司法制度改革審議会

司法制度改革審議会集中審議(第1日)議事録



司法制度改革審議会集中審議(第1日)議事次第
日 時:平成12年8月7日(月) 13:30 ~18:05
場 所:三田共用会議所 第2特別会議室
出席者(委 員 敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子
(説明者:法科大学院(仮称)構想に関する検討会議)
小島武司座長、伊藤 眞委員、田中成明委員
(事務局)
樋渡利秋事務局長

  1. 開 会
  2. 法曹養成制度についての審議
    文部省検討会議における検討状況の報告及び意見交換
  3. 法曹人口についての審議
    検討に当たり考慮すべき事項の整理及び意見交換
  4. 閉 会

【佐藤会長】それでは、定刻がまいりましたので、夏の集中審議の初日を開催したいと思います。

 本日の議題は2つございまして、1つは、文部省における法科大学院構想に関する検討会議の審議状況についての報告及び法曹養成に関する意見交換であります。

 2番目が法曹人口についてであります。

 最初に、法曹養成についての審議に入りたいと思います。

 まず、文部省における法科大学院構想に関する検討会の審議状況について御報告いただくということにしたいと思います。

 当審議会の依頼を受けて文部省に設置されました法科大学院構想に関する検討会議においては、これまで精力的に調査審議を進めておられまして、中間的な意見の取りまとめを行ったと伺っております。

 本日は検討会議におけるこれまでの審議状況及び取りまとめられた中間的な意見について御報告いただきまして、質疑応答の後、我々委員の間で法曹養成に関する意見交換を行いたいと考えております。

 本日は文部省の検討会議からは、座長の小島武司中央大学教授、委員の伊藤眞東京大学教授及び田中成明京都大学教授の3人においでいただいているところであります。

 3人の先生にはお忙しいところ、文部省に設置された検討会議において、私どもの方から出席させていただいております井上委員、鳥居委員、山本委員、吉岡委員、及びほかの委員の方々と御一緒に、大変精力的に御審議いただき、心から厚く御礼申し上げます。

 また、本日は暑い中お越しいただきまして、本当に恐縮でございます。

 最初に小島教授から審議状況及び取りまとめられた中間的な意見について、御報告をいただくことにしたいと思います。それでは、小島教授お願いします。

【小島氏】それでは、私の方から中間的なまとめと申しますか、そのような段階での検討会議における考え方を申し述べさせていただきます。

 お手元に「検討会議における議論の整理」という厚い文書と、その「概要」がございます。本日はこの後者の短い「概要」に基づきまして、お話しさせていただきたいと存じます。時間的に限られておりますので、途中やや省略をしながら、できるだけ短い時間で御報告できればと考えております。

 それでは早速「はじめに」のところでございますけれども、司法制度改革審議会からの協力依頼に基づき集中的な討議をいたしまして、その際には司法制度改革審議会の意見を踏まえて検討してまいりました。この中間的な取りまとめを経て、今後更に議論を深めていくということを考えております。

 「1 法曹として備えるべき資質・能力と法曹養成の基本理念」。この点につきましては、審議会の基本的なお考えというものを踏まえまして、法学教育、司法試験、司法修習が有機的に連携したプロセスとしての法曹養成制度について、現在のシステムを変革することを基本理念としております。

 その際、法曹養成制度の検討に当たって、法曹人口を、その質を向上させながら大幅に増加するとの要請や、公平性・開放性・多様性等の基本諸条件を踏まえつつ検討を行ってまいりました。

 「2 今後の法曹養成のための法学教育の在り方 法曹養成のための法学教育の担い手としての法科大学院」。まず、今後の法曹養成に期待される諸機能のうち、特に理論的教育と実務的教育を架橋するものとして、専門的な法知識に関する批判的創造的視点及び法曹の人間的バックグラウンドとしての幅広い視野を身に付けさせるためには、学問の自由を基盤として多様な学風を持つ大学において教育を行うことが効果的であると考えられるなどの理由に基づきまして、法科大学院は、法曹養成に特化した実践的な教育を行う大学制度上の大学院として構想するのが適切であると考えます。

 なお、法科大学院を設置する場合に、既存大学院を拠点としなければならないわけではなく、例えば弁護士会や地方自治体など、大学以外の組織が学校法人を作り、法科大学院の設置基準を満たせば、法科大学院を設置し得ることは当然でございます。

 既存の大学を拠点とする法科大学院と、これらの新しいタイプの法科大学院が競争して、それぞれが理想とする法曹を養成する柔軟なシステムが展開されることが望ましいと考えております。

 法科大学院の設置後も、法学部は存続することを前提に、法曹養成のための法学教育については、法科大学院が責任を負うことになりますが、その場合、法学部を、法的素養を備えた人材を社会の多様な分野に送り出す養成機能を持つ組織として存置するか、あるいは、その機能に加えて法科大学院の教育課程の基礎部分を実施する機能をも併有するものとして存置するかは、各大学の判断に委ねることになります。ただし、この点に関しては、法学部は、法的素養を中心としたリベラルアーツ教育を行うなど、その使命を明確化すべきであるとの意見がございます。

 21世紀の法曹に多様なバックグラウンドを有する人材を多数受け入れるため、法科大学院には、経済学や理数系、医学系など、学部段階での専門分野を問わず受け入れ、また、社会人にも広く門戸を開放する必要があります。

 法科大学院を大学に設置することとした場合、従来の研究中心の考え方から真の教育重視への転換など、大学には改革に向けて相当な努力が求められることは当然であります。

 「3 法科大学院の基本的枠組み」。「(1)標準修業年限」について、これを3年とするか2年とするかについては、広く法曹資格取得希望者に開かれた機関としての法科大学院の性質上、2年制のみとすることは考えられず、3年制、または3年制・2年制併存制とならざるを得ません。したがって、3年制を基礎として検討を進め、短縮型としての2年制を併せて検討するとの意見が大方でございます。他方、科目の履修免除はともかく、原則として修業年限の短縮を認めるべきではないとの意見もございます。

 「(2)教育内容・方法」。まず「① 教育内容」ですが、法科大学院の質と統一性の確保のための基準は、コア科目、すなわち基礎科目、基幹科目及び法曹基本科目などの必須提供科目や卒業に必要な単位数など、最低限度にとどめ、それ以外については各法科大学院の創意工夫による独自性・多様性を尊重すべきであるという意見が大勢です。

 3年制では、基礎科目、基幹科目及び法曹基本科目をコア科目といたしまして、先端的分野科目、現代的分野科目、学際的分野科目、実務関連科目などをカバーする多様なカリキュラム編成が可能となります。法科大学院に設置される一定の科目について所定の試験を経た上で、法学既修者と認められる者については、履修免除により2年修了を可能とするとの意見が有力ですが、科目ごとの審査による個別の履修免除にとどめるべきで、原則として修業年限の短縮を認めるべきではないとの意見もございます。併存制における2年コースでは、コア科目について、発展的ないし応用的な教育を重視したプログラムを採用することになります。

 「② 教育方法」ですが、各法科大学院における教育内容及びカリキュラムの基本部分はある程度共通のものでなければならないとすれば、それに連動して、教育方法についても一定程度の標準化が必要となります。

 教育方法としては、(ア)講義方式や、(イ)少人数の演習方式、(ウ)自力で学説等を調査し、レポート作成、口頭報告させるといった方法が必要かつ有効であり、更には、(エ)教育補助教員による学生の個別的学習指導なども適宜活用していくことが重要です。法科大学院については、セメスター制等の採用により、授業をなるべく集中的に行うべきであります。

 とりわけ少人数教育を基本とする必要があります。ただし、いわゆるコア・カリキュラムなど一定科目について、1クラスの適正学生数の基準を策定する必要があるといたしましても、画一的に統一的なクラス編成の基準を策定することが適切であるかどうかは、なお検討の必要があります。

 必須の基幹科目としての演習授業の適正規模は、50人程度までというのが現実的なところかと存じます。

 プロセスによる法曹養成教育の質を左右するとも言えるのが、その学習成果を計る成績評価、単位認定です。評価・認定には、一定の公平で客観的な尺度が備わっていなければなりません。

 また、基本六法科目については、担当教員間の教育内容、方法の標準化、適切な教材の選定などがその前提にならなければならないと考えます。なお、評価・認定の客観性を担保する点では、複数教員による成績評価、試験問題の統一化、学生による授業評価をも導入する必要があります。

 卒業認定の基準としては、「一定の成績水準を満たすこと」を要件とし、これを下回る成績しか残せなかった学生には修了認定をしないことや、修了試験を課することとすることも一つの方法と考えます。

 「(3)入学者選抜・学生定員」についてでございますが、法科大学院の入学選抜に関する基本的理念として、公平性、開放性、多様性を確保すべきことについては、意見が一致しております。

 法科大学院における法学教育の完結性を前提として、入学試験の開放性を徹底するならば、法学既修者と法学未修者とが同一の試験を行う「共通試験型」が考えられますが、法学既修者用コースへの進学を希望する者と、法学未修者用コースへの進学を希望する者の履修状況の相違に配慮して、これらの者を分けた試験を行う「分離試験型」も考えられます。ただし、「分離試験型」は取るべきではないとの意見もあります。

 試験の結果に基づいて入学の可否を判断するか、学部段階での学業成績に基づいてその判断を行うかについては、従来の提案のほとんどは両者の併用型であり、法科大学院の理念からみてもそれが合理的であると思われます。

 試験の方式は、法科大学院が大学に設置される大学院として構想されることにかんがみれば、基本的に各大学の独自試験を実施するとの考え方が大方であります。それに加えて、全国的規模の法曹養成機関として位置づけられる法科大学院の入試については、他の大学・大学院の入試に比較して、客観性・公平性を確保する必要性が特に高く、個別法科大学院の独自試験のみに委ねるのは適当でないとの考えから、例えば米国のLSATのような全国統一試験をも実施すべきであるとの考え方があります。

 全国統一試験の問題点といたしまして、試験実施に伴う技術的問題として、実施主体としてどのような機関を想定するか、法曹としての資質を持つ者の選抜のために有効な試験とはどのようなものであるかなどを検討する必要があります。

 各法科大学院の定員については、法科大学院における教育の質を維持するための諸基準によって、総合的に規制すれば十分であり、特に定員について別個の規制をする必要はないとの意見が有力ですが、1クラスの適正学生数を基準に適正規模を設定すべきとの意見もあります。

 次に「(4)教員組織」でございますが、法科大学院が少人数で密度の濃い教育をすることを目指す以上、従来の大学院よりも多数の専任教員を必要とすることになります。また、法科大学院の指導適格教員の基準も、従来の研究者養成を主眼とした大学院の研究指導教員の場合とは役割を異にする面もありますので、法科大学院の教育内容・方法に合わせて再検討をする必要があります。

 このような基準については、新たなシステムである法科大学院としてあるべき姿から検討することになります。検討の参考となるものとして、専門大学院の基準がありますが、法科大学院の設置基準を専門大学院の枠内で構想するかどうかについては、今後の検討課題であります。

 法科大学院が法曹養成を目的として法学教育の高度化を図り、理論教育と実務的教育との融合を目指す以上、いわゆる実務家教員が不可欠であります。

 実務家教員の数、比率については、法科大学院のカリキュラムの内容、司法修習との役割分担との関連で適正な数、比率を考えるべきであります。

 「(5)多様な設置形態と適正配置」についてでございますが、現実的には、既存の法学部を持った大学に法科大学院が設立されるケースが多いと思われますが、特定の大学の法学部に基礎を持たない形態の法科大学院、すなわち独立大学院や、幾つかの大学が連合して法科大学院を設置する「連合大学院」なども制度的に認められるべきであると考えます。

 夜間大学院などの多様な形態により、法科大学院の開放性・多様性の確保に努めるべきであります。また、通信制法科大学院についても、法科大学院の教育方法との関連で検討すべき課題が残っておりますが、高度情報通信技術の発展などをにらみつつ、積極的に検討する必要があります。

 法科大学院は、法科大学院における学習の機会を広く確保するため、全国的に適正に配置されなければならないとの要請を踏まえつつ、地域を考慮した全国的な適正配置のための政策的配慮が必要になります。

 「(6)資力が十分でない入学者に対する援助の必要性」についてでございますが、授業料については、学生や親の家計負担が余り重くならないように考慮する必要があります。また、資力が十分でない者が経済的理由から法科大学院への入学が困難になることがないように、格別の配慮が必要であり、奨学金、教育ローン、授業料免除制度等の各種の奨学資金制度が整備されるべきであります。

 次に「(7)法科大学院の財政基盤の確立」です。

 大学院レベルの少人数教育であることから、法科大学院の人的・物的設備を基準に合わせて整備するためには、その設立・運営に多額の費用が掛かることが予想され、したがって、厳しい財政事情の中においても、司法の人的基盤の整備の一翼を担うという公共的使命にかんがみれば、国公私立を問わず、適切な評価を踏まえつつ、公的資金による財政支援が不可欠であると考えております。

 「(8)その他」ですが、法科大学院修了者に対して付与される学位は、その他の大学院修士課程修了者と同様に修士とすることも考えられますが、3年制とする場合には、国際的通用性も勘案しつつ、例えばアメリカのロースクール修了者のJ.D.に相当する法科大学院独自の学位、すなわち専門職学位を授与することも検討する必要があります。

 「4 法科大学院の設置と第三者評価」。「(1)設置及び第三者評価に関する基本的考え方」。

 法科大学院の設置認可は、関係者の自発的創意を基本にしつつ、法科大学院の設置に必要な一定の客観的基準を満たしているものを設置認可するものとし、広く参入を認める仕組みとします。ただし、これは安易な設置認可を認めるということではなく、設置認可基準は厳格なものとすべきであります。

 法科大学院の教育の質・水準を確保する観点から、教育効果などの継続的な事後審査を厳正に行い、客観的な第三者評価を行う体制の整備が肝要であります。

 「(2)第三者評価の具体的な在り方」。法科大学院の法曹養成機関としての教育水準を確保するためには、法科大学院の設置時だけではなく、その後も継続的に、適切な第三者評価を行う必要があります。

 具体的な制度としては、米国のアクレディテーション(認定)制度を参考にすべきであるとの意見が多いところであります。

 我が国でも法科大学院の評価基準の策定とその実施に当たる機構を新たに組織する必要があり、その組織は、法科大学院・文部省関係者だけではなく法曹関係者・関係行政機関やそれ以外の学識経験者などにより構成し、合同で評価を実施することが考えられます。

 このような認定は定期的に行い、是正勧告や場合によっては認定の取り消しもあり得るものとすべきであるとの意見が多いところであります。

 特にカリキュラムについては、法科大学院の質と統一性の確保のための基準は、コア科目、すなわち基本科目、基幹科目及び法曹基本科目などの必須提供科目や、卒業に必要な単位数など、最低限度にとどめ、それ以外については各法科大学院の創意工夫による独自性・多様性を尊重すべきであるという意見が大勢です。それぞれ特定の分野に力点を置いたカリキュラムを編成して独自性を発揮する法科大学院が設立されるなど、相互に競争しつつ多様な法曹を養成するという柔軟なシステムが実現されることが望ましいところであります。

 また、水準の維持向上を図るために、評価基準・評価手法・評価結果については、情報公開が必要であります。

 「5 法科大学院と司法試験・司法(実務)修習」。「(1)法科大学院と司法試験」。現行司法試験は、法曹になろうとするものに「必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする。」と司法試験法第1条に規定されております。法科大学院制度を導入した後の司法試験制度も、この目的を維持することに変わりはありませんが、現行制度と違って、21世紀にふさわしい法曹を養成するため、新たに法科大学院が、そこでの教育水準が客観的に確保された高度な法律専門教育機関として設置され、そのための充実した教育が行われ、かつ、厳格な成績評価を行うことを前提とするのであれば、新司法試験は、そのような教育内容を踏まえたものとすべきであると考えます。

 新司法試験の内容がそのようなものとなれば、法科大学院修了者のうち相当程度が新司法試験に合格し、法曹養成のための高度専門教育機関としての法科大学院に期待される役割が実現されるものと思われます。なお、司法修習の受け入れ体制との関連では、法科大学院の修了者には、司法修習を受ける機会が広く与えられるべきであるとの意見もあったところです。

 法科大学院教育と司法試験との関係を制度的に明確なものにするためには、法科大学院修了を新司法試験の受験資格とすることが望ましいのですが、その場合、開放性や公平性の徹底の見地から、入学者に対する経済的援助や夜間大学院、通信制大学院の開設などの方策を講じることが特に重要となります。

 法科大学院制度及び新司法試験制度の趣旨を考えると、3回程度の受験回数制限を設けることが合理的と考えます。

 「(2)法科大学院と司法(実務)修習」についてですが、法科大学院における教育との有機的な連携に配慮しつつ、法曹に要請される実務能力涵養のための司法修習を実施することを前提として、法科大学院は、実務上生起する問題の合理的な解決を意識した法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分も併せて実施することとなるというのが大方の意見でありますが、法科大学院は法理論教育と併せ、実務教育のうち基礎的内容にわたる部分、すなわち現司法修習における前期修習相当部分まで実施すべきであるとの意見もあります。

 「今後の検討の進め方」でございますが、冒頭述べましたように、本検討会議としては、今後、この「議論の整理」及び司法試験や司法修習の改革の方法に関する司法制度改革審議会の意見を踏まえつつ、更に検討を深めることにしており、必要な見直し等を行った上で、回答期限であります本年9月末までにその検討結果を取りまとめ、当審議会に対して提出することとしております。

 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、小島教授のただいまの御説明について、委員の方から御質問があればお受けしたいと思います。

 なお、お答えについては、小島教授だけではなくて、御出席していただいております伊藤教授、田中教授にも適宜お答えいただくということにしたいと考えております。

 それから、質問の後で意見交換ということになるわけですけれども、意見交換の際にも、3人の先生には御同席いただきたいと思います。今後、私どもの意見を踏まえて御審議いただかなければいけませんので、引き続き御同席いただきたいと思っております。

 ですから、質問と我々の意見交換がきれいに切り分けられるかどうか、少し不安なんですけれども、全般について何かお尋ねになりたいことがあればお尋ねいただいて、しかるべきところで意見交換を行い、その中でまた質問が出てくるということになるかと思いますけれども、余りそこは厳格に考えずに進めてまいりたいと思います。

 それでは、最初に全体的な事柄などについて御質問があればどうぞ。

【藤田委員】大変詳細・綿密な御検討をいただいて、ありがたく思っておりますが、2点質問させていただきたいと思います。

 ただいまの「議論の整理(概要)」の3ページの「3 法科大学院の基本的枠組み」の「(1)標準修業年限」についてでございますけれども、3年制を基礎として、短縮化した2年制を併せて検討するという意見が大方であったということで、また付随して原則として修業年限の短縮を認めるべきではないという御意見もあったと記載してございます。法科大学院で就学する学生の相当部分は法学部卒業者になるのではないかと思われます。ハーバード大学などでは法学部出身者がかなり少ないという資料も拝見しておりますけれども、法科大学院を目指して入学してくる学生の多様性を確保しなければならないという理念は十分わかるんですが、実際には法学部卒業生が相当な割合を占める可能性が高いのではないかと考えます。その点について、どういうお考えであったのかということです。また、仮にそういうことだとしますと、原則3年制で短縮型2年、更に短縮を認めないという意見もあるということでございますけれども、むしろ2年制を標準として、法学部以外の卒業生についてはプラス1年の基礎的な法学の勉学期間を設けるという考え方もあろうかと思いますが、その点についてはどのような議論がなされたのかということを伺えればと思います。

 第2点は、「概要」の9ページの「(1)法科大学院と司法試験との関係」でございますけれども、恵まれない家庭の出身者のために、奨学資金等の制度を設けるという配慮が7ページにございますが、「議論の整理」本体の方の該当部分を拝見しますと、現行の司法試験制度との関係について、(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)と4つの考え方が提起されております。(ア)は現行司法試験制度を廃止する、(イ)は当分併存させる、(ウ)と(エ)は現行司法試験の内容を法科大学院の教育内容に対応するものとした上で、受験資格の限定を設けないという点では同じで、ただ、法科大学院修了者に対して受験科目免除等の特典を与えるかどうかという点で異なるという考え方になっております。しかし、奨学資金制度だけで恵まれない家庭の出身者が、司法試験を受けて法曹になるという道を確保できるかどうかという心配があります。家庭を持って生活をしながら受験している人が現在受験生の中にかなりいるわけでありますけれども、この(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)以外に受験資格についての検定試験を設けて、司法試試の内容を法科大学院の教育内容に対応するものとした上で、平等に受験させるというような方策、安全弁的なものですから、その人数はかなり制限されることになろうかとは思いますけれども、そういう考え方はなかったのかどうか。この2点を伺わせていただけたらと思います。

【伊藤氏】ただいまの藤田委員の御質問の第1の点については、私からお答えをさせていただきたいと思います。

 御指摘のように、具体的にどういう制度を考えるにせよ、法科大学院に入学してくる者の中に、法学部出身者と法学部出身者以外の者、この2種類の者が出てくることは間違いのない事実だと思います。

 それでは、その2種類の者の比率がどうなるかということでございますが、これについては、一定の枠を作るという考え方もありますし、枠は作らないで自由に試験を受けさせた上で結果を見るという考え方もあろうかと思いますが、現実的にどの程度の比率になるかということはなかなか予測できません。法学部出身者が大部分であろうかとも思いますし、必ずしもそうではないという考え方もあり得ると思うんです。

 ただ、そのことは別といたしまして、先ほど座長から御紹介いたしました「概要」は、法曹養成のための法学教育について、基本的に責任を負うのは法科大学院であろうという考え方に基づいているわけでございます。

 もし、責任を負う主体が法科大学院であるといたしますと、法科大学院としては、法律学について全く知識のない人が入ってきても、きちんと一人前の、実務修習を受けて法律家になる能力を育てるという形にならなければいけないという考え方が、この3年制の基本にあるわけでございます。勿論、現在の法学部あるいはこれからの法学部の教育の中で、法科大学院の教育の基礎的部分に該当するような教育を行い、その成果を身に付けているような入学者も当然予想されますから、それはここで申します短縮型として考えればそれで対応できるのではないかと存じます。藤田委員の御指摘のように、法学部出身者が多く法科大学院に入学してくる事態は勿論起こり得ることだと思いますが、そういうことになりましても、今言ったような形での対応で、合理的な教育体制が作れるのではないかというのが、この考え方の趣旨でございます。

 引き続きまして、第2点についても私からとりあえず御説明をさせていただきます。藤田委員の御指摘は、「議論の整理」本体の方で申しますと31ページに、(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)と4つの考え方がございますが、どちらかと申しますと、(エ)の考え方、つまり現行司法試験の内容を法科大学院の教育内容に対応するものとした上で、かつ受験資格の限定はしない、法科大学院修了者も、独学でその内容を勉強した人も、区別をしないで受けられるという考え方に近いのではないかと思います。これは、31ページの真ん中よりちょっと下のところに書いてございますが、試験の開放性、公平性という点ではすぐれているわけでございますが、それでは一体、法科大学院の教育というのは何なのか、独学でもできるようなことを3年も掛けてやっているのかという問題が当然出てくるわけでございまして、そうなると、そういう考え方を制度として一般的に合理的なものとするのはなかなか難しいのではないかと思います。先ほど御指摘のような問題は確かにあるかと思いますが、経済的に法科大学院での学業が困難である者については、奨学金等で対応するべきではないでしょうか。また、お話の中にございましたように、例えば仕事をしているとか、家庭の主婦であるとか、必ずしも厳密な意味での経済的な制約ではないけれども、時間的な制約という意味で、やはり法科大学院での教育を受けることに困難がある者が考えられるわけでございますが、後者の者については、ただ今座長から御紹介しましたように、夜間大学院でございますとか、あるいは場合によっては通信制大学院というような、言わば時間的制約に対応できるような形で教育体制を作ったらどうかという考え方でございます。

【藤田委員】ありがとうございました。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。それではほかに。

【北村委員】話がどんどん飛んでいくんですが、よろしいですか。

【佐藤会長】はい。

【北村委員】まず2ページ目のところですけれども、プロセスとしての法曹養成制度というものを考えていくということで、司法制度改革審議会からの報告書にありましたその基本的な理念というものを中心にしてというお話でしたけれども、ここで法曹養成と言ったときの法曹というのは法曹三者のことでしょうか。すなわち法曹三者を考えての法科大学院なんでしょうか。それとももっと範囲が広いんでしょうか。そこのところをまず教えていただきたいと思います。

【小島氏】それは当面、法曹三者を中心にして考えるということで検討を進めておりますが、その法曹三者というのは、現在の姿を前提とするというよりも、もっとエクスパンシブな姿を、現実には想定していると思います。

【北村委員】最後のお言葉、ちょっとわかりにくかったんですけれども、どの辺のところまでですか。

【小島氏】新司法試験に合格した者は、法曹三者のいずれかとして活動することは勿論、更に、行政とか企業とか、その他の組織に入って組織内の法律家として活動することもありますし、更に現在、不十分さが指摘されておりますが、国際機関等に入って活動することもあるということ。

 また、活動の仕方も、紛争解決あるいは訴訟というところに限定されず、予防法的な活動、その他リーガル・コンプライアンスとか、いろいろな新しい展開に対して、新しい法曹は、広く関与していくことになるだろうと。いわゆる伝統的なカテゴリーの専門家が十分対処できる可能性がある。不十分なところがあれば次の一つの課題として更に補完される必要があろうという想定でございます。

【北村委員】法科大学院を出た人が新司法試験を受けるというお話ですけれども、この新司法試験の合格割合は、具体的にはここには書いてないんですが、大体何%くらいとお考えでしょうか。

【田中氏】具体的に各大学が言っている意見としては、7割とか8割ということが多いわけですけれども、これはどの程度の法科大学院ができるかという問題と相関的なところがありますし、合格割合は、相当程度、ということしか言えないと思います。ある法科大学院については、7割、8割のところもあるし、ほかのところはもっと少ないこともあり得るので、どの大学も7割、8割ということは制度設計としてはあり得ないわけでして、その辺りは設置基準をどうするかという問題もあり、各法科大学院について、全て一律に合格割合を設定をすることは適切ではないんじゃないかと思います。

【北村委員】全体としてはどうなんでしょうか。それもやはりできてみなければわからないということですか。

【田中氏】大学としては、多ければ多いほどありがたいということは間違いないわけです。そういう形で、なるべく法科大学院を修了した人がきちんとした成績を収めていれば受かるという試験にして、それに合わせて司法修習制度も整備するというのが理想的な形態だと考えられますけれども、それはどこから出発して、どの辺りを目標にして制度設計をするかということで、移行過程がありますので、最初からこれだけという具体的な合格割合はなかなか言いにくいと思います。

【北村委員】そこでお伺いしたいのは、今さっき小島先生がおっしゃったように、いろんな方面に行くというのは、この新司法試験を通った人のことなんでしょうか。それとも法科大学院を出たものの、新司法試験に通らなかった人というのが、合格率が8割にしても7割にしても、2割か3割は出てくるわけですけれども、こういう人たちのことはどういうふうにお考えなんでしょうか。

【小島氏】その点につきましては、改革の一つの重要なポイントだろうと思うんです。現在の司法試験では、何年も受験という試練の中で、非常に狭い範囲の勉強をしておりますから、基本的な社会的活動能力というのはだんだん落ちてくる危険がある。しかしながら、新しい法科大学院の中で教育すれば、人間的な交流、接触もありますし、学際的な勉強もありますし、その他、能力開発という点では極めて有利な条件にありますので、その卒業生は、仮に狭い意味での法曹三者としての資格を得られなかった場合でも、社会的に活動できる素地が相当程度備わってくるのではないか。

 それから、恐らく最終試験の前に他の方向に移るという人も、相当厳しく進級等で管理することになると思いますので、全体として見れば、このプロセスの中で適材適所の振り分けができ、しかも最終的に不合格になった者についても、それなりに活動の分野は広がってくるであろうと、そういうふうに考えております。

【北村委員】ずっと聞いていってもいいんですか。それともちょっとやめた方がいいですか。

【佐藤会長】時間の関係もありますけれども、もう1、2問くらいであればどうぞ。

【北村委員】法学部教育との関連ですが、これは幾ら説明を伺っても私はよくわからないところがあるんです。この3ページのところには、「法的素養を中心としたリベラルアーツ教育を行う」というようなことを法学部において考えていってはどうなのかということが一つの意見として出てきているわけなんですけれども、今、法学部の学生というのは4万7,000人くらいいます。ところが、法科大学院に行くのはそのうちの何千人ということになるわけです。そうしますと、その4万何千人の学生が、リベラルアーツ教育ということで社会に出ていくということになるわけですね。このリベラルアーツ教育というのは、各人でいろいろな考え方があり、この辺のところまでというレベルもいろいろあると思うんですが、私は今の法学部が輩出している学生と、これから法科大学院ができたときの法学部から出てくる学生との間に質的な違いが出てくるんじゃないかと思うんです。

 というのは、私は中央大学ですから、中央大学の法学部のことしか余りわからないんですけれども、他の大学でどの程度の法学部教育をやっているのか、法的な教育をやっているのかということに関係するわけですけれども、その辺のリベラルアーツ教育ということで、十分に社会に対応できるのかどうなのかというのはいかがでしょうか。どういうふうにお考えなんでしょうか。

【田中氏】そこにあります「法学部は、法的素養を中心としたリベラルアーツ教育を行う」べきだというときに、リベラルアーツだけを念頭に考えられがちですけれども、しかし、法学部が一つの専門学部として存続する以上は専門基礎教育も行うわけで、その専門基礎というのは、狭義の法曹にならなくても、社会が法化していけば、いろんな形で活用の余地があるわけです。リベラルアーツ教育だけを取り上げると何かコアになるものが欠けてしまうところがあって、そういう法学的な専門基礎教育を法学部でやるという体制はこれからも残るわけです。

 今、法学部でも法学だけをやっているように思われますけれども、実際は経済とか政治もかなりやっているわけですから、そういうものを副専攻とかダブルメジャーという形で多様化していけば、それはそれとして法科大学院に行かなくても十分法学部の存在理由はあるわけでございまして、リベラルアーツ教育といっても、法学部ではあくまでも法的なリベラルアーツ教育であるというふうに考えていけばよいのではないでしょうか。

【北村委員】そういうふうに見たときに、先ほどの御説明では、法科大学院は3年が基本で、というような意見もあると。3年制、2年制の併存型も考えられるが、2年制のみとすることは考えられない。これはよくわかるんです。ところが、3年を基本とするのか、2年、3年の併存型でいくのかというのは、学部教育との関連でかなり意味が違うんじゃないかなという気がして仕方がないんですが、そこのところはどういうふうに考えていけばいいんでしょうか。3年を基本とするというときには、法学部を出ていないほかの学部の人たちが入ってくるわけですから、そういう人が3年ということになるわけです。ところが、幾らリベラルアーツ教育になっても、法的素養というものを身に付けた人たちが入ってくれば、それは2年ということになるわけですね。そうすると、3年、2年の併存型というのは、私の頭の中ではわかるんです。それを3年制というような形が出てくるというのはどうしてなんですか。

【伊藤氏】まず、先ほどからの議論の前提となっております、リベラルアーツ教育の点でございますが、ここはお読みいただければわかりますように、そういう意見があるということで、全体のまとまった考え方としては、その上の行に書いてありますが、その点は法学部の判断に任せようじゃないかということです。法的素養を備えたジェネラリストを養成する機関として特化する法学部と、専門的なことまで、言わば法科大学院の教育の基礎部分まで行う法学部と、2つあり得るけれども、その点はそれぞれの法学部の判断に委ねたらいいのではないかということでございます。そのことを前提にいたしますと、ただ今の御質問の点でございますけれども、ある法学部が、専門教育としての法律学よりも、ジェネラリスト教育の方をやる、むしろ質の高いジェネラリスト養成をすることを法学部の教育目的としているといたしますと、そこの卒業生は、専門的な意味での法科大学院の基礎過程はまだやっていないわけでございます。法学部卒業者ではございますけれども、それだったらむしろ法科大学院に入って、3年みっちり教育をしてもらった方が、本人にとってもいいだろうということになりますので、法学部存置を前提として、法学部卒業者に対しても。なおかつ3年制の法科大学院の教育をする余地はあるわけで、勿論、法学部以外の学部の卒業者も当然前提にしなければいけませんので、そういう人を主たるものとして念頭に置けば、やはり3年制の教育というのが考えられる、こんなことになるんじゃないかと思います。

【北村委員】そのときには、学部というものがあって、そして法科大学院というものがあるということが、関連されて考えられているということですね。

【伊藤氏】3年制の場合ですか。

【北村委員】はい。3年制の場合です。

【伊藤氏】3年制の場合は、連携させて考えていません。

【北村委員】といいますのは、法学部でなくほかの学部からも入ってきて、その場合は何にもやっていないんだから3年制とするというのはわかるんです。ところが、法学部における教育がジェネラリストの養成の場合も3年という形で、そのときの3年制というのは、法学部の教育がジェネラリストであるということでつながっている、そういうことですね。

【伊藤氏】そうです。

【北村委員】では、法学部の教育がジェネラリスト養成ではなくて、法学をもう少し身に付けさせるものであるときには、3年というのは結び付かないと。そのときには2年でやると考えてよろしいですか。

【伊藤氏】法科大学院における、具体的には1年時で履修するような内容を既に法学部で履修した、履修したというのは単に本人が言っているだけではなくて、法科大学院で試験をして、それだけの能力があると認められた者につきましては、1年間の修業年限の短縮を認めます。具体的なイメージで申しますと、例えば私が法学部を卒業して、それなりに勉強はしたんだけれども、やはりまだ自信がないという場合であれば、法学部は卒業しているけれども、2年制のコースではなくて、法学非修了者としての3年制のコースに出願して、そこで3年間勉強するという選択の余地もあり得るのではないかということでございます。

【佐藤会長】もしまだ質問があるようでしたら、意見交換のときになさってください。

 それでは、水原委員どうぞ。その後で髙木委員に。

【水原委員】法曹養成に特化した実践的な教育を行う大学院として、法科大学院構想での各般にわたる論点を検討していただいて大変ありがとうございます。

 教員の確保の問題について端的にお伺いいたします。今までの大学院とは違った法曹養成に特化した実践的な教育を行う大学院にするために、理論的教育と実践的教育を架橋するものとして、専門的な法知識に関する批判的・創造的視点及び法曹の人間的バックグラウンドとしての幅広い視野を身に付ける制度において、今までの大学院あるいは大学の先生方がやはりこの専門教育の御指導に当たるわけですね。それに実務の経験も持った方々も、数と比率についてどうするかはともかくとして、加わっていただくという教員組織に関しての御意見をお聞かせいただきましたが、このような理論的・実務的教育を架橋する教育を行うシステムができ上がるには、大体先生方どれくらいのスタンスをお考えになっていらっしゃるのか。また、その点についての御議論をなさったかどうか。御議論をなさってきたとするならば、その内容についてお聞かせいただければと思います。

【田中氏】確かに今御指摘いただいた点が、法科大学院を立ち上げる場合の一番難しい問題だということは、大学関係者は十分承知しておりまして、その点については、法曹三者から格別な御協力をいただきたいと考えているわけでございますけれども、いろんな形で対応策を講じていく。例えば今の国立大学の教員の兼業規制とか、弁護士法30条による規制というものは緩和して、法科大学院の教員が実務をやれる、あるいは実務家に、実務家の資格を持ったまま法科大学院で教えていただくというふうな制度を整備していくということが教員確保の一番前提になると思うんです。そういうことをやっていって、法科大学院を修了した人が法科大学院の教員になる段階になってはじめて安定するようになると思いますので、早くても10年くらい経たないと理想的な形は実現しないと考えられます。

 ただ、大学でも大学院に専修コースを設けまして、実務家にも客員教授などという形で御協力いただいて、ジョイントで教えたりする共同教育の実践をやってきておりますので、今まで全くやっていなかったものを突如法科大学院になったから始めるというわけではなく、今、法科大学院を設置したいとおっしゃっている大学のほとんどが、そういう高度専門職業人を養成するコースで、実務家にも協力していただいて実務志向的教育をやっているという経験を持っていらっしゃるところが多いので、全くゼロからやるというわけではありません。

 しかし、立ち上げの問題というのは非常に難しい問題で、それについてどれだけ御協力いただけるかということが非常に重要な課題だと考えておりまして、法科大学院の教員のほとんどが法曹資格を持っていて、ある程度実務経験を持っているというふうになるには、10年くらい掛かるということは間違いないと考えております。

【水原委員】ありがとうございました。公平性、多様性、それから開放性、この3つの視点に立ってやられるということ、そのとおりだと思いますが、そうしますと、昼間部があり、夜間部があり、そして通信教育があり、こうなりますと、その先生方の充実については、大変大きな問題があるという気がいたします。

 それと、先ほど田中先生からお教えいただきましたが、今でも現場を経験した方々にも入っていただいていらっしゃるということですけれども、今のシステムではタブル・スクールの弊害からは脱却し得ない。そうなりますと、抜本的、根本的な改革というものが必要ではないかという気がいたしますので、法科大学院構想についていろいろと非常に御示唆に富む御意見を賜りましたのでありがたく思っておりますが、そういう点について十分御検討くださるようにお願いいたしたいと思います。

【佐藤会長】御要望みたいな感じでしたが、お答えになりますか。

【小島氏】ただいま御指摘いただきましたように、新しい法科大学院構想というものが真に充実したプロセスとして定着するために、教育機関そのものとして魅力ある教育の場として自らを確立できるどうかということで、良きシステムを構築して、その中でそれが真に魅力的なものになれば、多くの実務家の方々にも教室へ足をお運びいただけるのではないか。それも基本的なところであろうかと考えております。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。時間の関係で、意見交換に入る前に、質問として髙木委員からお話しいただき、その後に意見交換に入りたいと思います。

【髙木委員】いろんな前提を付けて、審議会の方から検討会議の方にお願いをしたんで、おのずと検討会議の方では、どこまで議論していいんだろうかという意味での制約をお感じになりながら議論をされたんではないかと思います。そういう御苦労が随所に、私も全ては精読できていませんけれども、読ませていただいて、感じられるわけです。そういう認識をしておりますということから、一、二、御質問をしたいと思います。

 私の認識では、日本では法曹養成についての専門的な教育機関というのはない。それから、法理論と言いますか、研究と実務の一体融合化ができていない。そういう中で法曹人口増がこれから求められていく時代に、現在の法曹養成システムでは非常に心もとない、その辺が議論のスタートで、お願いした文書に「架橋」などという言葉が使ってありましたせいか、感想みたいなことで恐縮ですが、最初に法学部ありき、あるいは最後に研修所ありき、この辺は失礼な言い方になるかもしれませんが、どうしても入口と出口に規制された御議論になっているんじゃないかと思うんです。御反論があれば後でお答えいただきたいんですが。

 それよりは、まず最初に法科大学院というのはどういう使命でどうするんだという方向からアプローチしていただいて、ただし、完成期と移行期の問題があるから、移行期にはいろんな手当てが必要だろうというアプローチが必要なのではないか、今求められているのはそれじゃないか。ですから、先ほど水原委員の御質問もありましたが、先生に制約があるでしょうとか、研修所の入れ物に制約があるでしょうというよりも、まずこういうことを目指そう、その次に、そのために今こういう部分は心もとないなという意味でどう補完するのか、という順番で考えるべきものではないかなと思います。若干乱暴なことを申し上げているかもしれませんが、その辺について、私はこういう感想を持ちましたが、というコメントをいただけたらと思います。

 それから、今の質問とダブりますが、完成期と移行期が余りにもちゃんぽんになった議論になっておりませんか。これも印象ですが。

 ちょっと細かい話になって恐縮ですが、2年制・3年制論、2年制論はどうしても今の法学部というものをかなり意識されるとこういうことになるんだろう。あるいは選抜試験型等は、そういう側面があるんだろうと思います。

 この「議論の整理」の本体の11ページで、「実務関連科目」としてエクスターンシップの関係等々にお触れになり、その後の10行くらいを読んでみますと、基本的にはこんなところまではできませんというのに近いニュアンスで読めるんですが、見学くらいはいいですよという感じでこれは読めないことはないと思うんです。

 例えばこれを一例にして議論させていただきますと、現在の司法研修所の研修の内容について、かなり精緻に吟味をされて、それとの関係でこんなふうに整理をされたのかどうか。各大学でいろんな構想を検討されておりますけれども、例えば慶應義塾大学のを読ましていただきましたら、例えば要件事実教育はロースクールの早い時期にやりますということが書いてあったと思います。私も要件事実はよくわかりませんが、いわゆる主張・立証責任の分配などの問題なども、そういうアプローチの仕方をすればできないことはないんじゃないかという御意見があったりする中で、だから、現在の司法研修所の実態がどうなっていて、どういうふうにロースクールと法科大学院の関係で相互に互換、シフトし合えるのかという分析等もいろいろなさったんだと思いますが、その辺はいかがなことになっておるんでございましょうか。

 そういう意味で、これも失礼ながら申し上げると、最初に研修所ありきと、研修所には余り触れないんだというお立場で議論なさったんではないかと。これは大変失礼ですが、失礼を承知で申し上げますと、そういうことも含めて、何十年に一回のことをやろう、それも全国を巻き込んでの大きな制度を作ろうとしているわけですから、とりあえずこんなもの、と言ったら失礼かもしれませんけれども、大変中途半端な印象を免れないわけです。あと申し上げることはまだありますが、時間の関係もありますので、議論の中で申し上げます。

【伊藤氏】司法(実務)修習の関係につきましては、法科大学院を前提にして、それには加える形で実務修習を行うこと自体は審議会からの検討依頼の内容にもなっておりますので、当然そのことは前提にしております。恐らく髙木委員の御質問は、現行司法修習制度あるいはその内容に法科大学院の教育がどこまで踏み込めるかについて十分検討したかどうかという御趣旨かと思います。

 それについては、先ほど座長が紹介いたしました「概要」の方の9ページ、「(2)法科大学院と司法(実務)修習」の2行目の終わりの方にございますが、「法科大学院は、実務上生起する問題の合理的解決を意識した法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分をあわせて実施することとなるというのが大方の意見」である一方、更に踏み込んで「現司法修習における前期修習相当まで実施すべき」だという意見がございまして、この辺りは検討会議でかなり時間を取って、言わば激論を交わしたという経緯がございまして、その意味では私どもとしてできる限りの検討を行ったということでございます。

 以下は私の意見でございますが、法科大学院において、要件事実教育を行うか行わないかということがときどき問題になりますけれども、むしろ本質は、先ほどの御質問にもございましたけれども、実務教育と理論教育が今まで切り離された形で実施をされてきたことに問題があったと思います。むしろ理論の側から実務を検証し、実務の側から理論を検証する、それが法科大学院教育に求められているものであって、それができていけば、その後に実施される実務修習もその基礎に立って行われることになりますので、一番重要なのはそこなのではないかという問題意識でございます。ここであえて実務上生起する問題の合理的解決を意識した法理論教育を中心とするというのは、そういったことを踏まえて考えているつもりでございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

【小島氏】それでは、今の点でもう一つ。実務教育に関連しまして、法科大学院ではクリニック等の科目、それから、法曹倫理の科目を置いております。前者は理論教育の一つの方向性を正しく設定するために、是非とも必要なものだと考えておるわけですけれども、クリニック等の実務的な科目が入っておりますのは、これは実務そのものを行うというよりは、実務の現場、文脈の中で、法律的な問題を正しくとらえ設定して、勉学していく。それによって法科大学院の教育が、すぐにではありませんけれども、基本的には将来における理論と実務の総合・融合に大きく寄与することになるのではないか。学生たちは一つの感覚を実務科目を通じて身に付けていく。実務そのものは実務に入ってから、主として体験を通じて学んでいくでしょうし、その前段階は司法修習で行われる、そういうふうに考えられているのかと思います。

【髙木委員】お願いするときにも、審議会でペーパーをまとめる際に、修習というのは要するにどういう意味か、言葉をどうやって使うのかという問題提起をさせていただいたのを記憶しておりまして、理論があり、それを実態に敷衍する実務の世界があり、そういう意味では実務についての修習、勉強するというのはどんな世界でもあるわけで、特別にそういう研修機関でやる方法とか、オン・ザ・ジョブだとか、いろんなやり方がどの世界でもあると思うんです。

 そういう意味で、修習というと、何か司法研修所のことを想起するかのような文言の使い方がありましたり、そういう意味では量も質も求められる法曹をこれから作っていかなければいかんという中で、私が申し上げたかったのは、現在ある既存の司法研修所が最初にありき、というふうにあの文章をお読みになって議論されたということであるとしたら、ミス・トランスレーションが審議会と検討会議の間にあったのではないかと感じられるということなのです。

【井上委員】私は連絡役ですので、誤解のないように申し上げます。

 検討会議の席上でも申し上げたことですが、我々の審議会で共通の了解としているのは、少なくとも実務修習、すなわち現場に行ってやる修習は別にやりますということでして、研修所でやっている、いわゆる座学と言いますか、クラス・ルームでやること、これをどの程度、法科大学院で分担するのか、また、司法修習制度全体をどうするのかということについては、結論は出ていません。そういうことは申し上げました。ですから、司法修習全体をどう設計するかというのは、まさに法科大学院との関係で最終的に審議会の場で検討すべきものである。ただ、その前提として、法科大学院のところでどの程度のことができるんですか、その検討はしてくださいということはお願いしたつもりです。

 そして、検討会議でも、そういう了解でこの検討がなされたというふうに私は理解していますが、違いましたら、検討会議に出席されている他の委員に補足していただきたいと思います。

【中坊委員】井上さんのおっしゃるところ辺りは、必ずしも我々の審議会がはっきり検討会議の方に言えたかどうかわからないけれども、例えば私個人としては、そこに言う前期の実務ということが、私自身は現に新しいロースクールが生まれてから後の修習という制度は、実際弁護士会に行く、裁判所を見る、あるいは検察庁を見るということを意味していたと思うんです。

【井上委員】現場に行くというのはそういう意味です。

【中坊委員】それならいいんです。我々は今おっしゃるように、修習ということですね。実務修習というのは、現場に現実に、裁判官のそばに行ってそれを見てくるとか、あるいは弁護士のところに行ってその仕事を見る、検察庁の仕事を見るというのを、新しい修習のところでやるのであって、その意味では、これを見ていると、ややその意見は少数意見みたいになっておって、実務教育の導入部分を併せて実施するというのが大方の意見であるが、法科大学院は法理論教育と併せ、実務教育の基礎内容に当たる部分、現修習における前期修習相当を併せて実施すべきとの意見もあると、こういうふうに書かれているから、今、髙木さんのおっしゃるようなことになってくるので、私個人も、この部分については、それは我々としては、むしろそういうふうに今の研修所でやっている部分も、前期というのは、まさに実務とあれとを、要件事実などを習うところであって、あと実際の実務教育は、現場へ行ってやるんだと。それ以外はロースクールでやるんだと。こういうふうに私個人は理解しておったんですけれども、今日のこの文章を見る限りは、先ほど髙木さんのおっしゃったように、それは何か少数意見のように、大方の意見はそうではないように書かれておるんですね。

【井上委員】そこの前提のところなんですけれども、我々が4月25日に確認した文章では、少なくとも現場に行ってやる、先生のおっしゃる実務修習は別にやります。しかし、現在、和光の研修所でやっていることをどうするかについては、まだこれから先の問題であり、我々としてはオープンである。ただ、ロースクールの方でどこまでできるかという検討はしてください、そういう依頼をして、それに基づいて検討された結果、ロースクールとしては、実際をにらんだ法理論教育と実務教育の導入の部分まではできるけれども、そこから先はちょっと無理ではないかというのが大方の意見であったが、そうじゃなくて、もっとできるんだという意見もあった。そういうことなのです。

【佐藤会長】今ここでその議論をやっても。両方の理解があるということですね。

【中坊委員】だから私も先ほど言ったように、井上さんが整理するとおっしゃるから、例えば私個人はそのつもりでその文書を理解しておりましたと言っておるんで、だから、私個人の今の意見としては、このような見解になってきて、いわゆる今の研修所で行っている前期修習相当部分はまた今と同じように研修所へ行くという話では、少なくとも私としては非常に受け入れ難い考え方であるんです。

【佐藤会長】途中で何ですけれども、この点はこれから我々で議論しないといけないことだろうと思います。

 今の点について、何かお答えになることありますか。よろしいですか。

 最初に申し上げたように、我々の意見交換と質問がどこでうまく切り分けられるのかちょっと問題なんですけれども、一応質問の方は以上で終わったことにしまして、私どもの間での意見交換の方に入りたいと思います。

 時間も限られている中でそれをどのようにやっていくかは、はなはだ難しいんですけれども、今日お出しいただき、既に小島座長の方から御説明いただいた「概要」の順番に沿って、少し意見交換をしたいと思います。それに関連して更に、この点は検討会議の方ではどうだったのかという御疑問があれば、質問していただいて結構でございます。

【中坊委員】今、会長のおっしゃった審議の仕方について若干意見があるんですが、この審議会でも言ったと思いますけれども、私は検討会議では、ロースクールの出口の部分、司法試験とロースクールの関係がどうなるのか。そして、ロースクールと研修の関係がどうなるのか。この出口の部分が、向こうにお願いした時点ですら我々の意見が、必ずしも思惑の一致しないまま行ってしまって、そこがどうだこうだと現に話をしているでしょう。まさに主たる論議というのは、この審議会が検討会議に頼んだことの問題点は、むしろ今言う、司法試験との在り方、司法試験で幾ら合格させるんだ、ということ。それを前提として、研修所はどうなるかということが、検討会議と我々審議会との接続点の一番の問題点ですから、むしろ1から抽象的なところから入っていくんじゃなしに、ここで言えば9とか5とか、いわゆる出口のところから審議をしないといけないと思います。時間がおっしゃるように余りないんだから、むしろ1からなされるんじゃなしに、一番しまいのところから審議をなさった方がいいんじゃないかと思います。

【佐藤会長】そうですか。非常に重要な問題が、今、中坊委員がおっしゃったところにあるんだろうと思いますけれども、できるだけ時間を取るようにしますから、既に先ほど、いろいろ御質問が出ておって、検討会議の考え方がかなりはっきりしているんじゃないかと思われる、この1番目、2番目、3番目の辺りまでをひとまとめにして議論しましょうか。そして、4、5と続ける。

【中坊委員】会長、失礼なことかもしれないけれども、現に「概要」の2ページに書いてあるように、我々は、「点」にのみによる選抜ではなく、「プロセス」の中としてとらえてくださいということをお願いしたと思うんです。それは研修所の在り方とか、今言うところに関わっているんです。

 例えば、この点が一番私は気になるんですけれども、今の司法制度の根幹、特に法曹養成制度の欠陥がなぜ発生したかと言えば、我々としては一応統一した共通の認識になっていると思うんだけれども、司法試験のところで鶏の首を締めるみたいにきゅっと細めてしまって、3%くらいしか受からないような試験を非常に長くやってきた。そのことのためにこれだけ司法制度が歪んできた、全体が歪んできたということを我々は言っていたと思うんです。だから、まさにこれからの討議というのは、そうであったというところから、技術だけのものになった、考え方の非常に偏った方が入ってきたというところが問題になっていたんであって、そうであるのかないのかというところをまさにプロセスの中でとらえましょうということになった。試験に問題があったんじゃなしに、もう一つ前提のところに問題があったということになってきたんだから、そこはやはり中心にして御議論をしていただく必要がある。

【佐藤会長】それは重点的にひとまとめの議論にしますから。

【竹下会長代理】我々の審議会が文部省に検討をお願いしたわけですが、その「検討依頼先について」という4月25日の文書に「依頼事項」というのが書いてあるわけです。これによりますと、「新しい法曹養成制度の一環としての法科大学院構想に関し、入学者選抜の方法、教育内容・方法、教育体制等についての基本となるべき事項を、司法試験及び司法修習との有機的な連携に配慮しつつ、大学関係者及び法曹三者の参画を得て適切な場を設けて検討の上、その結果を提出すること。」。それに続いて、「検討の際、法科大学院における教育内容・方法等との関係で司法試験及び司法修習の在り方についての意見があれば、付言して提出すること。」ということになっています。

 ですから、今回はまさにこれに沿ってやってくださったのであって、司法試験との関係、司法修習との関係という問題を議論してくださいとお願いしたわけではないのです。ですから、今回のような、言わば中間的な回答が出されてきたのであって、中坊委員がおっしゃる問題が重要な問題であることは重々承知しておりますけれども、違う問題を中心に検討依頼をしたわけで、それと関連して、必要ならば司法試験や修習についても付言してくださいと言っているのですから、そこをちょっと誤解されているように思います。

【中坊委員】そうじゃないと思います。そういう物の考え方をなさっていると問題があるんで、我々は一体、そもそもこの司法制度改革審議会がどういう目的で作られているんだということを踏まえないといけない。だから、今回お願いしたときにも、「論点整理」で指摘したように、こういうところに問題があったというのも前に書いてあるでしょう。単に司法試験とか司法修習を直すんじゃなしに、大学教育のところから直さないといけないから、ここからお願いするんですということを言っていて、まさに点の改革ではなしにプロセスの改革としてお願いしているんだから、まさに全体として決まってくるんで、しかも、決まり方というのは、出口のところから話が決まっていくんで、その点をやらないといけない。

【佐藤会長】3人の先生、お聞きのように、こういう活発な議論なんです。

【鳥居委員】今の話の整理の仕方ですが、検討会議に付託したのは竹下先生が読み上げたとおりだと思います。ただ、今日改めて我々が審議会として議論するとき、司法試験、司法修習とロースクールとの関係を先送りしてほかのところを審議しても、結局、また検討会議が後で困ってしまうし、我々も先へ進めないと思います。

【佐藤会長】私の理解は、形式的に読むと、竹下代理が言われたようなことなんですけれども、実質的にはそれを含めて御検討いただきたいということだったろうと思います。

 ですから、今の点について余り立ち入って議論を重ねても何なんで、中身を御議論ください。

【井上委員】会長の言われたように、まず、本日御報告いただいたものについて議論をし、より根本の問題はさらに十分時間を取って議論するということですので、それでいいんじゃないでしょうか。

【竹下会長代理】それで全く異論はありません。

【佐藤会長】最初の方の順番でと申しましたけれども、3年制、あるいは2年・3年の併存制とか、これはかなりロースクールについてのイメージの持ち方に関係してくる。北村委員が先ほど来御質問なさっていますけれども、この辺について何か我々として議論すべきことがあれば、まずそこから。

【井上委員】補足ですけれども、検討会議でも両方の意見が出まして、さっき藤田委員、北村委員がおっしゃったような考え方で、2年・3年というものを考えるべきだ。2年を基本に、3年というのはそれをふくらませた形で考えるべきだと、そういう考え方も少なからずあったわけです。その意味で2年・3年併存制案というのも有力であったのですが、ただ、伊藤さんが説明されたように、議論の順序としては、まず3年というのを考えましょう。法科大学院が教育について完全な責任を負うべきだから、教育体制としては完結型というのを基本に考えるべきだ。ただそうは言っても、法学部で勉強してきているということに意味がないわけじゃなくて、意味はあるわけですので、基礎的なところの学識・学力が付いているということが客観的に確認できれば、そういうことを前提に、そういう人達用の教育体制も考えましょう。そういう議論なんです。したがって、実質的には3年・2年併用的な考え方なんですが、出発点というか、制度設計の出発点をどこに置くかという問題なのです。

 ですから、個々のロースクールの方で純粋に3年型一本でおやりになるというなら、それはそれで結構だろうが、2年併用というのも排除すべきではない。それもあってよいのではないかというのが大方の意見であった。これに対し、最後に書かれているように、1年まるまる免除というのはおかしいじゃないかという考え方もあるのですが、他方、基礎教育としても、非法学部出身の人たちが1年で十分か、1年では不安だという意見もありました。その辺を整理して書いたのが、この文章なのです。

【鳥居委員】私は、新たにロースクールを作って、司法関係の実務教育を抜本的に変えると同時に、従来の法学部をこれからどう考えていくかということに関わっていると思います。アメリカの例を引きますと、1995年にロースクールを卒業してJ.D.の学位をもらった人は3万9,349人、おおざっぱに言って3万9,000人でした。アメリカでは法学部はほとんどがゼロといってもよいのですが、アメリカ全体で大学卒業者が116万人いる中で、法学の学士をもらう人というのは、2,030人しかいない。マスターがそれよりちょっと多くて2,200人くらいいるんです。

【井上委員】アメリカの場合、法学部はありません。

【鳥居委員】法学の学位をもらう人です。そして、法学博士の学位をもらった人が88人です。

【井上委員】それは全部LLMのことでは。

【鳥居委員】そうです。LLMのことを言っているわけです。

【井上委員】法学部というものはないわけですから。

【鳥居委員】学部をうたっている学校がほんのわずかありまして、2,000人わずかいるんです。これは全く違う制度だということでおわかりいただけると思いますが、それに対して日本は、法学部を存続させようとしているわけです。これはだれも否定していないと思うんです。先ほど北村先生がおっしゃった、4万人からの学生が法学部を卒業していく。その人たちの一部が、法学博士になる道も選んで、先生方のような憲法学者や民法学者に育ってくれることも必要なんです。そのコースも同時に我々は考えないといけないわけです。

 それを考えますと、既存の法学部の中の一番大事な仕事は、学者の養成です。同時に、それにプラスして、リーガル・マインドを持ったジェネラリストの教育をすることになります。これは大体において学士号と修士号で終わる。それとは別に、J.D.の世界、ロースクールの世界があると。こういうふうに考えるべきだと思うんです。そこのところを、既存の法学部とつなごうということに執着してしまうと、話が混乱するのではないかと思うんです。

【髙木委員】最初に、法曹というものを狭義でとらえるか、広義でとらえるかという御議論もあるんだろうと思いますが、いろんな御議論のイメージを聞いていると、司法試験も両様のお考えが意見としてあるようですが、一種の資格試験的な、資格試験というとまた言葉のことでいろいろもめるかもしれないが、日本の医師国家試験的な試験、そういうものを出口にする。その前にまだあるとかいう論議もあるかもしれませんが、そういうことの関係も含めて、ともかく法曹養成のために法科大学院なるものが一番の大きな舞台です。それがこういう設計をされたら、大学の法学部もそれぞれの関係でこうあり得べし。いわゆるジェネラリスト的な世界。それから、ロースクールに来た人も、全部が全部法曹三者の道に行くわけじゃないということ。企業法務なり、あるいはお役所の中で全然違う仕事をされる人もおられるでしょうから、そんなことも総合的に考えながら、まずロースクールなるものは何なんだ、どういうコンセプトで、どういう内容のものなんだ、ということとの相関で、現在の法学部をどうしていくんだと議論がつながっていくんだろうと思うんです。最初に現在の法学部がこういうふうだからという先入観が、そういう頭が非常に強いままで議論すると、これは先ほど来失礼ばかり申し上げてお許しいただきたいんですが、多分、こういう議論になってしまうのかなと思います。そういう意味で、3年なら3年、確かに若干の工夫がないと、学部を出た後3年なり2年半なり多く勉強した。頭からあんたたちは2年だと、それはまじめに学校に行ったか行かないかで違いがあるかもしれませんので、若干の試験はすると書いておられるけれども。3年なら3年が前提、大原則。ただし、一部アレンジで補完が要ると。だから、両方最初から並列だとかいうふうにしてしまうと、また、あっちの水が甘いぞ、こっちの水は辛いぞみたいな話になる、というふうに私は思うんです。

【中坊委員】一つ、これは北村さんにこの次発表していただくことであり、私も弁護士改革のときに言いましたが、隣接業種との関係もあると思うんです。だから、本当に法曹三者と言っても、それでは今の税理士さんとか司法書士さんは一体これからどうなってくんだということも、当然のように我々としてはあわせて考えないといけない。新しい法曹として生まれてきた者が全部充足するんですというなら、我々はそういう建前で物事を考えていかないと、さっきから盛んに力説しているのは、要するに出口のところからすべてが大学の在り方にも関わってくるし、今回の我々の発想もそこから出発しているんだから、先ほど会長にもおっしゃっていただいたように、そういう全体の流れが大学の教育にも関係しますよ。だから、髙木さんのおっしゃるように、法学部は今ありますよということを前提にして、それにどう継ぎ足すかという議論をし始めていくと、そこで非常に大きな矛盾が発生してくると思うんです。

 だから、我々の発想というのは、要するに、これからの司法制度はどうなっていきますか、その中の弁護士はどうなりますか、隣接業種はどうなりますか、あるいは大学院に残る教授はどうなりますか、そういうことを全部含めて、大学の法学部の教育も直してもらわないといけないということです。

 今の司法制度は根本的に問題があったということから、ここまで延長線としてやらざるを得ないということが、我々の考え方になっているというところをよく検討会議でも見てもらい、我々もここで審議していく必要があると思うんです。

【佐藤会長】隣接士業まで含めて考えるとなると、また話が非常に広がりますので。

【中坊委員】でも、考えざるを得ない。

【佐藤会長】法科大学院とはいかにあるべきかということを考えるときに、初めからそれを念頭に入れて考えるのか、やはり典型的な法曹というものを念頭に置いて設計を考えるのか。それから派生してくる問題は出てくると思いますけれども、本来的に典型的な法曹というものを念頭に考えるかどうかでかなり違いが出てくると私は思います。

【井上委員】まず、一番狭い意味での法曹というものの養成が不十分なものになったら、何の意味もなくなってしまう。その点を基本にして、ふくらませていくということはあり得る。あり得るんだけれども、まず出発点としては、狭義の法曹を養成するための制度としてはどういうことが考えられるか、そこを基本として詰めてみよう。カリキュラムとか学年とかですね、ターゲットは狭義の法曹を基本にして考える。その制度設計ができた上で、審議会の方で、それに加えてやはり隣接士業の養成も同時に考えるべきだということになれば、それがふくらんでいく。そういうことは可能だと思うのです。ところが、肝心の真ん中のところがぽこっと抜けているのでは、制度設計はできない。そういう前提で議論がなされたと理解しています。

【山本委員】私も100%出席したわけじゃありませんが、先生方の検討会議に出席させていただきまして、今、髙木さんがおっしゃったこと、あるいは中坊先生がおっしゃったことは、検討会議の先生方は十分注意されているわけです。

 例えば法学部はどうあるべきかという問題については、先ほど小島先生が読まれたように、リベラルアーツの教育分野を重視していくか、あるいは法曹としての教育を貫徹するかということは各大学が考えればいいというふうに、ここではっきり言っているんです。

 我々に与えられた仕事も、法曹教育はどうあるべきかということであって、法学部教育をどうすべきかということを考えているわけじゃありませんので、この考え方でいいのではないかと私は思っております。

 ただ、法学部との関係でちょっと気になるのは、2ページの終わりから3ページのところですが、「なお、法科大学院を設置する場合に、既存大学を拠点としなければならないわけではなく、例えば、弁護士会や地方自治体など大学以外の組織が学校法人を作り、法科大学院の設置基準を満たせば、法科大学院を設置しうることは当然である。」とあります。ここでは、言われるところの、余りにも既存の法学部に引きずられているじゃないかという点を意識しているわけですけれども、現実問題として、こういったなお書きでできるロースクールは本当に生まれるだろうかという疑問が実はあるんですね。

 そこで、設置基準というのがあるんですけれども、今の大学の設置基準はどうなっているか知りませんが、ここに書いてあるロースクールの中身というのは、例えば、カリキュラムがどうだとか、それから財政的な基礎がどうだとか、教員がどういう組織になっているかとか、そういうことが挙げられておりますけれども、これらがどういう形でどの程度、設置基準の中に織り込まれのか。構想はできているけれども、これは既存の大学であれば、財政的な基礎もあるし、図書館もあるし教室もあるわけですね。それが、大学以外のところで作ろうとしたときに、設置基準というのはどこまで作りやすい形で運用されるのか、そこが非常に問題だと思うんです。後半の方にも設置基準は厳格に適用すべきであるという一行がありますけれども、そこらのところを新しいロースクールが生まれるような、エンカレッジするような、そういう設置基準は、本当に現実として運用されるんだろうかという疑問が一つあるものですから、そこだけがちょっと気になるところでございます。

【髙木委員】法学部以外の学部から入りたいと言ってきた人で、自前で法律の勉強してきた人はどうなるんですか。

【井上委員】そこは2つ考え方があって、法学部で教育を受けるというところもプロセスの一部なのだという考え方に立ちますと、その中で学力を確認されることが必要だということになりますが、そういう必要はない、基礎的なクラスを終了したのと同等の学力があるということを法科大学院の方で確認できれば、自前でやった人も2年制のコースに乗れるという考え方もある。とちらかというと、むしろ後の考え方が有力だったように思います。

【髙木委員】それから、もっとダイレクトに言えば、2年制というのは、例えば何々大学法学部の人を優先的に誘導する仕組みづくりではないかということになったら、公平性とかいうことでいろいろ問題ですよ。

【井上委員】そこは、法学部を卒業してきた者は、自分の大学であろうとどこの大学であろうと、2年制の方に行きたいという人は、特別の、より加重した試験を受けてもらって、それを通ってはじめて2年制に乗れるが、通らなければだめですし、また、自信のない人は3年制で初歩からやってもらう。そういう考え方だと思うのですね。

 ついでに申し上げますと、山本委員がおっしゃったとおりで、法学部の教育を前提にし、はじめに法学部ありきで、それに接木をして何かやれば何とかなるだろうと、そういう発想で議論が進んだということでは全くありません。やはり法科大学院が責任を持つのだから、法科大学院における法曹養成教育としてどういうものが理想なのか、そこが基本である。ただ、法学部というものが前にあって、そこを出てきた人について学部で受けた法学教育が全く無意味かというと、やはりそうではないだろう。同じ法学の勉強ですので、法科大学院の目から見て、1年の基礎教育に相当する学識を備えていると認められる人は、2年というか一番中核のところから入ってもらってもいいのではないか。そういう議論の流れだったというふうに理解しているのですけれども。

【山本委員】髙木さんが指摘された、個人が勉強していた人はどうなるのかという話は、「議論の整理」本体の31ページのところにかなり丁寧に書いてあるんですけれども、要するに、現行の司法試験は当分存続させるというのが一つあるわけですね。これはまさしく一生懸命勉強した人は呼んできましょうということですが、それ以外に、当分、両方の試験を併存させつつそういった熱意のある人たちを受け入れていくということもかなり丁寧に議論されておりますので、これは我々がどういうふうに判断するかということだと思いますけれども、決して切っていくということではなくて、いろいろなアイデアが適用されているということです。

【北村委員】私は、法科大学院がこうあるべきであると、だから、法学部教育がこうなんだというこの検討の仕方というのはおかしいと思っているんですね。

 なぜかといいますと、法学部を出た人が、全部法科大学院に行くんだったらその検討でいいと思うんです。ところが、先ほども申し上げましたように、法学部を出た人のうちの十分の一にも満たない人たちが法科大学院に行くといったときに、既存の法学部の教育はどうあるべきかという検討は、また別に行わなければならないとは思いますけれども、その人たちのうちの、例えば、4万何千人が、法科大学院に行かないで、そのまま社会に出ていくとか、公務員になるとか、また、鳥居先生がおっしゃったように、学問の方に、既存の大学院の方に行くというようなときに、法科大学院からだけ学部を見るというのは、常にこれは、法曹関係者を生むために法学部というものがあるんだというとらえ方になっているんじゃないかと思うんですね。

 ちょっと井上先生にお伺いしたいのは、狭い意味の法曹というのは法曹三者のことを言うんですか。

【井上委員】そうです。

【北村委員】そうですよね。ですから、法曹三者を生むために今の法学部教育はこうあるべきだというのは、私ちょっとおかしいのではないかと思うんです。

【井上委員】ですから、そういう形の議論はしなかったのです。

【北村委員】ですから、そういう意見が今出ていたものですから、そういう形ではなくて、今の法学部で輩出している人間、ほかの人たちのことも十分配慮した上で検討を行っていかなければならないだろうと。

 そういうふうに考えていった場合に、私は法科大学院というのは、基本が3年なのではなくて、3年と2年の併存制というような形のとらえ方がいいのではないかと、これは自分の意見ですけれども、そういうふうに思うんです。

【中坊委員】私の言っていることはいささか違うんですけれども、あるいは発想が間違っているのかもしれないけれども、私はこう考えているんです。

 私たちは「論点整理」の中で、これからの法曹というのは「社会生活上の医師」にならなければならない、そうでなければ司法そのものを担えないということを言ってきたわけです。「社会生活上の医師」になるためには、法曹人口がもっと広く、しかも皆の国民の日常生活に触れていかなければいけない。そういう角度で物を見ていかないと、日本の司法制度そのものがどうなりますかということになってくるわけです。

 そうなってくると、私が非常に気になるのは、例えば、税理士さんは6万何千人いらっしゃるわけです。それで、弁護士の方は1万7,000人、実際上、今、「社会生活上の医師」みたいな仕事をしているのは誰ですかと言われたらむしろ税理士さんなんですね。だから、司法制度を支えるものとして、どういうものが生まれてくるんですかということが決まっていかないといけない。今、おっしゃるように、隣接業種は、非常に歪曲的と言うと怒られるかもしれないけれども、司法全体の改革ではなく、いわゆる訴訟代理権があるとかないとかの点だけで、司法制度への関与を主張してくる。その制度を、今おっしゃるように、まさに隣接業種との間も今問題になっているときに、そういう視点も頭に入れて議論をしていかないと、これからのところは間違ってしまう。決して大学院があるからそこからすべて法学部があるということを言っているわけではない。ただ我々としては、そこをも考え併せて、この審議を広い視点で見ないといけませんよということを言っているんです。

【北村委員】私は中坊委員と意見が違うことが多いとこの間申し上げたんですが、この点に関しては割と一致しているのではないかと思います。ただ、税理士は、法科大学院ではないだろうと思っているんです。これは、会計大学院の方だと、自分の専門ですから。そういうふうに思っているんです。

 ただ、司法書士さんだとか、そういうのはやはりこちらの方なのかなと。ですから、そういうようなものを含めた形で考えるのかどうなのかによって少し違うかなというふうにも思うんです。ところが、それは後で考えるというようなお話でしたので、今はとりあえず法曹三者を中心に考えた場合のことを申し上げたわけなんです。

【中坊委員】だけど、明日にも隣接業種のところをやらなければならないんだから、そことこれとは関連してきますよと私は言っているんです。

【北村委員】そうなんです。そこは同じです。

【佐藤会長】関連していますからね。

【山本委員】その点は、ロースクールのカリキュラムの中でいかようにもなるわけです。ですから、租税にうんと強い先生ができるロースクールだって、あっておかしくはないわけです。

【北村委員】ところが、あれは会計知識がないとなかなか。

【山本委員】だから、会計も一緒に。

【北村委員】そういうふうにおっしゃいますけれども、そうすると会計大学院の存在意義というのが少なくなっちゃいますね。

 私が思うのに、ここでの議論というのは全部、司法制度とか何とかということであって、それが中心ですよという点で、ついていけない部分があるんです。

【藤田委員】本来ならば、法曹人口、法曹養成人数をどうするか、それとの関連で、隣接法律専門職種をどうするかということを決めた上で、ロースクールをどのような内容のものにするべきかということをお聞きするのが筋だと思うんですけれども、そういうことを決めないままで検討をお願いしましたので、大変やりにくかったんだろうと思うんですけれども、それはそれとしまして、先ほど言ったことと重なりますけれども、法科大学院の在り方で、法曹として備えるべき資質・能力という視点からどうあるべきかという議論は勿論大事だと思うんです。

 もう一つは、将来の司法界を背負って立つような人材を、適切に社会的な各分野に配分しなければならない。つまり、有能な人が法曹・司法界から逃げるようでは困るという視点からも考えなければいけないと思います。

 外務省から最高裁判事になられた方で外務省の人事課長を経験した方が、そういう視点からすると、とにかく人材の取り合いなんだから、入口を入りやすいようにしておかないと人材は逃げてしまうとおっしゃいます。極端なことを言えば、公務員試験と一緒の試験にして選抜するということも考えてもいいはずだというふうにおっしゃっていたんですが、そこまでいくのはちょっと現実的ではないとしても、標準修業年限を原則3年としまして、更に、司法修習・実務修習1年というようなことになると、仮にいろいろな奨学制度を設けても、恵まれない家庭の人はすぐ月給をもらって家庭を支えなければならないわけですから、やはりそれだけでは十分ではない。そういう意味からいうと、法学部から法科大学院に進む人の方が、原則的というか、過半を占めるのであれば、原則2年という形にして、かつ、卒業しなくても試験を受けられるというようなショートカットの道を設けるべきではないかと思うんです。

 そうすると、法科大学院というものの意味合いがなくなるのではないかというようなお話もありましたけれども、フランスのボルドーで国立司法学院のアノトー院長からお話を聞きましたが、国立司法学院の入学ルートは4種類あるということでした。1つは4分の3ぐらいを普通の法学部の卒業生から採用し、そのほかに官公庁や私企業から選抜するやり方が2種類ある。それには40歳の年齢制限があり、8年間の社会経験を要する。それから無試験で選抜するもの、これは210人中の30人というふうに聞きましたけれども、そういう多様な試験を行っているということを聞き、またそれが通常の法学部を卒業して入ってくる学生にとっても非常にプラスになっているというようなことを聞きました。

 したがって、法科大学院の卒業を司法試験の受験資格に限定しなければ、法科大学院の存在の意味がなくなるということはないんじゃないかなという気がいたしますがいかがでしょうか。

【佐藤会長】それは一つの意見でありますが、検討会議の方で、今の御意見に対して何かリアクションなさるようなことはございますか。

 これはある意味で、非常に大事なポイントかという気もしますけれども。

【伊藤氏】私から意見を申し述べさせていただきます。

 確かに、法曹資格取得までの時間が長期化するのは好ましくないことは事実だと思います。ただ、これは現状との比較で考えなければいけないと思います。現状については御承知のとおりでございまして、受験資格の制限はないかわりに、平均的な人については、かなりの長期間を費し、かつかなり高額のお金を使わなければ受からない状況になっていることを考えますと、例えば、期間の点をとっても法科大学院を3年制にした場合、例えば、文学部あるいは理学部を卒業して法科大学院に入って、そこで3年やれば、相当程度、といってもそれがどういうものかという点はいろいろまだ考え方が固まらないところもございますけれども、少なくとも「相当」というからには、現在の数%とは比較にならないものであろうということになりますと、かなりの程度、しかも比較的短期間に、法曹資格取得への道が開かれていることになるのではないかと思います。

 一つの象徴的な例で、最近、大平光代さんという方でしたか、手記が出ていますが、私も非常に感銘を受けているんです。法科大学院は、ああいう方が決して例外的な存在ではなくて、ごく当たり前に法曹資格を取れるような、そういう制度として設計しなければいけないのではないだろうかと考えております。

 それから、受験資格の制限、これもなかなか難しいところだと思いますが、法科大学院の設置の形態とも関係をするわけですが、それがかなり広い範囲で認められる、余り人為的な制限を加えず、かつ、そこに学ぶことについてさまざまな形で支援をすることを前提にしますと、納得がいただけるのではないかと思います。実際問題として、私など現実の法学教育に関わっている者の反省でございますけれども、もし、受験資格を制限しないでおくとどういうことになるかというと、恐らく、大学に入ったときから、あるいは大学に入る前からこの種の試験の受験勉強をひたすらやった人が、言わばバイパスを通って受かってしまうということで、恐らく現実的な結果としては、委員が期待されているものとはかなり違った結果が生じてくるのではないかと考えております。

【井上委員】そこは、別枠のところの設計の仕方にも関わってくると思うのですね。その別枠もオープンな形にすれば、恐らく伊藤さんがおっしゃるような結果になると思うのですけれども、そこを藤田委員がおっしゃったように、フランスの国立司法学院のように、社会経験とか年齢とか、要件をきちっと決めて、うまく実施できれば、それはまた別かなと思います。

 検討会議の方でも、そういう可能性まで別に排除しているわけではなくて、こちらから付託した事項に限って検討されてお答えになったということですので、その問題はむしろ、こちらの方で制度設計するときにまた考えるべき事柄ではないかと思っております。

【吉岡委員】私も検討会議に出ておりましたけれど、間口はできるだけ広くということを申し上げてきましたし、合意も得られたと思っております。その間口を広くするという考え方の中には当然、他学部の人、社会人、働きながら学ぶ人、そういう人たちをすべて対象としているという考え方でおります。

 ただ、今おっしゃったようなバイパスというんですか、そういうことを懸念するということはわかるんですが、その場合は、司法試験の内容や出題の仕方を工夫し、社会人を含めたいろいろなタイプの人たちが法曹界に入ってくるという考え方を前提に司法試験の内容を考えていけば、そこのところは解決する問題だろうと思います。

 それから、4年制の法学部と法科大学院とが、発想上どうもつながりがちに思われますが、これについても私は、独立法科大学院ということを申し上げましたが、全然別のタイプも当然考えられるのではないか、そういうことがこの「議論の整理」中でも、「弁護士会が作っても」という文章になっています。これは例えばの話であり、弁護士会が次にやるという限定したことではありませんが、それも含めて考えられるということで報告ができ上がったと思います。

 ただ、それにしても4年制の大学を出て、更に2年ないし3年、どっちにしても大学院を出て、それから司法試験を受けて更に研修所に行ってということになりますと、非常に長い年月をそのためにだけ使うということになって、実態はもっと掛かっているというのはそうなのかもしれませんけれども、仕組みとしてそんなに長くしてしまっていいのかということも考えないと、今、非常に法曹界の方の視野が狭くなっているのではないかという批判がある中で、視野を広げることにどこまで貢献できるのかという点で非常に危惧する面があります。その辺も含めてこれからの法曹の在り方というものを考えるべきだと思います。鳥居委員がおっしゃったように、法学部をもっと幅が広いものに、ということも当然考えていかなければいけないんで、法曹になる人だけが法学部に行くわけではない、そこのところは十分理解されているとは思いますが、考えていかなければいけないと思います。

【中坊委員】少し思いつきのところもあるかもしれないけれども、確かにさっきから言っているように、司法試験の在り方、研修所、今で言えば修習の在り方というのは、全部ここに関係してくるので、これからロースクールを出た人が大体司法試験に受かる、受かるというのはなぜ受かるのかというところがもう少し出てこないといけないし、同時に、司法試験の在り方というのが、これは個人的な意見になりますけれども、今の日本の司法の在り方あるいは勉強の在り方が、基本的にまず条文があって、次に社会事実があるというような大学教育、条文の解釈、それが正直言って研修所も今一貫してほぼそういうような物の発想であって、先に事実ありきということにはなっていないわけです。

 だから、先に事実があって、理論がどうあるかという形ではなしに、先に理論があってとか、条文があって事実があるとしてそれを当てはめるということばかりやっているというところが一つの大きな問題点になってきたと思っているので、そういう意味ではまさにロースクールというのはそういう意味での実務、まず最初に事実ありきという勉強を教えて、それからどうあるべきかということを考える、そういう機関として私はロースクールはあるべきだと思うし、また、そういう人が大方受かる司法試験にしないといけない。そうすると、後のいわゆる研修所の在り方というものも、現地の修習というのが、本当に検察庁の見習いをする、ああ、こういうものかということを現場に行って見てくるだけのものにしてしまうという、そういう大きな流れが生まれてくることが必要ではないかという気がしますけれども、私としては。

【竹下会長代理】今の御意見に関連してですが、私も決して司法修習の在り方が現在のままで良いということを申し上げるつもりはございません。必要な改革は加えるべきだと思いますけれども、これまで、ここで議論されているときに、実務修習と区別したほかの司法修習の部分を、これは象徴的な意味だとは思うのですけれども、要件事実教育とだけ言われているのですね。しかし実際に研修所の前期でやっている司法修習の内容を見ると、要件事実教育というのは民事裁判の話であって、それ以外に検察もあれば刑事裁判も民事弁護も刑事弁護もあって、それぞれ起案をして添削をしたり、いろいろそういう実務教育も行われているわけです。

 ですから、一体、そのうちのどの部分をロースクール、とりわけ既存の大学を基礎にしたようなロースクールでできるのかというのはなかなか難しい問題で、私は、おまとめいただいた「概要」にあるような、「実務上生起する問題の合理的解決を意識した法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分をあわせて実施する」という辺りが最も実際的なのではないかと考えております。

【中坊委員】私と竹下さんとは、ちょっと意見が違う。

【佐藤会長】ここは時間がリジットらしくて、45分ぐらいに休憩してほしいということになっているそうです。それで、お3人の先生方、大変恐縮ですけれども、コーヒーブレイクをはさんで、更にもうちょっと御議論させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。申し訳ありません。余り長くならないようには心掛けますけれども。

 では、ここで10数分ですけれども休憩を取って、55分に再開することにします。

(休 憩)

【佐藤会長】それでは、55分が参りましたので再開させていただきます。

 法科大学院の在り方として、3年を基本とするということになるのか、あるいは、法学部が存在するという前提で考えざるを得ないというのか、考えるべきというのかわかりませんけれども、その辺の問題もあるので、3年・2年の併存ということになるのか、現実的には後者の併存型に落ち着くのかなという感じもしないではありません。その点については、先ほど来の議論を踏まえて、感ずるところは感じ取っていただいて、検討会議で更に御議論を深めていただければというように思います。

 そこで、もう先ほどから既に議論が出ておりますけれども、司法試験との関係、それから司法研修との関係の在り方について、御議論いただければと思います。

【中坊委員】最初に意見を言っておきます。私はやはりさっきから繰り返し言っているように、司法試験で鶏の首を締めたような格好になっていたことだけはどうしてもやめるべきであり、法科大学院を出た方の7割か8割が合格するということがまず前提になっていないといけないし、そして同時に、多少竹下さんのおっしゃっているのと意見が違うからかもしれませんけれども、ロースクールにおいては、少なくとも事実に基づいて理論がどうなるのかということを、私はどちらかといえば3年でいいと思うんですけれども、その間、みっちり勉強してもらった人が受かる試験、どういう試験になるのかちょっとよくわかりませんが、少なくともそういう試験であると。今みたいに技術だけ、条文のところだけを見てきたり、そういう知識だけの勉強になるのではなしに、事実から理論がどうなってきておるのかということを学ぶ必要がある。

 例えば、今大学でも法律相談なんてやっていますね、そういう仕事もそこでやってもらって、そしてマン・ツー・マンで教えてもらって、そういう期間をゆっくり掛けてもらって、あとは研修というか修習するところで、まさに現場を3か所、裁判所と検察庁と弁護士会を見て、それで一人前ということで弁護士になるというような形になっていくのが望ましいと、私はそう思っているんですね。

【水原委員】今までの司法試験というのは、鶏の首を締めた形になっているということですけれども、確かに、定員というものはありましょう。しかし、現実の試験の実態を見てみますと、合格点に達した者が定員に達しない場合がしばしばあると聞いております。結局、法曹養成が議論されるようになったのはなぜかといいますと、法律についての基礎的な知識が十分ない、基本書も十分読んでいない、それから、ここに書いてありますが、豊かな人間性や感受性、幅広い専門知識、柔軟な思考力について欠ける。こういう者が法曹になったのでは困りますということで、そういう素養を持った人をいかに育てるかということで、法曹教育のこの議論になっていったわけです。その点は皆さん御異論がないことだと思います。

 したがって、特化されますこの法科大学院で教えていただく内容で一番大切なことは何かというと、これからの法曹を背負って立つ、日本の司法を背負って立つ素養のある人間をたくさん養っていただけるような教育内容でなければいけないということ。すなわち、魅力のある教育・教科内容にしていただきたい。そうなりますと、自然と学生は一生懸命勉強します。そして力を付けます。力が付いた者について今度は司法試験で人数の制約もございましょうけれども、優秀な者はどんどん採っていくというような制度設計をしていくべきであって、何名までは合格するとか、そういうふうな制限を設けることについてはいかがなものであろうか、能力のある者は採る、しかしながら、その年において能力が欠けている場合には、仮に定員というものがあっても、大きく割り込んでいってもいいと、そういうふうな制度設計をしていっていただくのが、これからの法曹養成の基本ではなかろうかという気がいたします。

【中坊委員】全く水原さんの言っていることと同じであって、もし、大幅に合格点を下回るということであったら、ロースクールの教育が悪いわけで、同時に、その試験が悪いかもしれないわけだから、どっちが悪いのかもわからないけれども、まずとにかく理想としては、やはりロースクールを出た人が大体7割か8割は受かるというような試験に持っていかないと、今みたいに3%とか、そういうところで首を締めちゃったから大変なことになったので、ゆっくりと、しかも事実から何が本質かというのを見抜いていく、先ほど竹下さんは要件事実というのはまるで民事のことと言ったけれども、要件というのは、構成要件の要件から生まれたんだから、刑事そのものなんですね。だから、そういうふうにして要件というような概念ということも、自然とその中で教え込んでいって、そしてあとは現場さえ見ればわかるというところまでしていってもらうということと、そうであればこそ吉岡さんの言うように、多少時間が掛かっても、ロースクールは出ておくだけの値打ちがあるということに私はなってほしい思います。

 まさに水原さんのおっしゃるように、幅広く、物事を見る感受性、そういうものがどうしたら身に付くか。私も難しいと思うけれども、しかし、いずれにしても、それにチャレンジする者でなければならないと、ここが一番大切なことだと思います。

【水原委員】中坊委員に御賛同をいただきましてありがとうございました。しかし、ただ、私の申し上げることは、受験生の7割までが合格するということを念頭に置くものではなくて、やはり優秀な者、資質・能力のある者が採用されるような試験、それを、枠組を作ってしまいますと、能力がなくても、つい、まあ、あと何十人ぐらい採ればこの枠に達するというような配慮が行われるようなことになったら困るということでございます。

【佐藤会長】検討会議でも、恐らくこの種の議論をなさったんだろうと思いますけれども、せっかくの機会ですので。

【田中氏】大変微妙な問題で、私共の検討会議に委嘱された事項であるかどうか難しい問題だと思うんですけれども、大学で制度設計する側から見れば、確かに能力の問題は非常に重要なのですが、ただ、お話を聞いていますと、司法試験合格者の能力について、今でも能力は十分でないんだという話になってきますと、法曹人口を大幅に増員するという話はどうなるのかということがあります。法科大学院の一般的な制度設計は、基本的には法曹人口が増員されるんであろうという前提の下で、どうやって質のいい人を養成するかということに焦点を合わせてやらなければならないことは間違いないわけです。

 ただ、現実にいろいろな大学が法科大学院を設置したいと考えて検討する場合に、一番気にしているのは、一体どういうふうな形で法曹人口が増員されるのであろうかということについて大体の見通しがないと、果たして自分の大学は何人ぐらいの規模でどうやっていつ参入したらいいかわからない。それが現に個々の大学で制度設計を議論する場合に非常に微妙な問題になっているわけです。

 ですから、法曹人口の問題はこれから議論されるようですけれども、それについて政策的にどの程度誘導していくかということについて、勿論、きちんとではなくて、能力を見極めながらですけれども、ある程度方向を示してもらった上で、ある段階が来れば能力本位にやっていくというふうに、段階を追って考えていただかないと、今の段階から能力だけを前面に出して、現在でも2、3割ぐらいしか能力がある者がいないのを無理して合格させているんだという話になってきますと、そういった状況を法科大学院を設計をする前提として議論することが果たして適切かどうか問題があります。法科大学院については、質のいい法曹を養成するということに照準を合わせてカリキュラム、制度設計をしますから、司法試験の方も、やはりいい法曹を選ぶんだという前提で試験方式を考えていただいて、できるだけ同じ基準でいい法曹を養成するという形で、ドッキングすることが望ましいと思います。合格率は7割、8割というのが理想的ですけれども、現実にこれだけの大学が参入したいと言っている状況で、最初からそういうことを言って、それではそれにあった基準をどうして策定するのかという問題があります。しかし、少し時間が掛かるかもしれないんですが、理想的にはそれぐらいにならないと、法科大学院というものの円滑な展開は非常に難しいというふうに考えてはおります。

【中坊委員】それから、それに対して誤解を招いたらいかんのですけれども、確かに水原さんのおっしゃるように、質の確保だと思うんですね。だから、量と質というのは常に決して両立しにくい概念だと思うんですよ、率直に言って。しかし、どちらを選ぶんだと言えば、私は今必要なのは量だと思うんです。今、日本で欠けているのは量だという意識がなければ、どっちかと言えば大義名分がいつもできてくるので、まず今、社会において何が欠けているかと言われれば、やはりそれを担っている弁護士の数が少な過ぎる、今おっしゃるように「社会生活上の医師」というにしては余りにもお粗末なことであるというところが、私は今の司法の病気の原因だと思いますので、そこは確かに水原さんのおっしゃるように、まず先に人数ありきでは決してないんですけれども、しかし、あえて言うならば、私はまず量というものを相当程度重視して考えないと、この司法の抜本的改革はできないというふうに私自身は思っております。

 しかし、これは必ずしも弁護士会の言うとおりではありません。

【山本委員】全く同じ意見なんですけれども、ちょっと違いますのは、水原先生の方に近いんですが、結局、7割、8割という合格ラインを決めちゃいますと、では、対象になる法曹三者とは何だと、検事と裁判官と弁護士の先生ですと、そうしますと、検事と裁判官は少なくとも定員がある、おのずとロースクールの数が決まっちゃう、定員が決まっちゃう。そういうことになりはしないかという心配があるんですね。

 確かに、おっしゃるように、これから数は増やすんですが、これから我々がしようとしているのは、何も法学部の学生だけではないよと、理学部でも工学部でも何でもいろいろな人たちが入ってくださいということで、更にロースクールを受験する人たちが増えるわけですね、理屈の上で。だから、そこのところをよく考える必要がある、非常に大事な問題ではないかと思っているんです。

 よく、医学部、お医者さんとの比較をされますけれども、お医者さんの場合は、相当お金が掛かっているんですね。お金持ちが行くものというイメージが強い。しかし、法学部の場合は、机さえ用意すれば学生の数は幾らでも増やせるから、そういうこともあって、かなり競争率が増えた。今回、多少お金が掛かるようになりますが、基本的にはそういう要素がありますから、合格者の目安というのを我々が外に出すときには、相当議論した上で出さないといけないと私は思いますね。

 それからもう一つ、ロースクールというのは、日本の今までの大学と同じように、ほとんどずん胴型ですね。入学者イコール卒業者、イコール司法試験合格者、イコール法曹三者という形を取るのか、いや、そうではなくて、多少落第が出て、何も入学したらすぐ法曹三者が約束されたわけではないよというところも議論する必要があると思う。

 それから、髙木さんが最初におっしゃったように、ロースクールの卒業者というのは何になるんだと、法曹三者だけではなくて、公務員にも企業にもいろいろなところにそういう人材が供給されるということを社会によくアピールして、どうも7割か8割という数だけが一人歩きしますと、非常に危ないのではないかという感じがいたしますので、どちらかというと水原先生のご意見にちょっと近いかなと思いますが。

【鳥居委員】山本さんのお話の、医学部との比較で少しコメントします。今、日本には79校の医学部があるんですよ。そのうち50校は国公立です。国立大学の医学部は、授業料が1年間47万円、文学部と法学部と医学部とは全部授業料が同じなんです。たった29校だけが私立の医学部で、その中には2~3千万円も取る学校もあるし、私のところみたいに200万以下に抑えている学校もある。

 同じことで、ロースクールを作ると、国立のロースクールは、やはり1年間47万円で行けるんですよ。一方、私学が作るであろうロースクールは、採算計算をやってみると、まあ一般には200万円取らないとやっていけない。そうすると学生の方は、47万円の国立ロースクールを受験して、落ちたら、しょうがないから私学のロースクールに行くという選択になりそうなんですよ。これはまた別の頭の痛い問題なんです。

【髙木委員】二、三、意見を。一つは、ロースクールの入口のところで、共通試験型、分離試験型の議論がありますが、基本的には共通試験型を中心で、ただ、学校での何年間をどう評価するんだという面があるとしたら、サブシステムとしてそういったものの認定のルールみたいなものを、メインはあくまでも共通試験、このニュアンスは何となくLSATはやりにくいみたいなニュアンスでお書きになられているようで、LSATだけではないと思うし、ほかの要素も入っての入学の認定だと思います。

 それから、今の人数の問題ですが、医師の国家免許でもそれこそ妙にレベルを下げて採られて、人の命に関わる仕事をやられてもかないませんから、そういう意味では国民の健康との関係でやぶ医者排除は当然で、そういう意味では、ロースクールについても、絶対的なレベルで資格として担保すべきです。ただ、過渡的には、今言ったように、体制の整わないロースクールに、いきなりこういうレベルの者を毎年7割も8割も育ててこいと言うのが大変ならば、過渡的な時期への対応の仕方は別途、応用問題かもしれませんが、やはりこれも国民生活のいろいろに関わる医師という定義を、法曹についてされるという意味では、国民の側からすれば、絶対的なレベルが担保されるべきで、レベルの上げ下げで人数が調整されるというのは本筋ではないのではないでしょうか。

 ただ、失礼な言い方になったら申し訳ないのですが、質を言う人は自分は上質だと思っている人なんですよ。別に水原さんのことを言っているわけではないんですよ。そういう意味では、上質にもいろいろのレベルの違いがあるんでしょうけれども、高いに越したことはないということだろうと思います。

 それから、年限は3年ではないでしょうか。他学部の人たちも入れるということを建前に、一番大きなところで公平、公正、多様というようなことを標榜しているわけですから。ただ、現在一番若い人は24歳で法曹実務に就けるようになるんですよね。

【井上委員】理論的には、もっと若い年齢でも可能なんです。

【髙木委員】大学を卒業しないでということですか。それはそうかもしれないですね。仮に卒業するとしたら24歳。今想定している仕組みでやるとそれが26歳になるんですか。その辺は早くなる人がおることを、私は鐘や太鼓でやれやれという話ではないと思いますけれども、文部省の議論でも飛び級の議論だとか、いろいろな議論もある時代ですから。ただ、それは本当に一部のもので、そこはやはり3年で、御本人がその気だったらどなたにも、それなりのルールなり試験をクリアーされていたら挑戦できるようなものでなきゃいかんのではないかと思います。

【藤田委員】私は、時には中坊委員と意見が一致するわけでありまして、一致するときは大きな声で言えと中坊委員がおっしゃるから言いますが、隣接法律専門職種の問題、これは法曹人口、法曹養成を考えるときには、前提として考えざるを得ない問題です。将来的に職種統一していく方向になるのであれば、これはもう法科大学院に関して問題として取り上げなければならないわけですが、そういうことを決めないで検討をお願いしているので、その点について御返答をいただくというわけにはいかないと思いますけれども、その点の取扱いをどうするかということが影響するということもちょっと念頭に置いておいていただければという気がいたします。

 それから、先ほどの質と量の話で、量を重視するといっても最低限度の質は維持しなければならない、質が劣った弁護士が幾ら増えても国民の権利擁護のためには役立たない、それは特に法曹倫理の面でそうです。そういう意味で、法科大学院を相当に質の高い人が卒業して、司法試験に受かってくるということが望ましいわけですが、現在の司法修習生の質的劣化というのは、かなり研修所の教官を困惑させているわけでありまして、基本書を読まず、予備校の論点整理だけで勉強してきた、そして、論点整理に書いてあることは立板に水で答えるが、ちょっとモディファイした問題には全く答えられないという修習生がたくさんいるというふうに聞くわけであります。法科大学院を作ったとしても、現在の予備校が必死に生き残りを図るでありましょうから、法科大学院の入学試験と司法試験について活路を見出そうとすることが見えているわけであります。一方、現在の法学部生が試験科目以外の授業には出ない、試験科目についても3、4年になると出ない、そして予備校に通って、3年生までに大部分の単位を取り、4年生になると試験勉強に専念して授業に出てこない、というような状況を改善するには、大学だけの責任ではないわけであります。大学に入学してからも高校教育の補習教育をやっておられるそうでありますが、教育全体の問題であります。こういう現状の下で法学部教育を活性化するというのは大変なことだろうと思います。そういう意味で、活性化には時間が掛かると思いますので、その間の大学院教育あるいは司法試験の運用については、経過的ではありますけれども、最低限度の質的レベルは維持しなければならないということを考慮せざるを得ないのではないかと思います。

【井上委員】簡単に申し上げます。

 今の司法試験の合格率が3%ということになってきたのは、一つは、オープンな性格の試験であるがゆえに受験回数の制限というのができなかったということもあるのですね。その辺は、今度はこういう丁寧な教育をした上で選別をするということで、受験回数の制限を最初から掛けていこう。それによって、たまってくる人は一定限度に抑えられるだろうという制度設計になっている。その点をまず指摘させていただきます。

 もう一つは、髙木委員がおっしゃったように、絶対的な評価でいくべきだということ、それはそのとおりだと思うのですが、この絶対的評価ということは、言うはやさしいけれど非常に難しい問題なんですね。水原委員が指摘されたように、今合格者は約1,000人になりましたけれども、絶対的評価で言ったら本当に1,000人を満たすのかどうか。その辺は見方が分かれるところでありまして、私などは、大学で鬼と言われているようで、個人的にはかなり厳しい方だろうと思っているのですが、そういう目で見ると、本当にそれを満たすだけの人が毎年確保できているのかどうかというところは疑問がないわけではありません。そういう意味で、理論的には、絶対的評価でやれば予定している数よりも下回るということはあり得るのですが、私は、現在の受験生を見ていますと、受かっているところの下半分というとおかしいのですが、その辺の層と、受かっていない受験生の上の方の層とはそんなに違わないのではないかと思うのです。

 その辺を、丁寧に教育することによって全体としてレベルアップさせれば、かなりの数は確保できていくのではないか。そういう期待がありませんと、ロースクールというのは、大学人にとっても非常に大変なことですので、そういう希望を持って制度設計をしていくべきだと思っているわけです。

 ただ、数の問題について申し上げると、あるべき法曹人口というのがどのぐらいであろうと、それは目標値であって、そこまで持っていくために計画的にどういうステップで増やしていくのか。そういうこととの見合いで、新司法試験なら新司法試験の合格者数というものが恐らく決まってくるだろう。その場合に、余りに人為的にやってはいけないという趣旨は分かるのですけれども、ただ、制度としてやっていく以上、今の制度を前提にしますと、修習を受ける間は給料を払うわけですし、また、実務庁としても、弁護士会としても、その年その年で計画的に修習生を受け入れていかないといけない。むろん、それがボトルネックのような形になって量を制限するような結果に結び付いていくという恐れがあるというのは、中坊委員も御指摘のとおりだと思うのですが、そこのところは計画的に増やしていく場合のステップの切り方であって、それによって引っぱり上げていく。それに合わせて、ロースクールの方でも頑張って、それだけの質と数の人を出してもらうような教育をしていく。そういう制度設計をすべきだというふうに私は思っているのです。

 出発点というか議論の仕方がちょっと違うのですが、楽観的かもしれませんけれども、あるところに落ち着いてくるのではないかなと思います。ただ、そうするためには、ここで法曹人口というのを議論して、それをどういうステップでどのぐらい時間を掛けて引き上げていくかということを検討してみないと、ロースクールの当事者の方でもお困りになるだろうと思うのですね。

【中坊委員】やはり非常に重要なことは、今日の意見書の一番最後のところに、従来の研究中心の考え方から真の教育重視への転換などと書かれていますけれども、本当に大学院、ロースクールの問題の一番大きな要はやはり先生のところだろうと思う。しかも、研究中心から真の教育への転換、これは言うほどやさしいことではないと思うんですよ。ですから、その点を是非、どうしたらよいのかということは、まさに検討会議のお仕事なんで、是非お願いしたい。

【井上委員】その点も、人数のネックにならないように努力をしてもらうということでないとだめだと思うのです。

【佐藤会長】北村委員どうぞ。時間も25分になろうとしておりますが。

【北村委員】まず、何%ぐらい通らせるかということなんですけれども、私は、今のお話ですと70~80%ということで、何校できるのか、収容人数は何人かとかはわかりませんが、そうすると、多くなり過ぎるというような議論がそのうちきっと出てくるのではないかと思うんですね。まして、まだはじめのうちは、法科大学院がそれほど軌道に乗っていない部分がありますので、もう少し低くてもいいのかなというふうに考えています。

 それで、教育の方法のところで、セメスターということがちょっと出ているんですが、私は法科大学院はトリメスター制にして、夏休みを使うというような形のものが必要なのではないかと思うんです。ほかと同じように夏に休んでいるというのは、とんでもないことなのであって、やはり勉強しているんですからね。教員の方は、トリメスターのうちの2つを担当するとか、そうやって調整すればいいと思うんです。

 勉強している方は、やはり年間を通じて勉強しないと、課題をいっぱい与えるという手もあるのかもしれませんが、それでほっておいていいというものではないだろうと考えています。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。まだお聞きし、またお話しになりたい、意見を開陳したいというところが多々ございましょうけれども、最初に申しましたように、もう25分ちょっと回り始めました。

 それで、最後の方で北村委員あるいは井上委員がおっしゃったところにかなり集約されている面もあるかと思います。それから、実務修習との関係の問題は直接深く立ち入れませんでしたけれども、このペーパーでもその問題は非常に重要だという御認識であるということがよくわかりますので、検討会議では、今日の全体の議論を参考にしてまた御議論いただきたいと思います。どこまで参考になるのかどうかわかりませんが。

【髙木委員】一つだけお聞きしたいんですが、ロースクールの認可に関する云々という表現がありますね。あれは認可ですか、それとも単なる承認みたいなものなんですか。

【鳥居委員】認可です。

【髙木委員】要件に全部照らして判断するということですか。

【佐藤会長】最終的には設置基準に該当するかどうかということでしょう。

【竹下会長代理】この検討会議の御意見では、認可をする際には、第三者機関がその要件に合致しているかどうかの審査をやるという前提でございますね。認可そのものはどこか役所に関与させるということですね。

【田中氏】設置認可と関連付けて、認可後も定期的に評価するという方向で検討しております。

【井上委員】その点はまだ一本化されていないのですけれども、ロースクールの設置認可というのは、今の枠組みでいきますと、大学としての認可ですので、文部省がやるということになる。その後、一定基準を保つための評価をどこでやるかというのは、まさにこの第三者評価というところの問題だと思うのですね。

 それとは別に、仮にロースクールの修了を司法試験の受験資格とする場合に、各ロースクールがその要件に達しているかどうかをどこで判定するか。これは、今の枠組みですと、司法試験管理委員会とかそういうところでやることになるわけですけれども、その辺をどう統一するのか。2つか3つに分けるのか。そこはまだオープンですね。議論はされたのですけれども。

【佐藤会長】その辺の司法試験との関係の問題も、先ほども既に議論がありましたけれども、私どもの気持ちとしては、検討会議で引き続き御検討いただきたいということですので、依頼の形式がどうのこうのというようにお考えにならなくて結構でございます。引き続きその辺も含めて御検討いただければ、大変ありがたく思います。

 何か御感想がありましたらどうぞ。

【小島氏】今日、審議を拝聴しておりまして、やはり基本的な問題として、量と質というものをいかに両立させていくかということが、この問題の今後の展開にとって必要不可欠の中心的な課題になるかと思っておりますが、まさに現実には比較的矛盾しやすいものをいかにして現実の教育の中で一致させながら社会のニーズに応えていくかというのが課題だと思っておりまして、そのメッセージを今日改めて深く感じまして、今後の検討の際にも、そのことを更に詰めて考えさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

【佐藤会長】タイムスケジュールが非常にきつく、しかも内容的に難しい問題について、検討を御依頼して本当に申し訳ありませんが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 今日は本当にどうもありがとうございました。

(小島氏、伊藤氏、田中氏 退室)

【佐藤会長】検討会議に出席いただいている当審議会の委員の方も大変でございますけれども、引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、次に法曹人口についての意見交換をしたいと思います。お手元に本日の意見交換の参考にしていただければということで、会長代理と相談の上作成しましたレジュメと、それから事務局に指示して用意していただいた参考資料をお配りしております。 初めにレジュメと参考資料について、少し説明させていただきたいと思います。

 レジュメの大きな見出しには○印が振ってありますが、まず「法曹人口の増加の必要性」については、既に大幅に増加する必要があるということで、私どもは意見の一致を見ているところであります。その意味するところが何かという問題について、今日も既に質、量という問題をめぐって議論がございましたけれども、確認しておきたいということであります。

 「法曹の質の向上との関係」ですが、質の高い法曹を増やしていかなければ社会のニーズに応えられないだろうという意味で、ここでは、まさに先ほど御議論いただいたように、法科大学院構想を含む新たな法曹養成制度の問題も関係してくるということになります。

 それから、「法曹人口の増加につき考慮すべき要素」ですけれども、これまでに当審議会において指摘されている事項の中で、法曹人口の増加の問題に関連すると思われるものを拾って整理してみたものであります。それぞれの要素の持つ意味も踏まえながら議論することができればというように考えております。

 なお、「需要の認識・予測の問題」の括弧書きの中で、法曹にかぎ括弧を付けているのは次のような理由からであります。つまり、これまで、法曹人口のとらえ方として、例えば、弁護士に関しては弁護士登録した者のみ、これは狭義の法曹ということですけれども、それのみを対象とし、弁護士資格を有するものの弁護士登録をせず法律実務に従事していない者の存在は余り意識されてこなかったように思われます。しかし、今後は、こうした、法曹資格を有しながら直接法律実務に従事しない者も、社会のさまざまな分野で活躍することが一層求められ、法曹人口を考える上でも当然考慮に入れなければならないのではないかということで、かぎ括弧でくくっているわけであります。

 それから更に、「増加のための方策、スケジュール」も考慮しなければならない事項でありまして、ここでも当然のことながら、新たな法曹養成制度との関係などが問題になってくるということは言うまでもありません。

 以上の事柄はそれぞれ切り離して考えられるものではありませんで、相互に密接に関連し合っております。議論におきましても、各事項の順序、くくりにとらわれずに、自由に御意見をおっしゃっていただければというように考えております。

 資料についてでありますが、これまで審議に用いてきた参考資料のうち、法曹人口に関するものを抽出したものでありますけれども、参考資料の1ページ、それから73ページ、81ページに、新規に作成したものが入っております。もしよろしければ、最初に、この参考資料について、事務局の方から説明をお願いしたいと思います。それでは、よろしくお願いします。

【事務局(山口参事官補佐)】御指名ですので説明をさせていただきたいと思います。

 新たに作成した資料が3つございます。ただいま会長からお話しのありました資料1、22、26でございます。

 まず、資料1でございますが、これは中坊委員の弁護士の在り方に関するレポートのときの参考資料に同種のものがあったんですが、それにつきまして法曹人口に関連するものということで内容を絞りまして、その後、各界等からもいくつか見解が出ておりましたので、それも併せてとりまとめ、整理したものでございます。冒頭に、諸見解の概要ということで、内容を分類した1枚の紙を付けておりますので、参考にしていただければと思います。具体的な数値目標を提言するものと、単に増員ないし大幅増員を提言するもの、そもそも具体的な数値目標の設定を批判している見解に分類できるということでございます。

 次に、73ページの資料22でございます。「法曹人口の推移(シミュレーション)」という資料ですが、これはどういうものかと申しますと、計算式を注のところに書いておいたんですが、死亡率を使って法曹人口の将来予測をしたものでございます。司法試験合格者数1,000名から3,000名までについて、法曹人口の推移というものを平成62年、2050年まで予測したものでございます。法曹養成制度等改革協議会のときに同じような資料があり、今回はその手法を踏襲して作ってみました。

 ちなみに、死亡率ということでやっておりますので、法曹は生涯仕事をするという、そういう前提の下に作っております。その辺を御承知の上で、一つの目安として見ていただければというふうに思います。

 そして、資料26でございますが、これは、これまでの審議でも出ておりますように、隣接士業が法曹人口の検討に当たって関係するだろうということで、同じように人口の将来予測がどうなるのかということについて、各士業の団体にお願いをして出してもらった資料ですが、これは今回の審議に関係するところをそのままの形で載せておりますので、先ほどの法曹人口のシミュレーションと同じような形にはなっておりません。

 ちなみに、内容を若干申しますと、司法書士については、今後も増加ペースは大きく変わるものではないと予測する。ただし、今後、職務に一定の法律事務が加えられるとすれば、当然、年間1,000名程度にまではごく短期間のうちに増加するものと予測されるということが書かれております。

 弁理士でございますけれども、弁理士は、弁理士資格者数の推移につきましては、グラフが付けてございまして、平成12年4,000名台半ばのものが、平成24年には8,000名台半ばにいくだろうということです。それと合わせて、仮に弁理士が、知的財産に関する訴訟における代理業務に従事することとなった場合の資格者数の将来予測についても併せて回答をいただいております。

 税理士につきましては、現状の500名超の増加が当分の間続く。そして、税理士に出廷陳述権が付与された場合は、年間約300から400件程度の従事者があると推定される。その数は今後相当増加するものと考えられるということであります。

 行政書士についても、現在の増加ペースが続くということが書かれております。

 社会保険労務士につきましても、今後、毎年300名程度の増加が見られるものと予想されるという分析がなされておりまして、今回の審議会の中で、司法制度に関して社労士の参入が可能となれば、参入意欲は強いことから、2,500人程度が実際に研修を受け、司法制度への参入を希望するものと思われるという分析がなされています。

 資料の説明は以上です。

【佐藤会長】外国との比較なんですけれども、これは前に既に御覧いただいたりしている資料だと思いますけれども、念のためちょっと説明してくれますか。今日のレジュメの項目にも挙がっているので。

【中坊委員】資料22として新しく今日作っていただいた法曹人口の推移のシミュレーションに関する資料ですが、一番最初の平成12年のところから2万2,059名となっておりますね。そして、合格者数別として、1,000名で合格していって、平成12年で2万2,059名と数が書いてあるけれども、今、弁護士の数は約1万7,000人だと思うんだけれども、これがどうして2万2,059名になっちゃうんですか。

【藤田委員】判事、検事を加えているんじゃないんですか。

【中坊委員】いや、判事、検事入れてもそんな数にならない。

【藤田委員】判事が2,100人 、検事が1,300人だから。

【中坊委員】これは何でこんな端数まで入っているのか。

【事務局長)】注に書いてありますように、53期の修習生794人を加えたものと、また、10月に卒業する者を加えた数字で、こういう数字になるということです。

【藤田委員】そうすると、その次の年度以降はみんな10月1日現在ということになるんですか。これからは10月に修習生が出てくることになるわけだから。

【事務局長)】はい。

【中坊委員】事務局は、こういう資料を作るのであれば、弁護士会の一応意見を聞いてもらって作ってもらえばいい。

【事務局長)】聞いておりますが。

【中坊委員】私は弁護士会というわけじゃないけれども、弁護士会からも今日、文書で異議か何か出したと聞いておるんだけれども、審議会でこのような数字のシミュレーションを出すのであれば、この前も言うたように、法曹三者もここへ出てきているんだから、当然ちゃんとしたものを出していただかないと。これは、私の認識とは、全然数が違う。

【事務局長)】事務局には法曹三者も加わっておりますので、事務局内で作成いたしました。

【中坊委員】だけれども、弁護士会はだれが出ているんですか。よくわからん。少なくとも今日、弁護士会から異議みたいな文書が行ったでしょう。

【事務局長)】それはどういうものでしょうか。

【事務局(山口参事官補佐)】若干、補足説明させていただきます。

 法曹人口についてどういう資料が必要かということで、将来の予測に関するものを作るようにという指示を、会長、会長代理の方から事務局として受けまして、その上で事務局の中で相談をいたしましたが、いろいろなやり方があるだろうが、改革協のときに使われていた手法というのも一つの参考になるだろうということで、その後の数字等をリニューアルしたものを用いて作ったものです。

 どういう根拠に基づくかということは、注に書いておきました。ですから、この資料自体についてはそれぞれ御意見もあろうかと思いますけれども、一応今申し上げたような経緯で作っております。ただ、この資料についての評価は、勿論いろいろあるところだろうとは思います。

【佐藤会長】一つの手掛かり、参考のためということですね。

【吉岡委員】この計算式ですけれども、「前年の法曹人口×(1-死亡率)」というふうになっていますね。この死亡率というのは日本の総人口で見た死亡率なんですか。弁護士の死亡率ですか。やはり総人口の方ですね。

【中坊委員】たしか弁護士会にも聞いたんだけれども、死亡率という前に、私は70歳を超してもやっているけれども、かなり会費を払わなきいかんということもあって、70歳を超して余り仕事をしていない人は随分、登録抹消をしているんですね。そういう数はこの資料の中には出てないでしょう。私が非常に遺憾だと思うのは、弁護士会も当然そういうことについて意見があるんだから、そういうのを今日、FAXを送ったとか何とか聞いたので、参考までとは言っても、審議会にそういう数字を出せば、これが一人歩きしますから。しかも今日突然もらうわけでしょう。それならそれで、ちゃんとみんながなるほどと納得している表を出していただかないと。私もちょっとよくわからないんだけれども、そのために事務局が行っているんだろうからね。

【井上委員】資料自体はこの間の審議会のときにいただきましたので、突然出てきたのではないと思うのですけれども、恐らく連絡に行き違いか何かがあったと思いますので、今、お手元に弁護士会のものがおありなら、コピーしてもらえれば。

【佐藤会長】これはそういう趣旨のものとして理解していただければ。

【事務局長)】法曹人口の増加の部分は合格者数を想定すればいいんですけれども、その年度にどの程度の人数がリタイアするかということにつきましては、検事や判事の場合は辞めても弁護士になるので、法曹人口としては変わりないわけでありますし、弁護士がいつリタイアするか、例えば70歳というと失礼に当たることもありますし、75歳だと言ってもそこまでやられない方もいますし、正確なところはなかなか分からない。そこで一応死亡率をとれば、上限は出るだろうということで、このシミュレーションを考えたわけです。ですから、現実に80歳を超えてやっておられる方はめったにいないというんであれば、80歳という線でまたシミュレーションを作ることもできますが、事務局としましても、弁護士が辞める時期をいつだと決めるわけにもいきませんし、弁護士さんに聞きましても、そういうことで決めるのはなかなか難しい。そこで最大限こういう数字になるというところをシミュレーションしてみたわけでございます。もう少し年齢を下げたものを考えろというんであれば、今後、いくらでもお出しいたします。

【中坊委員】審議会としての資料として事務局がお作りになるならば、弁護士の中で登録抹消している人の数を調べたらわかるんです。だから、弁護士会にさえ問い合わせてもらえれば、毎年死亡した以外に何人登録抹消しているかということを聞いてもらえば、すぐわかるんですよ。それが頭からわからないということを前提にして、今のような80歳とか70歳とやるということについては、私は問題があるんじゃないかと言っているわけです。

【佐藤会長】それはそれとして付け加えればいいんで、今日は、これはこういう趣旨の資料だということで御理解ください。

【中坊委員】この間も法務省の宗像さんがいるときに言ったけれども、審議会に出てくる資料は、しかも、我々のほかに事務局も出ているんだし、そのため日弁連にもいつも問い合わせに対応する方がいるんだから、ちゃんと問い合わせて文書を作成していただくように、事務局としてはお願いしたいと思うんです。

【佐藤会長】これからそういうように心掛けてください。

 では、今日の資料22はそういう趣旨のものとして御理解いただければと思います。

【藤田委員】「法曹」という雑誌に、元裁判官で現在帝京大学教授をしている田尾桃二さんが、50年近く前、研修所付をしておられた時に法曹人口の予測をした話を書いておられるんです。その当時の一般の死亡率で試算したところ、後になって実際の数値と一致しなかった。どこが違っているのか調べてみたら、法曹は普通の人より長生きするらしいんです。ですから、正確な推計をやるというなら、法曹の平均寿命を使うべきではないでしょうか。明治生命が弁護士協同組合で生命保険をやっているから、そこら辺に資料があるんじゃないですか。苦労している割に長生きしているんですね。

【佐藤会長】それも参考までに。

 さっき言ったように海外との比較も、ページを開いて確認しておきましょう。

【事務局(山口参事官補佐)】各国の推移の比較につきましては、資料20に出ております。日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスというふうに推移をそれぞれ載せております。一番最後に各国の法曹人口の比較というものを載せています。1977年と1997年のものをそれぞれ掲げております。

【佐藤会長】そういうことですね。特に69ページを見ると日本の状況がよく分かります。

 先ほど簡単にレジュメの趣旨を説明いたしましたけれども、それと今の参考資料も参考にしていただきながら、自由に御議論いただければと思います。法曹人口とはどのように考えるべきか。先ほどの法科大学院に関連した議論ともつながってくるところもあるかと思いますけれども、どなたからでもどうぞ。

【吉岡委員】よく日本の法曹人口は非常に少ないと言われますね。それとの対比で出されるのがアメリカの法曹人口で、現在90何万人いて、今後1、2年の間に100万人を超えるだろうということが言われていますが、これは隣接職種との関係もあると思うんですけれども、アメリカの法曹人口というのは、日本で言っている弁護士とイコールではないんじゃないかと思うんですけれども、その辺のところがちょっと、比較するときに単純にはいかないところではないかと思います。

【井上委員】これは竹下先生の方がお詳しいと思うのですけれども、アメリカと日本とでは弁護士の業務の範囲は大分違うものですから、単純には比較できません。タックス・ローヤーというのは税理士のうちのある部分を取り込んでいますし、パテント・ローヤーというのも、弁理士と弁護士の資格を兼ねているような特殊なもので、そういうのを含めて全部ローヤーとして数えられているわけですし、また90数万人のうちのかなりの部分が、企業に務めたり役人になっている。数年前の数字のうろ覚えですけれども、たしか90万人くらいのうちの65万人が、実際に弁護士として開業している人の数であった。そのくらいの割合だったと思います。

【鳥居委員】今の質問の答えになる資料が届きましたので読み上げます。

 1991年のアメリカのバー・アソシエーションの総人員が80万5,872名、そのうち政府で活動しているバーが6万6,227名、裁判官をやっている人は2万1,536名、それから開業弁護士が58万7,289名、その中には、パートナーとアソシエートと個人がありますが、個人が半分くらいで26万2,622名、パートナーが21万3,016名、アソシエートつまり個人の弁護士事務所で働いている弁護士が11万1,651名、そのほかにロー・クラーク等の形で雇用者とされる方が9万3,849名です。これは明日お配りする資料に載せてあります。

【佐藤会長】さっき井上委員がおっしゃったパテント・アトーニーの場合、とにかく弁護士資格を持ったアトーニーなんですね。

【井上委員】はい。パテント・アトーニーというのは、より専門化し、ステップ・アップしたものです。

【佐藤会長】その意味ではとにかくローヤーなんですね。

【井上委員】はい。タックス・ローヤーの方もローヤーであることに違いはありません。

【山本委員】この資料の67ページ、フランスの法曹人口の推移というところに、法律顧問という役職が弁護士とみなされることになったため、1万人くらい増えていますね。この法律顧問というのは具体的には何なんでしょうか。

【佐藤会長】事務局でフランスを担当しているのはどなたでしたか。

【事務局(古財参事官)】広い意味で弁護士に2種類ありまして、その2つが統合された経緯がありまして、それで弁護士にカウントされる数が急激に増えたということがあったのですが。

【傍聴者(川端日弁連副会長)】私は傍聴人ですから発言しちゃいけないんですけれども。

【佐藤会長】結構ですから、発言なさって下さい。

【傍聴者(川端日弁連副会長)】要するに、フランスにはAvocatという、日本の弁護士業に対応する職種がありますが、それ以外にConseil juridiqueという法律事務を扱う職種があって、これが主として渉外事務所の層を形成し、企業法務とかを行っていたんです。

【山本委員】日本で言うと司法書士とかですか。

【傍聴者(川端日弁連副会長)】日本で言うと渉外弁護士みたいな感じのイメージの方が近いと思いますが、AvocatでもAvoueでもない法律家として、すごく大きな力を持っているんです。

【藤田委員】弁護士研修学院は出ていないんですか。

【傍聴者(川端日弁連副会長)】当時は自由職業ですから出ていないと思います。

【佐藤会長】時間もどんどん進みますけれども、この法曹人口の問題について御発言いただけばと思います。

【水原委員】先ほどのところでも議論が出ましたけれども、法曹人口が足りないという意味において、これは異論のないところだと思うんです。したがって、増加はしなければいけないけれども、先ほど来議論になったとおり、増加にはマーケットと質が伴わなけれはいけない。どれくらいのマーケットがあるものなのか、需要はどれくらいあるのかということの予測と、それから、ロースクールになるかどうかわかりませんけれども、司法試験の合格者の質がどれくらい向上していくか、その2つがもう少し検証されていかないと、法曹人口について幾らが適正であるかというのは非常に難しい問題ではないかという、当然の話を申し上げました。そういう意味では、その都度その都度の検証をしていくことが非常に大事じゃないかという気がいたします。

【吉岡委員】質の問題で、先ほど井上委員が、合格者の下の方と不合格者の上の方との差がすれすれだとおっしゃっていましたね。その不合格者のすれすれのところが相当数いらっしゃるとおっしゃっていましたね。そのすれすれのところ、例えば100点満点の90点が合格だとしたらば、それを89点とか88点にした場合には、相当数が合格するわけですね。

【井上委員】理屈の上ではそれはそうですけれども、合格点自体が、80点とか90点というほど高ければいいんですが、今の合格点がどの辺に位置するかというのはなかなか位置づけにくい。人によっても受け取り方が違いますから、あくまで私の感じで申し上げますが、私にもし絶対権力を与えてくれてやれば、かなり低いんじゃないかと思います。それは毎年の答案の採点を付けている感じで、試験問題との対応もあるものですから、一概には言えないんですけれども、私から見ますとちょっと力が足りないかなという層がかなりいる。しかし、これはきちっと教育をすればレベルアップすることは恐らく間違いないだろうと、印象で物を申し上げたのです。

【吉岡委員】相当数というところが非常におおざっぱでわかりにくいんですけれども、今、司法試験の合格者が1,000人までいっていますが、相当数あるというのは、今のままでいっても、合格点を少し下げてやるか、あるいは少し教育をすれば、1,500人とか2,000人にはすぐ行くということですか。

【井上委員】合格水準を単純に下げればどんどん増えることは確かです。詳しいデータは分かりませんけれども、恐らく真ん中の辺がふくらんでいる成績分布になっていると思うのです。おおまかなことしか言えないんですが、その中にある程度教育すれば上に乗る人もいる。今の司法試験を前提にしてもそう言えるかもしれませんが、制度論としては、層としてレベルを上げていくということで考えないとちょっと難しいのではないかと、私は思うのです。

【吉岡委員】既存の制度を前提にして、今の4年制の法学部でロースクールはないという、その前提でしても、相当数上がりそうだということですか。

【井上委員】今の分布を前提にしますと、法学部を前提にするのか、受験予備校を前提にするのかわかりませんけれども、合格点を単純にどんどん下げていけば、かなりの数が受かるというのはその通りです。

【水原委員】今の問題なんですけれども、今、吉岡委員は80点くらいが合格ラインだという御理解のようですけれども。

【吉岡委員】90点です。

【水原委員】実は60点が合格ラインだと思います。

【吉岡委員】それで3%なんですか。

【水原委員】はい。だからそれより下げたならば、量はどんどん合格者は出るんだけれども、それでいいのかというのが議論になっているわけなんです。

【吉岡委員】でも、60点が合格ラインでもって、3%しか合格しないとすると、今の法学部の教え方がよっぽど悪いということなのでしょうか。

【井上委員】法学部だけじゃなくて、今の制度の下での受験を専らの目標にして勉強しているわけです。ですから、本当に中身がどれだけわかっているのかということで見ると、かなり厳しくなるのです。

【吉岡委員】後で言おうと思ったことですが、司法試験に問題があるのかということなんです。井上先生が思っているような、この人だったら合格させてもいいなという資質、そういう人たちが拾えるような内容の司法試験であればかなり上がるということではないですか。

【井上委員】そこは私の報告でも申し上げましたし、ヒアリングでも法務省の小津人事課長が指摘されていましたが、一種のイタチごっこでして、あくまで客観的、公平な試験をしないといけないということからすると、今のような形は崩せないのです。そして、それに効率的に受かるためには、受験予備校だけが悪いとは申しませんけれども、今のような勉強の仕方になってしまう。そうすると、かなりの層は、大体同じような金太郎飴的になってしまって、その間での評価になってしまう。今のような仕組みを維持する限りは、試験問題を変えるということによって救い上げるようなことはなかなか難しいのではないか。そういう努力を現に試験の方ではやってきた。毎年のようにやってきたわけです。

 しかし、問題の出し方を変えても、1年か2年しか効果がなくて、受験に向けた効率よいプログラムをうたい文句にしているところがたくさんあり、プロですから対応してしまう。そうなるともうだめなのです。

【藤田委員】大分前ですけれども、私も司法試験の考査委員をしたことがあるんですが、及落判定会議で議論をしますと、1点、2点下げるとかなり数は増えるんですが、いつも学者の試験委員の方が下げることを主張され、実務家の司法研修所の教官などが下げるのに反対するという図式で毎年同じことをやっていたんです。学者の方は1点、2点下げたところで大したレベルの違いはないとおっしゃる。研修所の方は、無理して下げた期は後々随分手を焼いて大変だったということなんです。

 そういう意味で学者が学生を見る目と、実務家が見る目とちょっと違うかなという気もするんです。口述試験も守秘義務があるから余り言っちゃいけないのかもしれませんけれども、あるレベルの点数がほとんどの受験者について付くんですが、出来がよければプラス1、プラス2、悪ければマイナス1、マイナス2というような点を付けます。本当は全科目についてレベル点以上を取らなければいけないのですが、それでは予定している人数に達しないので、1科目や2科目、マイナスが付いているような受験生も取るということでやっていました。そういう意味では以前のことではありますけれども、質的なレベルについてはかなり問題があるんじゃないでしょうか。

【井上委員】私も現役で守秘義務があるので、具体的には申し上げられないのですけれども、その点はもっとはっきり差が出るような形でやるようにはなってきているのですけれども、それでもおっしゃるような問題は残っています。

【髙木委員】試験の出来がいいか悪いかの話はまた別途やってもらう場があるんだと思うんだけれども、人口論をやるわけでして、ともかくアクセスが良くない、弁護士さんも弁護士事務所も、あるいは一部裁判所も、警察には余り連れていかれたくないけれども、そういう意味でのアクセスが非常に悪い、使い勝手を良くしてほしいという、その根っこには、現状ではより多く、より良く、より早くというのもあるんだろうと思うんです。そういう意味で、今までいろんな議論を重ねてきましたが、裁判所にもあるいは検察庁にも弁護士さんも、人が足りない、少額訴訟などは受けてくれる人がいないと、みんな言っているわけです。

 こういうのを予測してどうのこうのというのは、いろんな職種、いろんな仕事があるわけですが、長く定着したような仕事は、一部例外的に仕事の予測可能性みたいな世界があるのかもしれませんが、大方のものというのは、世の中の動きで、結局、過剰になれば、社会がおのずと自律的に調整していくんですよ。食えなくなるわけですから。

 そういう意味で、足りないときはともかく増やす方向を一生懸命志向してみて、それに伴って、陥ってはいけない弊害はどういうことなんだというのをできるだけレベルなどで押えてという、そういう意味で、予測ができないからどうだとか、予測しながらというのは、この種の問題では余り意味がないんじゃないかなと、私はそんなふうに思います。

【山本委員】全く同じ意見です。将来何年ごろまでに幾らにするという議論は、ちょっと現実離れした議論だと思うんです。確かに、現在足りないということは事実なわけですから、とにかく増やしていくということでいいと思うんです。前提が幾つかあるんですけれども、質・量とも必ず需要は増えていくわけですけれども、弁護士さんの兼職禁止というものを徹底的に自由化するということがまず一つ挙げられるでしょう。

 現実問題として、かなりの数の隣接職種の人たちがいるわけです。中坊先生が最初におっしゃったように、将来どういう形でいくんだろうかというのはやはり議論する必要があると思います。してみると、多少は整理という方向が出てくるんじゃないかと私は思うんです。その間はその人たちのリーガル・サービスというのは現実に受けていくわけですから、いろんな不確定要素がありますので、何年ごろまでに何万人にするという議論は、余り好ましくないんじゃないか。現実に来年から幾らくらいに増やしていくかというところを我々は議論すべきじゃないかと思っています。

【髙木委員】山本さんの言われた、私はちょうど中間くらいの感じなんですが、22ページの2050年、こんなものわかるかと思います。この時代に日本はどういうことになっているか。ただ、2010年とか2015年とか、それくらいはまだ、例えば2015年とか2020年に毎年5,000人増やしていったらこうなるとか、3,000人増やしたらこうなるとかいうくらいは、数としては頭に入るけれども、結果的にそれだって社会の需要力として、トータルでそれだけのものが要るか要らんかは、結果的にそれでも足らんということになれば更に社会的に修正されるでしょうし、あそこ入ったって余りうまい飯は食えんぞということになれば違う選択するわけですから。

【山本委員】そうですね。だから、一気にこんなに出るかということも考えなきゃいけないと思うんです。

【中坊委員】私は弁護士改革に関する審議において、5万人か6万人というフランス並みのことを考えなけれはいけないのではないかということを提案したわけです。そのときの私の物の考え方というのは、確かに今、水原さんのおっしゃるように、マーケットがどうだこうだといろいろ問題があるけれども、この司法制度改革審議会というのはまさに、21世紀をにらんだ我々の法曹人口、分けても弁護士なら弁護士人口の数をどうするかというのが非常に大きな問題だと思うんです。

 そういう意味で言えば、私に言わせれば、まさに論点整理で決めましたように、法が社会の血肉と化し、そして国民みんなが統治客体意識から主体意識に変わってくる。そのためには、まずもって法曹が「社会生活上の医師」にならなければいけない。そういうふうに医師だということで考えますと、少なくとも今の1万7,000人の弁護士では、人口で割りますと、約7,000人に1人の割合でしか弁護士はいない。7,000人に1人で本当に社会の血肉化と化したり、医師となれるか。お医者さんは15万人か何かいらっしゃるんですね。

【鳥居委員】明日お話しようと思っているんですが、23万7,000人で、医師1人につき国民520人です。

【中坊委員】私らこの前やったんだけれども、警察でも550人に1人で、それを外国並みの500人に1人と言っている世の中に、弁護士が7,000人に1人だというのは、やはり絶対的な数字が大きくそれを物語っておると、私はそのように思うんです。

 仮にこれが5万人としても、今度は2,400人に1人なんです。だから、私も弁護士だから、余り急激に増えるのはいけないけれども、国民の立場に立ったときには、せめてそれくらいの人数になって、そのときにも条件付けたみたいに、先ほどからも出ているように隣接業種との関係をどうするのか、それらを全部合わせれば10何万人もいるということですから、そういうところとの関係を言うならば、私は5万人か6万人というものを我々の具体的な頭に描いて、弁護士人口の増加を考えなければならないのではないかということを言ったわけです。

 5万人、6万人にしていこうと思うと、今、私は具体的には毎年3,000人の弁護士が新しく生まれる一方で、毎年500人が死んだりやめたりするとして、2,500人が毎年新しく増えていくとする。現在の1万7,000人がその勘定でどうなっていくかというと、ロースクールというものがこれからできてきて、新司法試験になって、2003年くらいになって、3,000人の数が入ってくるとして、おおざっぱに計算して、2018年にならないと5万人の数にはならないわけです。まず極めておおざっぱにそういう数字をもって言わないと、今、司法制度改革審議会を国民が注視しているんですから、それに対してインセンティブのある数字というものを提示しなければ、私は世の中の人にも、この司法制度改革審議会の在り方が問われると思うんです。

 そういう意味では、私は法曹人口ということから言えば、まず、ロースクールができて、新司法試験に受かる人は毎年3,000名という提案をしていくべきではないか。そうしないと、何もかもすべてが、今おっしゃったようにロースクールだって、仮に卒業生の8割が新司法試験に合格するとしたら、1学年に4,000人くらいがロースクールにいるということになってくるわけでしょう。そういうものを想定しないで、相当数であるとか、急激に増加するとかいう言葉だけでは、我々司法制度改革審議会が国民に対峙したときに、本当にそれでいいのかという問題がある。

 確かに水原さんのおっしゃるように、世の中というのは一般におっしゃるように、社会の需要というものをどう考えるのかということを考えなければいけない。これは確かにおっしゃるとおりなんです。しかし、需要というものは、余りにも今の在り方が違って、だから、懸け離れてしまって、司法がこれほど病的現象になっているというので、これは非常に長くなりますけれども、私は住宅金融債権管理機構・整理回収機構というところで、年間40億円を弁護士さんに払ってきたんですよ。日本最大の依頼者として私はやったんです。そういう弁護士さんの在り方を見ておったら、弁護士さんは全部会社に来てもらっているんですよ。弁護士事務所などへは私の方は行っていないです。約400人の弁護士に、我々としては契約して動いてもらう。そうすると、弁護士の在り方から何から何までがもっと根本的に変わっていただかないと進まない。そういう意味で言えば、需要というものも、そういう意味において重要なんですよ。だから、私はこれから企業内弁護士というのは当然生まれてくるべきではないかと思います。事務所へ来てくれなどと言っておったら話にならない。住専の不良債権は、1兆円とか2兆円とか、ごつい数字ですよ。その不良債権を回収するんだと言われたら、弁護士さんの事務所へ行っていたら話にならない。会社へ来ても、支店長の隣に席が置いてあるわけですよ。あるいは、班長さんの隣に席を置いて、それでやってあれだけの債権が回収できたわけなんです。だから、弁護士の在り方というのはこれから変わらないといけない。

 そういうことで言えば、非常におおざっぱな数字で言えば国民1人に対して幾らだよということを聞いたときに、今の数字では余りにも少ない。それでは、これからどうするのかと具体的に言われたときに、その合格者の人数ですら、「相当数」ということでは、審議会としての国民に責任を果たしたことにはならないと思うんです。

 私は一つの提案ですけれども、毎年3,000人の新司法試験の合格者をこれから採用していくんだということを審議会の方針として打ち出していくことが、今、必要なのではないか。私はそのように思います。

【北村委員】私は法科大学院ができて新司法試験となったときに、今、中坊委員は3,000人とおっしゃったんですが、その3,000人でやってみて、途中で、例えば2,000人にしましょうとか、1,500人にしましょうということは非常に難しいことだと思うんです。一旦法科大学院を作ってしまったときに、それが国のお金でできているならまだしも、それぞれの団体が自己の負担の下に作っているときに、そういうような政策はとってもらいたくないなと。だから、はじめに何千人と決めたときには、多少の上下はありますけれども、ほぼそういうような形でいくというような見込みが必要なんじゃないかなと思うんです。

 今、中坊委員が3,000人とおっしゃったこともすごくよくわかりまして、これは例えば2,000人にしますと、なかなか数が増えていかないということもあると思うんです。そのために、今とにかく足りないんだから、今の問題としては、先ほど山本委員がおっしゃったように、隣接士業の中でいろいろと弁護士の仕事をカバーしている方がいらっしゃる。そういう人たちを取り込むような形で、国民が使いやすいようなものを考えていく。それを法曹人口の中に入れる入れないは別の話だと思います。そういう形でカバーしていくというようなことで、今のところは考えていくということがいいんじゃないかなと思っているんです。

 弁護士さんが何年間働くかと言えば、私は45年じゃないかと思うんです。ちょっと支障が出てきてしまうんですが、あくまでも平均で45年くらいじゃないか。特に弁護士事務所の法人化とか何とかということになりますと、必ず定年制というのが置かれることになりますし、もし定年で辞めてから個人で開業ということになると、なかなか仕事が増えていかないという部分があるんじゃないかなと思うんです。そうすると、細かい点はいろいろありますけれども、45年で考えて、例えば2,000人ですと、単純に計算して約9万人というのが概算の数かなと思っているんです。ですから、3,000人というのは増やし過ぎであるという意見が出てくるかなと思います。

【中坊委員】私はときどき北村さんと意見が合わないから言いますと、先ほどからも言っているように、仮に3,000人を合格者としても、人口比で行けば、5万人になるのに2018年、今から約20年近く先なんですよ。今言う3,000人というのは、正直言ってミニマムの数字、少ない数字なんです。だから、当面の目標が3,000人になってくるし、確かに言うように隣接業種との関係を何とかしてこれは統合していかないといけないと思うんです。だからおっしゃるように、今、職業としてできている隣接業種というものをどう見るか。これはこの前の弁護士改革の審議のときに申し上げたように、日本国はなぜ社会の血肉と化していないのか、弁護士の要らない社会政策というものをずっと取ってきて、この前も税理士さんがおっしゃったように、税理士さんは行政の監督でしょう。国税庁の下にできておる人が税務のことをするということ、確かに申告のことはできたとしても、本当にそういう姿が司法のあるべき姿だろうかということを考えてみると、やはり根本的に問題があるわけです。

 だから、私としては、先ほど言う3,000人という数というのは、少ないところで取って、かつ当面の目標としてこのくらいということ。そうすると、大学の学生は4,000人くらいになるだろうということを想定して、この間私は5万人から6万人ということを弁護士改革のときに言ったのであります。だから、今、北村さんの御心配いただくことは、3,000人という数はむしろ一番少ないところで勘定して、私らはこのときにはこの世にいないわけです。だから、あなたの言われるように弁護士さんは70歳で辞めている。だから私も4月25日のこの審議会で決まったときに、私が数というものについてかなりこだわったのは、そういうふうに審議会というものが国民に対峙しておるときに、我々が今それを言うべきかということは、確かに北村さんもおっしゃいました。私は場合によっては訂正しますがなと言うておいたけれども、今この審議会というものは国民に対してどう返事をするかということが差し迫っているんで、3,000人という数は、決して、今言うように、下げなければいけないという数字にはならない。必ず将来は増えてくる。そして、統合して、私は本来言えば、一つの職業として、司法として独立したものの中に、あらゆる業種が、アメリカと同じように弁護士さんがタックス・アトーニーにもなるようにもっていかないと、これは日本全体の司法制度がうまくいかない。

 だから、決して北村さんのおっしゃるように3,000人という数は多い数ではなしに、一番少ない数字を言って3,000人ということです。

【井上委員】北村先生が心配なさっているのは、最初の3,000という数が多いということよりは、そのままずっと増えていって、どこまで行くんだろうか、それを懸念しておられるのではないでしょうか。

 もう一つ、ロースクールとの関係なんですけれども、3,000人にしたらロースクールの総定員は4,000人とおっしゃいましたけれども、最初から一挙にそうなるわけではなくて、将来ロースクールに一本化するとしても、当分の間は経過措置として現在の司法試験も残さないといけないわけです。

 他方、質の維持という点で、余り質を言うと叱られるかもしれませんけれども、ロースクールのレベルを維持するためには、少なくとも学生と教師の割合というのはきちっと決めないといけませんし、その教師に一定の資格要件というものを課するとすると、現実問題として、最初から一気にそれだけの数を育成できるだけのロースクールが設立されるものかどうか。その辺は予測の問題ですが、私は、現実的には、もう少しステップを切って、増やすとしても、5年ごとに増やすとか、あるいは2年ごとに増やすとかいうことを考えていかないと、滑り出しのところで、わっと広げたけれども、お客さんが来ないということになるかしれません。あるいは逆に非常に乱立してしまうという恐れもあるので、その辺は慎重に制度設計をした方がいいかなという感じがします。

【鳥居委員】さっき山口さんが説明してくれた73ページの資料22は精密にできています。私、実は明日御報告しようと思っていたのですが、日本では医師1人に対して国民が大体520人なんです。弁護士1人につき国民7,230人なんです。これに対して、アメリカは医師1人につき国民336人、弁護士1人につき国民は307名です。ですから、アメリカを一つのメルクマールと見たときの目的値になるんですね。

 しかし、それはどう考えても無理で、もっと手前で考えなきゃいけないわけで、弁護士1人当たり国民7,230人を、どのくらいまで持っていくのかということを考えてみます。約5万人の弁護士を想定したらどうかという試算をしてみますと、弁護士1人につき国民2,450人です。資料22では、一番右端の列を上からずっと見てきますと、2013年のところに2,455という数字が出てくるんです。これは、3,000人の司法試験合格者を想定していった場合に、2013年で目的が達成されるということを示しており、要するに、この数字がポイントだと思います。2010年から2013年、つまり今から大体10年計画で5万人の弁護士を作るという数字と整合的なのです。この表の一番上の左端を見てみますと、この審議会の議論が平成13年に終わった後、諸々の制度改正が行われて、平成14年にロースクールの設置申請を受付けて、平成15年の4月1日から開校となりますと、最初の卒業生が出るのが平成18年になります。平成18年から3,000人ずつ増やしていくか、あるいは段階的に10年後に3,000人のレベルに持っていったとすると、弁護士1人につき国民2,450人になるわけです。この表は非常にいいところを、期せずして示していると私は思うんです。

 それから、アメリカの弁護士が本当に増えたのは1970年から1980年の10年間です。この間は年率5.2 %で増えています。それ以前の時期は大体3%、少ないときは2%くらいで増えています。1980年以降は増加率は減速しています。年率4%くらいに減速しています。何が起こったのかを別の統計で見てみますと、犯罪は激減しているんです。アメリカは1990年代に入って今まで増えっぱなしだった犯罪が減っているんです。一方で民訴はもの凄い勢いで増えているんです。その兼ね合いで、結局、アメリカの弁護士の全体のニーズは、まだ頭は打っていませんけれども、増え方は減り始めている。日本もそれを目指すべきなんだと思うんです。刑事事件が減っていく時代を実現するために我々は司法を強化しているのです。今はとにかくこのくらいは増やさないといけないというところじゃないかと思います。

 詳しいことは明日御説明します。

【水原委員】私は決して増やすことについて反対しているわけじゃございません。増やさなければいけないということは大前提として共通の認識があるということを最初に申し上げました。ただ問題は、一気に合格者数を決めてしまうのか、それとも段階的に持っていくのかというところの違いがあるわけでございまして、先ほど来法曹養成のところでもお聞きしましたとおり、そう一気に年間何千人も合格が出るかというと、その組織を作るまでの間には相当な時間があるでしょうというお話でもございました。

 国民の立場に立って、良質の、信頼できる法曹、これを育てていかなければならない。今の制度とロースクールとでは、教育の違いはどんどん広がってくるんで、合格者の質は違ってきましょうけれども、今、1,000人を取るのに大変苦労しておる時代に、一挙に3,000人というものを持ってきていいのかということを私は申し上げる。やはり質の確保がどうしても大事だということでございますので、増員についての数値は私は申し上げなかったけれども、1,000名でいいとは思っておりません。勿論、多くしなければならないということでございます。

【髙木委員】全然違う切り口なんで、今の議論に合うかどうかわかりませんが、この間、連休中にイギリスのクリフォード・チャンスに行かせていただいて、いろいろな話を聞いて、これは日本はかなわんと思いました。この間も、日本の司法サービス産業は何千億の産業ですかというとんちんかんなことをお聞きしたりしたわけですけれども、例えば今、会計事務所のビッグ5と言われるのは1社で2兆円。どんどん司法の国際化、グローバル化が進む中で、日本の企業も日本の国民も、そういう広い意味で言うグローバル化されたという状況の下で、外国弁護士問題というのがありますね。あれもしばらくしたらWTOなどで論議が進み、相互参入の問題では、日本は別だということで恐らくそう頑張れないと思うんです。これだけ法人化も進んでいない日本の弁護士業界が、そう簡単に対応できると思う方がおかしいような状態に国際的にはなっていくのではないかなと思うんです。

 そういう意味では、日本の法曹人口が小さいから外国人弁護士をどんどん入れてくださいとは、普通、国民は言いません。そうならないように何とかしようではないかというのが普通の反応だと思います。

 そういう意味で、今の3,000か2,500か2,000かの話はよくわかりませんが、そういう側面から見たら、中坊さんが言われた数字でも、とてもじゃないけれども、歯が立たないだろうと思う。当座は隣接職種などの皆さんの、いろんな意味でのお役目をクッションのように、事務所の共同化とか、最近マルチ・ディスプリナリー・プロセス・オブ・ローとか、ああいう世界などは、そういうところでしのぎを削り、世界的にその指向を広げていくと思います。そういうことも考えたら、弁護士人口と外国人弁護士との関係は、将来はかなり問題になると思います。お隣の中国が数年うちに50万人にするということで一生懸命やっておられる。水原さんのように質が大切だと頑張られる人も多いので、確かに質も大切なんですけれども、法曹人口論というのはそういう意味でもう少し複眼的に論ずる必要がある、もう少し多元化して考える必要があるのではないかと思います。もし質が、絶対に必要な我々の与件的な要素と言うのならば、質を伴なわせるためには何をどうすればいいのかというアプローチじゃないとだめなのではないかと思います。ただ、一方で現実があるということも否定はできないんだろうと思いますので、そういう中でできるぎりぎりの線はどれくらいなのか、ないしは、過渡的には、例の栄養素の樽じゃありませんけれども、こういう要素はちょっと足らないけれども、この時代にはこういう価値を大事にしなきゃいけないのではないか、そんな切り口もあるんじゃないかと思います。

【吉岡委員】大分時間がオーバーしていますが、いいですか。

【佐藤会長】あと10分のくらいの間に結論を出したいと思います。

【吉岡委員】幾ら増やすかというのと、質を維持しなければいけないというのと両方あると思うんです。先ほど井上委員に質問したのは、現状でも増やす余地があるかどうかというのが知りたかったというのが一つあったんです。多少は増やしていけるという前提で考えた場合に、ここでロースクールが決まったとしても、来年の7月に答申ということになりますね。それで国会を通って、それから準備をしてスタートということになって、そこから更に4年制を出た子が入って出ていくということになれば、どう考えても一期生が出てくるのは2006年になる。

 そういうことでシミュレーションの表を見てみると、この数字よりはちょっと遅れるかなという感じがするんです。そうかといって余り先に延ばすことはできない。そういうことを考えると、やはり2,000ではちょっと遅過ぎるかな。卒業するまでの2006年、あるいは2005年、その辺までは段階的に進めていくという、そういうことを併せて、ロースクールの卒業生が出てくるころには、少なくとも3,000人くらいの規模にしないと、国民が期待するサービスまではちょっといかないのではないかという印象を持っています。

【井上委員】私のイメージはちょっと違うのですけれども、ロースクールというものを、さっきお話ししたように現実的に考えますと、そこで3,000人掛ける1コンマ何倍かの卒業生が出るだけのロースクールが最初から立ち上がるかといいますと、それは余り現実的ではないと思うのです。何年か掛かってその数になるのであって、やはりぼつぼつと増えていく。最初ある程度の数は出ると思うのですけれども、それからある期間を経て、一定数のロースクールがそろっていくということからしますと、ちょっと厳しい数かなというふうに思います。他方、経過措置がありますので、そちらとの割り振りの問題があり、どの辺が落ちつきどころかというのはちょっと予測がつかないのですけれども、どのくらいの数字から始めるべきか。ある期間をとって、3,000人なら3,000人増やしていく。私は、数はまだわからないんですけれども、そういうふうにしていくのがいいかなと思うのです。

【吉岡委員】先ほどのロースクールの御説明の中に、法曹の比較の表が出ておりましたけれども、これは全部見ているわけじゃなくて、単純に大学案というところを数えていくと、かなりの大学が案を出していらっしゃいますね。少なくとも案を出している大学はロースクールをお作りになるつもりだと思うんです。それに独立系、そういうものが入ってくると、30校は優にできるなという感じがしたものですから。

【井上委員】それは私は何とも申し上げられませんけれども、1つのロースクールがどのくらいの規模になるのかにもよると思うのです。それと、単独でできるのか、幾つか集まってということならできると考えておられるのか、その辺を織り込んで指を折っていかないといけないものですから、頭の中にないわけではないんですけれども、その予測には自信がありません。

 非常に現実的に考えますと、初年度に手を挙げられるのはどのくらいあるのか。そこから、だんだん様子を見ながら増えていく。そういう形が最も現実的だと思うのですが、そうなると、ある程度期間が掛かるだろう。それと経過措置の点で、最初はかなり残さないといけないわけですから、それが徐々に減っていくとしても、かなりの期間を置かないと、今、受けている人にとって非常に不公平になります。いきなり変えるというのはですね。

【吉岡委員】サービスを受ける立場、利用者の立場で見た場合には、確実にこれしか無理だという線で数字を出すのではなく、サービスを受けやすい状態にするためにはどうしたらいいのか。最大限ぎりぎりできるところはどのくらいなのかという、そういう考え方でいかないと、少なくとも改革という名前の審議会の答えにしては、ちょっと寂しいなと思います。

【井上委員】引き上げるような計画にすべきだということを申し上げたのは、そういう趣旨なのです。

【中坊委員】ロースクールの話で、法学部の卒業される方が4万7,000人くらいいらっしゃって、仮に4,000人と言ったって1割、10人に1人も司法の世界には来ないということなんです。今、私たち司法が小さくなってやせ細っておると言っているんだから、それを大きくしようと思ったら、やはり10人に1人くらいはこちらへ来ていただけるような体制を組んでやらないと、私は、司法というものは本当の意味において、おっしゃるように血肉と化すためには、それだけくらいの数を来させるようにしなければ、司法制度全体が大きな目で見て持たないんじゃないかと思うんです。

 だから、私の言うているように、3,000人、すなわち1学年4,000人という数字そのものは、今の卒業生全体の中で見たときに、司法というものを国家の中においてどう位置付けどうするかということを考えたときには、私はそんなに大きな数字を言っているわけではないと思うんです。私としては、それは正直言って少なめの数字なんです。本来を言えばもっと来ていただかなければ社会が困るんじゃないかと思うんです。私はそういう意味における3,000人、すなわち学生4,000人という数は、一応我々としては当面の目標にすべきじゃないかという気がします。

【佐藤会長】大体お話しいただきましたでしょうか。時間もそろそろ限度に来ております。私個人としても言いたいことがありまして、大分腹ふくるる思いがあります。2つだけちょっと申させていただきたいんです。

 一つは、大阪の公聴会に参りましたときに、法曹関係者と懇談の機会がございました。そのときに検事正の方だったかと思いますが、従来は検事は人口10万人に1人でいいというように考えられていたが、今は検事は1,000人ちょっとですから、恐らくそんな感じなんだろうと思うんですが。これだけいろいろ犯罪が増え、複雑化もしている中で、とても今までの10万人に1人ではやっていけないとおっしゃった。それじゃどれくらいの検事が必要かというと、10倍は必要だと聞いたような気がするんですが、正確な数字であったか自信がありませんが、ともかく、とてもこれではやっていける体制ではありませんとおっしゃったのが非常にインプレッシブでした。

 もう一つ、髙木委員がさっきおっしゃったことですけれども、アメリカに行ってクリフォード・チャンスを訪ねましたとき、日本の国民に我々の質の高い法的サービスを提供したいんだということを言われた。私、そのとき思わず品のない質問の仕方だなと思ったんですけれども、「アメリカにとっては日本の法曹人口が少ない方がいいんじゃないですか」と言ってしまいました。それに対しては、予想通りまともな答えは何もなかったんですけれども、彼らの世界的規模の活動と自信に満ちた態度は誠に衝撃的でした。

 先ほど来伺っていて、大幅増員が必要だというのは私どもの共通の認識でございます。大幅というのは具体的にどういうことなのかという話なんだろうと思うんです。今日いろいろなお立場でお話になりましたけれども、例えばすぐできるかという問題もある。さっきの吉岡委員と井上委員とのやり取りもそうなんですが、何年から直ちに、例えば3,000人というわけにいかないであろう。仮にある目標値を立てても時間の掛かることです。相当数のロースクールができて卒業生が出てくるのは、本当にスムーズにいって平成17、18年でしょうか。ロースクールがどういうテンポで、どういう規模と数で誕生してくるのか。これも今の段階ではよくわかりません。けれども、さっき吉岡委員がおっしゃっていましたけれども、我々は司法制度改革審議会であって、国民に対してある種の明確なメッセージを出す必要があるのではないかという思いもするわけです。

 もし、御賛同を得られるなら、こういうまとめ方でいかがかと思うんですけれども、言わせていただいてよろしゅうございますか。

【藤田委員】下で新聞記者がしびれを切らしているようですので、次回にと思ったんですか。

【佐藤会長】できれば今日、ある種の、少なくとも大方こういう方向で、という辺りのことを申し上げたいんです。

【竹下会長代理】具体的な数をおっしゃるという意味ですか。

【佐藤会長】そうですね。

【竹下会長代理】それでしたら、もう少し議論しないと難しいのではないでしょうか。

【藤田委員】ちょっと聞いていただいた上で出していただければと思うんですが。

【佐藤会長】一人ひとりにですか。

【藤田委員】さっき手を挙げましたけれども、時間はよろしいんでしょうか。

【佐藤会長】手短におっしゃっていただければ。

【藤田委員】法の支配とかアクセスということから言えば増やさなければならんということはわかるんですが、最低限の質的なレベルを保持しなければならないということも考えなきゃいけないということであろうと思います。ロースクールというのは、あるレベルに達した人たちを法曹に迎え入れる方策として考えられているわけですけれども、現に修習生とか法学部の学生の現状、その質ということを考えますと、私が行っている大学はいい方でありますけれども、全般的に言えばかなり危機的な状況にあるように思うんで、それを改善するためには、先ほど3人の先生からいろいろお話がありましたけれども、ある程度の時間が掛かると思うんです。

 そうしますと、数を増やせば、それは質的なレベルは下がらざるを得ない。しかし、下がるのはやむを得ないんですけれども、最低限のミニマムはカバーしきなゃいかんと思うわけです。

 もう一つは、隣接法律専門職種との関係でありまして、酒田に行きまして、話を聞きましたけれども、山形で修習した山形出身の修習生が山形に帰ってこないという話を、弁護士会長や現場の酒田の人たちから伺いました。そういう点から言うと、隣接法律専門職種の司法書士に簡裁訴訟代理権というのを与えるべきではないかと思うわけでありますが、現実に弁護士人口を増やしても、弁護士の地域的遍在を解消できるか疑問ですし、その方向に向かうとしても時間が掛かると思うわけです。

 もう一つは、クリフォード・チャンスの話が出ましたが、キース会長にどなたかが、「弁護士の適正な数についてどう思うか。」という質問をしましたところ、「弁護士の適正数はマーケットが決めることであって、それを離れて議論することはナンセンスである。」と答えました。確かにそれは社会的な需要が増えてもらわなきゃ困るわけでありますけれども、果たしてそういうような状況にあるのか。一流の銀行が粉飾決算をし、山本さんの会社のような立派な会社は別でありますけれども、総会屋に利益供与をしたり、インサイダー取引ということがあったわけでありますから、そういうような意味で、果たして社会的な需要がどういうふうに伸びていくかということも考えざるを得ない。

 現にこの10月に出ます53期の修習生は必死になって昨年から就職活動をやっているわけでありまして、それだけでなく、今年の4月に採用されて、来年の10月に出る54期の修習生が、6月までに事務所を見つけなければいけないということで、必死になって駆け回っているという状況なんです。

 そういうようなことを考えると、いきなり3,000人というような数を設定するのはどうか。社会的な需要、あるいはロースクール等の状況等を見ながら増やしていくということが、最低限のレベルを保持するために必要ではないかと思います。

【竹下会長代理】もし数字を言うことであるとすると、私も質の充実ということを伴わないで数だけ増やしても、結局、法曹に対する国民の信頼を損うという危険もあるわけでございますから、やはり最終的にどのくらいにするかといった問題と、一体何年掛けてそのくらいの目標に達するかという問題と、両方考えなければならないと思うのです。

 差し当たって、例えば1,500人というのは、改革協のときにほぼ意見が一致しているわけですから、当面1,500にする。それから、一定限度を置いてまた何百かずつ増やしていく、そういうアプローチをする方がいいのではないか。具体的な数字として考えるとすれば、どなたかおっしゃいましたように、2,000というくらいの数字が当面考えられる、あるいは具体的に出せる数字ではないかと思っています。

【中坊委員】私は今おっしゃるように、質とか何とか言うけれども、まさに我々は国民から期待を受けてどうするか。確かに弁護士もころっと変わらなければいけない、変わろうと言って、弁護士会も、数に制限を設けないで直しますということを言っているんだから、今、言うように、こういうチャンスというのはそうないし、しかもこれから21世紀をにらまなければいけないんだから、社会に対して我々がどう改革するかということを示すときですから、1,000人、1,500人、2,000人と言わずに、ぽんと出すものは出さないと、社会に対するインパクトも何もないと思うんです。私は先ほど言った3,000人、すなわち5万人か6万人に早晩持っていきますということを、我々審議会として出さないと、この審議会自身が成り立っていかないと思います。

【山本委員】隣接職種の問題とか、弁護士改革の問題とか、まだ我々が議論していないことがいっぱいありますね。しかも、今は集中審議の時期でしょう。今日この時期にそれを言わなきゃいけないという必要性は余りないような気がするんです。

【佐藤会長】明日でもよいじゃないかということですね。

【山本委員】議論としては、初めての議論ですね。

【佐藤会長】私はそうドラスティックなことを言うつもりはないんですけれども。

【井上委員】もう少し議論して、明日か明後日にでも結論を出せばよろしいのでは。

【鳥居委員】私、この集中審議の中である種の目途は付けていただきたいと思います。そういう意味で、集中審議の日程表に、何日の何時から何時はどの議題、と決まってしまっているんですが、例えば明日の午後は、今、会長は何とおっしゃりたいかわかりませんが、私は自分の試算を皆さんに聞いていただきたいと思っているんです。会長の裁断で適当な時期に総まとめをするというタイミングを2度くらい入れていただいて、そこでまとめていったらと思います。

【佐藤会長】わかりました。今日はもう6時を回ってしまいましたので、明日、隣接業種についての議論もした上で、また御相談申し上げます。この種の問題は、いつまでも結論を出さないままにずるずる行くというわけにもいきません。それぞれの議論の中でけじめを付けていかないといかんということも事実なんで、その辺は是非御理解いただきたいと思います。

 それでは、今日はこの程度にしておきます。どうも御苦労様でした。