司法制度改革審議会
地方実情視察(酒田)・司法制度に関する意見交換会の概要
日 時: 平成12年7月18日(火) 13:50~16:00
場 所: 酒田市総合文化センター
参加委員:竹下守夫会長代理、北村敬子委員、藤田耕三委員、吉岡初子委員
意見陳述者(発言順・カッコ内は主な発言項目):
- 阿部直善 酒田市企画調整部まちづくり推進課長
- (相談業務の現状、司法関係者の住民への積極的働きかけの必要性等)
- 佐藤吉雄 社会福祉法人酒田市社会福祉協議会会長
- (成年後見に関する権利擁護事業の現状、地方での弁護士増加への期待等)
- 池田 久 酒田商工会議所専務理事
- (会議所による相談・調停業務の現状、民事再生手続への期待等)
- 安達 恒 山形県信用保証協会酒田支所長
- (民間競売導入など競売制度見直し、短期賃貸借廃止など執行妨害対策等)
- 砂川富雄 酒田調停協会会長
- (民事・家事調停の現状、調停員研修の現状、裁判外紛争処理の重要性等)
- 竹内輝博 酒田・飽海地区犯罪被害者支援連絡協議会会長
- (協議会及び警察における犯罪被害者支援活動の現状等)
- 阿部寿一 酒田市長
- (住民の法的解決に対する意識の動向、自治体と司法との連携強化等)
意見陳述の主な内容:
- 市の相談業務は、問題そのものを解決するというより、一定の方向づけを与えるものだが、現在拡充の方向にある。市民生活相談、人権相談、行政相談、法律相談などの部署毎の縦割りを廃し、窓口の一元化を検討中。
- 単なる「待ちの相談」から「街へ出る相談」への脱皮も重要。司法関係者の一層の協力が得られれば有り難い。
- 一方、何でも官頼みということでなく、地域住民自らの問題解決力を向上させる視点も重要と考えている。「官」から「公」への意識改革が重要だ。
- 裁判所、検察庁、弁護士ともに、市民には極めて敷居が高いように思える。弁護士の数が少なく、一般市民が気軽に相談を持ち込める状況にない。
- 成年後見に関して、厚生省、法務省の間での施策の連携・調整が望まれる。
- 商工会議所では、常設の経営相談窓口のほか、無料法律相談や特許・商標等の相談を定期的に実施したり、経営指導員、公認会計士、弁護士などに委嘱して調停を実施している。
- 民事再生法については、失敗者にも再挑戦の機会を与えるものであり、制度の定着に大いに期待している。
- 競売手続では、期間・経費などの面で債権者が多大な負担を強いられている。米国に倣い、裁判所が直接関与しない民間競売制度を導入したり、最低価格制度を廃止してほしい。
- 短期賃貸借制度は、執行妨害目的で専ら使われているので、早急に廃止してほしい。
- 調停制度は、裁判による解決だけでなく、合意に基づく解決を当事者とともに探ろうとするものであり、今後ますます重要性を増すと考える。
- 調停委員の資質は概して高く、研修への参加についても積極的に取り組んでいる。
- 犯罪被害者支援については、犯罪被害者支援連絡協議会は警察との連携の下、諸外国の例も参考にしつつ、活動の充実を図っている。
- 事前規制から事後チェック社会へ移行しつつあり、米国のような極端な訴訟社会は望ましくないものの、利用しやすい司法を整備することは重要。地方において弁護士不足が深刻な問題として顕在化しているとは思わないが、このことは住民が司法界に距離を感じていることの裏返しでもある。法曹関係者に、市民に近づく努力が望まれる。世におもねる必要はないが、世間離れしてもらっても困る。
- 行政の担い手は、常に納税者訴訟というチェックに晒されていることを肝に銘じるべきである。
- 司法関係者からの情報発信が不足している。司法も、行政と同様、市民に自らを売り込むとの意識で、市民の中に積極的に入っていく姿勢が重要ではないか。
- 地方においても、今後は法に基づく権利行使が重要性を増し、弁護士の数が不足するであろう。司法書士がいればよいという訳にはいかなくなると思う。
- 市の法律相談は、現在、職員人件費を除き年間百万円以下と予算規模は小さいが、無料法律相談は予約受付開始から1時間で満員となるなど、市民のニーズは大きい。
- 市民向け相談の在り方として、能力の高い一般の専門家に相談チームを形成してもらい、法曹関係者には法律問題に関してアドバイザー的に関与してもらうことが考えられないか。
- 行政庁や関係機関は常時密接に情報交換している。司法関係機関も情報のフィードバックや広報等の面で、他の官公庁との連携を積極的に図ってはどうか。どの自治体も協力は惜しまないと思うので、司法関係機関の姿勢次第ではないか。
以上