費用を負けた方に負担させようかという工夫の産物が損害賠償の損害に含めて考えるというやり方だと思うのです。そういうやり方で現行法の枠内で何とかしようとしている。
ですから、おおもとにさかのぼって考えると、訴訟を起こすために、現代の訴訟では、代理人というのは必要で、専門家が代理することによって、両当事者が自分の言い分を十分に主張できて、対等な立場で訴訟ができる。これはほとんど必須のことだろうということになってくると、これは言ってみれば必要経費ですね。それを、今までは、当事者それぞれが負担していたのだけれども、それではいかにも不公平になる場合がある。それをどっちに負担させるかという視点から見直していこうというのが元々の発想ではないか。私なりに理解するとですね。
【中坊委員】 井上さんのおっしゃっているのも、先ほど竹下会長代理のおっしゃるように、それも一つの訴訟費用化して、その上でそう考えようというのも、一つの方法かもしれないけれども、今おっしゃるように、それがないから、現行法のように損害賠償の一部として考えるのが異常だと、異常だとは言わないけれども、そういうものがあるから、やむを得ずそういう格好にしているんだと取るのか。今、おっしゃるように、損害賠償としてそれをやることが一番いいのか。私としては、今言うように、現行法は、交通事故などに限ってそういうことをしているんですよ。そういう現行法の規定の延長でいくのか、あるいはまさに竹下会長代理や井上さんがおっしゃるように、訴訟費用化してそういう方向へ行くのか。そのところがこれからまだちゃんと決めますという趣旨に言うてあげれば、国民も納得すると思うんです。それが訴訟費用化と言ってしまうから、自動的に敗訴者負担が原則化してしまう。
だったら、本人訴訟という場合もあるわけだし、いろんな場合も想定して、我々としてはその問題については、しかし、敗訴者負担にしなければ非常に利用しにくくなるという場合もある。それの方が利用しやすくなる場合もあるし、逆に萎縮させる場合もある。その二つがあるということはよく分かったから、それにふさわしい制度を今どうしようかということを我々は今提案しているんですということにしないと、今、おっしゃるように訴訟費用化ということになってくると、もう一段階その一つの選択をして、そうするとまさに皆さんがわっとおっしゃるように、訴訟費用化かという問題になってきて、萎縮させる場合が例外だどうだとなってくるから、そこを、今、言うように、ニュートラルに考えてやるのが一番良いのではないかと思うわけです。
【藤田委員】 この点は何遍も議論を重ねているところで、指摘されているように、交通事故とか不当な訴えの提起の場合に弁護士費用を損害の内容として賠償を命じる、負担を命じるということが、かなり広い範囲で行われているわけですけれども、これは不法行為に基づく損害として賠償するということになるんで、内容としてはむしろそっちの方が重いわけです。
ですから、大陸法系諸国で、権利の十全な実現のためには、一般的に必要なコストも敗訴者へ負担させるべきだということで、敗訴者負担が理念的に原則として行われているということで、私の考えは、むしろニュートラルというよりも、理念的に言っても、あるいは実務的に訴え提起を躊躇させる要因となるということからも、その方向で考えるべきだと申し上げたわけです。
そういう形でないと、現実の弁護士費用の一定額の負担を命じるとか、あるいは訴訟の類型によって、あるいは具体的な訴訟の経過によって、裁判所の裁量により負担を命じないこともできるというやり方は、根拠付けが難しいわけですから、そういう意味で具体的な弊害が生じないような手当をするという前提で、訴訟費用化ということで大方の意見が一致したのではないかと、私は認識しております。
【山本委員】 中坊先生がおっしゃるように、一つひとつのケースは確かに色々あると思うんです。ただ、我々が議論してきた今度の司法制度改革というのは、司法へのアクセスを強化して、正当な権利を侵害されている人たちが、訴訟を手軽に利用して、自分の権利の実現を目指すという方向性を打ち出してきているわけです。
そういうことからすると、弁護士費用を、これまで訴訟費用の中に入れなかったというのは、議論の趨勢としては、言ってみれば古い形だと考えざるを得ないんです。
ですから、原則的にはやはり敗訴者負担というのがまずあって、しかし、そうは言いながらも、救済すべき余地があるケースはたくさんあるから、これはできるだけ手厚く配慮しましょうということで理解してきたんですけれど、今改めて、一々ケースを見てニュートラルでいかなきゃいけないということになると、今までの議論と全く違ったものをもう1回しなければならなくなるのではないでしょうか。
【佐藤会長】 山本委員は、原則と言われたけれけども、我々は慎重にそれは避けて、「基本的に」という言い方をし、更に例外という言い方も止めましょうということで、修文してきたのがこの結果なんです。原則、例外と言われるとちょっと困ります。
【中坊委員】 訴訟費用化というのも、藤田さんもおっしゃるように、一つのルートであるというのは、私は別に否定もしていない。多少政治的な立場に立つような物の言い方ですけれども、これほど国民のあちこちから、大勢の人から、私も聞いてみたら、本当に訴訟を起こすときには、自分が負けた場合のことをまず考えるということです。そうしたら、相手方の費用まで負担させられるとなったら、それが萎縮するというのが、率直な気持ちだというのが、私の方に権利を行使したときに目減りするという目減り論と、萎縮するという萎縮論と、パラレルかと言えば、本当の人たちは萎縮する方が原則だと言っている最中に、訴訟費用化という概念のルートを設定するということになると、やはり負担させるのがどうしても原則として受け取られる。先ほど会長におっしゃっていただいたように、よほどニュートラルにしてもと言うても、やはり国民はそう受け取ってしまう。そこに我々の審議会の出した結論と今の国民の受け取り方に大きな乖離が出ているのではないか。
私としては、学者でもないし、しかし、これは確かに立法化する過程においてどのように扱っていただけるかは分からないけれども、少なくとも審議会の我々の結論が、今国民に訴えるときに、この問題についてどれだけか誤解がないように、私たちは全く他意はなかったんだからということが分かるような文章にしていかないといけない。私らだって何人かの弁護士さんから言われていますし、御存じのように、多くの弁護士会が弁護士報酬の敗訴者負担に反対決議をしています。今、おっしゃるように、それもそうかもしれないけれども、これだけ多くの人たちが反対しているときに、あえてそれを訴訟費用化というルートを設定する。先ほど言うように、損害賠償という一つの考え方もあるにかかわらず、これを訴訟費用化というルートに限る。訴訟費用化と言えば、当然のように負担するのが原則でという、先ほど藤田さんのおっしゃったように、少なくとも理念的にはそうなってくるという問題があるわけだから、この際我々としては、この審議会の意見を国民にどう訴えるかということから言えば、私たちはニュートラルですよということを、今、言うということが、我々の審議会の最終意見では大切なんです。
なぜならば、中間報告で、他のところよりもここが圧倒的多数に、この審議会の事務局にも意見が寄せられておるという現状を見たときに、その我々の周辺にある状況を踏まえて、我々の対応を考えないと、我々だけでここで、これならより理論的だと言うだけではいけない。
やはり、国民が我々の審議会の審議の様子をどう見ているかということを、謙虚に受け止めて、我々の審議の結論を出さないと、我々内部でそれがより理論的、理念的だということだけで処理するのは大変な過ちを私は犯すと思うんで、せっかく見出しから除いてもらったんだから、先ほど、髙木委員と同じように、括弧書きのところ、それを除いても文章は続くんだから、「これに相応しい場合に弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させる制度を導入すべぎである」と書き、また、本文の括弧書きの70ページのところを、「訴訟費用に含めて」というところの字を抜けば、これで我々の意図は出ているし、目減りするときには、敗訴者負担させるんですよということを我々は考えて、この制度を提案しているんですという趣旨が貫徹できると思うんです。
だから、わざわざ敗訴者負担、訴訟費用化というルートを設定してまでやる必要はないと私は思います。
【水原委員】 この問題は、審議の最初のころから、当審議会の目的では、国民に利用しやすい司法制度を構築することにあると。どうしたらならば国民に利用しやすいのかというところから議論が始まったと思うんです。
そのときに、まず問題になったのは、弁護士費用が高過ぎる。とてもじゃないけれども、頼むわけにいかない。実際、一般国民は弁護士費用がどれくらいなのか分からないので、高いという先入観念がある。そのときに、それでは弁護士費用を負けた方に負担させるならば、国民がより利用しやすいんじゃないのか。最初の議論のときには、大方がそういうところから出発しているわけなんです。
中間報告を出した後で、いろいろな国民のお声が出たことは事実でございます。しかしながら、審議会におけるこういうふうな細かい内容についてまで熟知した上での反対意見なのかどうかについては、我々は検証しておりません。私はここに書かれていること、修正された文言、これが正しくマスコミを通じて報道され、政府関係機関を通じて報道されたならば、なるほどそういうことかと、それならば納得できるねということになろうと、私は思っております。
したがって、元々の出発点がそういうところで、国民が利用しやすい司法制度にするためには、勝訴した場合には、相手に公平な限度において負担させるべきであるということを導入すべきだという議論になったわけでございます。
しかしながら、それだけで決まっているわけじゃなくて、その導入に当たっては、反対に不当に訴えを躊躇させないようにするため、一律に導入することなく、敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲、及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させる額の定め方について検討すべきであるとまで、ちゃんと丁寧に説明しているわけですから、これが正しく理解されたならば、反対意見も相当、私の考え方は十分理解されておりませんでしたということになるんじゃなかろうかと思いますので、原案に賛成です。
【北村委員】 私も初めの理解は水原委員がおっしゃったような形で理解しておりまして、ここで訴訟費用に含まれないとかというようなことを言われてしまいますと、理解できないのが、では、訴えて負けたときに、不法行為に基づく損害賠償みたいな、何か別の費用が掛かってくる可能性があるというのは、分かっていない者には一番分かりにくいところです。
例えば、裁判をするときに、こういう費用が掛かってきますよということは、やはり明らかにしておいていただきたいと思うんです。
そのときに、訴えて何で損害賠償なのかというのも、非常に割り切れないところがあります。
したがいまして、訴訟費用というのか裁判費用というのかよく分かりませんけれども、それをどういうような形で含ませて、負担させるのかということは、一応、明らかにしておく必要があるんだろうと、このように思うんです。
確かにいろいろとメールなどで反対意見が来ましたけれども、やはり誤解に基づくところのものがあるんじゃないか。それを、本文をきちんと読んでいただいて、分かっていただくということが必要なんじゃないかなと思っています。
【佐藤会長】 司会者として時間のことを申し上げるのはしんどいんですけれども、この議論だと平行線をたどって、なかなか結論が出ないおそれがありますね。
【中坊委員】 私たちの今の審理は、おっしゃるように、私はそう違わないと思っているところもあるんです。というのは、今、言うように、弁護士報酬という費用が、訴訟を起こしたときに敗訴者に負担させる方が目減りを考えている人には、それより訴訟を、水原委員のおっしゃるように利用しやすくなる場合もあるし、それを負担させたら萎縮する場合もある。その双方を我々はパラレルで見ていますということにおいては、我々の審議の内容はおおむね一致しているわけです。目減りを防ぐという意味と、萎縮させないようにという意味の双方があることについて。結論は水原委員のおっしゃるように、より利用しやすくするという意味においては一致している。
そうしたら、そこから先、訴訟費用化するというとこまで来ると、おっしゃるように、我々の意見は、必ずしも竹下さんなり私の言うていることとは、必ずしも一致していないけれども、一致している範囲で我々の審議をやってくるというのが、今までの我々のルールだったんだから、その範囲で止めて、これを最終意見にされるのが、そんな問題は今までも幾らもあるわけです。そこまで入り込めば意見は分かれているけれども、もうちょっと上位概念で括れば括れるという場合は、幾つもあったと思うんです。だから、そういう場合として考えてもらいたい。
【竹下会長代理】 それは量の問題の場合で、今、ここで問題になっているのは、制度が違うのですよ。ですから、ここで重なっている部分というわけにはいかないと思うのです。
【中坊委員】 重なっている部分はあるんじゃないですか。今、言うように、目減り論の場合も、萎縮論もあるし、両方ともあるから、その場合にちゃんと利用しやすくなるようにするという視点から、この制度を考えますという意味では一致しているんですよ。
【竹下会長代理】 目減り論だけではなくて、例えば、利息制限法違反で、本当は全部払っているのに、600 万円も700 万円も請求されたという消費者が、弁護士さんを頼んでやっと勝った。ところが、不当な訴えを起こされて勝ったのだけれども、自分の弁護士の費用は払わなければならないというと、これは目減りではなくて、現状よりマイナスになるのです。そういう場合もおかしい。それは訴えを起こした方に負担させなければおかしいではないかということになるわけです。
【中坊委員】 だから、目減りになるから敗訴者負担を適用して訴訟を利用しやすくする。
【竹下会長代理】 原告が勝った場合を考えれば目減りですけれども、被告が勝つ場合も幾らでもあるわけで、その場合は、全く弁護士報酬の持ち出しになるわけです。
【吉岡委員】 竹下代理のおっしゃるような事例というのは、確かにあると思いますし、その逆もあるのです。同じお金の貸し借りであっても、特に多重債務者とかの場合には、裁判所から呼出しが来ても行かれない方が結構いらっしゃるんですよ。そのために一方的に負けてしまうというようなことも起こっておりますので、負けた場合にはという場合も両方ありますので、個別のケースを取り上げていると今日一日あっても足りないのではないかと思いますが、さっき、水原委員が、元々、この審議会は国民に利用しやすい司法制度にどう変えていくかということを考えて立ち上がったはずだとおっしゃいまして、その中で弁護士費用が高すぎるとおっしゃった。それは、確かに、私も、弁護士費用が高い、あるいは不透明だという考え方がありましたので、そこのところ随分今回の意見の中では、制度として変わってきていると考えております。
そうは言っても、まだ弁護士偏在の問題だとか、数の問題だとか、解決されていない問題がたくさんあります。
それから、これは当初申し上げたと思うんですけれども、日本人の裁判嫌いと言いますか、訴訟に近づきたくない、そういう方が非常に多い。そういう人たちを、できるだけ裁判によって解決しようという意識に変えていくためには、利用しやすい制度にしなければいけないというのが基本だと思います。
そういう考え方でいったときに、誤解があるかもしれないけれども、今、こういう反対の声が非常に多く出てきてしまっているという問題があるのと、先ほど言いましたので繰り返しませんけれども、まだ条件整備として公平に争うことができない状況も弁護士の数にしろ、偏在にしろそうですけれども、これからやっていこうということに、今、合意を得ている問題があるわけですけれども、その合意を得た問題の着手は、まだこれからなんです。ですから、その辺のところを考えると、やはり時期尚早だと。
【佐藤会長】 吉岡委員の御意見としては分かりました。しかし、それは、中坊委員もおっしゃったように、この審議会としての合意点からやや遠い御議論であって、皆さんは、そうですねと言うわけにはいかないと思います。そこは御承知いただきたいのですけれども、その上で、訴訟費用化というタイトルを取ったのは、これを掲げると、原則化みたいに受け取られる、井上委員がおっしゃったことなんですけれど、誤解を更に増幅することもあるかもしれないということで、そこは止めましょうと言って止めたわけです。
先ほどから議論になっている「訴訟費用に含めて」ということは、一つの理由なんです。敗訴者に負担させる場合を考えたときの理由なんです。だから、井上委員がおっしゃったように、レベルが違うところがあるような気がするんです。
この部分についてすぐ結論を出すよりは、ひとまず括弧に入れて、他の問題に移らせてください。
【髙木委員】 我々の役割は何かという意味では、これから具体的に検討してもらう人たちに、この議論のメッセージをきちんと伝えるという役割があると思います。そういう意味では、今、中坊さん、あるいは会長代理の間で行われている議論の意味なり、それにはいろんなとらえ方があるんだろうと思うんですが、例えば、ここの「訴訟費用に含めて」というのが、要するにミスリードにならないように、その辺はちょっと御専門の立場で議論、検討していただいたら良いと思います。この議論を幾ら続けても平行線みたいな感じがちょっとありますのでね。
【佐藤会長】 平行線だと思います。これは最後の方でもう一遍御議論いただきますけれども、今日できれば結論を出していただきたいとは思っています。そこで、民事司法の他の論点について。髙木委員が手を挙げられましたので、どうぞ。
【髙木委員】 21ページの労働のところで、3つ目の枠内の○を作っていただいて、こういう記述をいただきましてありがとうございます。こういう書き方をしていただいて、おおむね申し上げてきた、あるいはいろんな関係の方々とお話ししてきた趣旨を体していただいていると思うんですが、その前の表現、民事調停のところでは、「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する」というような表現です。この「労働参審制」という言葉をお使いいただいてもいいのかもしれませんが、参審制のとらえ方について、いろんなとらえ方がございますようなので、この表現も、「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働裁判制度、労働関係事件固有の訴訟手続の整備等」くらいの書き方にしていただいて、「要否」とか「可否」とかいう言葉を使わなくてもいいような表現ぶりにしていただきたいと思います。実際に検討するときには、当然要否の議論、可否の議論になるんだろうと思いますが、そういうふうに御修文いただいて、22ページの真ん中辺の、その項の一番最後の3行についても、それに合わせたような書き方にしていただいたらいいんじゃないかと思います。
【竹下会長代理】 私も、この労働参審制というのは、ある意味では非常に狭い概念ですし、他方では、髙木委員がおっしゃるように、かなり多義的でもある。ですから、髙木委員のおっしゃるように、「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働裁判制度」という方が良いだろうと思います。
【髙木委員】 私、前回途中で失礼したもので、私の退席後、藤田委員からドイツの先生の御意見の紹介があった旨お聞きしました。そのドイツの先生の意見も読ませていただきましたし、ドイツ参審制に関する資料を改めていろいろ読んでみましたけれども、いろんな御意見がある。だから、この前のは一つの意見であり、他にもいろんな多様な意見があることを、御認識いただきたいと思います。今日、皆さんのテーブルの上にペーパーを出させていただきました。竹下先生の御本なども引用したりして失礼ですけれども、そんな議論のことも、当然、後で検討していただく場ではやっていただくということだと思います。
【竹下会長代理】 ですから、私は、この労働参審制という表現を髙木委員のおっしゃるように変えることは、大いに結構だと思うのですが、ただ、「導入の当否」とか、「整備の要否」という言葉を取ってしまうと、何か導入することや整備をすることが当然の前提になっているように読めますので、そこを何か可否というような言葉は入れられないでしょうかね。上のところは、「労働参審制の導入の当否」というのは、今、おっしゃられたように、「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働裁判制度」で結構です。それから、「労働関係事件の固有の訴訟手続の整備の要否」で、この「要否」を全体に掛けるということも考えられますが、いずれにしても、導入が前提だということにならないような表現を考えます。
【髙木委員】 検討の結果、どうするかということで構わないと思いますけれども。
【竹下会長代理】 ちょっとそこは修文を考えさせていただいて、その上で御相談いたします。
【藤田委員】 前回、髙木委員が退席された後で私が紹介したものですから、何か闇討ちみたいに思われてもいけないんですが、その前にシルケン教授の通訳をされた大学教授の全文を差し上げてありますので、内容は御存じだったと思うんですけれども、シルケン教授の考え方は、参審制度についてかなり慎重な考え方でした。しかし、それがドイツでの支配的な見解であるとまで申し上げたわけではない。議事録を読んでいただければ、お分かりいただけるはずですけれども、参審制度の本場のドイツでも、意見がいろいろある微妙な問題でもあるので、ここに書くのについては、慎重な配慮をお願いしたいということで申し上げたわけです。全般的に言うと、労働参審制というのが多義的で漠然としているということはあるんですが、逆に、労働裁判というと、これは訴訟のイメージというのが非常に強くなってくるようにも思われます。そういう意味では、むしろ多義的な方が適当ではないか。労働調停制度の方について、積極的な意見が展開されているわけでもありますし、いわゆる労働関係事件固有の訴訟手続、ヨーロッパ諸国で採用されている労働参審制の導入の当否ということでどうか。ヨーロッパ諸国で採用されている労働参審制を検討するということ自体はここに入っているわけでありますので、そういう意味では、むしろ労働裁判制という言い方がかえって誤解を招くのではなかろうかというふうに思います。
【竹下会長代理】 労働裁判制ではなくて、前に修飾語が付いているわけです。「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する」労働裁判制です。
【藤田委員】 その裁判というのが一つのイメージがあるんじゃないかということを申し上げているんです。裁判というのは訴訟も含めてということですか。
【竹下会長代理】 調停は上に書いてありますから、髙木委員の言っておられるのも訴訟の話です。それはそれでいいのだと思うのです。
【藤田委員】 早急に検討を開始すべきであるということになると、積極的な姿勢ということになりますね。
【竹下会長代理】 入れるか入れないかの検討ですから、ずっと先の話でも良いということではなくて、早くやりましょうという趣旨です。
【佐藤会長】 それは審議会の合意ができていることです。
【髙木委員】 その辺、後はお任せします。
【水原委員】 同じことになるんですけれども、我々の審議では、労働参審制度の導入をするという結論には達しておらないんです。だから、するかしないかについての検討を早急に始めるべきだということですから、ここに書いてあるそのとおりでいいと私は考えます。
【山本委員】 当否を検討するのはやぶさかではないんですが、前の段落の「労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方」、これだけではなくて、後ろの方に書いてあるように、労働委員会の在り方そのものの検討も必要じゃないかという現実はあると思うんです。審査だけに限定するんじゃなくて、それを前の方に出してもらえばバランスが取れるのかなと思います。
【竹下会長代理】 それも含む趣旨だと思ったのです。
【山本委員】 「労働委員会の在り方や、その救済命令」という形ではいかがでしょうか。
【竹下会長代理】 司法審査の在り方を議論すれば、どうしても労働委員会の在り方も検討せざるを得ないので、それを含むつもりでこう書いたわけです。
【佐藤会長】 本文のところでも、5審制の解消云々とかいろいろ出てきますからね。
【藤田委員】 山本委員のおっしゃるのは、例えば、労働委員会の不当労働行為の救済命令制度について、現在、労働者側からの申立てしかできないわけですけれども、使用者側からの申立ても認めるべきじゃないかという意見が出ていますので、それをおっしゃっているのかなと思ったんですが。
【山本委員】 そういう個別の話じゃないんです。現実に機能しているかどうかということです。
【髙木委員】 この場での議論は。
【佐藤会長】 細かな表現ぶりについては、6月1日に御決定いただくとして、基本的なことについては合意を今日は取っておきたいと思うんです。それで、3番目の○のところで、今の山本委員の御指摘もありますが、司法審査の在り方、それから、さっき代理も言われた雇用・労働関係に関する専門的知識・経験を有する者の関与する労働裁判制導入の可否ですか、訴訟制度の整備の要否について、早急に検討を開始すべきであるということ、今日の段階でとりあえずこういうことにさせていただいて、それを次回、確定してもらいたいと思います。今日、趣旨としてはこれでいいとお決めいただかないと、また、6月1日に蒸し返されることになって困りますので、そこはよろしゅうございますか。
では、細かな文章は考えさせていただくということにして。
【中坊委員】 34ページのところで、ADRの問題に関して、「隣接法律専門職種の業務内容」や、今日おっしゃったように「企業法務等」というのが入ってきて、それがそっくりそのまま82ページの弁護士法72条のところも、訴訟代理権も入ってきて、非常に混乱と言ったらおかしいかもしれないけれども、前回、確かに山本委員の方から、企業法務の問題について、意見が出て、それはむしろ後の方になりますけれども、84ページのところの「企業法務の位置付け」という問題のときに、司法試験合格後一定の実務経験をやれば、それで法曹資格の付与を与えても良いんじゃないかということに関連して、確かに、そのときに、竹下会長代理が、そういうものとも関連してくるんじゃないかというお話がありましたけれども、その問題は勿論ここで議論していないし、しかも企業法務そのものというのは、本当に千差万別があるわけです。他の隣接業種だったら、皆さん、資格とか、何かによって限定されていますけれども、企業法務と言えば概念は無限大に広がるわけで、私としては、ここのところに、隣接業種と同等の立場で企業法務を並列してお加えになったのはおかしいんじゃないか。それはそっくりそのまま、後に出てきますけれども、弁護士法72条のところにも同じように出てくるんで、これはもう一度、これはそういうことで議論をしていないし、私はここに導入されるのはおかしいんじゃないかと思うわけです。
【竹下会長代理】 これは随分前から山本委員が言っておられることで、例えば、親子会社のような場合で、親会社の法務部が子会社の法律事務や何かを処理することが、弁護士法72条に違反すると言われるのはおかしいのではないかということです。
ここで書いてあるのは、34ページも82ページも、むしろ弁護士法72条の規律内容をはっきりさせてくださいということなのです。どうしてはっきりしないのかというと、今のような企業法務の例で、常識的に考えると、当然ではないかと思うようなものまで形式上は72条に違反するということになりそうなのです。それから、隣接法律専門職種との関係でもそうです。一方では弁護士法では、弁護士法に別段の定めがある場合でなければ、報酬を得る目的で他人の法律事務を扱うことを業とすることは許されないと言っているのに、他の法律で別段の定めをしてあると、それはよいということになっているのは、やはり国民の目から見ると非常に分かりにくい。そういう意味で、72条の内容を見直してくださいというのがここの趣旨なのです。
ですから、企業法務をどうとかしろという話ではないのです。
【中坊委員】 文章全体を読むと、そうはいかない。
【佐藤会長】 今、代理が言われたとおりだと思います。
【中坊委員】 おっしゃるように、企業法務というものがどう関係するか。親会社が子会社の相談に応じるということがいいかどうかという問題は、確かに山本委員の方から提案はありました。しかし、私たちとしては、いやしくも法律業務そのものということは、やはり弁護士法72条がある。そうすると、隣接業種と弁護士業務との関係は、確かに今までここで議論してきました。ヒアリングもしました。しかし、企業法務というものが、親会社、子会社だから何もかもできるということになってくると、これこそまさにいろんな意味における大混乱が起きてくるので、そうなってくると、まさにそこが範囲の問題というよりも、確かに隣接業種との間は、一つの資格があって、その問題についてはあるけれども、企業法務だと言えば何でもかんでも通じるということになってくる問題があるわけです。
そこを考えるならば、この間、山本委員がおっしゃったからと言って、34ページの一番下に入り、それからまた同じことが今度は弁護士法72条で、82ページ辺りでまた入ってくるというのは、私としてはおかしいんじゃないかという気がするんで、その点は考え直していただきたいと思うんです。
【水原委員】 中坊委員の今日お出しになられた意見書を拝見いたしますと、ここの記載は「『企業法務等』に訴訟代理権等を付与するか否かに関しては、十分な審議もなく、むろん審議会で合意があるわけでも、何らかの方向性が示されたわけでもない」とお書きになっています。この意見書案のところでは、これは決して代理権を付与するということでは全然ございませんで、全く触れておりませんで、私が法律家として、弁護士法の72条を読んでみましても、どういう場合が許されるのかというのは非常に難しい問題でございます。それについて、72条をもう少しよく検討しましょう、よく意味が分かるようにやってもらいましょうという趣旨で書かれているものだと思うので、私は、そういう意味においては、決して原案に固執するわけではございませんけれども、この案で結構だと思います。
【佐藤会長】 中坊委員、そういう趣旨なんです。およそ訴訟代理とは関係ない。
【中坊委員】 そこに出てくるんですけれども、私としては、企業法務という概念が非常に千差万別でしょう。そういうものを、今、隣接業種と並行に並べてお書きいただいているんで、それが、今、会長代理のおっしゃるように、一つの問題提起の仕方ではあったかもしれません。確かに弁護士法72条が完全無欠であってと言うよりも、今、まさに隣接業種との関係において問題になってきたというのは分かります。しかし、それはそれにとどまるのであって、企業法務で、子会社のことを親会社がやることの問題ということにまで範囲が広がってきますと、まさに資格を要件としている法律業務というものの意味がどうかということになってくるんだから、私は企業法務は企業法務として、ここに「企業法務の位置付け」というのが84ページに出てきますが、この中で処理すべきことです。
【佐藤会長】 84ページに出るのが難しくて、ここの関連で山本委員は言われたんです。
【中坊委員】 84ページのところに、そういうふうにお書きいただくのはいいけれども、法律事務独占のところというか、72条のところに、あちこちに同じ文章が出てくると私は誤解を招くんじゃないか。
【佐藤会長】 84ページは、法曹資格の問題だから、ここに企業が入っていると難しいというので、むしろこっちの方で。
【井上委員】 これは別に企業法務だけに限らないと思うのです。72条がどこまで規制しているのかということは、現代社会においては非常に分かり難くなってきていると思うのです。だから、その内容を明らかにしてくれということであって、法律事務独占を解けということを言っているのではないのですよ。
【佐藤会長】そういう趣旨としてここは。山本委員、大分言いたいことがおありだと思うんですが、そういう趣旨として御理解いただけませんか。
【山本委員】 小さい部分でも検討していただきたいと思います。
【髙木委員】 時間もないのにあれですが、私も関係しているところの企業に、法務部なり法務室の仕事はどういう仕事ですかと聞いてみました。例えば、弁護士さんとの関係もどういう役割分担になっているんですかと聞きましたところ、これはまさに企業ごとにものすごくその位置付け方も違います。多様な内容を一つにくくる言葉として企業法務という言葉が使われていますが、この前、山本さんがおっしゃったように、持株会社の抱えている訴訟などに親会社の法務部がコミットする程度をレベルアップしたいというお考えが企業として当然ある。ついては、そういう議論をする余地を残しておいてくださいというのが御趣旨だったと思うんです。
そして、84ページは、まさに司法試験を通られた後、企業法務等で働いておられるが研修所に行かれていないような人たちに法曹資格を付与するかどうかの話だったと思います。
【中坊委員】 確かに、今、会長のおっしゃっていただく趣旨も分からぬでもないけれども、同時に企業法務という言葉が一人歩きして、それが非常に、こういったら語弊があるかもしれないけれども、戦線拡大というか、そういうことの一つに使われてきている経緯も実際あるわけでして、その隣接業種というのは、審議会でも議論もしたし、そうだけれども企業法務の問題から、そこも全部出てくるということが、またここにパラレルに書かれるということについて、私は誤解を招きはしないかということを危惧するということなんです。
【佐藤会長】 ここは、さっきから申し上げているように、72条の明確化との関連で触れているということで、御理解いただけませんか。決して大きな話ではないと。
では、先を急ぐようですけれども、行政訴訟についても御意見をいただいておりますけれども、基本的に原案で御辛抱いただくことにして。
では、10分休憩して、4時に再開いたします。
【佐藤会長】 それでは、再開させていただきます。時間も本当に切迫しておりまして、司会者としては気が気でないというところでありますが、そう言うと言論を封殺すると言われそうですけれども。刑事司法の方は、大体こういうことでなかったかと。勿論、いろいろ御意見がおありであることは承知しているつもりですけれども、いかがでしょうか。
【髙木委員】 私も、毎回申し上げていますが、ここ数年の国民の意識は、急激に変わっているように思うんです。そういう中で、例えば、裁判員制度、これも皆さんで、それぞれの受け止め方によって違うかもしれませんが、つい最近も、ある法曹関係者の方とお話ししておりましたら、その方いわく、もっといろいろ国民から抵抗というか、いろんな国民の意見が負の方向で働くんではないかと思っていたけれども、昨今のこういう国民の感覚の変化はすごいとその方はびっくりしておられました。
そういうことも踏まえて、我々は21世紀、どれぐらい先のことまでを想定するのかあれですが、ともかく2010年とか2020年とかいう具体的な時期も意見書の中に書かれている。それぐらいのスパンで見たときに、独立評決というか、ああいう感覚の論議についていろんな御意見があるのは承知しておりますけれども、この前は全部そういうことも含意にして書き込んであるんだという御説明もございましたので、それはそれかなと思って聞かせていただきました。この間、もう一度、中間報告等を読み返してみまして、中間報告等の表現等も、また全部戻してくれということではないんですけれども、最終意見書ではもう一度踏み込んでいただくようなことで、将来に向けてそういうことを、時至れれば議論できるんだというニュアンスを幾分か強めていただけないかと思います。
私の意見書にいろいろ書かせていただきましたけれども、これは御検討いただきたいと思います。
【佐藤会長】 今の点は、国民的基盤のところで少し御相談することにします。とりあえずと言いますか、順番で刑事司法のところは、大体これでよろしゅうございましょうか。
それから、50ページの「国際化への対応」ですけれども、鳥居委員が前回おっしゃったことを、こういう形で取り入れさせていただきました。よろしゅうございましょうか。
【鳥居委員】 ありがとうございました。
【竹下会長代理】 それから、そこは北村委員から専門化ということも加えてはどうかと言われたのですが、そこの記載の内容が、どうも専門化ということをタイトルに入れるほどではないですし、それから専門化については余り議論も十分されてなかったので、申し訳ないのですけれども、このままで御勘弁いただければと思います。
【佐藤会長】 それから、52ページのところですが、これも鳥居委員がおっしゃったことですけれども、「司法制度に関する」云々、こういう形で入れさせていただきました。
特定共同事業について説明するということだったのですが、これで明らかになっているのかどうか分かりませんけれども、一応定義的にこういう形で入れました。このところまではよろしゅうございましょうか。
次に、54ページの「司法制度を支える法曹の在り方」ですけれども、ここはまず細かな人的基盤のところはすぐ後で御相談申し上げます。
【鳥居委員】 極めてつまらないことですけれども、54ページの下から2行目に「法律専門職間」とありますね、「間」の字は括弧の右後に入れた方がよろしいんではないでしょうか。
【佐藤会長】 はい。それでいいですね。
【竹下会長代理】 第一読会は、そうなっていたように思ったのですけれども、では結構です。
【佐藤会長】 それで、人的基盤の56ページ、それから58ページですが、すぐ後で御相談申し上げます。
細かなところで、62ページの法学部に基礎をというところですが、「組織上の」と入れさせていただきました。これは髙木委員の御指摘があったところかと思います。
それから、70ページで「受験資格」のところなんですけれども、下から3段落目「いずれにしても」のところですが、「いずれにしても、21世紀の司法を支えるにふさわしい資質・能力を備えた人材を『プロセス』により養成することが今般の法曹養成制度改革の基本的な視点であり、およそ法曹を志す多様な」というように、「およそ法曹を志す」という言葉を入れました。中坊委員御提出のペーパーの中にあったので、代理と相談して、これをここに入れたら、我々の意図した趣旨が少しでもより強く出るんではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。どれだけ趣旨が強く出るか分かりませんけれども、入れた方がよろしいんではいなかと思うのですが。
【竹下会長代理】 それから、その70ページの下から5行目のところから、アンダーラインが引いてありますが、これは前回の藤田、水原両委員の御指摘によって、付け加えたところです。
【髙木委員】 会長、70ページの真ん中の辺りに「この場合には」と、これは括弧書きになっていますね。
【佐藤会長】 はい。
【髙木委員】 この部分は括弧を取って本文化したら良いと思います。一番最後の「考慮に値する」というのは、何かもう一つの表現なんで、ここを、例えば、どういう表現がいいのか判りませんが、もう少し明確に書いたらどうでしょうか。
【井上委員】 これを括弧に入れたのは、「例えば」のところを受けた「この場合」だからなのです。それを本文に出しますと、「適切な途」の方につながってしまう可能性がある。それで、誤解を招かないように、括弧書きにして、予備的試験ルートを採った場合にはそのようなことも考えられることを付記した。そういう趣旨なのです。
また、「考慮に値する」というのは、ここではそこまで突っ込んで議論してないものですから、本文のような「考えられる」案を検討する場合には、この点も含めて検討したらどうかということを示したものなのです。
【髙木委員】 設けることも必要であるとか、何かもう少し。
【井上委員】 そこまで合意しているかどうかなのです。合意しているということでしたら、それでも結構なのですけれども。
【髙木委員】 御検討ください。
【佐藤会長】 どうしましょうか、今日中にできれば。
【竹下会長代理】 「ことも考慮すべきである」か何かにしますか。
【佐藤会長】 「考慮すべきある」、そうしますか。
【髙木委員】 分かりました。
【佐藤会長】 では、そこはそのようにさせていただきます。
【井上委員】 そこまで言っていいかどうかですね。修文については、もう少しお考えください。
【佐藤会長】 まあ、仮の話ですから。
【水原委員】 決してこだわるわけではございませんが、本文で、「なお、予備的な試験に合格すれば新司法試験の受験資格を認めるなどの方策を講じることをした場合の受験回数については、別途検討が必要である」、この文章を入れていただいたのは大変ありがたいんですけれども、この間も申しましたけれども、69ページの五つ目の○、ここだと、この意味が、先ほど70ページで追加していただいた意味が取れるのだろうかと思います。「適格認定を受けた法科大学院の修了者の新司法試験受験については3回程度の受験」となっておりまして、この適格認定を受けた法科大学院の修了者以外の新司法試験の受験についての回数制限が、これでは読み取れないのではないかという気がいたします。
【井上委員】 確かにそうなのですけれども、ここでは、少なくとも我々が合意して、提言することを囲いの中に入れたと、そのなお書きのところはオープンですよ、これから更に検討してください、別途検討が必要であるということなので、この括弧の中は、飽くまで提言している部分という位置付けなものですから、そこには書かれていないということです。しかし、本文の方をちゃんと読んでいただければ、その誤解は解けるはずだという構成になっているわけです。
【水原委員】 あえてこれ以上は、ここではいたしません。
【藤田委員】 なお書きの受験回数というのは、予備的な試験の受験回数ですか、それとも新司法試験の受験回数ですか。
【水原委員】 新司法試験という趣旨です。
【井上委員】 この「なお」ですか。
【藤田委員】 はい。
【井上委員】 「なお」のところは、その両方を含めてです。
【藤田委員】 両方ですね、分かりました。
【水原委員】 そうですか。
【髙木委員】 その前の「(ただし、回数制限内に合格できなかった者が法科大学院の課程を再履修することを妨げるものではない。)」、こんなこと書くんですか。
【井上委員】 この間、水原委員からもそういう御意見が出たのですけれども、実際に結構そういう問合せがあるみたいなのです。
そういう誤解を生じている可能性があるので、念のために書いたというだけの意味なのです。
【髙木委員】 2年か3年行って、また3年経って、また行って。
【井上委員】 だから、それは妨げられないと思うのです。
【髙木委員】 いや、妨げないけれども、このように本文に書くような本質的な話かということです。
【井上委員】 皆さんの御意見で、余計なことだということならば、削ってもいいのではないかと思いますけれども。
【佐藤会長】 問合せがあったということですね。
【井上委員】 はい、結構あったというものですから、入れておいた方が親切かなという趣旨です。ただ、本文化するほどのことではありませんので、括弧でちょっと小さい活字で書いたということなのですが。
【吉岡委員】 むしろ当然だという考え方で、取ってしまってもいいんではないかと思いますけれども、水原委員の御意向が。
【水原委員】 私も同感です。
【藤田委員】 取った方がいいんではないでしょうか。
【佐藤会長】 取りましょうか。
【井上委員】 この場で、実質としては、それは当然だということを確認しておいていただければ、問合せがあったときにそういうことだと答えられますので。
【藤田委員】 私は敗者復活は認めない方がいいんではないかと思うんですが。
【井上委員】 敗者復活ですか。
【藤田委員】 はい。
【井上委員】 それは、この前ちょっと議論しましたね。
【藤田委員】 いや、もうこだわりません。
【佐藤会長】 どうもありがとうございます。
【井上委員】 さっきの「考慮に値する」という点はちょっと。
【佐藤会長】 一応しておくけれども、止めますか。
【井上委員】 「考慮すべき」ということにすると、かなり強いので、そこまで議論したかどうかなのです。その何か中間ぐらいの表現があればよろしいのですが。
【竹下会長代理】 それでは、仮にということで。
【井上委員】 はい。
【佐藤会長】 「弁護士制度の改革」まで。74ページ以下は後でまた議論します。
【北村委員】 ちょっと戻ってしまうんですけれども、言葉の使い方を教えていただきたいのは、法律専門職という言葉を裁判官、検察官、弁護士と法律学者という使い方になっているんですが、これはそうなんですか。というのは、会計専門職と言ったときに、企業において働いている実務家も入れてるんです。それで、これはその四つだけなんですか。
【佐藤会長】 さっきの54ページですか。
【井上委員】 別に定まった定義があるわけではないから。
【北村委員】 ここではそういう意味で使うということなんですか。要するに、一般的な使い方と外れた使い方をしているというと、おかしいなと思うんです。だから、私はよく分からないので。
【井上委員】 その言葉をどう使うかは、ここで決めればいいことですけれども、社会通念的に言うと、三者プラス法律学者ということだろうと思います。
【北村委員】 そうなんですか。企業のところに勤めていらっしゃる方なんかは入らないんですか。
【井上委員】 「法律専門職」とまではなかなか言えない。
【北村委員】 例えば、企業法務とかは言わないんですか。
【井上委員】 はい。
【佐藤会長】 言わないと思います。
【北村委員】 そうですか。
【井上委員】 内容的にも、まだそこまで熟してないということもありますから。
【佐藤会長】 それこそ、さっきのお話しのように様々なものがあり、ちょっと言いにくいと思います。
【北村委員】 というのは、いろいろと相互交流を図ると言ったときに、そういう人が入らなくなってしまっている書き方になっていますね。そういうことなんですね。
【佐藤会長】 それはそうです。
【山本委員】 この四つに限定することは、ないんじゃないですか。10ぐらい欲しいところですね。いろんな形ができてくる可能性ありますね。
【井上委員】 法律の上で根拠があるとすれば、裁判所法だと思います。そこで一応、法律学者までは裁判官になる資格等の点で一緒の扱いをされているのです。法律学者がそれに本当に値するかどうかという議論はありますけれども、一応、法律的にはそこまでは一つのグループとされているものですから、そういうことではないかと思います。
【佐藤会長】 ここは普通言っていることというふうに理解してください。将来は分かりませんけれども。
そうしたら、一応、他のところは、大体これで御了承いただいたことにしまして、先ほど来、言ってきました、56ページ、58ページ、それから総論のところで、各論のところと併せて御議論いただきますと申しました13ページの一番下の段ですがここについて御議論いただきたいと思います。事務局長、資料はお手元に配布してありますか。
【事務局長】 この意見書の下に、2枚組のものが2通入ってございます。
【佐藤会長】 ちょっとお開きいただけますでしょうか。
まず、13ページの方ですが、一番下のところで「(検討中)」とありますが、そこにありますように、見え消しと、それが読みにくいもんですから、次のページに文章化しております。要するに、「政府におかれては、今般の司法制度改革の意義及び重要性を踏まえ、本改革の早期かつ確実な実現に向け、内閣を挙げ、本格的に取り組まれるとを期待する。本改革の実現には、これに必要とされる人員・予算の確保が不可欠であり、厳しい財政事情の中にあって相当程度の負担を伴うものであるが、政府におかれては、これまでの経緯にとらわれることなく、真にこれらの諸改革を実現しうる方策をもって、大胆かつ積極的な措置を講じられるよう、強く要望する次第である」という文章にしてはどうかということであります。
56ページと58ページでありますが、まず56ページの囲みの中の3番目の文章ですが、「司法を支える人的基盤については、行政改革を円滑に実施する観点からも、その飛躍的な増大を図っていくことが必要不可欠であって、そのために、法的措置を含め大胆かつ積極的な措置をとるべきである」ということであります。
58ページの一番下の方ですが、「司法を支える人的基盤については、行政改革を円滑に実施する観点からも、その飛躍的増大を図っていくことが必要不可欠であって、そのために、法的措置を含め大胆かつ積極的な措置をとるべきである」、こういう表現にしてはいかがかというのが原案でございます。
いろいろなことを考えたんでありますけれども、当審議会の意見として意味するところは、第一読会でお示ししたものと、そう異なるものではありません。この審議会としては、現下の厳しい財政事情を客観的情勢として十分認識しながらも、21世紀の我が国の社会情勢が大きく変容していく中で、司法の役割が極めて重要になっていくということを踏まえまして、今般の司法改革においては司法の人的基盤の充実・強化が不可欠である、このことは行政改革の理念にもかなうものである、という結論に至ったものであります。
このような審議会の認識、姿勢を示した上で、政府に対してその確実な実現のための措置を促したい、お願いしたいという意図に基づきまして、先ほど紹介しましたように、総論部分に修正を施した次第です。
先ほどのところですけれども、各論部分の修正は、政府において司法の人的基盤の充実・強化を確実に実現するための措置を講じていただきたいということ、そして、その方法として、立法等の法的措置が必要とあるのであれば、何らか必要かもしれませんが、それが必要であるということであれば、当然それも含めて具体的に検討してもらいたいという趣旨を明確にするために、先ほど紹介したような文章にさせていただいたわけであります。
中坊委員がおっしゃった御提案も、この中に参考にさせていただきまして、こういう表現ぶりにさせていただきましたが、いかがでございましょうか。
【水原委員】 1点は、13ページのところの下から2行目で「大胆かつ積極的な措置を講じられるよう強く要望する次第である」、後の56ページ、58ページには「法的措置を含め、大胆かつ積極的な措置を取るべきである」とあるんですが、この13ページには「法的措置を含め」というのが抜けているのは、どういうわけでございますか。
【佐藤会長】 入ってないということですね。抜けたというよりも、初めからないんです。
こちらは、もっと大きな全体の中で、21世紀の司法制度の実現に向けてということ、そして行政改革の理念との関係とかをここで書きまして、一般的な姿勢を明らかにし、そして後の方は、具体的にどうすべきかという点について、より具体的に書かせていただいたということです。そこで、そのために「法的措置を含め」というように入れさせていただいたわけです。
【水原委員】 ありがとうございます。もう1点ですが、56ページと58ページに「そのための法的措置を含め大胆かつ積極的な措置を講じる必要がある」というのが原案でございますが、「そのために」というのは、何か意味であるんでしょうか。
【佐藤会長】 実を申しますと、この56ページは大変申し訳ないことなんですけれども、私と代理との検討中の文章が入ってしまったんです。お気付きの方もいらしたかもしれませんが、それでその過程のものが入ったもんですから、この文章も含めていろいろリファインさせていただいて、その結果が今日お出ししたようなものとなっているというように御理解いただければありがたく思います。リファインした結果であるというように。
【水原委員】 もう1点、この問題は前回相当の委員からいろいろな御意見、御提言がございました。司法関係職員の人的体制の充実につきましては、いろんな委員から意見が出ましたし、中間報告にございました、「他の行政分野とは異なる取扱いをする」という、中間報告にはそう書いておりましたが、それが落ちております。
それから、定員削減計画の枠外とすべきであるという意見も、相当出ておりました。ところが、今回の2次素案では、その趣旨のことも記載されておりません。私は、「法的措置を含め」という言葉が入った点は、これは非常に高く評価いたしますけれども、まだ中間報告よりもちょっと歯切れが悪いなという感じがいたしますんですが、その点についてのお考えをお聞かせいただければと思います。
【佐藤会長】 この審議会の認識としては、中間報告当時でも現段階でも、今般の司法改革においては、司法の人的基盤の充実・強化が不可欠だということ、そういう意味では全く異なるところはないというように申し上げるべきかと思います。
中間報告で、「他の行政分野と異なる取扱い」というように言っておりましたけれども、今般の司法制度改革の重大な意義や、その実現のための人的な基盤の充実・強化の不可欠性からして、この司法以外の分野とは異なった視点で臨む必要があるんではないかという問題意識を、異なる取扱いという中間報告の言葉で示しているんではないかというように考えるわけです。
ただ、他の行政分野について、私ども詳細に検討したわけでありません。司法以外のですね。他の行政分野でも人的基盤の拡充が必要なところもありましょう。そういうこともありまして、無用の誤解を避けて、この審議会としてのメッセージの核心部分を、明確になっているかどうかはともかくとして、その核心部分を明確に伝えたいという苦心の結果でございます。
【水原委員】 もうこれ以上は申しません。政府関係御当局において、当審議会の熱い思いが十分くみ取っていただければということを願う次第でございます。
【佐藤会長】 こういうことでよろしゅうございましょうか。
【佐藤会長】 ありがとうございます。では、ここのところは、そういうように修文させていただきます。ありがとうございました。
それでは、73ページまで御審議いただいたということにいたしまして、74ページ以下つきまして、御審議いただきたいと思います。75ページですが、水原委員でしたか、弁護士法30条2項の話についてお話しになりましたので、こういう形で取り入れさせていただきました。
代理、76ページのところはこれでいいですか。
【竹下会長代理】 そうですね。前回、ちょっと修文をさせていただくと、お断りしておいたところでございます。
【佐藤会長】 中坊委員の方から、司法書士についての御指摘がありました。82ページ、83ページの訴訟代理権の問題でありますが、私も確認しますと言って、確認させてもらいました。それを読みまして、そのときの様子をまざまざと思い出したんでありますが、中坊委員が歴史的な経緯から説き起こされ、決して便宜だけで考えてはいけないということを強調なさり、そうした点は我々として心すべきところであろうというように、受けとめさせていただきました。ただ、他の委員の方々は、北村委員の集中審議の御報告およびその後の審議、また当日の議論でも、訴訟代理権を認めるべきではなかろうかということであったというように思う一方、中坊委員の大演説の後だったもんですから、それもあって、それもあってというのは変な言い方ですけれども、前向きに検討させていただくという形で、当日は引き取らせていただいたんであります。そのときも、その後も、やはり司法書士については、この機会に認めるのはやむを得ないんではないかというのが大方のの雰囲気ではなかった、大体そういうお考えではなかったかと思いまして、この原案のような書き方をさせていただいた次第なんです。
確かに議事録では、前向きにということでしたけれども、そのときの皆さんの大体の御意見を踏まえて、そういう言い方をさせていただいたということなんですが、中坊委員からは、私の今のような説明で、何も説明になってないとお叱りを受けるかもしれません。そのとき私は、中坊委員は「うん」とは申しにくいでしょうが、と言い、そのことも議事録に載っておりますが、当日は、確かに、いろんな議論を踏まえ、いろんなことを考えまして、そこで決め打ちにはしなかったことは確かですけれども、大体の意向を踏まえますと、付与してしかるべきではないかという方向であったと思います。ただ、範囲の問題について、少し留保がありまして、それがこの間もちょっと御議論になったところかと思います。83ページの2段落目の3行目ですね。「簡易裁判所における調停・即決和解事件」云々と、これを原案の中に入れさせていただいたわけです。
代理の方で何かありますか。
【竹下会長代理】 それで、この括弧の中なのでございますが、これは前回も藤田委員と私と若干発言をいたしましたけれども、やはり調停や即決和解についても、簡易裁判所の事物管轄の範囲内ということであれば、大体ここでの御意見の一致が得られるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
後へこのまま引き継ぎますと、また検討しなければならない。これ自体、決して軽い問題だというわけではありませんけれども、簡易裁判所の場合に調停と即決和解については、事件の経済的な価値を基準としないで、すべての事件について代理権を認めるというのも、やはりバランスを失するかと思いますので、むしろ、82ページのこの枠の中の最初の黒ポツですが、「信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである」の後に、併せて、簡易裁判所の事物管轄を基準として、民事調停、即決和解の代理権も付与するべきであるというようなことを、はっきり記載した方がよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
【藤田委員】 前回申し上げましたように、訴訟代理権を認めた以上は、調停、即決和解というのは、結局本人が合意しなければできないわけですので、制限する理由はないのではないかというふうに申し上げました。検討が必要だということ自体は、それは結構でございますけれども、本来の事物管轄でという方向性を強く出されるというよりも、具体的な制度設計する場合の検討に委ねるということの方がよろしいんではなかろうかというふうに私は考えます。
【竹下会長代理】 ただ、かなり大きな問題で検討事項がいろいろ残っておりますので、できればこの問題はここで決着を付けたらいかがかと思うのでございますが、どうでしょうか。
この間は、私も即決和解については、なかなか事件の経済的価値というのは分かりにくいのではないかと申し上げましたけれども、弁護士報酬基準などを見ますと、示談交渉のための弁護士報酬というのは、一応経済的な価値を基準にしてその計算の仕方が書いてありますので、やはり一応基準はありうると思われますので、簡易裁判所の事物管轄を基準としてということで、将来のことは別として、この審議会としてはそう決めたらどうかと思うのですが。
【佐藤会長】 よろしいでしょうか。いろいろなことを考えた結果、こういう線でということで。
【藤田委員】 はい。離島、へき地の実情ということで、今まで申し上げていたわけですけれども、皆さんの総意がそうであるということであれば、それにはあえて反対いたしません。
【竹下会長代理】 枠の中へ入れて、後ろの方もそれに応じた修文をさせていただくことにします。
【佐藤会長】 中坊委員もいろいろおありでしょうけれども、何とか。
【竹下会長代理】 のみ込みにくいところを。
【佐藤会長】 よろしくお願いいたします。
【藤田委員】 私ものみ下ろしたわけではありません。
【竹下会長代理】 どうも。
【佐藤会長】 藤田委員もそうでしょうけれども、よろしくお願いします。どうもありがとうございます。
【竹下会長代理】 弁理士の問題がありまして、これも議事録を確認するということで、議事録を確認いたしました。これは私の記憶違いでございまして、議事録上は明確に、弁護士が訴訟代理人に付いているということは条件ですけれども、出廷については弁護士と共にではなくとも、単独で出廷できるというのが議事録に記載されているところでございました。したがって、藤田委員が前回おっしゃられたのとは違うことになるのですが。
【藤田委員】 私は、裁判所の現場が反対しているということを申し上げただけです。
【竹下会長代理】 そうですか。議事録ではそうなっておりますので、文言は別としてその趣旨に修文させていただきたいと思います。例えば、82ページの枠の中で言えば、2番目の黒ポツでございますけれども、代理権については信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、単独での出頭も含め、これを付与すべきであるとかいうような表現にしましょうか。
【佐藤会長】 代理権であれば、普通は当然そこに入るんですね。
【竹下会長代理】 そうなのですけれども。
【佐藤会長】 わざわざ書かなくても、今、ここで確認したらいいんではないですか。
【竹下会長代理】 そうですかね。では、そういうことにいたしましょうか。
【佐藤会長】 では、以上で済まさせていただきます。脱兎のごとくなってきていますけれども、次に88ページの裁判官制度のところでございます。90ページの調査官制度の拡充のところは、この間も御議論が出ましたので、こういう書きぶりにさせていただきました。可能性ということを少し強調しております。
91ページの「ブロックごとに設置することを始めとして」というところですが、これも御指摘があったことで、「ブロックごとに設置することなど」というように、その趣旨を取り入れさせていただきました。
92ページ、ここも司法行政と人事評価の関係でいろいろ御議論あったんですが、特に藤田委員の方からも御指摘のあったところですけれども、92ページのような書き方にさせていただいたのと、それから93ページの評価権者のところは、「例えば」という括弧書きを落とさせていただきました。
95ページの法曹等の相互交流のところでありますが、これは前と重複しているというようなこともございまして、整理してこういう形にさせていただきました。
判事補についてですが、いろいろ御議論のあったところですけれども、事務局で検討してもらい、「多様な法律専門家としての経験」という表現でいかがかということで、こういう修文にさせていただきました。何か所かに、同じような表現が出てくることになります。要するに、経験の中身を法律専門家のそれに限定するという趣旨ではなくて、法律専門家としての視点、観点を踏まえて経験を積んでいただくという趣旨のものとして受け取っていただければ結構かと思っています。いろいろ御議論があったところでありますが、何とかこういう表現で御納得いただけないかということであります。
【藤田委員】 第一読会でも散々申し上げましたので、もう皆さん耳にたこだろうと思うんですけれども、先ほどの北村委員の法律専門職というのは何を指すのかという御質問とも関係があるんですが、やはり立法府、行政庁、民間企業、あるいは留学という話もありましたけれども、そういう多様な経験ということが望ましいという意味では、「法律専門家として」というのは削った方がいいのではないかということです。代理の御提案でも囲みの中は削りましょうかというようなお話がございましたが、各委員の意見書、あるいは審議での御発言を見ますと、この点に触れられている方が9人おられるんですが、そのうちの6人の方は、やはりそういう多様な経験の方を重視して、法律専門家という記載は除いた方がいいんではないかというような御意見をおっしゃっておりますので、勿論反対の意見もあるということは承知しておりますが、いかがかなということで、期待を持って今日参ったんであります。ただ今の会長のお話ですと、法律専門家という内容については、必ずしもそういう法曹資格を持っている者に限るというようなことではなくて、幅広く考えるんだという趣旨に理解していいんだという御趣旨でしょうか。
【佐藤会長】 88ページのところですが、5月8日でしたか、確認させてもらったところですけれども、「同視できる程度に」とかなり含みのある表現にしているつもりです。勿論、本流がどうだという議論もあり、そのことも踏まえてこういう含みのある表現にしましたので、将来、裁判所がより立派になっていく上での事柄と大きく受けとめていただきたいということです。
【藤田委員】 その「多様な」という表現の位置が動いたのが、そういう趣旨だということを確認していただけるならば、それはそれでも結構なんです。
【佐藤会長】 では、よろしゅうございましょうか。
【佐藤会長】 ありがとうございます。
【竹下会長代理】 95ページのところは、確かに、北村委員はここを全部総論の方に持っていったら良いではないかという御意見でした。そこで、ここに書いてある内容を全部総論へ持っていくということも検討してみたのですが、やはり難しいものですから、御趣旨に沿っているかどうかは分からないですけれども、できるだけダブっているところは消して、この枠の中は簡潔にするということにいたしました。
【井上委員】 ここの括弧の中で、さっき鳥居先生がおっしゃった「間」がまだですので、そこも直しておいていただければと思います。
【山本委員】 会長、1点だけいいですか。89ページの下から3行目の「また」以下の文章なんですが、これは要らないんではないかという意見を申し上げたつもりだったんですけれども、これは、やはり、なければまずいんですか。
【佐藤会長】 確かに趣旨は前の方と違うんです。
【山本委員】 言わずもがなで、裁判官が純然たる民間の弁護士になってしまうわけではないですし、それから多様な経験を積ませるというのも、さっきの議論もありますように、弁護士会とだけではないわけですから、ここへこれをあえて入れるというのは、ちょっと不自然な感じがしますけれども。
【佐藤会長】 これは最高裁と日弁連の協議対象の中に入っていなかったですかね。
【竹下会長代理】 協議の対象として並べて書いてあるのです。弁護士任官とは違うものですということを、最高裁側も日弁連側も意識して、しかしこれも協議の対象にしましょうというスタンスで書いてあるのです。ですから、弁護士任官とは違うのだからここへ書く必要はないのではないかとおっしゃれば、それもごもっともだと思いますし、協議の対象には入っているから、これも並べて書いておくというのも一つの考え方ですね。
【山本委員】 でも任意でやっていただければいいんで、ここへ書くことはないんではないですか。
【佐藤会長】 そういう見方もあるかもしれませんけれども、我々の提言を実現しようとすれば、最高裁と日弁連が将来に向けて真剣に取り組んでいただく必要があると思うんです。確かに、おっしゃるように、ちょっと次元の違う問題であり、それは自覚しておりますけれども、そういう趣旨ということでいかがでしょう。
【藤田委員】 私も、同じ意見を申し上げたんですが、当然復帰することを前提として出るわけですから、いいんではないかというふうに申し上げました。むしろ、問題は、弁護士経験を積むという方に、日弁連の方で相当に努力していただく必要がある。そちらの方が、大変なことだろうと思うんですが、そういう趣旨で議事録に残していただくような。
【髙木委員】 この裁判官制度の改革の項は、一番目の給源の多様化、多元化が前書きもなくいきなり出てくる。「第5 裁判官制度の改革」と一番目の項目である「1.給源の多様化、多元化」の間に、そもそもこの改革の視点と言うんでしょうか、総論的な裁判官制度改革のメッセージを数行書いていただいたらということを申し上げていたと思うんですが。私は、意見書の方にちょっとそういうことを書かせていただきましたので、御検討いただきたいと。
【佐藤会長】 代理と御相談しておったんですけれども、髙木委員の案が3ページに書いてありますね、「21世紀日本社会における司法を担う高い質の裁判官を獲得し」云々と、4行ばかりの。このままというわけではありませんけれども、この文章を少し活かさせていただくき、場合によっては88ページの冒頭に持ってくるということも考えられるんではないかというようなことを、ちょっと話をしておったんですけれども。
【竹下会長代理】 髙木委員の御意見の4行そのままですと、「ふさわしい方策を構築すべきである。」に続いて、「そこで、まず国民が求める裁判官像を描き」ということになっているので、少し原案の内容と合わないところがあります。それ故、「そこで」の前まで2行ちょっとですけれども、これだけでも入れると髙木委員のおっしゃる御趣旨が生きるのではないかと思うので、皆さんの御同意が得られれば、これを冒頭に持ってきたらどうかと考えますが、いかがでしょうか。
【佐藤会長】 文章はこのままではなくて、ちょっと練らせていただきます。
【井上委員】 そこのところは次回に文章を示していただいて、そこで最終的に決めるということではいかがですか。
【竹下会長代理】 今、申し上げましょうか。「21世紀日本社会における司法を担う高い質の裁判官を」までは、髙木委員の修正案通りです。それに続けて、「安定的に確保し、これに独立性をもって司法権を行使させるため」として、後は「これを実現するにふさわしい方策を構築すべきである」とそこまでです。それで、いきなり「裁判所法は」で始まる唐突さがなくなると思います。
【佐藤会長】 では、よろしいですか。そういうようにさせていただきます。どうもありがとうございました。
後は、よろしいでしょうか。5時までは時間があるとのことです。その後、総理がお見えになります。あと10分しかありませんが、96ページの国民的基盤のところと、最後の推進体制のところまでを含めて御議論をいただきましょうか。いかがでしょうか。
【吉岡委員】 短く申し上げますけれども、裁判員の数については、結論が出ていなかったと思うんです。それは、推進体制の方で議論していただくと、そういうふうに思ってよろしいですか。
【佐藤会長】 実現する段階で、いろいろなステップがあるかもしれませんけれども、そちらの方で検討していただくということになろうと思います。
【吉岡委員】 そうしましたら、数についての意見は前にも言っておりますので、無理には申しません。
それから、もう一つ推進体制ですけれども、前回のときに私は言った記憶があるんですけど、やはり強力な推進体制ということで、専門家だけで構成されるということはまずいと思うんです。利用者である国民の意見と言うか、視点、そういうものを反映できるような、配慮をしていただきたい。それだけ申し上げます。
【佐藤会長】 これは、内閣で最終的にお決めいただくことで、私どもから、かくあるべきと具体的に言うのは、ちょっと立場上難しい、あるいは適切ではないことかと思いますけれども、今のような御意見、御希望も含めていろいろお考えいただいた上で内閣にお決めになることだろうと私は思っております。
【鳥居委員】 私の意見書に述べておきましたけれども、現在、行革会議や総合科学技術会議等は、総務省に位置付けております。これを参考にしていただいて、この司法制度改革の推進母体も、できればそのような位置付けにしていただきたいということ。そして、現に行革にしても、総合科学技術会議にいたしましても、行政官出身者、専門家にとどまらず、経済団体とか、労働団体、マスコミ、いろんなところから、企業からも参加をしておられますので、それもかなり上位の職に就いておられますので、そのことも是非参考にしていただきたいと思います。
【髙木委員】 先ほど、私は場所を間違えて発言をしたんですが、裁判員と言うか、裁判への国民の参加の問題、具体的にどこだということを余り申し上げませんが、ペーパーにいろいろ書いておきましたので、どこかで補強していただけないかなということを重ねてお願いをしておきたいと思います。
それから、推進体制の問題ですが、これは、吉岡さんや、今、鳥居先生もおっしゃっていただいたんですが、私も同じような印象をっております。勿論、政府がなさる部分が多いわけですから、そちらの御意向とのすり合わせをしていただかなければいかん話だと思いますから、よろしくお願いしたいと思います。
【佐藤会長】 先ほど申し上げたことですが、こちらから具体的に、かくするべしとはちょっと申しにくいんですけれども、私どもの審議会自体が、利用者の立場ということを基本にして、国民の視点に立って検討、審議するということでございまして、その結果が、この最終意見ですから、これを実現するについては、内閣の方でいろいろとお考えくださることだろうと思います。ただいま御意見をちょうだいしましたけれども、これらの意見は議事録に残ることであります。
【石井委員】 大変急いでいらしたので、ちょっと遠慮していたのですが、大学院の名称につきまして、前の方に定義などを入れていただき、また、法科大学院とは、こういうものだというようなことを、かなり入れていただきましたので、法曹を養成するための大学院だという性格がはっきりしてきたと思っております。ですから、どうせなら法科と言わないで、法曹養成大学院と、ちょっと安っぽい名前になるかもしれませんが、そういう名称にすれば、いわゆるアメリカのロースクールのようにプロフェッショナル・スクールという感じが、法科大学院より少し出てくるのではないかという気がしています。今日は別に結論を出して欲しいというつもりではないですので、先生方でお考えいただいて、もしお取り上げいただけるようでしたら、そういうふうにしていただけたら大変ありがたいと思います。
【佐藤会長】 前回でしたか、井上委員の方からも、この大学院というものの性質についてお話がありましたけれども、この辺の表現が穏当ではないかなと。
【竹下会長代理】 鳥居委員の方からは、もう少し本当の法曹三者だけではなくて、幅広い専門家を養成するようなものとして考えた方が良いのではないかという御意見がございました。ちょっとそういう御意見もおありになるし、これはこれで理由があることだと思いますので、検討させていただきます。
【佐藤会長】 学問ともやはり関係があるんですね。井上委員が強調なさり、私も若干申し上げましたので、繰り返しませんけれども、大学院について御理解をいただきたいと思います。
それで、後書きの「おわりに」の方は、これでよろしゅうございますか。
【北村委員】 私は、ここに外部評価のことを少し、前は106 ページに入れてくださいと言っていたんですが、それが「おわりに」にきていますので、前と同じ箇所でいいんですけれども、ちょっと芽を出すくらい、種をまくぐらいでもいいんですが、その辺のところを少し入れておいていただければと。前にも意見を申し上げておりますので。
【佐藤会長】 外部評価ですね。この間も申し上げたことですけれども。
【北村委員】 だから、そこまでは言わなくてもいいんではないかなと思うんです。これから考えていけばいいことなのであって、そういう必要性があるよという指摘だけを、これはまた機構ということになると、ここでまたもめると思いますので、だから、そういうことを言っているんではなくて、そういうことが必要でしょうということを、ちょっと入れておいていただければ、だから種をまくぐらいですね、芽は出ません。
【佐藤会長】 ちょっと1日まで考えてみます。全体をレビューしていただきまして、残った時間は、もう後1、2分になりましたけども、弁護士報酬のところ、これはいかがいたしましょうか。藤田委員、どうぞ。
【藤田委員】 第一読会のときに、いろいろ議論がございまして、我々の提言が必ずしも正確に理解されていない。その誤解を解くために、何か表現について工夫の余地がないかということで検討していただいたということでございますので、今日の議論も踏まえて、もう一度検討していただいて、変える余地があるのかどうか、それは検討の結果次第ですが、その上で最終的な案文で結論を出すというのは、いかがでしょうか。
【髙木委員】 何度も言われた「訴訟費用に含めて」ということの竹下代理とのやりとりの意味を、クラリファイできるような表現なり何かがないと、この議論は具体的な検討を行う段階でも蒸し返しになると思います。
【竹下会長代理】 勿論、中坊委員のような御意見があったと書くことは、差し支えがないのですけれども、この意見書はそういうことを今までやってきていないですね。
【佐藤会長】 藤田委員のせっかくの御提言もありますので、今日、ここでこうだという結論を出すことは断念します。この部分だけを残して、他は全体的にほぼお決めいただきました。今日は何か脅迫しているんではないかと思われたかもしれません、本当に急いで審議をしたものですから。皆さん、あるいは御不快に思われたこともあったんではないかと思いますけれども、他の方を全部決めていただきまして、ありがとうございました。この部分だけ改めて文章上のうまい工夫があるかどうか、検討させていただいて、6月1日にもう一遍御審議いただきたいと思います。
【鳥居委員】 副題は。
【佐藤会長】 副題はいかがしましょう。次回でよろしゅうございますか。鳥居委員の御提案が簡潔でいいように思いますが皆さんそれぞれお考えいただきたいと思います。
今日は本当に急いで御審議いただきまして恐縮でございましたが、お陰様で、1点だけ残して、ほぼ決めることができました。心から厚く御礼申し上げます。
どうもありがとうございました。この後は、ちょっと準備をしまして総理、法務大臣をお迎えすることにしたいと思います。
それでは休憩します。
【佐藤会長】 それでは、審議を再開いたします。小泉内閣総理大臣におかれては、お忙しい中、お見えいただきまして本当にありがとうございます。また、森山法務大臣は公務のため御出席いただけないとのことですが、横内法務副大臣に御出席いただいております。誠にありがとうございます。
それでは、小泉総理大臣よりごあいさつをちょうだいしたいと思います。
【小泉総理大臣】 お待たせして申し訳ございませんでした。
私が総理に就任して初めて出席する会合でございますが、もう何回か精力的に御審議をいただきまして、皆様方には大変な御努力をいただき、心から御礼を申し上げます。
新しい時代にふさわしい司法制度改革。大変重要なことだと思います。特にこれからは、明確なルールに基づいた、自己責任原則、事後チェック・救済型社会という点を考えましても、皆様方の知恵を是非とも拝借したいということで、この審議会が行われていると思います。
皆様方の御意見を十分尊重して、これから新しい時代に対応できるような司法制度改革に取り組んでいきたいと思いますので、今後ともよろしく御指導、御鞭撻、御協力をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
【佐藤会長】 ありがとうございました。続きまして、横内法務副大臣より、森山法務大臣のごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【横内法務副大臣】 森山法務大臣は国会に呼ばれておりますので、私が大臣のあいさつを代読させていただきます。
会長、会長代理を始め、委員の皆様方には大変御多忙の中を、一昨年7月の本審議会設置以来、60回を超える会議におきまして、熱心に、かつ充実した審議を行っていただきましたことに対しまして、司法制度を所管いたします者として、心から敬意と謝意を表します。
司法制度改革は、今国会における小泉総理の所信表明演説にもありましたように、日本の再生と発展のため、経済、行政、社会、政治の各分野における構造改革を進めていく上で、不可欠な重要課題でございます。
委員の皆様方におかれましては、その重要な司法制度改革について、国民各界、各層から寄せられた様々な意見や提言も十分に踏まえつつ、国民的見地から調査審議を重ねてこられました。
私は、そのような成果の集大成として、近々取りまとめていただく最終意見が、まさしく日本の再生と発展の鍵となり、我が国の司法改革の歴史に名を残す、大変すばらしいものになるものと確信をしております。
私は、このような時期に司法制度を所管する法務省の責任者に任ぜられた者として、その最終意見を真剣かつ積極的に受け止め、その実現に向けて全力で取り組んでまいる決意でございます。
委員の皆様方の御労苦に、改めて深く感謝を申し上げまして、私のあいさつといたします。
【佐藤会長】 どうもありがとうございました。ただいまの小泉総理大臣及び森山法務大臣のごあいさつにありましたように、私どもも、御期待に添えるような、良き最終意見を提出できるように引き続き努力したいと思っております。よろしくお願いいたします。
今日はどうもありがとうございました。
小泉総理大臣及び横内副大臣は、公務のため何かと御多忙でございますので御退室になられます。
(内閣総理大臣、法務副大臣、上野内閣官房副長官、古川内閣官房副長官退室)
【佐藤会長】 事務局長、配付資料について何かありますでしょうか。
【事務局長】 ございません。
【佐藤会長】 それでは、次回の第62回審議会ですけれども、今週の金曜日であります6月1日、2時から5時まで審議室において行いたいと思います。最終意見につきまして、第三読会を行うことにしておりますので、よろしくお願いいたします。
それから、先ほど申しましたけれども、時間がありましたらということですが、多分あると確信しておりますが、実質的な審議は次回で終わりということでございますので、委員の皆様それぞれから、この2年間を振り返って御感想など、それぞれ賜ればありがたいと思っております。その辺もお含み置きいただきますようにお願いいたします。
記者会見はいかがいたしましょうか。場所を移すことになりますが。では代理と2人で。 本日は本当にどうもありがとうございました。厚く御礼申し上げます。