司法制度改革審議会

第62回司法制度改革審議会議事録



日 時:平成13年6月1日(金) 14:00 ~17:22 

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者

(委 員(敬称略))
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子

(事務局)
樋渡利秋事務局長

  1. 開 会
  2. 最終意見に関する審議(第3読会)
  3. 閉 会

【佐藤会長】 ただいまから第62回会議を開会いたします。
 本日も前回に引き続き、最終意見の原案の第三読会として意見交換を行いたいと思います。最終意見の内容を今日は事実上確定したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 それが終わりました後、前回お話ししましたように、委員の皆様からそれぞれこれまでの審議を振り返りながら、今後の司法制度改革に望むことなどにつきまして御意見をちょうだいできればと考えております。
                

(報道関係者退室)

【佐藤会長】 それでは、早速意見交換に入ることにしたいと思います。
 本日はお手元に前回の第二読会の際にいただいた御意見を踏まえまして、更に修文いたしました最終意見の原案をお配りしております。
 なお、今日お手元にあるものと、事前にお届けしたものとで、ページ数が少々ずれているところがあります。見出しの関係でずれているだけでありますが、ページ数は事前にお届けしたものに従って進めることにいたしましょうか、どういたしましょうか。

【竹下会長代理】 皆さんがあらかじめごらんになっているものの方がよいと思います。
(注:以下、事前配付の旧版と当日席上配付の新版のページ数が異なる場合は、旧版のページ数の後に、括弧内に「新〇〇」として新版のページ数を併記する。)

【佐藤会長】 そうですね。では、原案に基づきまして、修正を行った部分について確認をしていただくということが基本でありますが、前回の審議で積み残しになっておりました弁護士報酬の敗訴者負担に関する記載についても御意見をいただきたいと思います。
 なお、先ほどお話ししましたように、最終意見に関する審議は、事実上本日で終わりということでございまして、内容を実質的に確定したいと考えておりますので、何分よろしくお願いいたします。
 それでは、最初に、修文を行った部分について、順次確認をしていきたいと思います。副題は、最後にお決めいただきたいと思っております。  1ページですが、中坊委員からの御指摘をくんだ修正であります。「質・量ともに豊かな法曹を得ていくことが不可欠であるとの認識に立ち、法曹の圧倒的多数を占める弁護士を含め」云々というようにさせていただきました。
 それから、8ページですが、一番上のゴチックのところに、「統治主体・権利主体である」を挿入いたしました。高木委員や吉岡委員をはじめ諸委員の御意見もございましたので、そういう形で入れさせていただきました。
 9ページのところは分かりやすいようにということで、そのようにさせていただきました。
 それから、11ページ、これは漢字をひらがなに統一して、「平成22年(2010年)ころ」ということであります。
 12ページですが、96(新102)ページに「国民的基盤の確立(国民の司法参加)」とありますので、それと平仄を合わせる形で入れさせていただきました。
 総論部分の確認は以上でございますけれども、よろしゅうございましょうか。
              

(「はい」という声あり)

【佐藤会長】 ありがとうございます。
 そうしましたら、次に「国民の期待に応える司法制度」でございます。14ページに(後記Ⅲ・・・)といった説明が入り、それから15ページから16ページに掛けてですが、黒ポツの箇条書きを(1)(2)(3)というように表示した方がいいのではないかということで、そのようにさせていただいたものです。
 18(新19)ページからですが、ここだけ従来は見出しが「従来の取り組み」と「今後の対応」となっていたのですが、実質的な内容に即した見出しを付けた方がいいだろうということで、そのような見出しにさせていただきました。
 21(新22)ページの労働参審制のところですけれども、前回の高木委員の御意見を特に踏まえまして、このように修正いたしました。併せて22ページもそのような表現にさせていただきました。
 26(新28)ページの弁護士報酬の敗訴者負担のところは後ほど御審議いただきたいと思います。
 36(新39)ページの、これも用語を統一するということで、「体系」を「システム」に直させていただきました。
 以上でございますが、いかがでございましょうか。敗訴者負担は後で御議論いただきます。

【石井委員】 今おっしゃったことでなくてもよろしいでしょうか。

【佐藤会長】 どのようなことでしょうか。

【石井委員】 25(新27)ページのところです。何となくすべて済んでいたような気がして安心していたのですが、2つ目のパラグラフで、履行促進のための民事執行制度云々というところがございます。そこのところで、うっかり忘れていて、この前申し上げなかったのですが、知的財産権の執行についてのことを、少しここへ入れておいた方が良いと思っております。
 文章としては、執行の実効性と迅速性を確保する対策というところです。対策という言葉が幾つか並んでいますが、知的財産権を巡る事件の執行についても、その中の1つとして言及していただけたらと思っています。
 この前ワールドの看板のような事件があって、全然解決できずに、随分長い間放置されておりましたが、今後も似たような事件が起こると思いますので、ここで追加させていただいたらと思ったからであります。

【竹下会長代理】 その御意見は前にも確かいただいていたのですが、こんなことを申し上げて恐縮ですけれども、執行制度と申しますのは、我が国の場合には、侵害された権利が知的財産権か、あるいは不動産の所有権かということによって特に変わるわけではなく、執行によって実現されるのが差し止め請求権とか、金銭債権とかであれば同じことなわけです。ですから、執行制度の改善で知的財産権が侵害された場合についてだけ何か特別のことをするということはございませんので、おっしゃる御趣旨は、債務の履行促進のための方策という中に含めているつもりでおります。ワールドの事件のように、もぐらたたきみたいな格好になるということもないように、しっかり違反行為が繰り返されないような制度を工夫するということです。

【石井委員】 不勉強でよくわからなかったものですから。こういう文章で全部含まれると考えてよろしいわけですね。

【竹下会長代理】 はい。

【石井委員】 わかりました。どうもありがとうございました。

【佐藤会長】 ほかの点はよろしゅうございましょうか。
 ありがとうございます。
 次に刑事司法の38(新41)ページからでございますが、ここは修正はなかったように思います。ここまで、よろしゅうございますね。
 次は53(新56)ページの「司法制度を支える法曹の在り方」のところへ進みたいと思います。61(新64)ページの「地方自治体」を「地方公共団体」に統一する。「地方公共団体」の方が憲法用語でもありますので、そうさせていただきました。
 69(新73)ページは、いろいろ御議論いただきましたが、「受験資格」の2段落目の最後の方の括弧の中ですが、「も考慮に値する」を「についても検討する必要がある」としました。
 その次の段落のところで、「およそ法曹を志す」という文言を加えました。
 その下の段落で、括弧の中は、書くまでもないのではないかということで、削除させていただきました。
 第1、第2までですが、よろしゅうございますか。

【竹下会長代理】 このほか細かい修正、漢字の「更に」をひらがなにする、というたぐいのものは説明を省かせていただきます。

【佐藤会長】 73(新78)ページの第3以降でございますが、75(新80)ページの「自治体」は「公共団体」と直しました。
 81(新86)ページの隣接法律専門職種のところは、「簡裁の事物管轄を基準として」という表現にするということでございまして、それにしたがって81(新86)ページ、82(新87)ページをそのように直させていただきました。
 第5の裁判官制度の87(新92)ページ。前回、特に高木委員が御提案の文章をこのようにして冒頭に持ってきたということであります。以上です。

【竹下会長代理】 今の87(新92)ページのところですが、「21世紀の我が国社会における」で始まる3行は、前回は「給源の多様化、多元化」という見出しの後に入れると申し上げていたのですが、内容的には全体にかかるものですから、上の方がよいだろうというのでそうさせていただきました。

【鳥居委員】 一般の国民がこれを見たときに、大体わからない単語はないと思うんですが、1つだけプロ・ボノというのは知らない人が余りにも多い。

【竹下会長代理】 73(新78)ページですね。

【鳥居委員】 その説明は括弧の中が、「例えば」になっているのですが、「例えば」を取ってはいけないんですか。要するに、プロ・ボノというのは、「社会的弱者の権利、擁護活動など」であると国民が読めば、それでもうわかってもらったことにするという方法もあると思うのです。でも、違いますね。これもそもそも何のアブリビエーションなんですか。何を短縮したものなんですか。

【中坊委員】 ラテン語か何かですね。

【事務局(早野主任専門調査員)】 プロ・ボノというのはラテン語で、「奉仕のために」というのが直訳になりますが、アメリカではこのプロ・ボノというのは「無償奉仕活動」という定義づけがあります。ただ、純然たる無償ではなく、かなり低額の場合になっていくわけですが、したがって、例えばということで書いておりますので、厳密にやれば、ラテン語をそのまま出して、アメリカで使われている訳としての無償奉仕活動ということになろうかと思います。

【佐藤会長】 「無償奉仕活動として」ということになりますか。

【中坊委員】 ラテン語で正確に言えば、プロ・ボノ・プブリコというのが正確な言葉なんです。公共というプブリコを抜いて、最初の言葉だけでプロ・ボノ活動と言っているんです。ちょっと議事録にとどめておいてもらわなければ。

【竹下会長代理】 「無償奉仕活動など」と、「など」を付けたらどうでしょうか。

【佐藤会長】 あるいは「無料奉仕活動、例えば」といたしましょうか。

【高木委員】 今、鳥居先生からプロ・ボノの理解を助けるために、ということが出ましたが、どこまでやるのかという範囲がものすごく難しいんですが、例えば「当事者主義」だとか、最終的に出るときに、かなり専門性の高い用語だとか制度だとか、若干、吟味していただいて、幾つかについては、用語の意味の解説を入れてはどうでしょうか。

【佐藤会長】 中間報告でも、「直接主義」、「口頭主義」などの説明を括弧書きで入れましたね。

【竹下会長代理】 52(新55)ページの「特定共同事業」については、鳥居委員から御指摘があったので、説明を付しました。

【井上委員】 私なども気にしていた点ではあるのですが、現実問題として、今から12日までの間にその作業をするのはほとんど無理だと思います。説明を付すべき語句を拾い出した上、やさしく正確に説明するのはなかなか難しいものですから、むしろ報告書としてはこの形にしておいて、今後広報活動として、いろいろな方に理解していただくために、もっとかみ砕いて、いろんな媒体を使ったり、そういうところで工夫をしていくべきかなと思います。主として会長、会長代理に御苦労いただかなければいけないと思うのですが、適宜我々もそれぞれの立場で協力させていただければと思います。

【佐藤会長】 そういうことで扱わさせていただいてよろしゅうございますか。プロ・ボノは先ほどのように直すとして、あとのところはよろしゅうございますね。

【高木委員】 できるだけ国民が理解しやすいようにという意味で、いろんな形の努力・工夫をしてみる必要があると思います。

【佐藤会長】 改革を推進していく過程でパンフレットをつくったり、一般の国民にわかってもらう、特に例えば裁判員制度などはまさにそういう必要があるわけですが、そのためにいろいろなことをやらないといけないと思うんです。行政改革のときにもそうでしたが、その中で今のような問題にも意を用いるということでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 94(新100)ページまで来ましたが、95(新101)ページ以下の「国民的基盤の確立」は、特になかったですね。

【竹下会長代理】 なかったです。

【中坊委員】 例の企業法務の関係は。

【佐藤会長】 あとでやります。中坊委員、高木委員から御意見が出されておりますので、それは後でかけさせていただきます。
 最後に「おわりに」の109(新117) ページですが、北村委員からの御意見を踏まえて、この文章を入れさせていただきました。これで十分かどうか、芽が出ているのか出ていないのかわかりませんけれども。よろしゅうございますか。
 一応、以上で御確認いただいたということにさせていただきまして、次に懸案と言いますか、いろいろ御議論があって残っておりました26(新28)ページ、「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」の箇所について御審議いただきたいと思います。代理が中心になっていろいろお考えいただいたので、ちょっとお話しいただけますか。

【竹下会長代理】 ここのところは何度も繰り返してこの場で御審議をいただきましたが、前回も意見の一致を見ることができなかったところでございます。
 そこで、私といたしまして、清水の舞台から飛び降りるというか、あるいは断腸の思いというか、ある種の決断を致しまして、委員の皆さんの御同意を得たいというところから、お手元にあるような修正意見を出させていただきました。
 この第三読会用の意見書自体が見え消しになっているものですから、それに更に見え消しをすると、わけがわからなくなりますので、26(新28)ページの第三読会用の見え消しはそのまま認められたという前提で、それに更にこういう修正をするというものです。その括弧の中に、「第三読会で修正したものを原案としています」と書いてあるのはそのことでございます。
 ちょっと読ませていただきますと、枠の中を、「勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきである。この制度の設計に当たっては、上記の見地と反対に不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなく、このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等について検討すぺきである」というように修正することはいかがであろうかという提案でございます。
 もし、それが認められるといたしますと、本文の方も修正をする必要がありますので、本文の第2パラグラフのところでございますが、そこにアンダーラインがある3行を第2パラグラフの冒頭に追加する。「弁護士報酬の一部を敗訴当事者に負担させることが訴訟の活用を促す場合もあれば、逆に不当にこれを萎縮させる場合もある。弁護士報酬の敗訴者負担制度は、一律に導入すべきではない。かかる基本的認識に基づき」と、ここまでを挿入いたしまして、あとは本文とほぼ対応する形で、「勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入するべきである」と修正します。あとは原案どおりでございます。
 なぜこのように修正をするかという、提案の理由でございますが、私といたしましては、当然、こういう理由で修正をするということで、修正の理由と修正の内容はセットのものと考えております。
 修正の理由は、原案の趣旨を変えるということではございませんが、制度設計に弾力性を与えるように修正をして、先ほど申しましたように、委員各位の同意を得たいと考えたということですが、その理由の具体的内容は次のとおりでございます。
 一番問題になります「一定の要件の下に」というところでございますが、まず、「一定の要点の下に」という文言は、もちろん「負担させる」に係るのでありまして、「導入する」に係るわけではございません。一定の要件がある場合に負担させる。敗訴者に勝訴者の弁護士報酬の一部を負担させるということでございます。
 次に、その「一定の要件」の定め方でございますが、これには、例えば「裁判所が、弁護士に依頼することなくしては、その訴訟を遂行することが困難であると認めるとき」というような積極的要件として定めることが一つ考えられますけれども、そういう定め方ばかりではなくて、逆に「裁判所が、敗訴当事者の経済的状況及び弁論の全趣旨からみて、訴訟費用中相手方当事者の弁護士報酬部分を、敗訴者の負担としない旨を定めない限り」というように消極的要件として定めることも考えられると思っております。更に簡明に、「法律上別段の定めがある場合を除き」という定め方もあるかもしれません。どのような定め方をするかは、立法段階における検討に任せるという意味で、冒頭に申しましたように、弾力性を与えるということにしたというわけでございます。
 いずれにせよ、弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させない訴訟類型の方を個別に定めるという趣旨でございまして、負担させる訴訟類型の方を個別に定めるということを考えているわけではない。その点では原案と変わりがないものでございます。

【佐藤会長】 代理の方で大変御苦心していただいて、こういう修文を考えていただいたわけでございます。いかがでございましょうか。

【竹下会長代理】 吉岡委員が一番御苦労なさっているところだと思いますが、いかがでしょうか。

【吉岡委員】 前回も前前回もいろいろ申し上げまして、とにかく国民の理解が十分に得られていない。そういう状況を考えいただきたいということで、それを裏付けるような調査資料だとか、あるいはほかの方のお書きになったもの、それから法務省ですか、民訴費用制度等研究会の報告等をお出しして、私の力及ぶ限りというか、話をさせていただきまして、その辺、御理解いただいて、会長代理がこのような文書をつくっていただけたので、そこのところは、もうこれ以上申し上げるのは申し訳ないと思いますが、意のあるところを御理解いただければと思います。
 そういう意味で修正することには賛成ですと申し上げるのですけれども、これ以上言うのは恐縮ですが、もう一言加えさせていただくとすれば、この制度が司法制度に及ぼす影響は少なくないと思いますので、そういうことから訴訟救助とか法律扶助、それから弁護士人口の増加の問題とか、更に加えれば国民の一般的な意識を十分に踏まえた上で行うというような趣旨を入れていただければなと。これは第三読会用の書類が届きましたときに、こういう内容にしたらどうかということで、ちょっと文章にしてみまして、意図するところはそういうことなんですけれども、もしよろしければ、大分だれかの口ぐせがうつったようですけれども。

【竹下会長代理】 今日はもう最終段階なものですから、少し短い文言でしたら追加することは可能だと思うのですけれども、修文案として決まっていないと難しいと思うのですが、いかがですか。

【吉岡委員】 このような文書でいかがかなと思いまして、お配りいただければと思います。
              

(吉岡委員提出文書配付)

【佐藤会長】 末尾にこれを付け加えてという趣旨ですね。

【吉岡委員】 はい。

【竹下会長代理】 ほかの委員の方がそれで結構だと言われることが前提ですけれども、私としては、ここに挙げられているようなことは検討に際して考えなければならないことですから、吉岡委員のお立場を考えれば、これを追加してもよろしいのではないかと思いますが、どうでしょうか。それに、そもそもほかの皆さんは修正自体に御賛同いただけますか。

【中坊委員】 吉岡さんも、こういうものが変化してから検討せいというんじゃなしに、検討に際してはこういうことを斟酌せよということでしょう。そういう意味では、我々が今まで言うてきたことの前提は余り変わりませんから、確かに今、竹下会長代理のおっしゃるように、こういう点は十分に考えて敗訴者負担を考えないといけないというのは事実ですから、私はこれを入れた方が、よりわかりやくすなるとは思います。だから、私は入れることには賛成します。

【北村委員】 済みません。ちょっと意味がわからなくて恐縮なんですが、「例えば」のところの「弁護士業務の変化、弁護士人口の増加の進展などとの関連や」というのは、なぜ関連してくるのかがわからないんですけれども、どういう意味なんでしょう。

【吉岡委員】 この前ちょっと説明はしたように思いますけれど、例えば弁護士がゼロワンとかイチヨンとか言われていますけれども、数が少ないところがあります。その場合に、一方には弁護士が付くけれども、一方には付かないという状況があります。今度の弁護士制度の改革の中では、そういうものをなくしていって、すべての地域に弁護士がいるように改革していこうということが言われていますが、それは今はまだ解消されていない。ごく一部の地域で弁護士会が自主的にと言いますか、そういうことで公設弁護士事務所というものをつくってやってはいらっしゃるんですけれども、それはまだ解消されていないんです。法曹人口が増えて、弁護士人口が増えていけば、そういう解消もできてくると思いますし、それと同時に、弁護士事務所の法人化だとか、そういうことが進んでいく。そういうふうにして条件が整ってくれば、片方には弁護士が付いて、片方には付かないでとか、それから、資力のある人とない人で、付けられるとか付けられないとか、そういうことが解消されてくる。それで初めてできるのではないかと。弁護士についてはそういうことを含んでいるつもりです。

【山本委員】 この検討すべき課題の中の、今、言われた訴訟救助だとか弁護士費用の変化とか人口の増加、これはよくわかるんですけれども、最後の「弁護士報酬の負担の在り方に関する国民の一般的な意識」ということになりますと、これまた堂々巡りになるという感じはありませんか。これは極めて抽象的な要件ですね。今まで修正を検討してきたのは、この辺のところをおもんぱかった修正をしたわけですね。これが最後にまた要件として入ってくると、これは何か堂々巡りみたいな感じになるんですけれども。

【吉岡委員】 やはり国民の意識が変わってくるということが裁判制度をうまく使っていくためには、非常に重要だと思うんです。そういうことをやりながら改革していくということで、さっき会長代理も、これは当たり前のことだとおっしゃったんですけれども、当たり前のことかもしれませんけれども、書くことによってより理解してもらえるという程度のことではないかと思っているのです。

【山本委員】 要するに審議会が一応の方針を出すときに、国民の一般的な意識をも踏まえて行うという条件付きの結論というのは、受け取った方が困るんじゃないかという感じがするのですが。

【佐藤会長】 中間報告以来、必ずしも私どもの真意が伝わっていないというところがあり、いろいろなリアクションがあった中で、しかし、考え方としてはこういうようにあるべきだという方向を維持しようとしているわけです。そのことを一般の国民に理解していただく、そういう中で立法化を図るということなんでしょうね。ある意味では当然のことですが、この審議会の意見が理解を得るように努力しなければいけない事柄だということなのでしょうね。

【竹下会長代理】 「一般的な意識」の代わりに「理解」にしますか。どうでしょうか、吉岡委員。

【佐藤会長】 客観的に踏まえるとまで言われると、今、山本委員がおっしゃったような問題が出てきます。

【竹下会長代理】 調査でもやってみなければということになったのでは、ここでの皆さんの御意見から離れてしまいますね。

【吉岡委員】 もうここまで来ていることですから。

【竹下会長代理】 ほかの委員の御意見はいかがでしょうか。

【高木委員】 会長代理の言われた「理解」にしたらどうですか。

【竹下会長代理】 そうですね。トータルでやってみなければということになったのではちょっと困りますね。

【井上委員】 「理解を十分に踏まえ」ですか。

【竹下会長代理】 そうか。「理解にも配慮して」。

【藤田委員】 あえて反対するわけではないのですが、最後に付け加えるとすると、「なお、この検討に当たっては」というのは、そもそも弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入するかどうかという点についての検討ではなくて、「このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等について」の検討ということになります。そういう点についての検討に際してこのようなことを配慮すべきであるとするのに、別に違和感はないでしょうか。配慮すべきであるとされている事項は、そもそも制度を本来入れるべきかという点を考える際に配慮すべきことかなという気がするのですが。

【竹下会長代理】 仮にそういうことになってしまうと、振り出しに戻ってしまいますね。

【藤田委員】 そうすると、これだけ限定された範囲を検討するのに、こういう表現でいいのだろうかということなのです。

【竹下会長代理】 前々から意識していて申し上げようかとは思っていたのですが、かえって問題を複雑にしてもいけないと思って言わなかったのですけれども、法律扶助との関連で申しますと、我々は一方では、法律扶助を充実させようとしているわけです。現在は一応償還制が原則ということになっていますが、しかし、生活保護を受けているような人については、事実上給付制と同じような扱いになっている。この範囲をこれから広げていこうということを考えているわけですが、そういう場合に、この敗訴者負担という制度を入れないということになると、結局、相手から取るのではなくて、国の法律扶助の方でカバーしてもらうことになります。つまり、法律扶助を受けて訴訟をやって勝った人は、自分の弁護士報酬を一部でも相手方から取るのではなくて、その全額を国の方から税金で支払ってもらうことになる。法律扶助も、こういうところで敗訴者負担と関連をいたしますので、そういうことを考えてみると、では、どういう場合を敗訴者負担を認めない範囲に含めるかを検討する際の考慮事項になると思うのです。

【藤田委員】 もともと私は原案に賛成していたわけですから。

【鳥居委員】 藤田さんのおっしゃっているのは、四角の枠の一番最後に書いてある「検討すべきである」を受けているように読めるようにできないかとおっしゃっているんですね。

【藤田委員】 吉岡委員の文案だと、本来敗訴者負担の制度を導入すべきかどうかという点に立ち返って検討する際に配慮すべき事項かなという気がしたので申し上げたまでで、本文の末尾に書いてある限定された範囲内での「検討」についても、ここに挙げているようなことが関係があるんだということならば、それはそれで平仄か合うわけです。

【中坊委員】 おっしゃるとおりだったら、一番最後の文章を、「なお、この検討に当たっては」と書いたわかりやすいかもしれない。「この検討は」と言うから、そもそも検討に入るかどうかとも読めてしまうから、「なお、この検討に当たっては」これこれを十分に踏まえてくださいということになるので、そうした方がまだ少しわかりやすいと思います。

【佐藤会長】 文章のつながりで、後の方はどうなりましょうか。

【中坊委員】 藤田さんのおっしゃるように、我々は敗訴者負担ということは一応は考えたけれども、適用に当たってはそれは非常にパラレルに考えていますということがわかればいいわけでしょう。そのときには、今、会長代理もおっしゃったし、吉岡さんも言うているように、いろんな問題が、いざ具体的に制度化するときには考えなければならないということだけですから、そもそも敗訴者負担そのものを検討するということではないということですね。そこがはっきりしていたら、今、藤田さんのおっしゃるような誤解を招かない。そこがこれでは足りないかということですからね。

【井上委員】 検討に当たって配慮する事柄にしては、何もかも入っているような気がしないでもありませんね。「弁護士業務の変化とか人口の増加の進展」というのはどうしても必要でしょうか。それがなければ、「訴訟救助、法律扶助などの他の制度との関連や弁護士報酬の負担の在り方に関する国民の理解にも配慮しつつ」というのを、「このような見地から」の後に入れればいいのではないか。そういったことに配慮しつつ、負担させない場合だとか、負担させる場合の額だとか、そういうことについて具体的に検討すべきであるということにすれば、もっとすっきりするのなかと思います。「なお」書きで後ろに書こうと同じことですが。

【藤田委員】 吉岡委員が一番おっしゃりたいのは、多分、制度全般について、弁護士報酬負担の在り方に関する国民の一般的な意識、理解に配慮すべきであるという点なのではないかと思うわけです。そうすると、この負担させるべき額の定め方等について、「国民の理解を得るよう努めつつ、検討すべきである」ということでその趣旨が入るのなかと思っていたのですが、それでは足りませんか。

【吉岡委員】 国民の。

【藤田委員】 「理解を得るよう努めつつ、検討すべきである」とすると、そんなに元の制度導入是か非かということには戻らないし、かつ、吉岡委員のお気持ちにも沿うのではなかろうかと思ったのですが。

【中坊委員】 藤田さん、文書をどうするの。

【藤田委員】 「負担させる定め方等について、国民の理解を得るよう努めつつ、検討すべきである。」

【竹下会長代理】 前の方はこのとおりですか。

【藤田委員】 前はなしです。さっき会長代理かおっしゃった訴訟救助や法律扶助などにもこの問題に関係があるとは考えてなかったものですからね。こういう配慮すべき事項は敗訴者負担の原則、それ自体についての問題かなという意識でいたものですから。

【竹下会長代理】 ちょっとそれでは。

【吉岡委員】 ちょっと違ってしまいます。

【竹下会長代理】 井上委員がさっき言われたのはどういう案でしたか。

【井上委員】 「このような見地」の後でも、「なお」でもいいんですけれども、「訴訟救助、法律扶助などの他の制度との関連や弁護士報酬の負担の在り方に関する国民の理解にも配慮しつつ」、その在り方とか負担させるべき額の定め方等について検討すべきである、とするというものです。

【竹下会長代理】 本文の中に入れ込むわけですか。

【井上委員】 勿論分けてもいいのですけれども。中坊先生がおっしゃるように、「なお、この検討に当たっては」とした上で、こういうことにも「十分配慮すべきである」と。

【竹下会長代理】 なるべく本文の中に入れないような修文の方がいいですね。

【佐藤会長】 前の方がまた動いてくるので。

【井上委員】 では、「なお、この検討に当たっては」としてはどうですか。

【中坊委員】 接続ができると思います。

【井上委員】 「弁護士業務の変化、人口の増加」というのは、北村先生もおっしゃったように、ちょっと結び付きがよく見えないものですから。

【竹下会長代理】 「との関連」。

【井上委員】 「との関連や弁護士報酬の負担の在り方に関する国民の理解」、あるいは「国民の理解」だけでもいいと思うのですが。

【竹下会長代理】 「弁護士報酬の負担の在り方に関する」は入れておきましょう。

【井上委員】 そして、「国民の理解にも十分配慮すべきである」とする。

【竹下会長代理】 吉岡委員、それでよろしいですか。

【吉岡委員】 そうすると、「この検討に当たっては」という文言を入れる。それから、「国民の」の後のところに、「理解にも十分配慮すべきである」と。

【井上委員】 「制度のほか」の「のほか」から次の行の「など」までを省略する。「他の制度との関連や」というふうにした方がすっきりするのではないかということです。

【佐藤会長】 そこは吉岡委員はいかがですか。

【竹下会長代理】 そこは余りこだわらないのでしょう。吉岡委員としては。

【吉岡委員】 要するに、いろいろなことにまだ理解を得ていないとか、条件が整備されていないなど、これも改革の方向としては、されることにはなっているのですが、それをわかるようにということが1つの意味があると思うんです。ですから、余り省略してしまうと。

【水原委員】 それを言い出しますと、今まで議論しているところで確定しているところというのは非常に少ないんですよ。この問題だけに限らず、いろいろと不確定要素がたくさんあるんです。それを全部一々取り上げていかなければいげないかとなりますと、これはとてもじゃないけれども、この段階において修文はできないと思います。
 私どもも今までもたくさん言いたいことがございますけれども、だけれども、この段階に至って、大方の合意ができたときに、ここをこういうふうに更にやらなければいけない、更に修文しなければいけないと、非常に大きな問題について言い出しますと、これはまとまるものもまとまらないんじゃないでしょうか。
 結局、我々が合意に達していることというのは、弁護士費用を訴訟費用として認める方向で検討しましょうという線においては合意が出ているわけですから、それをもう一遍まき返して議論するものではないわけで、そうなりますと、全員が納得できるものではない限りこの段階で更に修文、修正というのは、ちょっと私は賛成しかねます。

【佐藤会長】 弁護士業務の変化とか、人口の増加の進展とか、こうした基礎的なことは、すべての制度の前提として考えていることですから、ここで重ねて言う必要があるかという問題はあると思いますが。

【竹下会長代理】 どうですか、吉岡委員。そうかと言って、せっかくおっしゃったのに、全部なくしてしまうのは適当ではありませんから、何とか皆さんの同意を得られるように修文しましょう。

【吉岡委員】 私は前から何回も言っておりますけれども、中間報告を公表してからの反響と言いますか、そういうことに配慮して、最終報告を作成する。その場合に、わかっていることだからと言っても、反対している一般の人たちがわかるかどうかということがありますので、重なるかもしれませんけれども、こういうことを入れておいていただいて、わかっている人には、ここのところは当然のことだと思われるかもしれませんけれど、私はこの文章を入れていただきたい。

【井上委員】 お気持ちはよくわかっているつもりでして、その場合に、どこまで入れるかということだと思うのです。さっきもどなたかが言われたように、吉岡委員の重点は、諸制度との関連もあるのですが、一番の重点は「国民の理解」ということだと思うのです。そこは我々もそのとおりで、そこのところは入れないといけない。それに加えて、関連が見えているところを例示として入れる。それで、おっしゃろうとするところは、かなりはっきり出るのではないかという感じがするのです。

【吉岡委員】 何と申しますか、基本的な考え方が、ちょっとそれで理解してもらえるかどうか。

【藤田委員】 逆に、「弁護士業務の変化、弁護士人口の増加の進展」と敗訴者負担の制度との関わりが、これだけだとちょっとわからない。もう少し説明が必要になるんですね、北村委員がさっきおっしゃったように。先ほどの説明を聞けば関連があることはわかるんですけれども、ただ、ここにこれを入れただけだと、どうしてここに入ってきたんだろうという疑問を持たれるんじゃないかと思うのですが。

【吉岡委員】 ただ、余り長々と説明するのも悪いかなということもあって。

【佐藤会長】 井上委員もおっしゃるように、「他の制度との関連や弁護士報酬の負担の在り方に関する国民の理解にも十分配慮すべきである」で、かなり出ているんじゃないでしょうか、御趣旨は。

【竹下会長代理】 「十分配慮すべきである」と言っていますからね。

【藤田委員】 やはり「国民の理解」が中心なんじゃないでしょうか。

【竹下会長代理】 御苦労はよくわかるので、私も枠内の方では、吉岡委員の御意見に随分配慮したのですが。

【吉岡委員】 私もものすごく辛いところで。

【佐藤会長】 では、よろしゅうございますか。

【吉岡委員】 はい。

【北村委員】 今のところの下なんですけれども、27(新29)ページのところで、私はちょっと言い方がくどいなと思うのは、「このような敗訴者を適用すべきではないと考えられる。このような見地から、このような敗訴者負担を」、と敗訴者負担というものがどういうものか前に書いてあって、一々「このような敗訴者負担」、「このような敗訴者負担」と言わないとだめなんですか。読んでいてすごくここのところが文章としてどうかと。

【佐藤会長】 それだけ気を使っているということで、そういうものとして御理解いただければ。

【北村委員】 何かすごくおかしい。

【井上委員】 あえて限定してあるんですよ。

【北村委員】 限定してあるということですね。

【竹下会長代理】 おっしゃることはわかりますが、やはり繰り返し言わないと誤解を招く可能性があります。

【佐藤会長】 では、よろしゅうございますか。今のところの確認ですけれども、「なお、この検討に当たっては、訴訟救助、法律扶助などの他の制度との関連や弁護士報酬の負担の在り方に関する国民の理解にも十分配慮すべきである」でよろしゅうございますか。

【竹下会長代理】 そういうことにいたしましょう。

【佐藤会長】 どうもありがとうございます。ここは本当に皆さん真剣に御議論いただきました。

【中坊委員】 吉岡さんがおっしゃっている趣旨もちゃんと汲んでいますから。

【佐藤会長】 では、どうもありがとうございました。代理には本当にいろいろ御苦労いただきました。

【竹下会長代理】 ほっとしました。清水の舞台から飛び降りたかいがありました。

【佐藤会長】 あと、中坊委員、高木委員からの御意見が出ている個所がありますが、3時半ぐらいまで休憩にしますか。

【山本委員】 私ちょっと中座しなければいけないので、企業法務のところだけ先にやっていただけませんか。

【佐藤会長】 では、先にやりましょうか。中坊委員から、企業法務と裁判員制度について、裁判員制度の方は高木委員と共通の御意見ですね。では、企業法務の方からいたしましょう。
 これもごもっともなところがありますが、ちょっと代理御説明いただけますか。

【竹下会長代理】 では、申し上げます。中坊委員の方から、第二読会の席上も、この企業法務等というのは少し広過ぎるのではないか、企業法務と言ってもいろいろな場合があるという御意見が出されて、修文案を本日お出しになられたのですが、会長と私の方で相談をさせていただいて、お手元にある修文(案)のように改めてはどうかという提案です。問題となるのは、主として事前配付版の81(新86)ページからの「隣接法律専門職種の活用等」のところだと思いますので、そこをごらんいただきたいと思います。まず枠の中の下から2番目の(マル)の2行目の末尾に「企業法務等」という言葉が出てまいります。それから、次の82(新87)ページにそれと対応する本文のところで同じものが出てまいります。  そこで、この表現を、2月2日に行われました第46回会議における山本委員の御発言などを考慮させていただいて、「会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等」とする。前に分社化とか持株会社とか、そのように企業の組織形態が非常に多様化している。その中で、ある企業の企業法務が他の会社の法律事務を処理しなければならないような場合も出てくるというお話だったものですから、このような説明を付けさせていただいたらどうだろうかという提案です。いかがでしょうか。

【山本委員】 確かに、前々回の発言のときには、そういった最近の企業組織形態の変更のことを発言しましたけれども、そもそも72条と企業法務との関係というのは、自社の訴訟代理だとかリーガル・サービスを使用人として給料を受けて実施することなどが、72条で禁止している報酬の対価ということになるのかならないのかという、そういう不明確な問題がそもそもあるんですね。そもそもがあって、更にそれが最近の企業組織変更で、不明確な部分が更に拡大して複雑化しているということがありますので、是非この点を明確化してもらいたいというのが真意なんです。
 確かに、中坊先生のおっしゃるように、72条そのものをどうしようかという検討はあまりしていませんけれども、企業法務の位置づけを明確化してもらいたいということは、72条との関係に触れざるを得ないわけですから、それもリーガル・サービス、法律相談だけではなくて、訴訟代理の問題なども含めて明確化してもらいたいというのが私の発言の趣旨でございますので、どうぞ、その点よろしくお願いいたします。

【佐藤会長】 お手元の、この修文で表現されていませんか。

【山本委員】 そういうことでしたら、結構です。

【竹下会長代理】 もともと72条の方の問題なのですね、山本委員のおっしゃるように。

【佐藤会長】 よろしゅうございますか。ここは御承認いただいたので、休憩に入る前に全部やってしまいましょうか。

【高木委員】 今日、1枚紙を出させていただきましたが、第一読会、第二読会でもそれぞれ同趣旨の意見を申し上げさせていただき、第一読会のときには、会長から何かいい知恵がないかというお話をいただいたように記憶しておりますが、そこに第1案、2案、3案と3つも案を出したりして、妙な話なんですけれども、これはいずれも中間報告のときに使われておりました表現で、新しい表現をまたということでもございませんし、どれでもいいというわけでもないんですが、どの案かを採用していただきたいと思います。
 今、中坊さんの意見を拝見しましたら、中坊さんの御意見は、96(新102)ページ本文の「ない。」に続けてということで、「同時に、裁判員の主体性・自律性」云々の表現になっておりますが、これも含めて御議論いただいて、決めていただいたらと思います。

【佐藤会長】 中坊委員の方も何か。

【中坊委員】 私の方はここに書いてあるとおりで、私の方は1案、2案、3案と書いていませんけれども。

【井上委員】 中間報告で「より」と書いてあったかどうかちょっとうろ覚えなのですけれども、中間報告を踏まえて、今年に入ってから何度が議論して、一応とりまとめを行ったものですから、中間報告に戻っていいところと戻るべきでないところがあると思うのです。そこのところはひとまず置くとしても、御趣旨はよくわかるのですが、ここの部分というのは、中坊先生のペーパーにも触れられているように、何人かの方がこういう御意見を出されたのは事実なのですけれど、そこは違った意見もあって、意見が分かれるところだと思うのです。
 しかも、これから我々が提案するこの制度について、ここに「より強固」とか「より強く」というふうに書きますと、この提案する制度が何か不十分なものである、我々は不十分なものを提案するのだというインプリケーションを与えないかということが懸念されます。
 現段階でこの制度を提案するにあたっては、主体性とか実質的関与、あるいは自律性ということについては、いろいろな面で配慮をする。そういうことをセットにして提案している訳です。ですから、そこのところに「より」と今の段階で書くのはいかがなものかというのが、私の意見です。  もう一つは、将来、見直すときに、国民的な基盤、ということが大事であることは間違いない。この制度全体が、それにかかわるものですから、それは間違いないのですけれど、それ以外の見地からも幅広く見直さないといけないかもしれないはずなのに、この見地だけを強調しますと、将来、検討するときに、かえって足かせにならないかという感じがします。
 その意味で、私は原案どおりの方がいいのではないかと、今申した2つの理由からそう思います。

【中坊委員】 私が、これを書かせていただいたのは、井上さんのおっしゃるように、基本的に我々は裁判員制度を導入したんですね、ただ、そこのところに「導入すべきである」で終わってから、それから、今度は「具体的な制度設計においては」という、今度は逆にここを注意しろと、反対側の方のこういうところのところは注意しなければならないとわざわざ書いてあるから、それにパラレルの意味において一方前向きにも考えなければいけませんよという意味で私たちは書いているだけであって、「導入すべきである」で終わっているならいいんですけれども、具体的な制度設計に当たっては公開裁判を受ける権利とか適正手続の保障などに適合しなければならないと、表現はおかしいけれども、やや消極的な見地に立ったような意見が出ておって、そこが書いてあるから、それだけではちょっと片方だけでバランスを失しているのではありませんか、やはり、同時に前向きのものも書いておいた方が当然という趣旨です。私は、何も今、おっしゃるように、まさにパラレルに扱うべきではないかという意味で、私自身は書いておるということです。

【竹下会長代理】 高木委員の御意見は97(新103)ページのところに関するものですから、ちょっと別なのですが、中坊委員の言っておられるこの96(新102)ページの下から7行目からのところは、むしろ憲法違反にならないような制度を考えようという趣旨ですから、これは決して消極的ではないと思います。

【中坊委員】 だから、そうではないけれども、そこがわざわざ書いてあるということは、今度は、裁判員制度を導入したときに、主体性とかということからもっと今後は将来的に前向きに、前向きというのはまた表現がおかしいかもしれないけれども、そういうふうに前進させるものという側面も考えていかないといけないということで私は書いておるんです。

【井上委員】 私もちょっと誤解していたんですけれども、中坊先生の言われている修正の提案の部分と、高木さんの言われている部分は違うんですね。この前、会長がまとめられたのは、ある段階になったらこれを見直すのだ。これは恒久的、未来永劫のものではない。その段階でいろいろ考えましょうということだったわけですから、それは高木さんの言っておられる方なんですね。
 それに対して、中坊先生がおっしゃっている修文は、かなり議論した末、こういう形の合意をしたわけですから、ここでそこを取り上げると、また議論が蒸し返しになるのではないでしょうか。

【中坊委員】 私の言う趣旨はそういうことです。だから、高木さんのおっしゃるとおり、多少ちょっと違うかもしれない。

【井上委員】 段階が違うんですね。

【中坊委員】 段階が違う。

【高木委員】 私も何度も何度も申し上げてきました。また基本論に戻るというと水原さんに怒られるかもしれないけれども、実施後においても見直しが行われるはず、その見直しの際には当然議論になる、この前、井上さんも、そういうことも含めて、この表現の中に含意されているとおっしゃられたけれども、もし、井上さんの言うようなことで、そもそも国民の司法参加というものをどういう形で実現するか、そのそもそもの拠ってきたるコンセプトはどこから来ているのか、中間報告のときに、こういうコンセプトでという合意を得たはずです。それはその後議論していろいろなことがありましたから、中間報告と同じように書き直してくれなんと言っているわけではなくて、中間報告と今回を比べてみたときに、この間も「国民主権」などの言葉を入れてくださいと言いましたが、そういう言葉を余りにも消し過ぎだと思う。だから、もし私の意見を入れてくれないのだったら、憲法のところの前文等の表現を書き入れてください。何度言っても入れてくれない、前文や1条とかも。

【佐藤会長】 95(新101)ページなどのところに「国民主権」は入っていますね、「国民主権に基づく統治構造の一翼を担う」云々と。それから「統治主体」は総論のところにも入れましたし。ここは具体的制度設計とリンクするわけではないけれども、理念において大事だということで入れたわけでして、やはりいろいろなところに配慮しているのではないかという思いはするんですが。

【井上委員】 論争するつもりはありませんけれども、中間報告は、私もその部分をかなり丹念に読み返したんですが、国民的基盤を確立するということ、そして、司法全体に国民が参加していくということ、そのところでは国民主権や統治主体ということに言及しています。
 しかし、それと訴訟手続あるいは裁判体への参加というところは意識的に分けていまして、訴訟手続へのあるいは裁判体への参加のところでは、竹下代理も詳しい御意見をおっしゃり、議論もして、そこでの国民主権の持つ意味については、いろいろ理解が分かれるので、そこのところは入れにくいという、そういうまとめだったと思います。中間報告でもそういう整理だったと思うのです。そのことを反映して、最終意見案でも、95(新101)ページの一番最初のところに「国民主権」ということが書かれてある。今、会長がおっしゃったように、理念的な背景あるいは基盤としてそういうものがあるということは間違いないので、ここに書いてある。
 ところが、具体的な裁判手続への参加、特に制度設計に当たってそれを強調するということになると、意見が分かれるわけですので、そういうまとめにはしなかった。それをそのままここに忠実に書いてあるのではないかと、そういうふうに思うのです。

【高木委員】 これは「実施後においても」と。

【佐藤会長】 これを議論しますと、また前の議論がいろいろよみがえってくるようなところもあるものですから、もしよろしければ。

【井上委員】 私も、中坊先生の例にならって、大きく妥協しようと思いますけれども、「より主体性」とか、「より自律性」となるとさっきのように、今度提案するものが不十分だと自ら言っているようなものなので、高木案の第2案の中の「より」というのを取って、「国民的基盤を強固なものとする見地」を含め、その他の観点も排除しないで、それを含めて、いろいろな観点からこの制度の見直しを行っていくというふうにしていただければ、結構だと思います。

【高木委員】 何も独立評決ということをお願いして、こればかりにこだわっているという趣旨でもなく、これから制度がつくられ動いていきますと、これで何年か経って当然いろいろな見直し点なども出てくるでしょう。それで、主体的、実質的関与とか国民的基盤あるいは自律性、責任感という表現は、例えば、裁判員の選任方法やら適用対象事件やら公判手続やら、いろいろな問題に関わってきて議論が将来及ぶだろうと思うんですね。
 そういう意味では、将来に議論が及ぶであろうときに、国民的基盤がいいのか、主体的な云々を使っていただくのがいいのか、そういう観点を論理的に大切にしていくということは、極めて重要だと思います。井上さんの妥協案で「より」を取っていただいて結構ですけれども、これから制度を作って動かすわけだから、制度の根幹にかかわる論理はきちんとしておかなければと考えます。

【井上委員】 そこは違っていないと思います。

【高木委員】 そういう意味では、議論の進展の仕方によっては、今後もいろいろな改良点が多分出てくるのではないかと。

【佐藤会長】 どの制度も、我々が考えたのが未来永劫変わらず、そのままということはないわけで、この制度だってそうだと思うのです。ですから、まず、これでスタートしようではないか。ここが非常に大事なところで、これ自体従来にない画期的なことだと思います。

【井上委員】 実質的には私は高木さんとそう違っていなくて、これが持つインプリケーションが、違った角度から見ると違って受け取られる可能性があるので、そこを心配しているわけです。

【佐藤会長】 では、さっき井上委員がおっしゃった表現か、あるいはちょっと思いつき的ですけれども、ここの第2案を生かせていただいて「国民的基盤の確立の重要性を踏まえ、制度の見直しを行っていくべきである」とするのはどうでしょうか。

【井上委員】 それに加えて、「幅広い見地から」とか何か入れていただければよろしいのですが。

【藤田委員】 枯木も山のにぎわいでもう一つ案を出しますと、今考えている裁判員制度は、国民が主体的・実質的に司法に関与していく制度として提案しているわけで、国民的基盤に立ち、国民の自律性と責任感に基づいて刑事司法を運用するという前提に立っているわけです。勿論、制度について将来更に改善していくということを否定するわけではありませんけれども。そういう意味で、第3案を生かすとすれば、「制度の在り方については国民の自律性と責任感をより高める見地に立って考えるべきである。」というのはどうでしょうか。

【水原委員】 私はこの原案のとおりでいいと思う、率直に言いますと。なぜかというと、今までやっていること、井上先生、頭をひねらないでくださいよ。まとめようという気持ちはよくわかります。わかりますけれども、まとめなければいけないことも当然ですけれども、今、我々が議論して、裁判員制度というものをここまでまとめてきました。これは現在考えていることについてはベストではないかもわからないけれども、ベターの方法として考えたわけです。ここで出発しましょうと、そして出発した後、これが最善のものとは考えておりませんよと。最善のものであるかどうかは実施の運用状況を不断に検証して、悪いところがあったならば見直しましょうよと言っているわけなのであって、今から、より何々のためにしなければいけないとか、するべきだということに視点を置かなければいけないという考え方はちょっと偏り過ぎているのではなかろうかという気がいたしますので、私は、別に修正せず、原案のままが非常によく考えられたものだと思います。

【竹下会長代理】 私は、問題はこういうことだと思うのです。見直しをする必要が出てくるだろうという点については、皆さんの意見が一致していると思います。その見直しの方向性を示すようなことを今から入れてしまうのは適当ではないのではないかというのが、藤田委員、水原委員、また井上委員の御趣旨だと思うのです。ですから、方向性を示すのではなくて、先ほど会長も言われたように、「国民的基盤の確立の重要性を踏まえ」とか、あるいは国民的基盤の確立に「配慮しつつ」とかいうような表現でどうでしょうか。これだと、どちらの方向にということではなくて両方ありうるということにならないでしょうか。

【佐藤会長】 ある意味では、これは当然のことと言えば当然のことなんですよね、どの制度であっても。

【井上委員】 そうですね。「踏まえ、幅広い見地から」というふうに入れていただければ結構です。

【藤田委員】 見直しというのが特定の方向性を差し示すものではないという前提での表現と伺ってよろしいわけですね。

【竹下会長代理】 そういうことです。

【佐藤会長】 では、よろしいですか。さっき申し上げたように「国民的基盤の確立の重要性を踏まえ、幅広い観点から制度の見直しを行っていくべきである」。

【高木委員】 実施してみて、いろいろな問題点が浮き上がってくる、そういった問題点の表われるジャンルやら形態にもよるだろうと思うんですけれども。

【吉岡委員】 私もそれで結構ですけれども、私の考えから言うと第1案の方がいいなとは思っています。やはり国民が主体的に関与していかなければいけない制度だと思いますので、第1案の方がいいと思いますけれども、皆さんの御意向がそうですから、あえてそれを強行してくれとは申しません。

【佐藤会長】 では、ここはそういうように修文させていただきます。
 それからもう一つ、高木委員の方から推進体制について御指摘があったかと思います。

【高木委員】 107(新115)ページなんですが、これは大変御苦労があって、こういう表現になっているんだろうということは重々承知をしているつもりですが、利用者、国民というか、そういう立場で推進の過程にも、国民の視点が必要なんだろうと思います。原案では、箱のすぐ下に「利用者である国民の視点から」という言葉を入れていただいておりますが、この国民の視点という言葉を書き込んでいただくとしたら、推進体制についてもこういう国民の視点が組み込まれなければいかぬのではないですかという方にも掛けていただくということではないかと思うんです。
 そういう意味では、お手元にお配りしましたように、上の方も消していただく必要もないかもしれません、両方書いていただけるなら書いていただいても結構ですが、下の方に、「利用者である国民の視点に配意しつつ、内閣に強力な推進体制」をとか、「配意」なんという言葉がいいのかどうかよくわかりませんので、その辺は御検討いただけたらと思うんですが、そんなふうにここは見直していただけたらどうかと思います。

【佐藤会長】 高木委員の意見書を拝見しまして、ごもっともだということで、こういう文章はどうかなと思いました。勿論、利用者たる国民の立場を踏まえて我々審議会はいろいろ考えてきて、国民の視点からこういう大幅な改革の提言をしようとしているわけです。それで、推進体制の方も、そういう観点からやっていただきたいということで、この文章を入れてはどうかということです。
 その段落の下から2行目の「強力な推進体制を整備し、」の次ですけれども、「引き続き利用者である国民の視点から、一体的かつ集中的」云々と、引き続き利用者である国民の視点、推進体制も引き続きそういう視点からやっていただきたいという趣旨です。これで、高木委員の御趣旨は生きないでしょうか。上の方を消す必要はないと思います、上の方は上の方で我々の意見ですから、こちらは推進体制ということで。
 よろしゅうございますか。

【高木委員】 結構です。

【佐藤会長】 以上で、意見書についてちょうだいした御意見についての御議論をいただいたわけでありますが、副題の方は最後にしますけれども、そのほか特に御注意いただくべきところはございませんでしょうか。

【水原委員】 これは委員全員異論がないところだと思うんですけれども、この意見書に文書として載っていないところがいささか気になるものですから、申し上げたいと思います。 それは、54(新57)ページの「法曹人口の拡大」、「1.法曹人口の大幅な増加」の枠囲みの一番上のところでございます。ここですと、「現行司法試験合格者数の増加に直ちに着手し、平成16年(2004)には合格者数1,500 人達成を目指すべきである」という文書になっています。
 そうすると、平成16年までは何もやらなくていいのかというふうに、直ちに着手すればそれまで増加のことについては何も考えなくてもいいのかというふうに取られると辛いなと。辛いなというよりも、我々がここで議論したこととは違った形になるのではなかろうか。というのは、これはいついただいたのでしょうか、事務局に非常によくつくっていただきましたもので。

【佐藤会長】 シミュレーションですね。

【水原委員】 実働法曹人口の推移のシミュレーションで、A、B、Cという3つの案をお示しいただきましたが、これによりますと、今年は1,000人ですね。来年、2002年には、このA、B、Cの案ともに1,200人になっています。それから、2003年も1,200人、2004年には1,500人となっているんです。違っているのは、3,000人になる時期が違っておっただけで、来年から1,200人にすることについては、十分な議論はなかったけれども、これについて特段の御異論がなかったような気がいたしますので、この点をもう少しはっきりしておく必要があるのではなかろうかと思います。
 殊に、現在司法試験を受験目指している方々にとっては、どういうふうに変わっていくのか、平成16年までは、全く変動がないのかというふうに取られると、我々の真意と違うと思いますので、是非ここははっきりと枠囲みの中か、本文の中に入れていただければと思います。来年は1,200 人にすると。もっとも、この問題は、ここで具体的に決められることではございません。司法試験考査委員会議において決められることでございますが、やはり、意見として発信だけはしておく必要があるという気がいたしますので、申し上げておきます。

【佐藤会長】 ありがとうございます。
 確かにおっしゃるように、この書き方だと、途中がどうなるのかといぶかられるかもしれませんね。この点は、受験生の重大な関心事でしょうから、できれば、明確な発信をしておいた方がいいかもしれないという気もしますが、いかがでしょうか。

【藤田委員】 御趣旨はそのとおりだと思うんですけれども、いきなり1,500人にぽんと行くのではなくて、段階的に行くんだろうと思います。ただ、1,500人にしても3,000人にしても、質的なレベルの維持というのはこれは必須の前提で、今日いただいた新聞の論説にもそういう趣旨がございます。そういう点からいって、1,000 人になってから今年4月修習生になった期が3期目でしょうか、1期目が去年の10月に卒業したんですが、大量の落第が出たということで、増員の影響かというようなニュースが流れましたし、一方研修所の受入体制の整備の関係もありますので、来年から1,200人にする受入体制について現実的な手当てができているのかどうかということもあります。ですから、段階的にという抽象的な方向性を入れるという程度にして、これから更に詰めてできるだけ早く増加していく方向で努力するということで、よろしいのではなかろうかというふうに考えます。趣旨に反対しているわけではございません。

【井上委員】 いずれもごもっともな御意見なんですけれども、この原案で、「増加に直ちに」というのは、当然そういうことを含んでいる。一挙に、例えばある年にぼんと増やすというのは、今、藤田委員がおっしゃったような面を含めて、いかにも無茶であるわけですから、当然、段階的にというインプリケーションであると私などは受け取っていたのですが、それでははっきりメッセージが伝わらないというのが皆さんの御意見でしたら、何で今ごろになってという感じもしないでもないですけれども、明記するということにあえて抵抗はいたしません。
 その場合、藤田委員がおっしゃるのもごもっともですけれども、いずれにしろ、16年に1,500人というのも、あとの3,000人をいつごろというのも、あくまで目標ですよね。我々としては、目標をそういうふうに掲げてあるわけですから、ここでもどうせ言うなら、いつぐらいから、こういう形で増やしていくべきだというような提案をするのもいいのではないか。予算化されたり、本当に定着するかどうかは先の問題だと思うんですね。でも、せっかく言うなら、はっきり言った方がいいのではないか。その意味で、また、藤田委員に反対をしますけれども、水原委員のおっしゃるような趣旨で修文をした方がいいかなという気がします。

【中坊委員】 私はどちらかといえば井上委員の説に賛成で、間近なことをしかも具体的な数字を挙げて書くことの問題点というのがあるわけでして、文書の中でも、「合格者数の増加に直ちに着手する」と書かれているわけで、2004年に1,500人と言っているわけで、それが具体的な当面の目標ですということが書いてあるんだから、私たちのこの審議会の在り方というのは、推進体制のところを余り細かく、確かに、水原委員のおっしゃる気持ちはよくわかりますよ。しかし、我々審議会としてどうあるべきかということを考えたときには、余りそこだけ詳細に書き過ぎると、やはり問題はあるので、表現としては「直ちに着手することとし」と書いてあるんだから、大体ここで読んでもらうという方が奥ゆかしいのではないか。

【井上委員】 ほかのところで言っておられることと全然違いますね。

【藤田委員】 提案は撤回いたします。

【水原委員】 三様のシミュレーションが出ていますが、これはいずれも来年から1,200人を目指すべきだというものです。

【佐藤会長】 平成14年度からですね。

【高木委員】 今、中坊さんが言われたことをもうちょっとイメージしやすいために、「現行司法試験合格者数」、この後ろに「(1,000人)」と数字1,000人を入れて、「現行司法試験合格者数(1,000人)の増加に直ちに着手することとし」としたら良いと思います。1,000人という数字を現に議論して、そういう議論をしたわけですから。

【鳥居委員】 高木委員の「(1,000人)」を入れるのはそれでもいいと思います。私は水原委員にかなり強く賛成するのですが、「着手し」の後ろに、「段階的増加を経て、平成16年には合格者数1,500人達成を目指すべきである」と、この黒枠の方はしておいて、次のページの本文の上から6行目に、具体的には、これは具体的に言わなきゃいけないわけなんだから、ここでは、「具体的には、例えば、平成14年何人」というのをここに入れてはどうでしょうか。

【佐藤会長】 そうしますか。

【水原委員】 私は、枠内に入れるか入れないかとともかくとして、ともかくも枠外においてははっきり、鳥居委員がおっしゃるように入れていただければと思います。

【井上委員】 枠内に入れるのはちょっと行きすぎで、中坊先生がおっしゃるように奥ゆかしく、本文で触れるのでいいじゃないですか。

【中坊委員】 水原さんの言っているのに絶対反対だと言っているわけではありません。

【佐藤会長】 わかりました。ちょうど休憩をはさむべき時間でございますので、結論を出させていただきます。

【竹下会長代理】 ちょっと今のところを確認してください。

【佐藤会長】 枠内はそのままでいいと思います。鳥居委員の御意見もありますけれども。そして、本文のところの6行目に、「具体的には、平成14年には1,200人とするなど」。

【井上委員】 「平成14年の司法試験合格者数を1,200人程度とするなど」、でどうですか。

【水原委員】 平成16年のそれはどうなりますか。

【佐藤会長】 それはそのまま残しておきます。「・・・するなど、現行司法試験合格者数の増加に直ちに着手することとし、平成16年には」という形です。

【竹下会長代理】 では、そうしましょう。

【藤田委員】 いずれも「目指す」ですね。

【佐藤会長】 はい。では、ここもそういうようにさせていただきます。
 文章は以上でございますが、最後に、副題ですが、鳥居委員、中坊委員等から御意見をちょうだいしておりますけれども、簡潔にということになると鳥居委員の御意見と言うことになりましょうか。

【鳥居委員】 私、紙を置いてきちゃったんですが、中坊委員の御提案が3つありまして、あの3つの中に、捨てがたいキーワードがあったんです。そこに丸を付けておいたんですが、それを置いてきちゃったんです。

【佐藤会長】 「21世紀を支える」ではないですか。「21世紀の日本を支える司法制度」であれば、改革の趣旨が当然入っていると思います。中坊委員の案も捨てがたいんですけれども。

【中坊委員】 私は別にこだわりませんから。

【佐藤会長】 鳥居委員の案でよろしゅうございますか。

【鳥居委員】 はい。

【佐藤会長】 「21世紀の日本を支える司法制度」。では、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。
 以上で、第一読会、第二読会を経まして、本日、第三読会として御審議いただきました。数多くのいろいろな貴重な御意見をちょうだいして、ここにたどり付くことができまして、本当にありがたく思っております。
 今後、代理と私で最終的に確認させていただきます。いわゆる「てにをは」に関する形式的な修正はさせていただきますけれども、勿論、内容については触れることはございません。そういうことで、最終意見の内容としては、このような形で、実質的には今日、今、確定させていただいたということで、よろしゅうございますか。
               

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】 ありがとうございます。
 それでは、休憩が終わった後、皆様から御意見をちょうだいしたいと思いますが、本当にこれまで長時間にわたりまして、御審議賜って心から厚く御礼申し上げます。
 それでは、ここで休憩し、4時に再開しましょう。そして、再開後、これまでの審議を振り返りつつ、今後の司法制度の改革への御希望などにつきまして、それぞれ御意見をちょうだいしたいと思います。
 山本委員は所用でお出になりましたが、文書を残していらっしゃいましたので、私の方から代読させていただこうかと思っております。
 それでは、4時まで休憩させていただきます。                  

(休  憩)

【佐藤会長】 それでは、再開させていただきます。
 皆様の御感想、御意見などをちょうだいしたいのですが、さっき1つ申し忘れがあります。76(新82)ページの「弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化」に関係することですが、弁護士の法人制度、事務所の法人化について少し説明申し上げたいと思います。
 中間報告で「平成12年度中に所要の法的措置を期待する」としておりました弁護士事務所の法人化について、これを可能にする内容の「弁護士法の一部を改正する法律案」が、本日午前の参議院本会議において可決・成立いたしました。それを御報告申し上げたいと思います。
 本年3月6日、内閣提出法案として国会に上程され、5月23日衆議院法務委員会、翌24日衆議院本会議、さらに、昨日参議院法務委員、そして本日の参議院本会議において、いずれも全会一致で可決・成立を見たということでございます。
 この法案は、弁護士業務の基盤を拡大強化することにより、複雑多様化する法律事務に的確に対応し、国民の利便性の一層の向上を図ることを目的とするものでありまして、執務態勢の強化による弁護士業務の質の向上や裁判の充実・迅速化、飛躍的に増加する弁護士人口を吸収する環境整備、裁判官への任官を始めとする弁護士の活動領域の拡大、従たる事務所の設置による弁護士へのアクセス拡充など、さまざまなメリットを期待できるものとされておりまして、当審議会の目指す司法制度改革を支える1つの基盤となるものとして、当審議会としても大いに歓迎すべきものというように考えている次第です。今日、こういうことになりましたので、喜ばしいニュースとして御報告申し上げておきます。

【鳥居委員】 弁護士事務所の法人格はどういうものになるんですか。

【竹下会長代理】 特別の、弁護士法人という名称の法人です。

【鳥居委員】 そうですか、そういう法人格ができたのですね。はい、わかりました。

【藤田委員】 施行は来年の4月1日と聞いていますが。

【事務局】 そのとおりです。

【佐藤会長】 ということでございます。
 それでは、委員の皆様から、これまでの審議を振り返りながら、今後の司法制度改革への希望などにつきまして、それぞれ御意見をお述べいただきたいと思います。この審議会の第1回目のときにも、各委員から司法制度改革に臨む抱負などをお話しいただきましたけれども、最終意見の内容も実質的に確定いたしましたので、お一人ずつお話しいただければと思う次第です。
 それでは、いつも50音順で申し訳ないんですけれども、石井委員から、5分前後ぐらいのところでお話しいただければと思います。

【石井委員】 久し振りに50音順に回ってきて、始めのころを懐かしく思い出しました。
 とにかく、こういう審議会で、我々委員はまだ良いのですが、会長や会長代理さらに事務局の皆様などおまとめになる方々は本当に大変だったと思っています。それを今日まで随分、色々なことにご苦労をされながら、ここまで良くおまとめいただいたことに深く敬意を表するところであります。
 最初のときにも申し上げましたように、工学部の出身で法曹一元などという言葉を聞いても、何のことやらちんぷんかんぷんで、そういう私にこの審議会の委員などはとても務まらないと思っておりました。しかしながら、先生方の温かいお導きで、何とか今日まで2年間務めてこられたことに対して、まず御礼申し上げたいと思います。
 内容につきましては、いろいろありますが、ユーザーの立場からということについては、随分配慮の行き届いた内容になりましたし、それから、国際的な見地に立っていろいろものを考えるということについても、非常に幅広く取り入れていただいたと思います。特に、知的財産権についても、国際的な見地ということについて、随分取り入れていただいたとことは、大変よかったと思っております。
 ロースクールについても、また申し上げると笑われるかもしれませんが、くれぐれも今までのような研究者育成だけのための大学院ではなくて、国際的視野に立って実社会の状況を十分把握して、本当に高い倫理感を持って法曹を目指す、そのような実務家の養成を図っていく場になって欲しいと心から願っているわけであります。長岡藩の米百俵の精神を是非生かしていっていただきたいと思います。
 今、私が一番気になっているのは、私だけのことかもしれませんが、現時点での判断でよかれと思ったことをいろいろ申し上げて、それが取り入れられたものも、取り入れられなかったものもあります。最終的にはこういう案ができてきたわけですので、日本のためによかれと思ってつくった案が、長い目で見たら、やはり問題があって、日本の将来に悪い影響を与えるというようなことがあったら本当に残念だというふうに思っております。今の希望としては、20年後、30年後に私たちの行った判断というものが間違っていなくて、この改革によって日本全体がよりよい方向に歩み始めて一層発展していくということを祈ってやまない、そういう心境でございます。
 細かいことを申し上げますれば、今回、第1回のときにも申し上げて、結局うまくいかなかったのですが、こういう審議会で何とか新機軸を出したいという気持ちからワーク・デザイン・メソッドをどこかに取り入れたいと思っておりました。しかし、私の力不足で皆様に御賛同を得るところまでいかなくて、いわゆるコンベンショナルな方式の議論になって、これは今回できたものに対して別に文句を言うわけでは全くないので、それについては誤解のないようにしていただきたいと思いますが、それだけがちょっと心残りの点であります。とにかく我々のやった案が日本の将来に大いに役立つをことを祈念しているということを申し上げて感想とさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。それでは、井上委員どうぞ。

【井上委員】 今、石井委員がコンベンショナルとおっしゃいましたけれども、私などのようなコンベンショナルな人間から見ますと、この審議会での議論というのは、極めて非コンベンショナルなものだったというのが率直な感想でして、我々学者の世界、あるいは法律実務家を含めて、これまでいろんな場で議論をしてきた経験に照らしても、非常に異なった議論の仕方であり、進め方だったというふうに思っています。こういうのは、初めての経験で、最後にしたいとは申しませんけれども、非常に大きな経験であった。それは、公開度が非常に高いということもあるんですけれども、何よりも、この審議会の構成、多様なバックグランドを持っておられる方が、ここに集まって議論をしたということだろうと思うんです。最初はほとんど見ず知らずで、また分野も違うものですから、ウォームアップをし、議論がかみ合うまで、最後はかみ合ったと信じていますけれども、かみ合うまでかなり苦労があったと思います。
 昨年の初めのころの様子を思い返してみますと、よくぞここまできたな、よくまとまったなというのが率直な思いでして、これにつきましては運営に当たられた会長及び会長代理、それと我々をいろんな面で支えてくださった事務局の方々に本当に深く感謝を申し上げたいと存じます。
 私個人の経験からしましても、自分の専門に比較的近い分野について、こういったいろんなバックグラウンドの方々と、かなり突っ込んだ議論をしたというのは初めての経験で、いろんな異なった視点がある。これまで当たり前のように思ってきたことについても、いろんな御疑問があったり見方がある。それについて、改めて説明をしたりするということの難しさと、逆に言うと、喜びと言うか、そういうのを感じた審議であったというふうに思います。その経験というのは非常に有益でして、リアルタイムでは決していつも楽しかったとは申せませんでしたけれども、今から振り返ってみると、何か時がすべてを美化するようで、非常に楽しい経験であった。こういう経験を是非自分としては、自分の分野に帰って、これから象牙の塔にこもりたいと思っておりますけれども、そこで活かしていければなというふうに思っております。
 この最終意見につきましては、私個人としても、いろいろまだ言いたい、言い足りないことはある。それは、皆さんの方が、もっとあると思いますし、外の方から見れば、何かまだまだやり残したところが多いのではないかという批評も聞こえてくるところですが、確かに、それぞれがこれまで抱いてきた大きな夢から見れば、御不満が残るところかもしれませんけれど、見方を変えて言えば、これまで司法制度について、いろいろ議論があったにもかかわらず、現実化の可能性、あるいは現実性ということからはかなり遠い議論が多かったのではないか。それに対比すれば、現実性を持った案として、よくここまでまとまったなというのが私などの印象です。
 気の利いたことは言えないんですけれども、私が学生時代にアポロが月に着陸したときの船長の言葉になぞらえて言えば、この一歩は小さな一歩かもしれないけれども、日本の司法制度にとっては大きな一歩になるのではないかというふうに信じております。
 勿論、これから我々が提案したことを含め、改革を実現していくには、踏むべきステップが、なおたくさんありますし、道はまだ、遥けくかどうかは別として続くと思います。我々の任務はこれで無事終了するわけですが、難産と言うか、苦労した子供ほどかわいいというふうに申しますので、我々もそれぞれの立場に戻って、それぞれの立場でこの司法制度改革の行方を見守り、あるいは力の及ぶ範囲で協力していきたいというふうに考えております。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。それでは、北村委員どうぞ。

【北村委員】 約2年前でしたけれども、内政審議室の方がいらっしゃいまして、この委員をということで、その方は検事さんだったんですけれども、非常に人のよさそうな検事さんがいらっしゃいました。どのぐらいの回数でやるんですかとか、いろいろ伺いましたら、月2回ぐらいで、では1回当たり何時間ですか、大体2時間ぐらいですと、ほかにはないんですかと、ほかにはありませんということで、それならば、まあできるかなというようなことでお引き受けしたんですが、とんでもない審議会になってしまいました。この間、その方にお会いしたものですから、お名前をうそつき検事さんというふうに付けさせていただいておりますけれども、何かすごい恐縮していらっしゃったんですが、別にその方の責任ではないんですが、やはり検事さんはうそをついてはならないというふうに思っておりますけれども、そういうことで始まったんですが、法律の専門家でもなくて、隣接の学問領域であって、しかも私は何々の団体の代表ではなくて、個人で出ていますので、やはりこの審議会はかなり辛かったというのが本当の気持ちなんです。でも、ここの場で学んだことも非常に多くて、どういうことを学んだのかと言うと、やはりプレゼンテーションのやり方と言うか、それがすごいものだなということを学びました。
 それから、自分の考え方をいかに筋を通して主張するかというのは、これはちょっと気をつけたつもりなんですけれども、そういうことが必要なんだな、こういう2年間という長い期間でやるときには特に必要なんだなということも学びました。
 そこで、やはり反省することがしばしばありまして、結局自分の言っていることが、思いつきで言っている部分というのがないんだろうかとか、あるいは自分にこれは非常に利害が関係してくるから、それについて言っているという部分がないのかというようなことは自分自身しばしば反省しながらやっていったというような、だから今日発言したことはちょっとまずいかなというようなことも、その審議会の日においてはあったかというふうに思います。
 井上委員もおっしゃいましたけれども、最初は理念みたいなところからやっていきまして、どういうふうになるのかというのは、私自身もよくわかりませんでしたが、最終的に、これはここにいらっしゃる委員の人がすべて満足しているわけではないと思うんですが、どなたも満足していないかもしれない。しかしながら満足してはいないけれども、なんとか満足できそうな、そういう意見書ができ上がったというのは、やはりこれは会長と会長代理に負うところが大きいなと思います。本当にありがとうございました。
 その中で、私はやはり法曹三者の強大な力を見せつけられた思いがいたしまして、特にここに出ていらっしゃる法曹三者の方も、皆さん休みなく、後で会長から皆勤賞を差し上げたらいかがかと思うぐらいにお出になっている。
 しかも、ここでけんかしていると思えば、実は仲がよくって、私はこれにごまかされてはならないなというふうに思いました。
 したがいまして、これから、この法曹三者の力が、毎年の合格者が増えるということは、もっともっと強力になるということですので、やはりそうではない人たちは真剣にそれを見守っていくということが必要なんではないかなというふうに思っております。報告書の中でこれだけのものが述べられているんですから、今後はやはり推進体制の方をよく考えていただいて、是非これを実行に移すということをしていただきたいと思います。  最後に事務局長は、ここにいらっしゃって、いろいろ意見を述べられたいことがあったと思うんですけれども、本当にいろいろとありがとうございました。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。それでは、高木委員どうぞ。

【高木委員】 会長、会長代理、そして委員の皆さん大変お世話なりました。それから、樋渡事務局長以下、事務局の皆さんにはいろいろ御無理を申し上げたことも多かったと思いますが、お許しをいただきたいと思います。議論の過程でいろいろ失礼なことを申し上げたりし、御迷惑を掛けたことが多かったと思います。どうぞ、素人ゆえのことでございますので、お許しを賜りたいと思います。
 率直な今の感想は、今日で大体おしまいかと、私のように素人は審議会のたびにいろんな資料やらを読んでくるのが大変でして、お陰で本職の方が大分手が抜けちゃったかなと思っています。ただ、私はこの審議会に参加させていただくに当たりまして、やはり利用者と言うか、国民と言うか、そういう感覚を意識して、できたかどうかわかりませんが、代弁するのが私の役割かなと思ってきました。そういう意味では国民の目線でと言うか、目線をできるだけ低くして、いろんなテーマを考えるということでやってきたつもりですが、果たしてうまく処してこれたのかどうか反省点もいろいろあると思います。
 2年前にスタートしましたが、この2年間、ちょうど世紀末、あるいは世紀初めという節目の時代だったせいもあると思いますが、わずか2年間ですが、やはり国民のいろんな意識の変化には、すごい大きいものがあったんではないかなと感じています。現在まだその途上にあるんだろうと思いますが、統治客体だ、主体だという議論もございましたけれども、主体化していく道が少しずつ開けてきている、そういう日本国民の状況ではないかなということも痛感させられている昨今です。
 審議会の始まった直後、法曹三者の皆さん、今まで怠慢ではなかったですかということを、何度も申し上げました。何でこんな司法の状態になっているんですかという、大変失礼なことを申し上げました。また、議論の過程では、国民のための司法制度であり、法曹三者の皆さん、あるいは法学者の皆さんのための司法制度ではないはずだという思いがしたときもあったように思います。ただ、その辺のことについては、この「おわりに」の数行を読ませていただきまして、本当に私が感じている思いを書いていただいたと感じております。具体的には、109(新117) ページの「おわりに」の第2パラグラフの「今般の改革は」というところから始まります表現ですが、その中で、「これほどまでに重大な改革を一時に実行しなくてはならなくなった要因の一つとして」云々と書かれています。それから、法曹三者の皆さんにいろいろ今後のことを、こんなふうに御対応いただきたいという願望を書いていただきました。まさに、私の気持ちにフィットする部分、ということでございます。明日からは、また本職中心の生活に戻って、一生懸命頑張りたいと思います。今後また、いろいろお世話になると思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 最後に、私にしてはしんどい2年間だったんで、司法制度改革の推進が、この表現によりますと、一体的、集中的にというふうに書かれておりますが、こういう表現にそぐうように、この意見の内容が具体化されていくのを、審議に関わった一人として見守っていきたいと思っております。  お世話になりました。ありがとうございました。

【佐藤会長】 ありがとうございました。では、鳥居委員どうぞ。

【鳥居委員】 私も、まず最初に会長、会長代理に、そして委員の皆様、それから事務局長を初め、事務局の皆様に御礼を申し上げたいと思います。
 2年間を通じまして、この司法制度改革というものが本当に大きな問題であるということを、改めて勉強させていただきました。
 戦後56年経ちますけれども、私たちが積み残した問題が余りにも多い。ますます問題は広がっていっている国になりつつあると思いますが、私たちのさまざまやっている日本の改革は一言で言えば、これ以上、大きな政府の国にしてはなならない。もっと効率のいい、住み心地のいい、そしてデモクラシーが確立している国にするという努力ではないかと思います。その意味で、今回の司法制度改革は、かなり大きな改革を提案することができたという手ごたえを感じて、大変ありがたい仕事に携わらせていただいたと思っています。今回意見書という形で提案いたしますものを、できるだけ本当に実行する体制をつくっていただきたいということが第1のお願いであります。
 第2には、とりわけその中でも、法科大学院の制度を確実に実現していく。そのため関係者は、とりわけ大学人が頭を切り替えて欲しいと思います。私の今までの経験から言えば、大学で、教授会の中で長い長い議論がまた続いて、いろいろな妥協の産物として、それぞれの学校の案ができ上がってしまうなどということが起こりかねない。それが大学の体質だと思いますので、そういうものを一切かなぐり捨てて、新しい時代に必要なロースクールをつくるということに焦点を絞って欲しいというふうに思います。
 それから、我々は司法制度改革について、すべてを議論したのかということなんですが、やはり私たちは積み残した問題があるのではないか、言葉を替えて言えば、これから押し寄せてくる新しい波はまだあるんではないかと思います。
 例えば、WTOの約束が本格的に導入される時代が、もう目の前に迫っているわけですが、弁護士事務所の法人化の次には外国の弁護士事務所をどう日本が受け入れるのかという大きな問題に多分直面すると思うんです。そういうようなことを考えますと、国際的なリーガル・サービス、あるいは、国際法務戦争が、これから熾烈になっていく中で、日本はどうしたらいいかという問題については、私たちの今回の司法制度改革審議会では大きな焦点にはしなかった。むしろ、これからそれが新しい課題として浮き上がってくるのではないかと思うんです。そのことを考えますと、これから改めて司法制度改革の次の波を起こしていかないと、もう間に合わない。それから、またロースクールも、その中に、外国と闘う力を持ったリーガル・サービスの教育、そういうようなものを組み込んでいく必要があるのではないかと思っています。
 まだ、ほかにも申し上げたいことがございますが、長くなりますから、このぐらいにさせていただきまして、改めて今回、この大切な審議会に参加させていただきまして、心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。

【佐藤会長】 ありがとうございました。では、中坊委員どうぞ。

【中坊委員】 私は、この委員の中で最高年齢であるにかかわらず、大変わがままな委員でございました。そのために、大勢の委員の方、あるいは事務局の方々に御迷惑をお掛けして、よく我慢していただいたということに対しまして、おわびと同時に心から御礼を申し上げたいと思います。
 まず、この審議会を通じて思いますのは、私は本当によく会長、会長代理、あるいは事務局が寄られて、よく進行され、審議をよくまとめられたということについて、これは一種の驚異と言うか、本当に特に会長のリーダーシップは大したものであったと思っております。
 それは、言うまでもなく、今回この委員のうち、法曹三者というのが3名で、あと10名は学者と利用する立場の方、別の言い方をすれば、法律実務については素人の方々であったわけですが、その方が、しかもこの司法制度について実質的に審議するということが果たして可能であろうかと疑問を持たれていたと思います。
 また、さらに、この審議会が生まれるときに国会の中でもいろいろ言われておりましたように、事務局主導になるのではないかという懸念も持たれておった。にもかかわりませず、その2つの大変な壁を乗り越えられて、六十数回の審議の中で、しかも司法制度全体に対する基本的な改革案を提示させていただいた。特に私に言わせれば、そのお手並みというか手法がすばらしかった。まずヒアリングに始まりました。それから、論点整理に入りまして、その次が私は非常によかったと思うのは、利用する立場の方々が主になってリポートする。それをどちらかと言えば法律実務家がサポートするというような形の中でこの審議は続けられた。まさに利用する方が、主たるレポーターとなって論議を進められていくという方式を採用され、その代わり、そのレポーターになられた方は、大変な御苦労が要ったと思うんですが、委員もそれを見事に克服されて我々の中間報告にまで至った。それで、また今度は全部一括して審議するという形になって、まさに見事としか言いようがないので、一月余りを残して我々の最終報告書をおまとめいただいたことについて、改めて会長や会長代理、事務局にお礼を申し上げなければならないと、このように2つ目には思うわけです。
 3つ目には、その中にあって、先ほど北村さんもおっしゃいましたように、まさに司法は従来は、法曹三者がこれを運営してまいりました。そのことが、私の言葉で言えば「二割司法」というような状況を招き、国民の皆さんにも御迷惑をお掛けした。私の大変大きな反省であり、遺憾だと思っておりますのは、この意見書の中においても、法曹三者がそれぞれ非常に層の厚いものとして存在し、しかも相互の信頼に基づいて運営されていかなければいけないということをるる基本的に言われておったと思うんであります。
 ところが、その点に関しましては、率直なところ法曹三者の意見は必ずしも最後まで随分平行線をたどらざるを得なかった。それを私も、それなりにこの審議会外でも平行線を克服するよう努力もしたんですけれども、結局それが克服できなかった。そのために、この審議会の在り方についても、いろいろ御迷惑をお掛けして、しかし、私はやはりこれが一番問題であって、妙な慣れ合いではなしに、まさに法曹三者が相互の信頼関係の下に立って、この司法を運営していくという現実の姿がなければ、やはり司法改革は何ぼ我々が提言しても、また推進機関が出てきても、うまくいかないと思いますので、そういう点については私自身も含めて法曹三者が基本的な大変な反省をしなければいけなかったのではないかと、このように思っております。
 この2つ目の側面といたしましては、今回の我々の審議には、おおまかに言って3つぐらいの大変な特徴があったと思っています。その1つは、先ほど石井委員の方からは、自分の提案したワーク・デザインが思うようにはいかなかったというふうにおっしゃいましたけれども、私はそれを理念先行型と言うて、着手先行型ではなしに、理念先行型でなければ改革はできない。改良はできても、改革はできないということを言って、あるべき姿というものをまず示して、それに向ってその実現がどうするかという思考方法でなければいけないというふうに思っております。その意味では、今回の審議は、まずもって論点整理、特に三条実美に始まる、大変な理念がまず示されて、そもそも我々の近代とは何であったかというようなところから説き始められた理念先行型の審議が今回の成果を生んだ最大のことであって、石井委員がおおっしゃったワーク・デザインという方法は、私はむしろ、この審議会において十二分に生かされたのではないかというふうに思っております。
 2つ目には、今回のこの審議はやはり最初、第1回目の日は、いろいろ意見もありましたけれども、結局公開に踏み切ったということであります。この意義は極めて大きいのであって、テレビを上の階に置いて、我々の審議の一つひとつが全部公開になっている。当初は、ある意味で考えられないような状況の審議であったにもかかわらず、これを公開ということに踏み切り、そしてインターネットにも流し、というようなことで広くやった。だからこそ、国民の関心が、ほんまであれば司法なんて片隅に追いやられるのが、やはりこのごろは、審議の終わりの方になってきて、国民の眼が我々に向けられてきた。そういう意味における公開という方法を我々が採用したことの意味は非常に大きいというふうに思うわけであります。
 3つ目には、これは言わず語らずのうちに、あえて言うなら、会長がそういうふうになさったんでしょうけれども、臨時司法制度調査会の意見書等を見ていましても、今回の審議が著しく異なるのは、いわゆる多数決によっていないということであります。勿論、多数決によらないというために、先ほどから皆さんの委員の方からも御意見がありましたように、確かに、我々一人ひとりの委員にしては、必ずしも思いが至らなかったかもしれない。しかし、大方の方向において、こうであろうというところで一致した意見を国民、あるいは内閣を通じて全国民に発信できたという意味は非常に大きい。これが多数決で決められておれば、当然のようにそこはそうはいかなかったのでありまして、そういう意味における多数決を取らずに合意の範囲内で書いた。それだけに皆さんとしては、食い足りない、いろんな意見があったけれども、おおまかにおいて納得した結論になったという意味は限りなく大きいと思っています。
 最後に、まさに我々は提言をしただけでありまして、これからがまさに本番と言うか、提言をどのようにして実現するかという推進体制が最も重要なことだろうと思います。しかし、その際には、私も既に、この委員会でも申し上げましたように、我々の大変な特徴であった公開、このことがやはり現実化させる過程の中においては、一々推進体制の内部を公開するわけにはいかないのであります。そういう意味における、それだけにこの推進体制がどれだけ国民の目に見える透明的な手続の中で行われるということが、本当に重要であって、そうでなければまたどこへ行くかもしれない。
 そういう意味における推進体制というのは、現実化すると同時に、表現はおかしいかもしれないけれども、密室の中に入るわけでありますから、いわゆるトンネルみたいなところへ入るということになるわけであります。それだけに、今後の推進体制というのは、我々がここまで進行してきた意味における最大の武器の1つであった、それがそうはいかなくなってくるということから、大変な問題が生まれてくるし、また、理念先行型というわけには必ずしも現場ではいかない。いろんな力との配分も出ていきますから、むしろこれからは推進体制の在り方こそが大変な問題ではないかということを危惧するわけであります。
 その点、我々からの手から離れてから以後、この我々の提言の精神、あるいは、それがどのように具体化され得るのか、あるいは何か曲ったものになるのか、これは私に言わしめれば、本当にわからない危険性を含んでおる状況ではないかというような感じを持っています。
 しかし、いずれにいたしましても、各委員の方々、事務局の方々の大変な御努力によりまして、本日このような最終報告をまとめるということができたことに対しまして、本当に私も心からお礼を申し上げたい、このように思います。どうもありがとうございました。

【佐藤会長】 ありがとうございました。では、藤田委員どうぞ。

【藤田委員】 振り返ってみますと、幾山川越え去り来たりしものよという感じがいたしますが、先ほど井上委員が当初果たしてまとまるのかという不安、危惧を持ったとおっしゃいまして、何か胸をぐさりと刺されたような感じがいたしました。その原因の幾分かは私にあったのかなとも反省をいたしております。時に礼を失するようなこともあったかもしれませんし、事務局にも、局長以下、御苦労をお掛けたしと思いますが、これもかって一緒に仕事をしてきた現場の裁判官たちの気持ちを代弁したいという気持ちのなせる業ということで、お許し願えればと思います。
 先日、政府の要職にある方が、この司法改革のことをどうせ大したことにはなるまいと思っていたら、大変なことになりましたねとおっしゃいました。私もそうだと思います。どれ一つ取り上げても大変な改革でございますから。しかし、皆さんがおっしゃっているように、仏様はできましたけれども、それに魂を入れていくのが、これからの作業でありまして、これからのことは今までに比べて決して劣らないぐらいの重要な過程になるのではなかろうかと思います。
 私個人といたしましては、精魂尽き果てたという感じでございますけれども、大変貴重な経験をさせていただいたと感謝しております。  どうもありがとうございました。

【佐藤会長】 ありがとうございました。では、水原委員どうぞ。

【水原委員】 まず、最初に平成11年の7月に審議会発足以来、佐藤会長、それから竹下代理の下に熱心に議論された各委員の極めて精力的な御尽力に対して敬意を表するとともに、毎回の審議会の運営を支えて、ときには私も含めてわがままとも思える委員の依頼にも、内心はどうであったかはともかくといたしまして、快く応じて膨大な資料を作成し、準備をしていただいた事務局長を初めてとする事務局の皆さん方、本当に御苦労様でございました。ありがとうございました。
 また、この審議会にいろいろ意見を述べていただきました関係官庁、省庁や、それから日弁連、専門士業団体等の皆さん方に対しても心から感謝をいたしております。
 ついでと言ったら悪うございますけれども、マスコミの関係者、それからマスコミ等を通じて司法制度改革に極めて熱心な提言を寄せられた国民、各界、各層の皆様方の熱意には、私も襟を正されました。また、励まされることがしばしばございました。正直なところ、先ほど藤田委員も申されましたが、毎回の審議の準備には、ときには気が重くなり、本当に辛い思いをすることがしばしばございましたけれども、それでも何とか自分なりの責務を果たせたのは、そういう司法改革に寄せる国民の熱い期待に応えなければならないという一念以外の何ものでもなかったという気が率直な感想でございます。よくぞ本当にもったなと、年齢は中坊先生より約11か月ぐらい若いだけでございますが、よく身体がもったなと思います。  60回余りに及ぶ審議を振り返ってみて強く感じることは、この審議会は法曹三者以外の委員の方々の非常なる熱意に支えていただいたということでございます。その意味では、先ほど高木委員も、また中坊委員も、いみじくも申されましたけれども、法曹三者は今まで何をしていたんだと、これまで自らの力で司法制度の抜本的な改革を実現できなかったことを本当に十分反省する必要があると、私も痛感いたしております。この点は、「おわりに」の中にきちっと盛っていただいたことは本当によかったと思っております。
 私は、検察の代弁者のようにとられているかもわかりませんが、私自身は代弁者という気持ちは全く持たずに、この席に参列させていただきました。一国民として審議会で意見を述べてまいりました。殊にレポーター役をさせていただいた刑事司法の分野につきましては、国民が期待する刑事司法とはどうあるべきかという視点に立ちました。井上委員、高木委員、山本委員とともにレポートをまとめさせていただきました。そういう視点からレポートをまとめさせていただいたものでございます。
 私はしばしば、私自身を育ててくれた検察に対して厳しい批判的な意見を述べたこともございます。私の審議会での発言は後輩諸君らが注目しております。正直に申しまして、時には水原さんどうしてそこまで検察のことを厳しく言うのかという苦言に接したこともございます。しかし、それは私が検察を愛するとともに、検察が真に国民の期待に応えるものに一層成長することを願って、そのことがよりよい刑事司法の実現につながるものだという思いによるものでございました。恐らく、後輩諸君もよくよく考えてくれる、理解をしてくれるのではなかろうかと思います。
 本日、まとまった最終報告書は、先ほど来、お話がございましたが、どの1つの項目を取り上げてみましても、大変な問題でございました。それが、これまで六十数回の審議を踏まえて、各委員が大局的な見地に立って、それこそ多数決によらずして、ここまで総意に基づいた意見がまとまったことは本当にすばらしいことだったと私自身も喜んでおります。全委員の2年間の汗の結晶とも言ってもよろしいのではないでしょうか。しかし、一委員である私などの努力からは比べものにならない御労苦を重ねられた佐藤会長、竹下代理に改めて感謝の意を表します。
 この点も各委員から御指摘がありましたけれども、今般の司法制度改革につきましては、40年近く前の臨時司法制度調査会での検討以来の大事業でありました。今回我々が審議した結果が実現しなければ、恐らく今後国民が司法の改革に期待を寄せることは二度とないのではないかとすら思っております。今回の改革は法曹三者のそれぞれに、厳しい改革を迫るものでございますし、司法を利用する国民にも、そのメリットのみならず、相当な負担をもたらすものであります。しかし、その実現は短期的のみならず、中長期的な視点からも我が国社会の健全な発展に大いに役立つものと期待しております。
 私は、59回5月21日、60回5月29日の当審議会でも強く要望したところでございますけれども、改めて我々の最終意見の実現に関係組織が全力を挙げて取り組んでいただくことを切に希望して私の思いといたします。
 本当にお世話になりました。ありがとうございました。

【佐藤会長】 ありがとうございました。山本委員はやむを得ない御事情で退席されましたが、この2年間を振り返ってというペーパーを委員からちょうだいしておりますので、代読させていただきます。
 この2年間、時間のやりくり等、厳しかったことは事実ですが、それ以上にさまざまな勉強をさせていただき、更に委員の方々との新たな出会いもございました。私にとって誠に得がたい経験をさせていただいたと思っております。
 でき上がりました最終報告につきましては、いろんな感慨がございますが、会長や会長代理を初め、事務局の皆さんの御努力には頭の下がる思いでございます。とりわけレポートを担当させていただいた民事司法改革に関わる経済界のニーズにつきまして、つたない私の説明をしっかりと受け止めていただいたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。
 一方、私自身が21世紀の司法づくりの論議全体について、どれだけお役に立ったかについては顧みて、正直じくじたる思いがございます。これは勿論、私の見識不足、勉強不足ということでありますが、いささか弁解をさせていただくならば、議論の中心が私の先入観とかなり違っていたということもございました。私が経団連の関係で審議会委員のお話をいただいた当初は、司法制度改革というのは、イコール規制緩和、国際化等の変化に対応するための司法の機能面の強化というふうに考えておりまして、気は重いけれども司法のユーザーとしての企業の立場からいろいろと発言できることもあるだろう、そんな程度の認識でございました。
 ところが、この機能面の強化は、基本的には当然のことという了解が広くあったからでございましょう。大きな異論もなく、必要な諸改革がスムーズに決まっていき、その分、むしろ議論の中心は戦後民主主義に対する一定の価値判断を前提とする司法の理念面での改革にあることがだんだんはっきりしていったわけであります。
 これらは、ユーザーとしての企業の立場からはダイレクトに出てくる問題ではないだけに、夏の集中合宿が近づくにつれて、私の戸惑いは深まるばかりであったと申さなければなりません。それでも、私なりに物心ついたときから、どっぷりとつかってきた戦後民主主義への思いも踏まえ、思うところいささかなりとも披瀝させていただいたことはできたと存じますが、掘れば掘るほど問題の根っこは深く、十分掘り下げられないもどかしさを覚えたまま2年という時間があっという間に過ぎていったような気がいたします。
 ただ、終わってみますと皮肉なことに、とんとんと進んだ機能面強化の議論よりも深く考えさせられ、また印象に残ったのは、こちらの論議の方でございます。私なりの理解では理念面が主たる争点となった今回の論議は、そもそも価値観の違い等から必ずしも収斂したわけでもございませんし、また司法制度改革という前提からくる制約、そして何よりも時間的な制約が決定的に大きかったと存じます。ただ、復興や成長にかまけて民主主義の在り方を真剣に論議してこなかったこれまでの戦後日本社会に、間違いなく一石を投じた重要な論議だったと考えております。その意味でも、今回の論議が今後のさらなる民主主義論議や憲法論議につながっていき、活かされていくことを大いに期待するとともに、一国民としても、引き続き真剣に考えていきたいと存じます。ありがとうございました。
 以上でございます。
 それでは、吉岡委員どうぞ。

【吉岡委員】 格調の高い感想、御意見が出ておりますところに、私のような素人が話をすると、途端に現実的な話をすることになるのではないかと思います。そこをお許しいたたきたいと思います。
 まず、会長、会長代理、それから委員の皆様を始め、事務局長、事務局の皆様には大変わがままを言ったり、いろいろ違う意見を言ったりいたしましたのを温く受け止めてくださいまして、百点満点満足したわけでは、勿論ありませんけれども、かなり方向性としては、予想以上にいい方向性が出たのではないかと、そのことについては感謝を申し上げたいと思います。
 ただ、本当に何人かの方からも出ましたけけども、とてもハードな審議会だったと思います。私の場合には、この審議会だけではなく、井上委員、あと、ほかの方とも御一緒に文部省の法曹養成の方の検討委員会にもオブザーバーとして参加させていただいたりしたものですから、素人の立場で理解しようとすることと、勉強しなければいけないことがとてもたくさんありまして、そういう意味では、本当に自分の時間が取れない、寝る時間が少なくなる、本来の団体の事務局長としての仕事がおろそかになるということで、大変苦痛を感じてきたということは確かでございます。  そういう中で、今になってみると2年は短かったなという、そういう感想を持ちます。これは逆に言うと、それだけ内容が充実していたということではないかと思います。私も、そういう審議会であったということはとてもよかったと考えております。
 もう一つは、国民の関心が非常に高くなったということが言えると思います。前回官邸で、ちょうど総理がいらっしゃるまで間があったんですけれども、そこでもちょっとそういう話をしましたらば、法務副大臣が本当にそうですね。この審議会はそこまでやれると思っていなかったけれども、随分思い切った改革の提起をなさってきましたねというようなことをおっしゃっていまして、そういう意味では政治家も非常に関心を持ってくださったんだなと、そんなふうに感じました。
 これは、やはり井上委員もおっしゃった、この会議が公開で、情報が国民に直ちに伝わる、そういう中で議論されてきたということがとてもいい影響を与えたのではないかと思っております。これは、全体的な感想です。
 そういう中で、基本的な考え方、この報告の中でも出ておりますけれども、統治客体意識から脱却し、自立的かつ、社会的責任を負った統治主体として互いに努力しながら自由で公正な社会の構築に参加するという、そういう合意を得たということを、やはり国民主権の社会にふさわしい司法への改革という基本的な方針が合意されたと私は理解しておりますし、それから、もう一つ重要なことは、利用者、国民の立場、視点ということを改革の提案として出されているということが大きな評価ができる点ではないかと、そのように考えております。今後の具体化に当たっても、この視点は失われないようにということを期待しております。
 個別の論点について申し上げますと、いろいろ蒸し返しをと言われそうなんですけれども、ごく簡単に申し上げます。
 1つは、裁判員制度でございます。私は会議の中では陪審、陪審と、アメリカに行ったからかもしれませんけれども、陪審制度の導入ということを主張いたしまして、そこまでの合意に至らなかったことを、私としては残念ですけれども、とにかく裁判員制度という日本的な形ではありますけれども合意を得ることができた。それから、国民の訴訟手続への直接的な参加の実現の目途が立ったということは、非常に大きな成果だと思います。国民主権の司法分野への反映という視点から見ても高く評価できるのではないかと、そのように考えております。
 この点につきましても、制度の具体化が一刻も早くされるように、今後の推進体制に期待したいところでございます。この制度が評価されるようになっていく、そういう実施の状況を踏まえて、またかとおっしゃいますでしょうけれども、陪審の方向に発展していく、そういうことを期待したいと思いますし、また、運営状況を見定めながら民事訴訟等への拡大ということも遠い将来には考えられていいのではないかと、そのように考えます。
 法曹人口につきましては、とにかく早期に大幅に増加させるということで2010年ごろには、年間3,000 人の新司法試験合格者を目指すということが合意されまして、これは確実に実現されることを今後に期待したいと思います。とりわけ大幅に増加することになります弁護士改革の進展と相まって、国民に真に身近な権利の守り手として弁護士が活躍されるような社会が訪れることを期待したいと思います。
 裁判官制度につきましても、特例判事補制度の問題などが随分議論されたわけですけれども、特例判事補制度の段階的解消や、判事補の他職経験、こういうことは合意されまして、市民参加による、特に下級裁判所の裁判官の推薦委員会とか、人事制度の見直しの問題などが随分議論があったわけですけれども、とにかく合意されたということは、大きな成果ではないかと思います。
 同時に、裁判官改革には、大量の弁護士任官が実現しないといけないという問題がありまして、これは弁護士に課せられた重い課題ということが言えるのではないかと思います。やはり、その辺のところを今後、最高裁判所と日本弁護士連合会が具体化に向けて努力されることを期待したいと思います。 最後に推進体制についてでございますが、審議会が最終報告として提言する改革が成し遂げられる。そのためには内閣に強力な推進体制が整備されるという、そういうことがまずもって本当に大切なことだと思いますので、推進体制が集中的に取り組まれるということが重要であり、私は期待したいと思います。その場合に、利用者、国民の代表を参加させる、あるいは、国民の視点を重視されることが不可欠であるということを重ねて強調したいと思います。
 また、敗訴者負担制度については、合意を得たわけですけれども、不安が残らないわけではありません。くれぐれも国民の声をよく聞いて検討されるということを切望いたします。以上です。

【佐藤会長】 ありがとうございました。では、竹下代理どうぞ。

【竹下会長代理】 会長からは、今後の司法制度改革への希望などについて意見を述べて欲しいということでございましたけれども、私はむしろ2年間を振り返った感想のようなことを申し上げたいと思います。
 まず、審議会の1人のメンバーとしての感想でございますけれども、この審議会を開始して間もなく、私は我々は審議会発足当時考えていたよりも、はるかに重い課題を背負わせれたというように感じました。その思いは、審議が進むにつれて一層募っていったと思います。それは、根本的には、先ほど何人かの方のお話にも出てきたように、結局、司法改革の理念、あるいは司法の理念という問題がすべての問題に深く関わっているということが次第に明らかになってきたということに由来していると思います。
 今、その重い課題から開放されて思いますことは、でき上がった成果が、果たして我が国の21世紀の司法、更には21世紀の我が国の民主社会のために、真に有用なものとなり得ているかどうか、あるいは、我々に課された重い課題に十分応えられたか否かということは、これは国民の皆さん、あるいは後世の歴史家の評価・判断に任せるしかないのではないかということであります。
 しかし、同時に我々に言えることは、そしてまた、これは言うことが許されると思いますが、自分たちとしては、できる限りの力を傾注して、この課題に取り組んできたということであります。ここにまとめられました最終意見書は、司法制度のほぼ全域に及んでおります。確かに、今後更に出てくるであろう新しい課題というものがありうることは間違いないと思いますけれども、現在の司法制度が抱えている問題点のほぼすべてに当たったということは言えるのではないかと思います。専門も、考え方も、またそのバックグラウンドも全く異なる13人が集まりまして、この2年間、時には鋭い意見の対立の中で、激しい応酬をするというような場面もないではありませんでしたけれども、全員が真剣に我が国の司法の将来を考えて意見書をまとめたということは間違いないと思います。これ以上のことをせよと言われても、恐らく、それはできない、またはできなかったと言わざるを得ないだろうと思います。
 内容面について一言言えば、いろいろな考え方の13人が集まったお陰で、理念先行型の議論と、現実的アプローチとのバランスが結果的にはうまく取れた、そういう提言になっているのではないかと、私としては考えております。
 私は審議が終わった今、取りまとめに格段の御尽力をされた佐藤会長を始めといたしまして、委員の皆さんに心から敬意を表したいと思います。皆さん本当に真剣に、よくおやりになられたと思います。
 私自身について申しますと、何人の方から言及していただきましたけれども、取りまとめ役として、余り十分なことを果たせなくて申し訳ないと思っております。また、委員の我々がこれだけ全力を投入できたというのも、我々を絶大な力を持って支えてくださった事務局の皆さんのお陰でございます。樋渡局長、仁尾上席参事官を始め、事務局の皆さんに心から御礼を申し上げたいと思います。
 提言の実現、あるいは推進体制への期待は、最終報告に書いてあるとおりでございます。一言言えば、臨司の二の舞になってはいけないと、このことだけは明らかだろうと思います。法曹三者の皆様方も、そこの点は十分肝に命じておられることと考えております。
 審議会の1メンバーという立場を離れて全く個人的な感想を最後に付け加えさせていただくと、この審議会の審議は、井上委員を始め、何人かの方がおっしゃったように、本当に毎回神経を擦り減らして正直なところ疲労困憊しました。こういう審議会は初めての経験でございました。しかし、この審議会がなければ一生面識を得ることもなく終わったかもしれないような、それぞれの分野で優れた見識をお持ちの12人の皆さんと一緒に、ひとつの重要な仕事を成し遂げることができたということは、大変大きな喜びでもあり、また恵まれたことと思っております。
 司法制度に関わる諸問題についても、理念的な側面からの思考を深めることができ、また多角的な視野を学ぶことができまして、一人の研究者としても、大変有益だったと思います。もっともこの経験と資料を生かして、「裁判法」の第五版をすぐに刊行できるかというと、これはまた話は別ということでございまして、なかなかそうはいかないかと思いますが、てきるだけの努力はしたいと思っております。
 いずれにせよ、他の皆さんと同じでございますが、私も別のいろいろな仕事を抱えながら、しかし、担っている責務の重さから手を抜くこともできずに、本当に苦しい2年間でございました。今朝まで修正案の作成に呻吟するというような、そういう状況でございました。その中で、ある時点から、どうも気を弱くしていたのでは、精神的に自滅するという、一種の悟りのような境地に達しまして、精神的自滅だけは避けなければいけないということを絶えず自分で言い聞かせ続けていました。それは裏から言いますと、一旦こうと考えて行動したからには、もう後悔はしないということで、さっき北村委員は、毎回後悔の連続であったと非常に謙虚におっしゃいましたが、私は、そういう一種の開き直りのような気持ちでおりましたので、それが場合によっては、皆さんに不快の念をお与えしたとすれば、お許しを願いたいと思います。
 充実した時間は早く経つけれども、振り返ると長く感じられると申します。この2年間は、皆さんが言われたように、確かに、今から考えると随分早かったと思いますけれども、しかし、もっと時間が経ってから考えてみると随分長い2年間であったと思うのではないかと考えています。委員の皆さん、それから事務局の皆さんも、これでまた元の、あるいは別の仕事に戻られることと思いますが、御活躍をお祈りしたいと思います。また、どこかの仕事で御一緒になることがあれば、よろしくお願いしたいと思います。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。
 私の方から皆様に対する心からの謝辞を申し上げたいと思います。この2年間、委員の皆様、真剣に議論をいただきまして本当にありがとうございました。それからまた、樋渡局長を始め、事務局の方々、本当に少人数で、よくぞここまで支えて下さったと感謝に堪えません。
 私は、行政改革会議のとき、藤田宙靖さんと2人で主査の役割を担わされたんですけれども、2人で、こんなことは二度とやるまい、もう二度とごめんだというようなことをよく話しておりました。しかし、何の運命のいたずらか、またこの審議会に連なることになり、しかも、会長をせよということになりました。当初は、夜中にふと目が覚め、一体どうなるんだろう、どうすればよいのだろうかと、慄然たる思いにとらわれることもありました。
 委員になりましたとき、ある種のデザインのようなものはないわけではありませんでしたけれども、一体どこまで進めるのか、途があるのかということについて、相当な不安がございました。けれども、議論を重ねる中で、道筋がだんだんはっきりしてくるという思いを強くしていきました。民間司法臨調のペーパーでは、当審議会について、政府の審議会としては異例とも言える精力的な検討作業を進め云々とおっしゃっていただきましたけれども、本当にそうだったと思います。
 行革会議もなかなかしんどうございましたけれども、あれは実質1年でございました。こちらの会議は2年にわたりました。しかも、皆さんそれぞれレポーター役をお引き受けなさって、見事にその役割を果たされました。法曹養成制度として、ロースクール構想が非常に重要な前提となり、文部省におかれる検討会議に検討をお願いすることになり、そして、そこにこの審議会から4人の委員の皆様にお出ましていただくことになり、そこでも十数回の会議が行われるということでありまして、その御負担、御努力に対して本当に頭の下がる思いがいたしました。
 激しい議論もありました。いろいろなシーンが浮かび、いろいろな思いもいたします。そして私の至らぬところ、やや短気なところが出たりして、皆様に、あるいは御不快を与えたところが多々あったんではないかと思いますけれども、そこは御容赦賜りたく心からお願い申し上げるとともに、ここまで本当に懸命に審議され、この結論に至られた皆様の御努力、御協力に対して、心から感謝の意を表したいと存じます。
 また、事務局の一人ひとりに御礼申し上げたいと思います。最初のころは、チームワークを取るのがなかなか難しいなという感じもしないではありませんでしたけれども、審議会の議論が進んでいくにつれて、事務局の方々の目の色が違ってこられた、口幅ったい言い方ですけれども、そういう感じがいたします。行革会議のときもそうでございましたが、若い30代、40代そこそこの人たちが、出身母体を離れて、本当に真剣に改革に向けて努力された。行革会議のときの強い印象と重なりながら、今回も、ある種の感動を覚えたことがしばしばございました。
 こういうことを述べておりますと、エンドレスになりますので、もうこの辺にいたします。先ほども何人かの委員がおっしゃいましたけれども、この審議会は事実上公開ということで進んでまいりまして、そのことも大きかったと思いますが、国民の関心がだんだん拡がり、司法改革の重要性についての理解が深まっていきました。その過程でマスコミの方々が果たされた役割はまことに大きく、それぞれの立場で、この審議会を叱正し激励し、支えて下さったことに対して、この場を借りて厚く御礼申し上げたいと思います。
 そしてまた、法曹三者につきましては、先ほと来、いろいろ自省のお声も聞きましたけれども、これまで何かにつけて御協力いただきました。検討の資料を用意していただいたり、報告していただいたりして、これからの法曹三者は今までとは違うだろうという手応えのようなものを感じております。法曹三者の協力を得て、私どもの成果が見事に実現していくことを信じて疑いません。
 本当に至らぬ会長で申し訳ありませんでしたが、竹下代理を始め、皆様に支えていただいてありがとうございました。心からお礼申し上げます。(拍手)
 代理には是非とも第五版を出していただきたいと願っております。
 皆様から先ほど来いただきました御意見は、今後の推進において必ず活かされていくものと信じております。小泉総理も、5月9日の衆議院本会議で、この審議会の最終報告を十分に尊重し、その実現に全力を挙げて取り組んでまいりますという答弁もなさっておられます。内閣を挙げて取り組んでいただけるものと信じて疑いません。
 本当にどうもありがとうございました。
 では、局長、配付資料について何かありますか。

【事務局長】 ございません。

【佐藤会長】 局長も、一言お願いできますか。

【事務局長】 まだ、審議会、正式に終わったわけではございませんし、事務局長といたしましては感想などという、この段階でおこがましいことは申せませんが、皆様本当に自らのお忙しい仕事を持たれながら、ほとんどの委員の方が9割以上の出席率で、この長い時間を掛けて、熱心に、そして熱き議論をして、本日まとめていただきまして、本当に敬意を表します。ありがとうございました。
 事務局といたしましては、当初いろいろな憶測から、いろいろな御心配をいろいろな方からちょうだいいたしましたが、この2年間本当に皆様方の補佐として徹してきたつもりでございまして、いくばくかの御貢献ができたとすれば誇りに思いたいと思います。
 先ほど来、委員の皆様方から事務局に対しまして、温かいお言葉をいただきまして感謝をしておりますが、特にこの事務局の若い人たちは、皆様方への対応にはいろいろ不十分な点があったかもしれませんけれども、改革の意欲には十分燃えておりまして、夜遅くまで資料集めから資料の整理、よくやってくれたと私自身は思っております。それに対します、先ほどの温かいお言葉と、そして皆様がその労苦を多としてくれたというふうに思っておりまして、事務局を預りました私としましても、ありがたいと思っております。
 長い間、本当にありがとうございました。(拍手)

【佐藤会長】 それでは、最後に次回の第63回審議会でございますが、最終意見につきまして、皆様に確認をしていただいた上で決定し、小泉内閣総理大臣に御出席をいただき、直接お渡しして、内閣に提出するということにしたいと思います。
 また、最終意見を内閣に提出するに際しまして、会長といたしまして談話を発表したいと考えておりまして、お許しをいただければ、その内容につきましては御一任いただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
              

(「異議なし」と声あり)

【佐藤会長】 ありがとうございます。
 開催場所としては、官邸を予定しております。そして開催時刻は2時過ぎ、正確な時刻はまた追って御連絡申し上げますけれども、2時過ぎということで御了解いただければと思います。総理の御予定などの関係もありますので、詳細は事務局から後日、連絡させていただきたいと思います。  そして、当日は、委員の皆様全員で記者会見に臨んではいかがかと思っております。官邸からこちらへ戻ってくることになります。御都合がつかなければ結構でございますが、そういうことを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、今日の修文案は、あらかじめお送りできるわけですね。

【事務局長】 印刷に回しましてから、総理にお渡しする12日を迎えたいと思いますので、お配りしたものに更に修正ということは御勘弁願いたいと思うんでありますが、でき上がり次第直ちにお送りいたすつもりでございます。

【佐藤会長】 そういうことでございます。本日の記者会見は代理と。本日はどうもありがとうございました。