配付資料一覧
99年11月24日
文筆業・元共同通信社論説委員
米澤進

「司法制度改革審議会に望むこと」

1、国民生活と司法の距離の遠さ
5年前に見た簡易裁判所の風景
最近の事件と「司法が果たさねばならないこと」(商工ローン、臨界事故にみる)
裁判官は信頼される町の名士であってほしい
裁判官の独立とサービス精神の不足(判例と形式主義)
遅くて、高くて、使い勝手の悪い司法への不満
裁判官の世界と2000人の管理社会
キャリア裁判官制度の下では時代の変化に対応できない

2、いま国がするべきこと、審議会設置は時代の要請
小渕首相のあいさつ
「利用者である国民の視点に立って、21世紀の我が国社会において司法が果たす役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関する基本的な施策について有識者の皆様に審議していただく必要がある」
セーフティーネットとユーザーの視点
リストラと失業者の急増、弱者救済のための役割
国際化時代と経済界の強い要望、世界から後ろ指を差されない社会
1億2000万人の国民への信頼と、ゆとりある社会への船出
50年後の日本の司法と市民参加の必要性

3、司法制度改革は「国の骨格をつくり直す作業」
臨時司法制度調査会(臨司)意見書と今日的意味
元最高裁長官、矢口洪一さんの意見
「法曹に人材を求める新しい制度が必要だ。裁判官は弁護士や検察官などから広く求めるべきで、それには法曹一元制度を目指し、現行の判事補制度を廃止すべきだ」
35年前に実現しなかった司法改革
未経験の分野に踏み出す「リスク」と勇気
裁判官の廉潔性維持と弁護士会への不信感
裁判官選考システムの民主的運営と再選その他のシステム
「日本裁判官ネットワーク」と裁判官の意識の変化
矢口意見は、基本的には弁護士会へ自己改革を求めたメッセージではあるが、同時に最高裁と法務省にも「責任の自覚」と新しい時代への準備を促している
ピラミッド型官僚裁判官の世界を熟知した人の意見として、謙虚に耳を傾ける必要がある

4、「基盤の培養」はいまも必要最低要件
法曹人口の大幅増員と過疎過密対策の基本方針を明確に
ロースクール構想と司法試験、研修など法曹養成の在り方
弁護士の職域拡大、総合法律事務所と隣接職種との垣根
弁護士法72条(法律事務独占)
弁護士法30条(兼業、営業制限)
弁護士法24条(委嘱事項の義務)など

5、陪審、参審制度など司法への市民参加について
68年前の「陪審手引」復刻版が教えるもの
日本の国権の作用は立法、司法、行政からなり、立法は帝国議会、行政は自治制度として国民がともに参加しているのに、ひとり司法だけは「国民の参与を認めず、特定の裁判官を置き、専らこれに携わらせて来たのであります」(昭和6年、大日本陪審協会編の陪審手引「我が陪審法の精神」より)
陪審制度のメリットに着目する
第1に、法廷証言の重視、証拠の公開、自白重視の捜査の反省
第2に、大型裁判の長期化に歯止め
第3に、市民参加型司法の実現
陪審制度導入による市民の司法教育効果と学校教育への影響
「陪審法停止に関する法律」と裁判所法3条3項「刑事について別に陪審の制度を設けることを妨げない」に結末を
少年審判への参審制導入など、参審制度の検討も同時進行で
調停制度と仲裁機関の拡充、国際化

6、まず重要項目に絞って中間報告を
「各委員の論点整理に関する意見書」を読ませていただいた感想
法曹一元、法曹人口増、陪審・参審制度の3点を最優先に
法律扶助の拡充や被疑者国選弁護などの問題は現在でもやろうと思えばできる仲裁制度の拡充など、すでに法制審議会で検討が始まっている問題は、司法制度改革審議会の審議を待たずどんどん改革すべきだ
法曹養成制度、以下その他の多くの問題はいずれも重要だが、改革の柱を決めてからでも遅くはないと思う
2年間の期限は守ってほしい

以上