法科大学院(仮称)構想に関する検討会議(第１回)　議事要旨

１　日　時　　平成１２年５月３０日(火)８：３０～１０：３０

　

２　場　所　　KKR HOTEL TOKYO 「鳳凰」の間

　

３　出席者(敬称略)　

(協力者)井田　良、伊藤　眞、加藤哲夫、小島武司、田中成明、遠藤純一郎、金築誠志、川端和治、房村精一

(司法制度改革審議会)井上正仁、鳥居泰彦、山本　勝、吉岡初子

(事務局)佐々木正峰高等教育局長、合田隆史大学課長

　

４　会議経過

(１)　佐々木高等教育局長より挨拶があった。

(２)　委員の自己紹介、及び事務局の紹介があった。

(３)　委員の互選により、小島委員が座長に選出された。

(４)　座長から、代理出席について、文部省・法曹三者については委員の代理出席を認めること、大学関係者については、個人に着目して委嘱されたものであるから代理出席は認めないこと、が提案され、了承された。また、司法制度改革審議会委員については代理出席は認めないが、事務的な記録者の出席は認めることが了承された。

(５)　座長から、議事の公開について、会議自体は非公開とするが議事要旨を公開するという提案がなされ、以下のような議論があった。

• 　法科大学院構想はそもそも司法制度改革審議会において審議すべきものでそれが本会議に委ねられたのだから、審議会と同程度に公開し、各方面の反応も受けながら検討を進めるべきではないか。

• 　そもそも本会議は審議会ではなく、審議会における議論の前提となる資料を作成するものであり、政策形成過程と密接なかかわりをもつ審議会とは異なるものであることから、公開についても審議会と同じレベルである必要はないのではないか。

• 　司法制度改革審議会からの依頼に基づいて専門的技術的な事項について検討し、審議会における議論のたたき台を作成するという会議の性格上、審議会に報告される前に途中経過が断片的に公開されるのは適切ではないのではないか。

• 　次世代の法曹養成をどうするのかについて、議論の詳細がわからないのはおかしいのではないか。公開に適さないものについては、特定の事項に限って非公開を考えればよく、専門的技術的とはいいながら、制度の意義・意味から考えれば、議論の状況を明らかにする必要がある。

• 　本会議と審議会の立場が異なるのはわかるが、せめて議事録は作成し公開するべきではないか。

• 　本会議は司法制度改革審議会のワーキンググループのような性格を事実上有しており、検討結果については審議会において議論されることから、本会議における経過のすべてを記録する議事録を作成する必要はないのではないか。

• 　検討会議の結果について、審議会が議論の過程を知りたいということがあった場合に備えて、公開するかどうかは別としても、議事録の形式による記録の保存が必要なのではないか。

• 　司法制度改革審議会が公開されており、本会議の経過は審議会に適宜報告するという両者の関係を鑑みれば、審議会における取扱いとは区別して考えても良いのではないか。また、関係者から広く意見を聴取するなどして、実質的に公開を担保すればそれで足りるのではないか。

• 　次代を担う法曹の養成という国民にとって重要なテーマを扱うものであることから、検討状況の可能な限りの公開を旨として議事要旨を作成し、また、適切な時期に適切な形で各方面の意見を広く聴取して検討に生かすよう考慮すべきではないか。

　以上のような議論の結果、当面、議事要旨を作成し司法制度改革審議会に本会議の審議経過を報告することを通じて公開するという取扱いとし、実質的な情報の提供に努めることとされた。

(６)　事務局から、配付資料の確認があった後、井上委員より司法制度改革審議会における検討状況及び文部省への検討依頼に至った経緯等について、本年４月２５日付の司法制度改革審議会の合意文書に沿って説明があった。

(７)　これを踏まえ、法科大学院(仮称)構想に関し、以下のような意見交換が行われた。

• 　諸外国と比較すると日本の法曹人口ははるかに少なく、今後更に増加させていく必要がある。その際、グローバル化の進展の中で、国際的に活躍できる人材の養成を図るとともに、例えば、立法・行政や企業法務、IT、医療、パテントなどに精通した法律専門家など、狭義の法曹三者だけではなく、それ以外の法律専門職も視野に入れていくべきではないか。

• 　一番大事なことは次世代の法曹を作っていくとの認識である。審議会で法科大学院は良い制度になりうるものとして検討依頼がなされているが、逆に言えば悪い制度にもなりうるものということである。良い制度とするためには法曹の質と量から考えていかなければならない。法曹の大部分が弁護士であることからすれば、今の養成制度に欠けていてロースクールにできることは、公益的精神と法曹倫理を身に付けた法曹を育てることだと考える。

• 　現在の制度では、法解釈論のみの理解を要求しているが、ロースクールでは、社会と人間に対する理解から正しい紛争の解決策を考えることができ、カウンセリングや説得、表現のできる法曹を育てる必要がある。

• 　ロースクールの門戸は広く開くべきである。法学部を出ていない人もロースクールに入学できるようにしないと、例えば科学技術に関わる問題を本当に理解できるような法曹を養成することはできない。

• 　少人数教育により、学生と教員の厳しい緊張関係のある教育をして欲しい。しかし、ソクラティック・メソッド、プロブレム・メソッドなどによる少人数教育は学費が高くなるが、そのために経済的理由により進学をあきらめるようなことがあってはならない。資力のない人でもロースクールへ行けるような制度設計をしなければならない。

• 　弁護士偏在解消のために、各地方で特色を持ったロースクールを作っていくべきである。５０人程度の少人数のロースクールであっても、地元の弁護士会と協力しながら作っていけるようなロースクールを考えていくべきである。

• 　大学における法学教育と実務教育の乖離が指摘されて久しく、このことが法科大学院構想の背景にあるのではないか。理論と実務を架橋するような仕組みをつくることが必要だと思う。

• 　法科大学院が制度化されれば、弁護士だけではなく、検事、判事もその枠組みの中で養成されることとなり、注目している。また、例えば、科学技術に強い法曹や金融工学に強い法曹の養成も必要であり、その意味では多様な人材を幅広く受け入れることが必要である。さらに、立法のテンポもかつてないほど速まっており、このような分野で活躍する人材の育成も重要である。

• 　次代を担う法曹の質的強化が必要なことはいうまでもないが、それが何故ロースクールと結びつくのかを説明する必要がある。それは、豊かな資質と多様な背景をもった人材の受け入れを通じて法の運用と発展を担うことができる法曹養成を行う必要があることと考えられ、その意味では法学部出身者以外の学生が法科大学院の主な対象となるくらいの方が良いのではないか。

• アメリカには法学部がなく、幅広い人材が法曹界へ入っているが、日本でもそのような観点が必要ではないか。

• 　学部４年と法科大学院３年の計７年間を要することになると、経済的負担が大きくなり、そのための配慮が必要ではないか。

• 　法科大学院の数などの規模の問題は、法曹人口と密接に関連しているとともに、法律家の概念も国や地域によって幅があり、弁護士数だけで比較することは必ずしも適当ではなく、周辺法律実務の分野も視野に入れて検討すべきではないか。

• 　これまで、法学部教育は司法試験という外的要因によって規定されており、十分な改革ができなかったきらいがあるが、大学は、これまで出された様々な要請に対し真摯に応えていく必要があるとともに、それに見合うだけの制度的対応と人的・財政的支援も必要ではないか。

• 　一方で公正な制度設計が求められているとともに、他方、地域性への配慮、他学部学生への配慮、平常的な努力への配慮などが求められており、両者のバランスを取ることが必要ではないか。

• 　入試センター試験を受けた法学部志望者の結果を分析すると、約７割が理系出身者であった。数理的思考と法学的思考には共通項があるのかもしれない。仮に法科大学院が実現した場合にも同様の効果が期待されるのではないか。

• 　私学の観点から検討すると、少人数による手厚い教育を行うためには適正な規模の教員の確保など財政的な課題があり、奨学金の拡充などの措置が必要ではないか。

• 　現在の法曹養成の問題点は、その養成の過程が試験の一点に集約されてしまっており、必ずしも法曹にふさわしくない人が法曹になっていることにある。今後検討するに当たっては、プロセスを重視した仕組みを作ることが必要ではないか。

• 　法科大学院の議論には、大きく分けて、「教育内容・方法」等法科大学院自体の問題と入口・出口、地域配置や財政措置などの「位置づけ」の問題があり、区別することが必要である。まず、内容を議論し、そのあとで諸条件を考えていくべきではないか。

• 　弁護士が大学の教員になることがなかなか難しいという批判を受けるが、弁護士会としても後継者の養成に積極的に携わろうとしており、例えば臨床法学などに協力することが必要だとの認識である。

• 　法学部で抱え込んだ優秀な学生を同一大学の法科大学院で抱え込むのは適切ではなく、例えばアメリカのハーバード・ロースクールのように、ハーバードの学部卒業生を約１７％しか入学させないなどの取組を参考にすべきではないか。

(８)　座長から今後の進め方について、議論の出発点として論点を洗い出す必要がある旨発言があり、議論の結果、次回は、伊藤委員から、法科大学院構想に関する議論の現状について、論点を整理し、全体の検討計画の骨格案を提示するレポートを行った上、これをもとに意見交換を行うこととされた。

５　次回の日程

　次回は６月７日(水)８：３０～１０：３０に開催されることとなった。