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司法制度改革審議会意見書(抜粋)



I 今般の司法制度改革の基本理念と方向

第1 21世紀の我が国社会の姿

 国民は、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしい簡素・効率的・透明な政府を実現する中で、自律的かつ社会的責任を負った主体として互いに協力しながら自由かつ公正な社会を築き、それを基盤として国際社会の発展に貢献する。

第2 21世紀の我が国社会において司法に期待される役割

1. 司法の役割
 法の支配の理念に基づき、すべての当事者を対等の地位に置き、公平な第三者が適正かつ透明な手続により公正な法的ルール・原理に基づいて判断を示す司法部門が、政治部門と並んで、「公共性の空間」を支える柱とならなければならない。

2. 法曹の役割
国民が自律的存在として、多様な社会生活関係を積極的に形成・維持し発展させていくためには、司法の運営に直接携わるプロフェッションとしての法曹がいわば「国民の社会生活上の医師」として、各人の置かれた具体的な生活状況ないしニーズに即した法的サービスを提供することが必要である。

3. 国民の役割
統治主体・権利主体である国民は、司法の運営に主体的・有意的に参加し、プロフェッションたる法曹との豊かなコミュニケーションの場を形成・維持するように努め、国民のための司法を国民自らが実現し支えなければならない。

第3 21世紀の司法制度の姿

1. 司法制度改革の三つの柱
次の三点を基本的な方針として、各般の施策を講じる。
第一に、「国民の期待に応える司法制度」とするため、司法制度をより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとする。
第二に、「司法制度を支える法曹の在り方」を改革し、質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保する。
第三に、「国民的基盤の確立」のために、国民が訴訟手続に参加する制度の導入等により司法に対する国民の信頼を高める。

2. 21世紀の司法制度の姿

(1) 国民の期待に応える司法制度の構築(制度的基盤の整備)

 国民にとって、より利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのある司法とするため、国民の司法へのアクセスを拡充するとともに、より公正で、適正かつ迅速な審理を行い、実効的な事件の解決を可能とする制度を構築する。

(2) 司法制度を支える法曹の在り方(人的基盤の拡充)
 高度の専門的な法的知識を有することはもとより、幅広い教養と豊かな人間性を基礎に十分な職業倫理を身に付け、社会の様々な分野において厚い層をなして活躍する法曹を獲得する。

(3) 国民的基盤の確立(国民の司法参加)
 国民は、一定の訴訟手続への参加を始め各種の関与を通じて司法への理解を深め、これを支える。

3. 21世紀の司法制度の実現に向けて

II 国民の期待に応える司法制度

第1 民事司法制度の改革

1. 民事裁判の充実・迅速化
 民事訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、以下の方策等を実施すべきである。
  •  原則として全事件について審理計画を定めるための協議をすることを義務付け、計画審理を一層推進すべきである。
  •  訴えの提起前の時期を含め当事者が早期に証拠を収集するための手段を拡充すべきである。

2. 専門的知見を要する事件への対応強化
 専門的知見を要する事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、民事裁判の充実・迅速化に関する方策に加え、以下の方策等を実施すべきである。
  •  各種専門領域における非法曹の専門家が、専門委員として、その分野の専門技術的見地から、裁判の全部又は一部に関与し、裁判官をサポートする新たな訴訟手続への参加制度(専門委員制度)については、裁判所の中立・公平性を確保することなどに十分配慮しつつ、それぞれの専門性の種類に応じて個別に導入の在り方を検討すべきである。
  •  鑑定制度を改善すべきである。
  •  法曹の専門性を強化すべきである。

3. 知的財産権関係事件への総合的な対応強化
  •  知的財産権関係訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、民事裁判の充実・迅速化に関する方策に加え、以下の方策等を実施すべきである。
    •  東京・大阪両地方裁判所の専門部を実質的に「特許裁判所」として機能させるため、専門性が強化された裁判官や技術専門家である裁判所調査官の集中的投入、専門委員制度の導入、特許権及び実用新案権等に関する訴訟事件について東京・大阪両地方裁判所への専属管轄化などにより、裁判所の専門的処理体制を一層強化すべきである。
    •  弁理士の特許権等の侵害訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。
    •  法曹の専門性を強化すべきである。
  •  日本知的財産仲裁センターや特許庁(判定制度)等のADRを拡充・活性化し、訴訟との連携を図るべきである。

4. 労働関係事件への総合的な対応強化
  •  労働関係訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、民事裁判の充実・迅速化に関する方策、法曹の専門性を強化するための方策等を実施すべきである。
  •  労働関係事件に関し、民事調停の特別な類型として、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働調停を導入すべきである。
  •  労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否、労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について、早急に検討を開始すべきである。

5. 家庭裁判所・簡易裁判所の機能の充実

(1) 人事訴訟等の家庭裁判所への一本化

 離婚など家庭関係事件(人事訴訟等)を家庭裁判所の管轄へ移管し、離婚訴訟等への参与員制度の導入など体制を整備すべきである。

(2) 調停委員、司法委員、参与員への多様な人材の確保等
 民事・家事調停委員、司法委員及び参与員について、その選任方法の見直しを含め、年齢、職業、知識経験等において多様な人材を確保するための方策を講じるべきである。

(3) 簡易裁判所の管轄拡大、少額訴訟手続の上限の大幅引上げ
  •  簡易裁判所の事物管轄については、経済指標の動向等を考慮し、訴額の上限を引き上げるべきである。
  •  少額訴訟手続の訴額の上限を大幅に引き上げるべきである。

6. 民事執行制度の強化-権利実現の実効性確保-
  •  民事執行制度を改善するための新たな方策、例えば、
    •  債務者の履行促進のための方策
    •  債務者の財産を把握するための方策
    •  占有屋等による不動産執行妨害への対策
    などを導入すべきである。
  •  家事審判・調停により定められた義務など少額定期給付債務の履行確保のための制度を整備すべきである。

7. 裁判所へのアクセスの拡充

(1) 利用者の費用負担の軽減

ア 提訴手数料
  •  提訴手数料については、スライド制を維持しつつ、必要な範囲でその低額化を行うべきである。
  •  簡易裁判所の少額訴訟事件の提訴手数料については、定額制の導入を含め検討を加え、必要な措置を講じるべきである。
イ 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い
 勝訴しても弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも、その負担の公平化を図って訴訟を利用しやすくする見地から、一定の要件の下に弁護士報酬の一部を訴訟に必要な費用と認めて敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきである。この制度の設計に当たっては、上記の見地と反対に不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなく、このような敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取扱いの在り方、敗訴者に負担させる場合に負担させるべき額の定め方等について検討すべきである。
ウ 訴訟費用額確定手続
 訴訟費用額確定手続を簡素化すべきである。
エ 訴訟費用保険
 訴訟費用保険の開発・普及に期待する。

(2) 民事法律扶助の拡充
 民事法律扶助制度については、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方等について、更に総合的・体系的な検討を加えた上で、一層充実すべきである。

(3) 裁判所の利便性の向上
ア 司法の利用相談窓口・情報提供
 司法の利用相談窓口(アクセス・ポイント)を裁判所、弁護士会、地方公共団体等において充実させ、ホームページ等を活用したネットワーク化の促進により、各種の裁判外紛争解決手段(ADR)、法律相談、法律扶助制度を含む司法に関する総合的な情報提供を強化すべきである。
イ 裁判所等への情報通信技術(IT)の導入
 裁判所の訴訟手続(訴訟関係書類の電子的提出・交換を含む。)、事務処理、情報提供などの各側面での情報通信技術(IT)の積極的導入を推進するため、最高裁判所は、情報通信技術を導入するための計画を策定・公表すべきである。
ウ 夜間・休日サービス
 現在、既に実施されている裁判所の夜間サービスについて、国民へ周知した上、この夜間サービスの拡大及び休日サービスの導入を積極的に検討すべきである。
エ 裁判所の配置
 裁判所の配置については、人口、交通事情、事件数等を考慮し、不断の見直しを加えていくべきである。

(4) 被害救済の実効化
ア 損害賠償額の認定
 損害賠償の額の認定については、全体的に見れば低額に過ぎるとの批があることから、必要な制度上の検討を行うとともに、過去のいわゆる相場にとらわれることなく、引き続き事案に即した認定の在り方が望まれる。
イ 少額多数被害への対応
 団体訴権の導入、導入する場合の適格団体の決め方等については、法分野ごとに、個別の実体法において、その法律の目的やその法律が保護しようとしている権利、利益等を考慮して検討されるべきである。

8. 裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化

(1) ADRの拡充・活性化の意義

  •  司法の中核たる裁判機能の充実に格別の努力を傾注すべきことに加えて、ADRが、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、その拡充、活性化を図るべきである。
  •  多様なADRについて、それぞれの特長を活かしつつ、その育成・充実を図っていくため、関係機関等の連携を強化し、共通的な制度基盤を整備すべきである。

(2) ADRに関する関係機関等の連携強化
  •  ADRの拡充・活性化に向けた裁判所や関係機関、関係省庁等の連携を促進するため、関係諸機関による連絡協議会や関係省庁等の連絡会議等の体制を整備すべきである。
  •  訴訟、ADRを含む紛争解決に関する総合的な相談窓口を充実させるとともに、インターネット上のポータル・サイトなど情報通信技術を活用した連携を図り、ワン・ストップでの情報提供を実現すべきである。
  •  ADRの担い手の確保については、人材、紛争解決等を含む情報の開示・共有を促進した上で、必要な知識・技能に関する研修等を充実させるべきである。

(3) ADRに関する共通的な制度基盤の整備
  •  国際的動向を見つつ、仲裁法制(国際商事仲裁を含む。)を早期に整備すべきである。
  •  さらに、総合的なADRの制度基盤を整備する見地から、ADRの利用促進、裁判手続との連携強化のための基本的な枠組みを規定する法律(いわゆる「ADR基本法」など)の制定をも視野に入れ、必要な方策を検討すべきである。その際、例えば、時効中断(又は停止)効の付与、執行力の付与、法律扶助の対象化等のための条件整備、ADRの全部又は一部について裁判手続を利用したり、あるいはその逆の移行を円滑にするための手続整備等を具体的に検討すべきである。
  •  隣接法律専門職種など非法曹の専門家のADRにおける活用を図るため、弁護士法第72条の見直しの一環として、職種ごとに実態を踏まえて個別的に検討し、法制上明確に位置付けるべきである。同条については、少なくとも、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め、その規制内容を何らかの形で明確化すべきである。

9. 司法の行政に対するチェック機能の強化
 行政事件訴訟法の見直しを含めた行政に対する司法審査の在り方に関して、「法の支配」の基本理念の下に、司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討を行う必要がある。政府において、本格的な検討を早急に開始すべきである。

第2 刑事司法制度の改革

1. 刑事裁判の充実・迅速化
  •  以下のような新たな準備手続を創設すべきである。
    • 第一回公判期日の前から、十分な争点整理を行い、明確な審理の計画を立てられるよう、裁判所の主宰による新たな準備手続を創設すべきである。
    •  充実した争点整理が行われるには、証拠開示の拡充が必要である。そのために、証拠開示の時期・範囲等に関するルールを法令により明確化するとともに、新たな準備手続の中で、必要に応じて、裁判所が開示の要否につき裁定することが可能となるような仕組みを整備すべきである。
  •  公判は原則として連日的に開廷するものとし、その実効性を確保するため必要な措置を講じるべきである。
  •  直接主義・口頭主義の実質化を図るため、関連諸制度の在り方を検討すべきである。
  •  充実・円滑な訴訟運営のため、裁判所の訴訟指揮の実効性を担保する具体的措置を検討すべきである。
  •  公的刑事弁護制度の整備を含め、弁護人が個々の刑事事件に専従できるような体制を確立するとともに、裁判所、検察庁の人的体制をも充実・強化すべきである。

2. 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備
  •  被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべきである。
  •  公的弁護制度の運営主体は、公正中立な機関とし、適切な仕組みにより、その運営のために公的資金を導入すべきである。
  •  弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切であるが、それ以外の運営に関する事務は、上記機関が担うものとすべきである。
  •  上記機関は、制度運営について国民に対する責任を有し、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備すべきである。殊に、訴訟手続への新たな国民参加の制度の実効的実施を支えうる態勢を整備することが緊要である。
  •  上記機関の組織構成、運営方法、同機関に対する監督等の在り方の検討に当たっては、公的資金を投入するにふさわしいものとするため、透明性・説明責任の確保等の要請を十分踏まえるべきである。
  •  公的弁護制度の下でも、個々の事件における弁護活動の自主性・独立性が損なわれてはならず、制度の整備・運営に当たってはこのことに十分配慮すべきである。
  •  弁護士会は、弁護士制度改革の視点を踏まえ、公的弁護制度の整備・運営に積極的に協力するとともに、弁護活動の質の確保について重大な責務を負うことを自覚し、主体的にその態勢を整備すべきである。
  •  障害者や少年など特に助力を必要とする者に対し格別の配慮を払うべきである。
  •  少年審判手続における公的付添人制度についても、積極的な検討が必要である。

3. 公訴提起の在り方
 検察審査会の一定の議決に対し法的拘束力を付与する制度を導入すべきである。

4. 新たな時代における捜査・公判手続の在り方

(1) 新たな時代に対応しうる捜査・公判手続の在り方

  •  刑事免責制度等新たな捜査手法の導入については、憲法の人権保障の趣旨を踏まえながら、今後の我が国の社会・経済の変化やそれに伴う犯罪情勢・動向の変化等に応じた適切な制度の在り方を多角的な見地から検討すべきである。
  •  参考人の協力確保及び参考人保護のための方策についても、同様の視点から検討すべきである。
  • 国際捜査・司法共助制度については、適正手続の保障の下、今後一層拡充・強化すべきである。

(2) 被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題
  •  被疑者・被告人の不適正な身柄拘束を防止・是正するため、今後も、刑事手続全体の中で、制度面、運用面の双方において改革、改善のための検討を続けるべきである。
  •  被疑者の取調べの適正さを確保するため、その取調べ過程・状況につき、取調べの都度、書面による記録を義務付ける制度を導入すべきである。

5. 犯罪者の改善更生、被害者等の保護
  •  刑事司法が犯罪者の改善更生に果たしてきた役割は重要であり、犯罪者の矯正処遇、更生保護に関わる制度及び人的体制の充実には十分な配慮を払うべきである。
  •  刑事手続の中で被害者等の保護・救済に十分な配慮をしていくべきであり、そのために必要な検討を行うべきである。併せて、被害者等への精神的、経済的ケアをも含めて幅広い社会的な支援体制を整備することが必要である。

第3 国際化への対応

1. 民事司法の国際化
  •  国際的な民事事件の増大に対応するため、知的財産権関係事件への総合的な対応強化を始め、民事司法制度を一層充実・迅速化すべきである。
  •  国際的動向を見ながら、仲裁法制(国際商事仲裁を含む。)を早期に整備すべきである。

2. 刑事司法の国際化
 国際的な犯罪の増加に対応するため、国際捜査・司法共助制度については、適正手続の保障の下、今後一層拡充・強化すべきである。

3. 法整備支援の推進
 発展途上国に対する法整備支援を推進すべきである。

4. 弁護士(法曹)の国際化
  •  弁護士が、国際化時代の法的需要に十分対応するため、専門性の向上、執務態勢の強化、国際交流の推進、法曹養成段階における国際化の要請への配慮等により、国際化への対応を抜本的に強化すべきである。
  •  日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うべきである。

III 司法制度を支える法曹の在り方

第1 法曹人口の拡大

1. 法曹人口の大幅な増加
  •  現行司法試験合格者数の増加に直ちに着手し、平成16(2004)年には合格者数1,500人達成を目指すべきである。
  •  法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22(2010)年ころには新司法試験の合格者数の年間3,000人達成を目指すべきである。
  •  このような法曹人口増加の経過により、おおむね平成30(2018)年ころまでには、実働法曹人口は5万人規模に達することが見込まれる。

2. 裁判所、検察庁等の人的体制の充実
  •  全体としての法曹人口の増加を図る中で、裁判官、検察官を大幅に増員すべきである。
  • 裁判所書記官等の裁判所職員、検察事務官等の検察庁職員の質、能力の向上を一層推し進めるとともに、その適正な増加を図っていくべきである。
  •  司法を支える人的基盤については、行政改革を円滑に実施する観点からも、その飛躍的な増大を図っていくことが必要不可欠であって、そのために、法的措置を含め大胆かつ積極的な措置をとるべきである。

第2 法曹養成制度の改革

1. 新たな法曹養成制度の整備
  •  司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備すべきである。その中核を成すものとして、法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院を設けるべきである。
  •  法科大学院は、平成16(2004)年4月からの学生受入れ開始を目指して整備されるべきである。

2. 法科大学院

(1) 目的、理念

(2) 法科大学院制度の要点

ア 設置形態
  • 法科大学院は、法曹養成に特化した実践的な教育を行う学校教育法上の大学院とすべきである。
  • 独立大学院や連合大学院も制度的に認めるべきである。
イ 標準修業年限
 標準修業年限は3年とし、短縮型として2年での修了を認めることとすべきである。
ウ 入学者選抜
  • 入学者選抜は、公平性、開放性、多様性の確保を旨とし、入学試験のほか、学部成績や活動実績等を総合的に考慮して合否を判定すべきである。
  • 多様性の拡大を図るため、法学部以外の学部の出身者や社会人等を一定割合以上入学させるべきである。
エ 教育内容及び教育方法
  •  法科大学院では、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分(例えば、要件事実や事実認定に関する基礎的部分)をも併せて実施することとし、実務との架橋を強く意識した教育を行うべきである。
  • 教育方法は、少人数教育を基本とし、双方向的・多方向的で密度の濃いものとすべきである。
  • 法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7~8割)の者が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。
  •  厳格な成績評価及び修了認定の実効性を担保する仕組みを具体的に講じるべきである。
オ 教員組織
  • 法科大学院では、少人数で密度の濃い教育を行うのにふさわしい数の教員を確保すべきである。
  • 実務家教員の数及び比率については、カリキュラムの内容や新司法試験実施後の司法修習との役割分担等を考慮して、適正な基準を定めるべきである。
  •  弁護士法や公務員法等に見られる兼職・兼業の制限等について所要の見直し及び整備を行うべきである。
  •  教員資格に関する基準は、教育実績や教育能力、実務家としての能力・経験を大幅に加味したものとすべきである。
カ 学位
法科大学院独自の学位(専門職学位)の新設を検討すべきである。

(3) 公平性、開放性、多様性の確保
  • 地域を考慮した全国的な適正配置に配慮すべきである。
  • 夜間大学院や通信制大学院を整備すべきである。
  • 奨学金、教育ローン、授業料免除制度等の各種の支援制度を十分に整備・活用すべきである。

(4) 設立手続及び第三者評価(適格認定)
  • 法科大学院の設置は、関係者の自発的創意を基本としつつ、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとすべきである。
  • 入学者選抜の公平性・開放性・多様性や法曹養成機関としての教育水準、成績評価・修了認定の厳格性を確保するため、適切な機構を設けて、第三者評価(適格認定)を継続的に実施すべきである。
  • 第三者評価を実施する機関の構成については、法曹関係者や大学関係者等のほかに外部有識者の参加によって客観性・公平性・透明性を確保すべきである。

(5) 法学部教育の将来像
  • 法科大学院導入後の法学部教育については、それぞれの大学が特色を発揮し、独自性を競い合う中で、全体としての活性化が期待される。
  • 学部段階における履修期間については、いわゆる飛び級を適宜活用することも望まれる。

(6) 関係者の責務

3. 司法試験
  • 司法試験を、法科大学院の教育内容を踏まえた新たなものに切り替えるべきである。
  •  新司法試験と法科大学院での教育内容との関連を確保するための具体的な仕組みを設けるべきである。
  •  適格認定を受けた法科大学院の修了者には、新司法試験の受験資格が認められることとすべきである。
  •  経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。
  •  適格認定を受けた法科大学院の修了者の新司法試験受験については3回程度の受験回数制限を課すべきである。
  •  新司法試験は、平成17(2005)年度に予想される法科大学院の初めての修了者を対象とする試験から実施すべきである。
  •  新司法試験実施後も5年間程度は、併行して現行司法試験を引き続き実施すべきである。
  •  現行司法試験の合格枠制(丙案)は、現行試験合格者数が1,500人に達すると見込まれる平成16(2004)年度から廃止すべきである。

4. 司法修習
  • 新司法試験実施後の司法修習は、修習生の増加に実効的に対応するとともに、法科大学院での教育内容をも踏まえ、実務修習を中核として位置付けつつ、修習内容を適切に工夫して実施すべきである。
  • 給費制については、その在り方を検討すべきである。
  • 司法研修所の管理・運営については、法曹三者の協働関係を一層強化するとともに、法科大学院関係者や外部の有識者の声をも適切に反映させる仕組みを設けるべきである。

5. 継続教育
継続教育を、法曹養成の総合的・体系的な構想の一環として位置付け、整備すべきである。

6. 新たな法曹養成制度の円滑な実施に向けて
  • 法科大学院の設置認可や第三者評価(適格認定)の基準の策定、新司法試験及び新司法試験実施後の司法修習の具体的な設計等について、関係機関で連携して速やかにかつ着実に検討を進めるべきである。
  • 設置認可及び第三者評価(適格認定)のための基準については、可能な限り早期にその内容を公表し、周知を図るべきである。

第3 弁護士制度の改革

1. 弁護士の社会的責任(公益性)の実践
  •  弁護士は、誠実に職務を遂行し、国民の権利利益の実現に奉仕することを通じて社会的責任(公益性)を果たすとともに、その使命にふさわしい職業倫理を保持し、不断に職務活動の質の向上に努めるべきである。
  •  弁護士の公益活動については、その内容を明確にした上で、弁護士の義務として位置付けるべきである。また、公益活動の内容について、透明性を確保し、国民に対する説明責任を果たすべきである。

2. 弁護士の活動領域の拡大
  •  弁護士法第30条第1項に規定する公務就任の制限及び同条第3項に規定する営業等の許可制については、届出制に移行することにより自由化すべきである。
  •  活動領域の拡大に伴う弁護士倫理の在り方を検討し、倫理研修の充実、綱紀・懲戒制度の適切な運用等により、弁護士倫理の遵守を確保すべきである。

3. 弁護士へのアクセス拡充

(1) 法律相談活動等の充実

 法律相談センター等の設置を進めるべきである。

(2) 弁護士報酬の透明化・合理化
 弁護士報酬の透明化・合理化の見地から、例えば、
  •  個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化
  •  報酬契約書の作成の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底
を行うべきである。

(3) 弁護士情報の公開
  •  弁護士広告の原則自由化に関し、弁護士の専門分野や実績等についても広告対象として認める方向で検討を加え、必要な措置を講じるべきである。
  •  弁護士に関する情報の開示を一層推進すべきである。

4. 弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化
  •  法律事務所の共同化・法人化、専門性の強化、協働化・総合事務所化等を推進するための方策を講じるべきである。
  •  弁護士の専門性強化等の見地から、弁護士会による研修の義務化を含め、弁護士の継続教育を充実・実効化すべきである。

5. 弁護士の国際化/外国法事務弁護士等との提携・協働
  •  弁護士が、国際化時代の法的需要に十分対応するため、専門性の向上、執務態勢の強化、国際交流の推進、法曹養成段階における国際化の要請への配慮等により、国際化への対応を抜本的に強化すべきである。
  •  日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進する見地から、例えば特定共同事業の要件緩和等を行うべきである。
  •  発展途上国に対する法整備支援を推進すべきである。

6. 弁護士会の在り方

(1) 弁護士会運営の透明化等

  •  弁護士会運営の透明化を図るべきである。例えば、
    •  会務運営について弁護士以外の者の関与を拡大するなど広く国民の声を聴取し反映させることが可能となるような仕組みの整備
    •  意思決定過程の透明性の確保、業務、財務等の情報公開の仕組みの整備

    を行うべきである。
  •  弁護士会において、弁護士改革など本意見で述べる諸改革を円滑に具体化し、その適正な運営と発展を確保するため、それに必要な態勢等の整備がなされることを期待する。

(2) 弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備
  •  弁護士会は、弁護士への社会のニーズの変化等に対応し、弁護士倫理の徹底・向上を図るため、その自律的権能を厳正に行使するとともに、弁護士倫理の在り方につき、その一層の整備等を行うべきである。
  •  綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化の見地から、少なくとも、
    •  綱紀・懲戒手続を通じて、これらを担う機関の委員構成の見直し(弁護士以外の委員の増加など)
    •  綱紀委員会の弁護士以外の委員への評決権の付与
    •  懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に、国民が参加して構成される機関に更なる不服申立ができる制度の導入
    •  弁護士の調査・審査への協力義務の明確化等による職権調査の実効化
    •  標準審理期間設定等による迅速化
    •  懲戒委員会の決定に少数意見を明示する等による透明性の向上
    •  懲戒請求者の手続参加の拡充やこれに対する情報提供の強化等の一層の配慮
    •  懲戒処分の過程・結果等に関する公表の拡充

    等を行うべきである。
  •  依頼者等の利益保護の見地から、弁護士会の苦情処理を適正化すべきである。例えば、
    •  苦情相談窓口の整備と一般への周知
    •  苦情相談担当者の育成
    •  苦情処理手続の適正・透明化
    •  綱紀・懲戒手続等との連携強化

    等を行うべきである。
     また、弁護過誤に対する救済を強化するため、弁護士賠償責任保険の普及等の方策を検討すべきである。
  •  法曹養成段階での倫理教育、継続教育段階での倫理研修を強化すべきである。

7. 隣接法律専門職種の活用等
  •  訴訟手続において、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、
    •  司法書士への簡易裁判所での訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。また、簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても、同様に付与すべきである。
    •  弁理士への特許権等の侵害訴訟(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る。)での代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。
    •  税理士について、税務訴訟において、裁判所の許可を得ることなく、補佐人として、弁護士である訴訟代理人と共に裁判所に出頭し、陳述する権限を認めるべきである。
    •  行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士など、その他の隣接法律専門職種などについては、その専門性を訴訟の場で活用する必要性や相応の実績等が明らかになった将来において、出廷陳述など一定の範囲・態様の訴訟手続への関与の在り方を個別的に検討することが、今後の課題として考えられる。
  •  ADRを含む訴訟手続外の法律事務に関して、隣接法律専門職種などの有する専門性の活用を図るべきである。具体的な関与の在り方については、弁護士法第72条の見直しの一環として、職種ごとに実態を踏まえて個別的に検討し、法制上明確に位置付けるべきである。
  •  弁護士法第72条については、少なくとも、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め、その規制内容を何らかの形で明確化すべきである。
  •  ワンストップ・サービス(総合的法律経済関係事務所)実現のため、弁護士と隣接法律専門職種などによる協働を積極的に推進するための方策を講じるべきである。

8. 企業法務等の位置付け
  •  企業法務等の位置付けについて検討し、少なくとも、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備を行うべきである。
  •  特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の有する専門性の活用等を検討し、少なくとも、特任検事へ法曹資格の付与を行うための制度整備を行うべきである。

第4 検察官制度の改革

1. 検察官に求められる資質・能力の向上等
  •  検察の厳正・公平性に対する国民の信頼を確保する観点から、次のような検察官の意識改革のための方策を実施すべきである。
    •  検事を、一定期間、一般の国民の意識・感覚を学ぶことができる場所で執務させることを含む人事・教育制度の抜本的見直し
    • 幹部を含む検察官が犯罪被害者の心情や警察等の第一次捜査機関の活動等に対する理解を深めるための具体的方策
    •  検察官が独善に陥ることを防止するとともに、検察官としての基本的な在り方を徹底するため、部内研修等の充実強化を行うこと
  •  専門的知識・経験を習得・向上させるための適切な研修制度等を導入すべきである。
  •  刑事手続への新たな国民参加制度の実効的実施を支えうるよう、立証活動等の能力の向上を図るための適切な研修制度等を導入すべきである。

2. 検察庁運営への国民参加
 検察審査会が検察事務の改善に関し検事正に対して行う建議・勧告の制度を充実・実質化することを含め、検察庁の運営について、国民の声を聴取し反映させることが可能となるような仕組みを導入すべきである。

第5 裁判官制度の改革

1. 給源の多様化、多元化
  •  多様で豊かな知識、経験等を備えた判事を確保するため、原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべきである。
  •  特例判事補制度については、計画的かつ段階的に解消すべきである。このためにも判事を増員するとともに、それに対応できるよう、弁護士等からの任官を推進すべきである。
  •  弁護士任官等を推進するため、最高裁判所と日本弁護士連合会が、一致協力し、恒常的な体制を整備して協議・連携を進めることにより、継続的に実効性のある措置を講じていくべきである。

2. 裁判官の任命手続の見直し
  •  最高裁判所が下級裁判所の裁判官として任命されるべき者を指名する過程に国民の意思を反映させるため、最高裁判所に、その諮問を受け、指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置すべきである。
  •  同機関が、十分かつ正確な資料・情報に基づき、実質的に適任者の選考に関する判断を行いうるよう、例えば、下部組織を地域ブロックごとに設置することなど、適切な仕組みを整備すべきである。

3. 裁判官の人事制度の見直し(透明性・客観性の確保)
  •  裁判官の人事評価について、評価権者及び評価基準を明確化・透明化し、評価のための判断資料を充実・明確化し、評価内容の本人開示と本人に不服がある場合の適切な手続を設けるなど、可能な限り透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すべきである。
  •  裁判官の報酬の進級制(昇給制)について、現在の報酬の段階の簡素化を含め、その在り方について検討すべきである。

4. 裁判所運営への国民参加
 家庭裁判所委員会の充実、地方裁判所での同委員会と同様の機関の新設など、裁判所運営について、広く国民の意見等を反映することが可能となるような仕組みを導入すべきである。

5. 最高裁判所裁判官の選任等の在り方について
  •  最高裁判所裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討すべきである。
  •  最高裁判所裁判官の国民審査制度について、国民による実質的な判断が可能となるよう審査対象裁判官に係る情報開示の充実に努めるなど、制度の実効化を図るための措置を検討すべきである。

第6 法曹等の相互交流の在り方

 法律専門職(裁判官、検察官、弁護士及び法律学者)間の人材の相互交流を促進することにより、真に国民の期待と信頼に応えうる司法(法曹)をつくり育てていくこととすべきである。

IV 国民的基盤の確立

第1 国民的基盤の確立(国民の司法参加)

1. 刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入
 刑事訴訟手続において、広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度を導入すべきである。

(1) 基本的構造
  •  裁判官と裁判員は、共に評議し、有罪・無罪の決定及び刑の量定を行うこととすべきである。裁判員は、評議において、裁判官と基本的に対等の権限を有し、審理の過程においては、証人等に対する質問権など適当な権限を有することとすべきである。
  •  一つの裁判体を構成する裁判官と裁判員の数及び評決の方法については、裁判員の主体的・実質的関与を確保するという要請、評議の実効性を確保するという要請等を踏まえ、この制度の対象となる事件の重大性の程度や国民にとっての意義・負担等をも考慮の上、適切な在り方を定めるべきである。
  •  ただし、少なくとも裁判官又は裁判員のみによる多数で被告人に不利な決定をすることはできないようにすべきである。

(2) 裁判員の選任方法・裁判員の義務等
  •  裁判員の選任については、選挙人名簿から無作為抽出した者を母体とし、更に公平な裁判所による公正な裁判を確保できるような適切な仕組みを設けるべきである。裁判員は、具体的事件ごとに選任され、一つの事件を判決に至るまで担当することとすべきである。
  •  裁判所から召喚を受けた裁判員候補者は、出頭義務を負うこととすべきである。

(3) 対象となる刑事事件
  •  対象事件は、法定刑の重い重大犯罪とすべきである。
  • 公訴事実に対する被告人の認否による区別は設けないこととすべきである。
  •  被告人が裁判官と裁判員で構成される裁判体による裁判を辞退することは、認めないこととすべきである。

(4) 公判手続・上訴等
  •  裁判員の主体的・実質的関与を確保するため、公判手続等について、運用上様々な工夫をするとともに、必要に応じ、関係法令の整備を行うべきである。
  •  判決書の内容は、裁判官のみによる裁判の場合と基本的に同様のものとすべきである。
  •  当事者からの事実誤認又は量刑不当を理由とする上訴(控訴)を認めるべきである。

2. その他の分野における参加制度の拡充
 国民の司法参加を拡充するため、以下の方策を実施すべきである。
  •  専門委員制度の導入、調停委員、司法委員及び参与員制度の拡充
  •  検察審査会制度の拡充、保護司制度の拡充
  •  裁判官の指名過程に国民の意思を反映させる機関の新設
  •  裁判所、検察庁及び弁護士会の運営について国民の意思をより反映させる仕組みの整備

第2 国民的基盤の確立のための条件整備

1. 分かりやすい司法の実現
 基本法制の改正の早期実現に期待するとともに、司法の運用もまた国民の視点に立った分かりやすいものとする配慮がなされることが望まれる。

2. 司法教育の充実
 学校教育等における司法に関する学習機会を充実させることが望まれる。このため、教育関係者や法曹関係者が積極的役割を果たすことが求められる。

3. 司法に関する情報公開の推進
 裁判所、検察庁、弁護士会における情報公開・提供を推進すべきである。
 判例情報をプライバシー等へ配慮しつつインターネット・ホームページ等を活用して全面的に公開し提供すべきである。

V 今般の司法制度改革の推進

第1 司法制度改革の推進体制の整備

 本意見の提言する改革は、内閣が総力を挙げて取り組むこととしなければ、容易に成し遂げられるものではないことから、内閣に強力な推進体制を整備し、一体的かつ集中的にこれに取り組まれるよう求める。

第2 今般の司法制度改革の実現に向けた内閣及び関係行政機関の取組等

  •  内閣及び関係行政機関に対して、司法制度改革に関する施策を総合的に策定するとともに、計画的に、かつ、できるだけ早期に、それらの施策を実施するよう能う限りの努力を傾注されることを強く求める。
  • 内閣及び関係行政機関による司法制度改革に関する施策の実施に当たっては、最高裁判所、日本弁護士連合会その他の関係機関による協力と貢献が得られなければ、改革を十全に実現することは困難であるため、それらの関係機関に対して、内閣及び関係行政機関による司法制度改革に関する施策の実施に最大限協力するとともに、これと並行して、自らの職務に係る制度や運営の改革・改善に積極的に取り組まれることを要望する。

第3 財政上の措置

裁判所、検察庁等の人的体制の充実を始め、今般の司法制度改革を実現するためには、財政面での十分な手当が不可欠であるため、政府に対して、司法制度改革に関する施策を実施するために必要な財政上の措置について、特段の配慮をなされるよう求める。