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資料I   公法系のカリキュラム・モデル案
     
1. 公法系科目の必修総単位数
     法律基本科目のうち、公法系(憲法・行政法)科目の必修総単位数は10単位である。
     
2. 公法系カリキュラムの考え方
     公法系科目の必修総単位数を各科目にどのように配分するか、どのような科目をいずれの学年に配当するかについては、各法科大学院の選択に委ねられるべきであろう。10単位を超える必修総単位数を要求することもありうるものと考えられる。
     公法系科目に限らず、必修科目の履修の仕方については、受講者の負担が過大とならないよう、工夫が必要である。本モデル案では、その工夫として、憲法と行政法を一体化した科目を置くことや、複数の科目のバスケットの中から一定単位数になるまでの単位の修得を要求する方式について検討を加えている。
     以下で述べるカリキュラム・モデル案では、1年次で公法分野の基本的な知識と考え方の修得を目指し、2年次以降で法的分析能力、議論の能力などのさらなる発展を目指す考え方がとられている。もとより、カリキュラム編成の基本的な考え方は多様でありうる。本カリキュラム・モデル案は、他の考え方の可能性を否定するものではない。
     
3. 公法系カリキュラム・モデルの一例
  1年次
       1年次の科目はいずれも、法学未修者に、公法分野での基本的な知識とものの見方・考え方を身に付けさせるものである。下記の2科目のいずれも、憲法あるいは行政法に特化せず、その一体化(ないし融合)をはかっている。
     
  前期   統治の基本構造(2単位)
       「統治の基本構造」は、公法分野に共通する最小限の基礎知識としての国家機構の概要とその諸原理について見取り図を与えることを目標とする。立憲主義の起源と内容、民主政原理、法の支配、権力分立、議院内閣制と官僚制、国家と地方との関係などを取り上げる。具体的な授業構成において、憲法および行政法の基礎にある基本原理の考察を重視するか、あるいは実定制度の基礎的な理解に重点を置くか等については、各法科大学院の工夫に委ねられるべきであろう。
     
  後期   人権と国家作用(4単位)
       日本国憲法下における基本的人権の基本的構造を理解させ、各人権規定に関する基本的な知識と考え方の修得をはかるとともに、基本的人権に関わる行政活動のあり方やその紛争処理の方法についての基礎的な知識と考え方の修得を目指す。各法科大学院における人員の構成等によっては、主として憲法上の権利に関わる授業と、主として行政活動と紛争処理の仕組みに関わる授業(各2単位)に分離して科目を置くことも考えられる。
     
  2年次
       2年次の科目はいずれも、受講者が1年次の各科目、あるいはそれに相当する科目の履修により、法律学の基礎的な知識と考え方をすでに修得していることを前提としながら、法曹実務家として必要な公法分野の専門的知識の修得とともに、法的分析能力および法的な議論を遂行する能力のさらなる育成をはかるものである。各科目に関する網羅的な知識の教授ではなく、具体的な素材に基づく双方向の授業を少人数で行うことが想定されている。
     
  憲法演習(2単位)
       法曹実務家が訴訟等を通じて人権救済等、憲法規範の実現を図るために必要な専門的知識と法的な思考能力、議論の能力のさらなる育成をはかる。司法審査制の基本構造、法律上の争訟の概念、違憲審査の対象、違憲判断の方法等を主な対象とする「憲法訴訟論」、および、違憲審査の基準とそれに対応する違憲主張の適格論などを扱う「人権保障論」とが主な主題として想定できる。
     
  行政法演習(2単位)
       法曹実務家にとって必要と思われる行政過程および行政救済に関する専門的知識と法的思考・分析能力をさらに深めることを目指す。具体的な素材に基づく双方向の授業を少人数で行うことが想定されている点は、憲法演習と同様である。
       行政活動に関する訴訟の提起の仕方に焦点をあてる授業や、本案の審理のあり方に焦点をあてる授業を想定することができる。
     
     なお、憲法演習および行政法演習については、2単位の授業科目を複数用意し、それら一群の科目のバスケットのなかから、一定の単位数(たとえば4単位あるいは6単位)に達するまでの科目の履修を要求する方式をとることも考えられる

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