| 資料II 民事系のカリキュラム・モデル案 | |||
| 1. | 民事系科目の必修総単位数 | ||
| ・ | 法律基本科目のうち、民事系(民法・商法・民事訴訟法)科目の必修総単位数は36単位とする。 | ||
| 2. | 民事系カリキュラムの考え方 | ||
| ・ | 民事系科目の必修総単位数をどのように配分するか、どのような科目をどの学年に配当するか等については、各法科大学院の教育方針にゆだねるべきである。 | ||
| ・ | 民事系科目に限らず、必修科目の履修の仕方については種々の考え方があり、とくに、法科大学院の1年次においては基礎的な法分野に関する基本的な体系的理解を主眼とし、2年次以降に応用的・先端的な問題や法分野を学ぶべきであるとする考え方と、このような、基礎と応用を区別するカリキュラムでは1年次における履修が受動的で知識偏重型となる危険が大きいとして、この区別を排して、1年次から相当程度深化した内容を理解させ、問題解決能力、事案分析能力を修得させるべきであるとする考え方が対立する。 実際のカリキュラムにおいて、両者がどの程度異なるものとなるかは、必ずしも明らかでないところもあるが、第三者評価基準や設置基準を定めるにあたっては、いずれかの立場を是とするのではなく、各法科大学院が、それぞれの考え方と教育方針にしたがい、これらの基準の枠内で、創造的・批判的な法的思考力・分析力を備えた法曹を養成するにふさわしいと考えるカリキュラムを開発することが相当と考えられる。 |
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| 3. | 民事系カリキュラム・モデルの一例 | ||
| 2.に述べた考え方の相違にしたがい、民事系カリキュラム・モデルも多様でありうるが、その一例として、以下のようなカリキュラム・モデルを考えることができる。 なお、このモデルは、1年次における基礎科目と2年次における応用科目としての基幹科目という区別を採用する考え方にしたがったものであるが、この区別を否定する考え方によれば、これとは大きく異なったカリキュラム・モデルとなりうることは、いうまでもない。 |
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| (1) | 民事系科目の単位配分 | ||
| ・ | 必修総単位数36単位のうち、民法に20単位を、商法に8単位を、民事訴訟法に8単位を配分する。 | ||
| (2) | 1年次の民事系科目 | ||
| ・ | 必修科目となる民事系科目のうち、1年次においては、基本的な体系的理解を主眼とした基礎科目を、以下のように履修する。 | ||
| 1年前期=民法8単位 | |||
| 1年後期=民法4単位、商法4単位、民事訴訟法4単位 | |||
| ・ | これらの科目における基本的な体系的理解は、各法分野全体に関わるような、あるいは各法分野を越えて相互に関連するような応用的・発展的な問題を理解するために不可欠であるのみならず、基本法以外の展開科目・先端的科目を履修する場合にも、その前提として必須のものである。 | ||
| ・ | 基礎科目においても、単に法的知識の受動的な修得が目的とされるのではなく、創造的・批判的な法的思考能力・分析能力の育成が目指されるべきであることは当然であり、少人数教育の利点を活かした教育方法を工夫することが肝要である。 | ||
| ・ | 民法の科目をどのように編成するかについては、これまで一般的であった、民法典の編別を科目編成にも反映させるべきであるとする考え方、対象となる法律関係の相違に着目して、たとえば、契約法、不法行為法(ないし法定債権関係法)、物権法、家族法といった編成をとるべきであるとする考え方など、種々の考え方がありうる。 このモデル例では、契約法を中心とした取引に関する民法の基礎を前期の民法8単位で履修し、後期の4単位で、比較的独立性の高い分野と考えられる不法行為法(および他の法定債権関係法)の基礎と家族法の基礎を、各2単位の科目として履修することが想定されている。 従来、物権法は独立した科目とされることが通例であったが、その主要部分である物権変動の問題は、契約による権利変動の問題として、また、担保物権の問題は、人的担保とあわせて、債権の履行確保の問題として位置付けられることになる。 前期に契約法の基礎を修得することによって、後期配当の商法や民事訴訟法の理解がより容易になると期待される。 |
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| ・ | 後期には、民法4単位のほか、商法について、会社法の基礎を中心に4単位を、同じく民事訴訟法については、判決手続の基礎を中心に4単位を履修する。 | ||
| (3) | 2年次の民事系科目 | ||
| ・ | 2年次においては、1年次における基礎科目の履修を前提として(法学既修者については、これにおおむね対応する法的思考能力・分析能力が備わっていることを前提として)、応用的・発展的な問題を取り扱い、創造的・批判的な法的思考力・分析能力をより高度なものとすることが主眼となる。 | ||
| 2年前期=民法演習4単位、商法演習4単位、民事訴訟法演習4単位 | |||
| 2年後期=民法演習4単位 | |||
| ・ | この場合、1年次におけるとは異なって、各法分野を越えた制度相互間の関係を理解することが必要となり、たとえば民法演習という授業科目名であっても、商法や民事訴訟法、さらにはそれ以外の法分野との関係も対象に含まれることになる。したがって、上掲の科目名は、それぞれ、主として民法、商法、民事訴訟法に関する問題が対象となるということを意味するにとどまる。さらに、必要に応じて、上記の単位数の枠内で、民事法統合演習というような科目を設けて、各法分野を統合的に扱うことも考えられる。この場合、たとえば民法演習の単位数をより少なくすることもありうる。 | ||
| ・ | なお、ここでいう「演習」とは、従来の法学部における演習とは異なり、特定の担当者による口頭報告を前提とするものではなく、双方向的・多方向的な応用的法律基本科目を指称するものである。 | ||