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国際化検討会(第5回)議事録



1 日 時
平成14年4月22日(月)10:00〜12:50

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)
柏木昇座長、加藤宣直、久保利英明、孝橋宏、下川真樹太、下條正浩、玉井克哉、乗越秀夫、波江野弘(敬称略)
(説明者)
山田秀雄(山田秀雄法律事務所・弁護士)
ローレンス・W・ベイツ(ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル・インク日本企業グループ法務本部長)
長島安治(長島・大野・常松法律事務所・弁護士)
牛島信(牛島法律事務所・弁護士)
ジョン・ハウランド−ジャクソン(アイエヌジー証券会社東京支店最高経営責任者兼支店長)(敬称略)
(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官

4 議 題
1.弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働について
 (1) 山田秀雄氏からのヒアリング
 (2) ローレンス・W・ベイツ氏からのヒアリング
 (3) 長島安治氏からのヒアリング
 (4) 牛島信氏からのヒアリング
 (5) 欧州ビジネス協会(ジョン・ハウランド−ジャクソン氏)からのヒアリング
2.論点整理について

5 議 事
○柏木座長 所定の時刻になりましたので、第5回「国際化検討会」を開会させていただきます。
 本日は、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 早速ですが、今回の議事予定につきまして、事務局から御説明をお願いします。

○齊藤参事官 それでは、私の方から御説明申し上げます。
 本日は、前回に引き続きまして、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働に関するヒアリングを行う予定でございます。
 本日お招きしておりますのは、山田秀雄法律事務所の山田秀雄先生。
 ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル・インクの日本企業グループ法務本部長のローレンス・W・ベイツさん。
 同じく日本企業グループ法務部の君嶋祥子さん。
 長島・大野・常松法律事務所の長島安治先生。
 牛島法律事務所の牛島信先生。
 欧州ビジネス協会からは、INGベアリング証券東京支店・最高責任者兼支店長のジョン・ハウランド−ジャクソンさんです。
 山田先生は国内弁護士のお立場から、ローレンス・W・ベイツさんは外資系企業のお立場から、長島先生は渉外弁護士のお立場から、牛島先生は同じく渉外弁護士のお立場から、更にジョン・ハウランド−ジャクソンさんは、欧州ビジネス協会のメンバーである企業のお立場からそれぞれ渉外法律事務所、渉外弁護士等の実情、日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の実情や課題、顧客のニーズなどについて御説明いただく予定でございます。
 ヒアリング終了後に、日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働のテーマを中心としました外弁問題の論点整理の実施要領につきまして、事務局から御相談させていただきたいと思います。
 なお、本日、中央大学法学部の小島武司先生のヒアリングを予定していたんですが、今回、牛島先生のヒアリングを先に実施させていただくということで、小島先生のヒアリングは次回に変更させていただきました。
 以上でございます。

○柏木座長 それでは、まず始めに、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 まず、資料5−1は、山田秀雄先生の説明資料でございます。
 資料5−2は、ローレンスW.ベイツさんからの説明資料でございます。
 資料5−3は、長島安治先生の説明資料でございます。
 資料5−4は、牛島信先生の説明資料でございます。
 資料5−5は、外務省提出の資料でございまして、「『2002年外国貿易障壁報告書への日本政府のコメント』について」でございます。
 前回、USTRから米国の議会あての報告書の抜粋が資料提供されましたけれども、それに対する日本政府のコメントというものでございます。
 資料は以上でございます。

○柏木座長 それでは議事に入ります。まず、弁護士の山田秀雄先生からヒアリングを行いたいと思います。よろしくお願いします。

○山田氏 おはようございます。弁護士の山田でございます。20分ぐらいの時間でということで、簡単な1枚のレジュメをお配りしておりますが、私は国内弁護士の立場から、渉外法律事務所、渉外弁護士、あるいは外国法事務弁護士の問題について語れるところを言いたいと思います。
 ポイントとしては3点。
 1点目は、国内弁護士から見た渉外弁護士というのは、かなり厳しい見方をされているという一般論についてお話をしたいと思います。
 恐らくこれは、ほとんどが誤解と、接することの少なさからくる問題であろうということを申し上げておきます。
 2つ目は、渉外法律事務所、外国法事務弁護士等々につきまして、実際に今、企業や個人のニーズに十分答えているのであろうかということについて、国内弁護士の立場から、まだ不十分な点があるのではないかと、外側から見てもそういうふうに感じていることを述べたいと思います。
 3番目に、申し上げた1、2の前提にもかかわらず私とすれば、やはり国内弁護士から見ても、渉外弁護士が更に発展し、外国法事務弁護士との共同化等につきましても、規制緩和をしていく方向でいくことが望ましいということについて述べたいと思います。
 この3点につきまして、これから述べます。
 まず、私の立場は、先ほど国内弁護士の立場からということで御紹介がありましたが、簡単に私の紹介をさせていただきますと、私は研修所36期、登録18年目の弁護士です。事務所は弁護士5名、スタッフ5名の10名でやっております。扱っている業務は、会社関係の企業法務は約五割。一般民事関係が約五割。大企業、中小企業を含めて約四十ぐらいの顧問先の業務をやっておりまして、それに加えて国内事件として、いわゆる遺産分割、離婚、不動産、そういった問題から、やや特化した分野としてセクシュアル・ハラスメント、ストーカー、民事介入暴力等の問題を専門的に取り扱っています。
 弁護士会会務の関係におきましては、東京の一つの単位会の副会長を昨年経験させていただきまして、こういった問題につきましても、いろいろ議論した経験はございます。
 また、今回、このヒアリングをするに際しまして、私の身近な親しい渉外弁護士あるいは国内弁護士等々と、この問題について議論をさせていただきました。
 そういった観点からお話をさせていただきますが、渉外法律事務所との接点は、事務所としては、渉外業務は直接扱っておりません。中に一人海外留学を経験した若い弁護士がおるものですから、例えば簡単なアメリカ人の日本国内における交通事故に遭った場合とか、離婚の問題といったようなことについて、これは渉外案件と言うべきかどうか別ですが、こういった問題を扱う程度で、ちょっとヘビーなものにつきましては、ほぼ提携をしている渉外事務所の方にお願いしているというのが現状でございます。
 形としては、顧問をしている会社やクライアントが海外に進出したり、海外との関係の事件を処理する場合に、紹介することはかなりの数であるということ。
 個人的なレベルでは、私はたまたま昨年末まで住んでおりました住まいの隣りが外国法事務弁護士の先生で、非常に親しくさせていただいた関係で、この方からいろいろな渉外弁護士に関する需要、注文、それから国内弁護士に対する紹介を受けることが多かったものですから、こういったことも何か参考になるかと思います。プロフィールはそんなところです。
 まず、渉外事務所についての国内における位置づけですが、1万9,000 人いる国内弁護士の大半は、渉外法律事務所あるいは渉外弁護士とほとんど接点を持っていないのが現状です。東京と大阪のごく一部に活動の中心を置く渉外弁護士と、地方の先生はほとんど同期の弁護士という関係を除いては余り関係がないというのが実情です。
 統計においても、一人でやっておられる先生、あるいは二人、三人でやっておられる比較的小規模、中規模の先生においては、どうしても渉外事務所、外国法事務弁護士のことについて知らない。知らないがゆえに、かなりイメージでお話をしているなという傾向を感じます。
 そういった人たちとお話をすると、どういうような把握がされているか。かなりシビアな否定的な見方をする方が多い。
 例えば、ビジネスに走る余り、しなくてもいい裁判をしているんではないかという批判をしたり、プロボノ活動に対して非常に消極的で、人権擁護に後ろ向きであるとか、タイムチャージ制というのは、実際に今一つわかりにくくて巨額の弁護士費用が発生している。
 更に言うと、若い司法修習生を早い時期に採用する青田刈りのようなことをやっているではないかと。これはみんな厳しい見方をしています。
 私は、かなりの部分は、接することがない、あるいは実際に交流することがないことによる無理解からくる部分があるんだろうと。一部正鵠を得ている部分もありまして、そういった部分についてどういうふうに考えていくかということが重要なんではないかと思います。
 レジュメの2を見ていただきますと、ビジネスロイヤーとプロボノ活動という問題がありますが、今申し上げた、私が昨年彼に付いていって、この問題についていろいろお話を聞いた中で出てきたことでよく出てきたのは、渉外法律事務所がプロボノに非常に消極的であると。
 プロボノという意味なんですが、2つありまして、1つは純粋な弁護士会活動、弁護士会会務に対して消去的だということ。
 もう一つは、渉外の3で述べるニーズにも関わるんですが、余りペイしない事件について積極的ではない。あるいは、企業を選ぶような傾向がある。つまり、一般の弁護士も敷居が高いという批判を受けていて、それが今回の司法制度改革で開かれた司法、親しみやすい司法ということで改革を求められている規制緩和の一つなんですが、渉外弁護士に対しても、やはり同じように敷居が高い。ある程度仕事のボリュームとか企業を選んでいるんではないかという批判的な見解というのは、しばしば耳にすることがありました。
 これは、ある部分渉外法律事務所の体制を維持していく上で、やむを得ない部分もあるのかもしれませんが、私は的を得ているのかなというふうに感じることもありました。これは、国内事務所においても同様なんですが、一定の規模の事務所を維持していくためには、どうしても小さい事件をやっていくことが難しい。そういう意味での事件活動ということが東京でも言われているわけですが、それが非常に特化した形で渉外法律事務所に出てきているんではないか。
 それから、余りにも東京に集中して渉外法律事務所があることによって、地方でもニーズが全くないわけではないんだけれども、大阪、名古屋の一部を除いて、東京に行かなければ、この問題についての解決がつかない。
 更に言うと、経済が非常にグローバル化していることで、アメリカだけではなくて、ヨーロッパ、最近ではアジアビジネス、特に中国などのビジネスに関して、具体的なニーズが非常に多くなっています。
 私の場合も、自分の顧問先が中国に進出をするときに、中国語がわかる、中国のビジネスがわかる弁護士を紹介してほしいということが、しばしばありました。
 そのときに、知り合いの渉外事務所等々をチェックしていくと、やはり大体アメリカが中心なんです。中国語について詳しい弁護士は、ほとんど特化した1つか、2つか、3つぐらいの事務所になってしまう。これは、分野における偏在ではないかなというふうに思いました。アメリカ偏重型というのがあります。
 更によく言われるのは、私が顧問している会社を海外進出した場合に、紹介した渉外法律事務所の企業について、今度は逆に紹介した私に対して、タイムチャージというのはどういう発想をするのか、紹介者として説明をしてほしいと言われたことが2〜3回あります。電話でのやり取りをしたことについてもチャージをするとか、なかなか日本の顧問弁護士の発想でいくと、一定の毎月の契約額で大体処理をしているんではないかと。
 それ以外にタイムチャージで、電話がチャージされることに対して、なじめないことがあるがゆえに、そのことに対して非常に厳しく批判的だった企業というのが幾つかあったことを記憶しております。タイムチャージ制に対して慣れないことに対する違和感というのがあったと思います。
 こういったさまざまな渉外法律事務所に対する知らないこと、あるいは接することの少なさからくる批判的な見解というのがあります。
 ただ、3で述べるとおり、解消されていかなければいけない問題だろうというふうに思っています。
 なぜ、需要に対する基本的な視点が必要かという3の問題になるんですが、根本的には、今の司法制度改革で言われている弁護士のありようというのが、徐々に二極化していく傾向にあると思うんです。つまり、刑事被告人であるとか、犯罪被害者であるとか、ドメスティック・バイオレンスやセクシュアル・ハラスメントで悩む、そういった人々などを守る、言わば弱者に対する保護者としての弁護士、社会生活上の医師という言い方をされていますが、そういう役割、これも非常に重要な弁護士としての位置づけです。
 同時に激烈な経済競争の最先端でしのぎを削るような企業やビジネスマンに対するよきサポーターというのも同じように必要ではないかと。やはり、同じ視点で見ていいのではないかと思います。コンプライアンスの観点からもそうだと思います。
 こうした経済上のよきサポーターというものも必要だというふうに考えた場合に、渉外弁護士というのは、最も最たる存在。最も激烈な競争をしているからこそ、ある意味ではプロボノにも手が回らず、若く働ける人材を求め、労働条件もある種過酷になってくるという傾向というのがあるんだろう。
 裏返して言うと、国内弁護士は、この30年間、ある意味では絶対的少数の有資格者であることの特権で厚く保護されてきた部分があって、逆に最も熾烈な経済競争にさらされているのは、渉外弁護士であり渉外法律事務所なのなかというふうに、その部分は私は好意的に解釈をしようというふうに考えております。
 ただ、先ほど申し上げたような、渉外法律事務所にしても、最も大きい渉外法律事務所であっても200 名程度の規模である。
 先ほど私が冒頭で申し上げた、隣りに住んでいる外国法事務弁護士の人に最もよく聞かれる質問は、どうしても海外からのニーズに応えて弁護士を紹介しなければいけない。うちの外国法事務弁護士の事務所だけではとても対応できないので、渉外弁護士を紹介してほしいんだけれども、この問題についてどこが強いかというふうに言われたときに、私もそれなりに少々の知識は持っているんですが、なかなかうまく答えられない。
 ところが、彼の方が倍も3倍も、この問題については前にAという渉外事務所に頼んだことがあるんだけれども、Aはこの部分は、だれそれは強いけれども、だれそれは弱いとか、Bという渉外事務所はこの分野については全然だめだとか、そういうのを持っているんです。私は非常に驚きました。外国法事務弁護士の人は、そういう知識を持っていて、弁護士会でタイムリーにかなり積極的に取り組んでいる私が、それよりも乏しい知識しかない。彼はわずか5年か6年の日本の滞在経験ですが、そういったニーズがかなり日本の渉外法律事務所に対してあるんだなということをひしひしと相談を受ける度に感じていました。
 この意味では、渉外事案に対する基本的視点というところに移っていくわけですが、経済上のよきサポーターとして法曹増員を受けるということは、渉外法律事務所は、まずメインにならざるを得ない。
 なぜかと言いますと、今、約千人の合格者を出していますが、合格者の大半が弁護士になって、弁護士の受け入れ先の最も主要な受け入れ先というのは、実は渉外法律事務所なんです。これは国内弁護士も受け入れるよう別途努力はしているんですが、人数の増員に必ずしも伴った形で、長期不況ということもあるんでしょう、受け入れが完全ではありません。そういう中で、かなりの数が渉外法律事務所の中で受け入れをされ、なおかつそこで活躍をしているという現実があります。
 その意味では、冒頭に申し上げたように、漠然とした、知らないがゆえの渉外事務所に対するある種の否定論的な見方というのは、私は正鵠を得ていないというふうに考えます。
 つまり、経済上のよきサポーターとして激烈な競争にしのぎを削って勝っていくための存在としての渉外弁護士、更に、渉外弁護士が提携をして業務をやっていく外国法事務弁護士についての特定共同事業の問題について、どういう緩和をするかというのは、少し先の問題ではありますが、先ほどの例でお話ししたとおり、外国法事務弁護士が渉外弁護士に対して強い要請があるんです。そういった現実を考えると、漠然と渉外弁護士はプロボノをしないから、あるいは、ビジネスオンリーだからという発想で見るのは、私は実態に合っていない議論だというふうに考えています。
 これが、1,000 名体制から3,000 名体制になっていったときに、その傾向はますます強くなる。つまり、社会生活上の医師として活躍する弁護士と、経済上のよきサポーターとして活躍する弁護士と二極化していく中で、そのバランスをきちんと取ることが必要で、最も典型的な問題が、渉外弁護士の問題。そして、特定共同事業の緩和の問題に表われているんだろうというふうに思います。
 全体を総合すると今のような流れになるんですが、注意すべき点としては、野放図にこういった緩和を認めることが妥当かというと、やはりそこは慎重論。一番大きい渉外事務所でもアメリカのベーカー・アンド・マッケンジーなどと比べれば10分の1程度の規模ですし、プライスウォーターのようなビッグ・ファイブの会計事務所から比べると、本当に豆つぶぐらいの小ささですから、一番直接的に影響を受けるのは渉外法律事務所ではないかと。渉外法律事務所が影響を受ければ、当然間接的に国内の弁護士も影響を受けている。
 司法改革として大きな流れとしては、どうしても規制緩和の方向に資することが経済の要請でもあるし、また司法自身の必要な要請だと思いますが、そのチェック・アンド・バランスをしていかないと大変なことになるので、その部分については慎重論を要するということが一つ。
 もう一つは、やはりビジネスオンリーではなく、プロボノ制というものをどこかで、例えば、刑事事件を義務化してやっていくとか、プロボノを義務化してやっていくということに対して、渉外法律事務所や外国法事務弁護士の中でどういう姿勢をしていくかということも並行して考えていく必要があるだろうと。綱紀・懲戒の問題についても同様だと思います。
 この部分がなくて、ただ経済上のよきサポーターであるということだけの一事をもってすべてを受け入れるということになると、これは受け入れられない。国内弁護士から相当な強い反発を受けるだろうと思います。
 20分ということなので、一応これで終わります。

○柏木座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問がありましたら挙手の上、お願いいたします。下篠委員。

○下篠委員 国内弁護士のお立場からの御説明をありがとうございました。
 今、山田弁護士は専ら大きな渉外事務所の問題ではないかとおっしゃいましたけれども、やはり規制緩和して、特定共同事業を見直ししていくに当たって、やはり特定共同事業の一つの目的は、資格のない者が日本法についてのアドバイスをすることがないように、日本法の法律事務を扱うことがないようにということで別々の事務所にしているわけです。
 ですから、そういう面から見て、やはり大きな事務所だけではなくて、一般の国内弁護士にも関係してくると思います。と言いますのは、我々はよく黒目と言いますけれども、日本人でアメリカのどこかの州の資格を取って、日本に戻ってきて、そして特定共同事業をすると。それが非常に緩やかになっていれば、日本弁護士と一緒にやって、海外の資格を持って外国法事務弁護士になっている日本人です。そういった方が、言わば日本法もやるような形になりかねない。
 そういったことでもって、やはり外国法事務弁護士は日本法は取り扱えないんだということをきちんと制度的な担保というものが必要ではないかと思うんです。そういう点でもって国内弁護士も非常に関連してくると思うんですけれども、その点についていかがでしょうか。

○山田氏 例えば、直接的な影響を受けるのは渉外法律事務所だと思うんです。ただ、渉外法律事務所が影響を受けるということは、間接的に国内事務所に影響があるということなんです。それぐらい国内レベルで言うと、渉外法律事務所というのは、大きな存在になってきているんだと思います。
 ただ、それが世界という規模になったときに、先ほど申し上げたようなアメリカの巨大資本の下にできている会計事務所とか、法律事務所と比べると、日本の渉外法律事務所でさえも、まだまだポジション的には力的にも飲み込まれる恐れのあるような力関係がある。
 ですから、一時的に影響を受けるのは渉外法律事務所ではないかと思います。ただ、それは、玉突きのように国内弁護士にも影響を与えると思います。

○柏木座長 ほかにございますか。下川委員。

○下川委員 本日はありがとうございます。お話があった中で、規制緩和を急速にやることについて慎重であるべきとおっしゃったところをもう少し敷衍していただきたいんですけれども、意味するところは渉外法律事務所が競争に負けてしまって、基本的に外弁に席巻されるという意味なんでしょうか。
 他方で、先ほどおっしゃっていた話の中で外弁の方から渉外事務所に対してのニーズというのも相当あるということでしたので、逆に提携が進むことによって、いろいろと仕事が入ってくるようにも思われますし、その辺をもう少し敷衍していだたければと思います。
 それから、要するにもう少し時間が経って、国内の渉外弁護士の数とか質とかが増えてくれば、基本的に時間が解決する問題だというふうにお考え、したがってゆっくりやっていくというお考えなのか、もう少し根本的な問題があるのか、その辺も含めてお伺いしたいと思います。

○山田氏 国内の法曹増員の問題というのは、私はそれほど慎重論ではなかったんですが、アメリカを始めとする渉外業務との提携等に関する問題については、わからない部分がかなりあるんです。
 レジュメにも少し書きましたけれども「アメリカ等の巨大ローファーム、会計事務所が参入することによる国内弁護士のもつ、漠然とした不安感」というのは、かなり強烈なものがあるんです。これは誰と話しても言うんです。漠然とした不安感を解消していくに足るだけの制度基盤がこちらにあるかというと、渉外法律事務所も国内弁護士事務所もまだないんではないか。それに対しては、様子を見ながらやっていくという慎重論というのがあってもしかるべきなんではないか。
 確かに大きな流れとしては、これに対して規制緩和に異をとなえるということは、私は流れにそぐわないことだと思いますので、これはそういう方向に流れていくべきだろうと思うし、そういう制度をつくっていくべきだと思います。
 その中でも、まだ日本の弁護士制度全体、あるいは弁護士の実情というのは、やや脆弱なんではないかなという感じがするんです。これは、どなたと話しても同じような意見です。
 むしろ、そういった場合には、国内弁護士で一人でやっておられる先生が、駅の前でしっかり自分の顧客をつかんでやっている町場の不動産屋さんのように、まだそういう人の方が生き残るのであって、中規模以上の法律事務所というのは、もしかすると全部どこかでコントロールされてしまうんではないかという不安感、危機感を持っている人は非常に多いです。
 そうではないという人は、私が何人かヒアリングした人の中ではいなかったと思います。

○柏木座長 乗越委員。

○乗越委員 私は、外国法事務弁護士なんですけれども、コントロールという点について皆さんにお伺いしているんです。
 今、漠然としてとおっしゃいましたけれども、私は正直言って何が不安なのかわからない。コントロールというのもよくわからない。
 と言いますのは、勿論、組織がある以上、組織を効率的に運用するために何らかのアドミニスタティブな意味でのコントロールというのは当然あってしかるべきだと思うんですが、それとアドバイスの内容についてのコントロールとは全く別問題ではないかと思っているんです。ですから、そこのところでコントロールとおっしゃった意味をもう少し敷衍していただきたい。
 それから、漠然とした不安とおっしゃっておられるんですけれども、そこのところを漠然としているというところを、もう少し、どうして弁護士の数によって不安を受けなければいけないのかというのが、今一つわからないんですが、そこのところをもう少し説明いただければと思います。

○山田氏 漠然とした不安の根底にあるものは、やはり知らないからだと思うんです。日本の5割の弁護士は、まだ一人でやっているという現実がありますし、全く経営規模から言っても、資本力から言っても天と地ぐらいの違いがあることを知らない。知らないものについて想像が及ばない。
 おっしゃっているように、コントロールという意味は、別に個々の法律業務の内容についての指図をするという意味ではないと思います。むしろ、経営実態的なもの、例えば修習生を採用していくときに、かなり圧倒的な物量を持って人が選ばれて、とらえてしまうということを言う人がいます。
 最近では、修習生ではなくても、中堅クラスの5年以上ぐらいの経験をした有能だと言われているような、渉外事務所で言うと、パートナーに昇格する寸前ぐらいの人とか、国内事務所の中でも比較的練達だといううわさのある人は、ヘッドハンティングがかなり進んでいるという話もあります。
 そういった意味で、つまり人に関して、今まで普通のレッセフェール的な日本の感覚でいった場合に、国内弁護士にも人がそれなりにちゃんと配分されるか。それが全然いい人が来なくなってしまうんではないかという不安感というのは具体論としてはあると思うんです。
 あとは、資本力によって、例えばかなり高い給与を出すことによって、いい人を優先的に取ってしまうということによる事実上のコントロールなどを懸念する人は多いです。
 漠然としたという意味は、わからないがゆえ、知らないがゆえの不安感なので、そういったものが具体論として言えることだと思います。

○柏木座長 ほかに御質問ございますか。それでは、どうもありがとうございました。

○山田氏 ありがとうございました。

○柏木座長 次に、ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル・インクのローレンス・W・ベイツさんからヒアリングを行いたいと思います。よろしくお願いします。

○ベイツ氏 おはようございます。本日この機会を頂戴して大変光栄です。日本語はあまりうまくないもので、昨日アメリカから帰ってきたばかりで、時差ぼけもあり、お聞きづらい点があるかもしれません。正確性を期すため資料を予めお配りしておりますので、詳細に関しましてはそちらをご参照ください。
 説明骨子につきましてはパワーポイントの資料に記載してございますのでそちらをご覧ください。
 初めに、私の自己紹介を若干させていただきます。1986年にハーバード・ロースクールを卒業してから、ニューヨークのある法律事務所に入りました。その後5年間ほど外国の法律事務所の北京、そして東京のオフィスに勤務し、1992年に現在勤めているゼネラル・エレクトリックに入りました。1992年から1998年までは、日本においてメディカルシステムビジネスの全アジア地区の法務を担当し、1998年からGEジャパン本社で、法務を担当しています。特にGE キャピタルの日本における活動が拡大するに伴い、GEの日本における全ビジネスの法務を担当してきました。
 GEは日本においてどのような活動をしているのか。GEの法務部の役割を少し説明したいと思います。GEの日本における活動についてご理解を頂かないと、GEがどういう形で日本の法律事務所を利用するのか、はっきり説明ができないかもしれませんので。
 説明骨子の最初のページに、GEの紹介がございます。特に指摘したい点は、GEの米国以外の収入が40%に至っており、日本はその中でも2番目の稼ぎ頭であるという点です。
 もう一点補足したい点がございます。ここには書いてありませんが、GEの法務部が『American Lawyer 』という雑誌のサーベイでアメリカで一番評価の高いプロフェッショナル集団として取り上げられている点です。
 ですから、アメリカの会社の中でもGEは高い評価を得ている企業であると言えると思います。
 次のページをご覧ください。GEは、日本を含め全世界で大きく3つの分野で営業ビジネスを行っております。製造業、金融業、そして日本ではまだあまり大きくありませんが、メディア関係、放送事業も行っており、NBCという会社もあります。GEの日本における歴史は、100年以上、明治時代に遡ります。1996年代に入ってから、特に金融業が拡大してきていますが、今後の100年間も金融関連のビジネスが主力になるのではないかと思います。
 バイヤーさんは今日はいらっしゃらないようですけれども、いわゆる証券会社ではない金融業を営む会社としては、継続して業務を営むにあたり日常的に生じる法律問題を十分分析しなければなりません。
 GEは全世界で弁護士その他ロイヤーの資格をもつ人間の半数ほどが金融業を営むGEキャピタルの各ビジネスで活躍しております。お配りした資料にありますように日本でも弁護士その他ロイヤーの資格を持つ者の人数がかなり増えてきております。
 私は、1992年にGEに入社致しましたが、日本のGEの会社で最初のロイヤーでした。ロイヤーである私が入社した経緯は、恥ずかしい話ですが、私共の本社が、日本の土地柄、社内弁護士を擁する必要はないと考えていたところに始まります。
 ところが、1992年にGE横河メディカルという会社で、贈賄の関係でひどいスキャンダルがあり、世間の注目も集め、会社の考え方が変わらざるを得ない状況となったのです。
 次のページを簡単にご説明します。通常日本で本社というと一番規模が大きく人材も充実しているイメージですが、GEの本社は、弁護士やロイヤーの数はあまり多くはありません。GEの場合、本社の第一義的な機能は、いわゆるベスト・プラクティス、最高のプラクティスの共有をサポートするという点に置かれていますので、本社以外の各ビジネスにそれぞれ独立の法務部を設置し、他方本社には専門分野の知識を持つ弁護士やロイヤーを最低人数置いて、彼らが全ビジネスをサポートするという形を取っています。ですから、人数的には、本社ではなく現実にビジネスを行う各ビジネスの法務部に日本の弁護士や外国の資格を持つロイヤーがより多くいるという分布になっています。
 次のページをご覧ください。アメリカの会社の中でも特殊な点と言えるかもしれませんが、GEでは、すべてのロイヤーはビジネスの中に入ります。つまり、日本の会社によく見られるような形で法務部がピラミッドの一部を構成しているのではなく、ロイヤーの直属の上司は、ビジネスのCEOになります。他方、同時に、資料の点線で書いてある部分ですが、各ロイヤーは法務の指揮系統にも属し、上位のゼネラル・カウンセルを上司に持ちます。このような二本立ての指揮系統を取る理由ですが、やはりビジネスの中にいないと、具体的に各ビジネスで発生する法律問題の理解が不充分になる可能性が高いと思われているからです。他方、上位のレベルの弁護士やロイヤーとの間に指揮監督関係がないと、複雑な問題が発生したときや、ビジネスのCEOとの意見の相違が生じたときにビジネスの意向に引きずられて法務部本来の機能を果たせなくなるからです。
 次のページをご覧ください。下の方に書いてありますが、社内ロイヤーには、コンプライアンスとリーガルという二つの大事な役割があります。リーガルの立場からは、ビジネス・チームの一員として、ビジネスの戦略を法的観点から検討します。具体的には、どのようなスキームで行うのか、また、どうすればもっとビジネスがスムーズにできるのかといった観点から戦略を練るのに貢献します。同時にコンプライアンスの立場からもビジネスに影響力を持ちます。もし夜に時差ぼけ以外の理由で眠れないときがあったら、今日出てきた法令遵守の問題で頭を痛めているというくらい、社内ロイヤーの重要な役割だと思います。簡単に申し上げますと、次のページで外部の弁護士に対する期待についてご説明していますが、社内ロイヤーに対してもそれと同じような期待があります。
 日本の企業は、多分法律事務所を使うのは問題が発生してからとか、ビジネスの最終的な意思決定をする段階ということが多いと思いますけれども、うちのような会社ですと、弁護士やロイヤーが社内におりますから、より早期の段階、戦略を練る段階でリーガルの面からもコンプライアンスの面からも外部の法律事務所を使います。ですから、ビジネスの人間がたまに私に対して弁護士費用が高いと苦情を言ってくるような場面がありますが、それはこういう理由です。今後社内の弁護士の人数が増えてくる2〜3年後には弁護士費用も標準的な水準になってくれるのではと期待しておりますが、現在はまだかなりの規模で外部の法律事務所に依頼する必要があります。
 次のページでは外部の弁護士の必要性についてご説明しています。私共の会社は日本にある法律事務所を使います。去年は30余の事務所を利用しました。
 最近2〜3年間、特に90年代に入って外部の弁護士を必要とする機会が増えてきた分野としては、大きく4つの分野が挙げられると思います。
 1つは、先ほど申し上げたように、買収した会社や新しく合弁を設立した会社には、私共の会社にあるような法務部はなかったところがほとんどで、買収後あるいは合弁後、GEの弁護士やロイヤーが新しい会社の経営に関与するようになると、すぐいろいろな法律問題が顕在化してきて、その対応に当たってもらうことがあります。それが多分一番よくある場面です。
 2番目は、その前の段階、買収を準備するとか、合弁企業の交渉をするとか、その中で、いわゆるグローバルなデュー・デリジェンスを行う段階です。ケースによっては、会社の法務部の人間以外で、10人から50人ほどの大規模な社内の調査チームを作りますので、彼らが毎日デュー・デリジェンスを行っていく期間、次々と法律問題が出てきて、外部の弁護士に相談する必要が出てきます。
 3つ目は、コンプライアンスの問題です。日本は90年代に入り以前より厳しく法律を執行するようになってきています。外資の投資家の立場からはこれはとてもいい傾向だと思いますけれども、難しいのは、法律が新しいために前例がない分野で、判例も通達も出ていないようなときにあいまいな制定法の行間を読んで法的リスクを分析しなくてはならない点です。これも外部の弁護士の力を借りたいところで、あらゆる法分野で問題になります。反マネー・ロンダリング、賄賂、独禁法、労働法、その他さまざまなコンプライアンスの問題についてアドバイスが必要となります。
 4番目は、あまりいいニュアンスでは使われない言葉ですけれども、ロビイング活動です。英語ではむしろadvocacyという言葉をよく使いますが。新しい法令が次々に制定される中で、そのような動きに関する情報を早期にどのように把握するのか、ビジネスにどのような影響を与えるのか、昨今は新しいパブリック・コメントの手続なども導入されていますが、それらの制度を通じて私共の意見を法案にどう反映してもらうのか、それを考えるのは社内の弁護士やロイヤーの役割のひとつです。アメリカやイギリスのロイヤーはすでに行っている活動だと思いますが、これが法案であると簡単に説明するということではなくて、その法案をどう修正したら私共のビジネスに影響がなくなるのか、どう修正すべきなのか、という点について助言する、これは弁護士やロイヤーの一つの大きな役割だと思っています。
 次に、私個人の意見ですが、日本で法律事務所を利用するときに直面する問題点についてご説明します。大きく3つのに分けられると思います。
 1つは、人数に関する問題。もう1つは、コミュニケーション。3つ目は、いわゆる国内法以外の視点の必要性、という点です。今の日本では何でも国内を基準に考えますが、国外の法律の分析も必要であると思います。
 まず、数の話を簡単にご説明します。先ほどの買収を一つの例に挙げますと、日本で今までに行った買収案件の中には、70人以上の弁護士とロイヤーを使ったものもあります。一つのプロジェクトに70人も関与させますと、マネージするのはとても難しいです。この件では6つの法律事務所を使いました。また、利益相反の問題も影響します。そのような大規模な買収や、大きなプロジェクトを扱える渉外事務所は日本にはまだ少ないので、よくこういう問題が出てきます。ですから、どの法律事務所が一番適当であるかというよりも、今誰が時間があるのか、利益相反がないのかという点から法律事務所を選定しなければならないことが多いです。
 3番目と4番目の点、悪いことは言いたくありませんが、スピードと質については問題があると思います。一般的には日本の弁護士のレベルは、多分世界で一番高い水準だと思います。しかし、人数不足のために、はっきり申し上げますと、プロフェッショナリズムに影響があることもあります。対応が遅いことが多々あります。
 例えば、細かい分析が必要な問題になりますと、外部の法律事務所に依頼するのですが、アメリカの私の同僚たちは、どうして明日までにこういうアドバイスが取れないのかといつも質問してきます。これに対しては、今の日本の法律事務所の市場を考えますと無理だと説明しますが、10日間もかかるとか、それを何とか早めてもらうために事務所と交渉しなければならなくなります。勿論その間、ビジネスの方では意思決定ができなくなる。社内にも大きな影響が出てきます。
 この問題は弁護士の良し悪しとは全く関係なく、純粋に数の問題です。
 これに対して、2番目はコミュニケーションの問題です。ただ、この点については私はここではそれほど強調したくはありません。なぜなら、私は日本語がうまくありませんし、弁護士の皆さんの英語は、私の日本語よりずっとレベルが上ですから。ただ、日常的に弁護士の皆さんが取り扱われるのは複雑な法律問題ですから、英語だけで行おうとするのは効率の点からしますとよろしくないと思います。もし、母国語を使うことができれば、複雑な法分析のメモランダムひとつ書くにしても随分効率が上がると思います。いろいろな形でコミュニケーションギャップがありえますが、私共のようなグローバルな会社で大きなプロジェクトがありますと、ほとんど毎日夜遅くとか、朝早くですが、20人ぐらいが集まって、日本の弁護士、外国のロイヤーも参加して会議を行います。会議や電話会議終了後、英語圏の事務所の弁護士であればもうすぐさま作業にかかるということになるのですが、日本の弁護士の場合、コミュニケーションスキルの不足のため必ずしもそういうわけにはいきません。時には不十分なコミュニケーションの結果追加の作業が必要となり、あるいはそれを防ぐためにこちらで何らかの作業をする必要が出てくる。この問題をどうすべきかというのもよく直面する問題です。
 最後は、翻訳の問題。特に法律問題に関わる文章の日本語と英語の翻訳は難しいので、なるべく弁護士の方にやっていただきたい。しかし、弁護士の皆さんは、こういう作業は嫌いですし、ただでもお忙しい身に更なる重圧をかけることになる。が、現実問題としてやっていただかなくては困る。このような問題がありますから、なぜ法律事務所は所内に大きな専門の翻訳部を作らないのか、いつも疑問に思っています。
 3つ目は、多分一番大事な問題だと思います。最近の買収案件のストラクチャーや、コンプライアンスの問題でも、ロビイングの問題でも、新しい法律や、ストラクチャーについては日本でやったことがないとか、日本の裁判所で判例がないとか、前例がないことが多いです。このような今まで全然扱われてこなかった問題をどう解決するのかという点です。
 先例がない以上、やはりアメリカ、イギリス、あるいはアジアでも構いません。日本以外の国でそのような問題がどのように扱われてきたかを参考にしないと、日本の弁護士が日本の国内の新しい法律を説明することができなくなるということもあると思います。
 次のページでご指摘しておりますが、特定共同事務所の一番の役割は、今申し上げた問題を解決することにあると思われます。最近の例を挙げますと、ノーアクションレターの新しいプロセス。これはとてもいいプロセスだと思いますが、法案等の分析・解釈のためにその新しい法に類似の法律がある日本以外の国における法律の解釈を類推しながら、日本法上どう解釈することができるのか、というより創造的な助言をしてもらいました。 この経験から、日本のとても優秀な弁護士と、外国法の知識と経験のあるロイヤーが協働することにより効率が高まるということを学びました。これ以外にもいくつか例がありますが、詳細はお配りした資料をご覧ください。もう時間がないかもしれませんので。
 ただ、特定共同事務所は、まだ数自体比較的少ないですし、弁護士の人数もロイヤーの人数も少ないので、さきほど申し上げた問題の解決も、今の段階ではなかなか難しいようです。
 最後のページをご覧ください。一番理想的な事務所はどういう事務所なのか申し上げますと、やはり公平な立場から日本人の弁護士と外国の資格を持っているロイヤーとが一緒になって毎日協力をして、このような問題に直面して、人数が段々増えてくることが、私の一番の希望です。
 私は日本の司法制度の専門家ではありませんし、特定共同事務所に勤めたこともありませんが、どうしてうまくいかないのかというのは今まで一つの疑問でした。原因は、やはり公平な立場での協働が実現できていない点にあるように理解しています。互いの信頼がなければやはり協力して働くことは無理な話でしょう。
 どうして両者間の信頼が大事かと申しますと、最近のエンロンとアンダーセンの問題を考えれば自ずと明らかです。一人があのような事態になれば、パートナーシップのストラクチャーにより他のパートナーも個人的に破産してしまう可能性がありますから、平等な立場というのは同じような利益の享受と同じような法律上の責任の負担に裏付けられるのではないかと思っております。

○柏木座長 ありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、何か御説明がございますでしょうか。下篠委員。

○下篠委員 今、一番最後にベイツさんが言われた平等な立場とおっしゃるのは、日本の弁護士と外国法事務弁護士が平等の立場に立って、一種のパートナーシップをつくるということだろうと思うんです。
 その場合、私どもが懸念しているのは、いかにして平等をつくり出すかということなんですけれども、そういう意味で、非常に苦労しているわけですけれども、平等を達成するためには、どういう手段と言いますか、方法と言いますか、どういうことをしたらいいとお考えになりますか。

○ベイツ氏 それは、難しい問題ですね。法律上の、あるいはストラクチャー上の制限があるかもしれませんし、カルチャーの問題も避けては通れない気がしております。私の個人的な意見ですが、これらの両方の問題を解決しないと達成することができないかもしれません。
 また、そのような事務所に勤めたことがないので、実情がわかっていないと思います。ただ、真の意味でのパートナーシップを創設する必要があるのではないかなとは思っております。例えば、パートナーシップの契約書の中で、外国のロイヤーの責任と同じ責任を日本の弁護士にも負担させ、逆に取引先のシェアや、利益分配についても外国のロイヤーと日本の弁護士の間で公平な形で行うよう定めることにより、両者の間に真の協働関係が生まれるのではないでしょうか。そのようなパートナーシップ契約の形が取れるようになったとしてもおそらく大規模な共同事務所はすぐには生まれないかもしれません。協力して作業する経験がなければ、法律が整備されてもそのようなパートナーシップに踏み出すにあたりいろいろ不安があるでしょうから。ただ、パートナーシップを選択するか否かは当事者の選択として、まずは法制としてそのような契約関係が作れるよう選択肢を広げないと、日本の弁護士と外国のロイヤーが平等な立場で協働するということは難しいと思います。

○柏木座長 ほかに御質問ございませんか。

○玉井委員 今のお話は、日本の弁護士と外国の弁護士が、平等な立場でパートナーシップを組んでリーガルサービスを提供するのがビジネスの上で必要だというお話だったと思うんですが、もう一つの形態として、例えば外国の大きな法律事務所が日本にブランチを設けて、そこで日本人の弁護士を雇用するという形態も考えられるわけですけれども、そちらは必要ないというお考えですか。あるいはそれも必要だというお考えですか。

○ベイツ氏 それは、必要がないとは言えません。
 最近会社で内部調査を行っておりますが、事実の解明に当たり訴訟関連に強いアメリカの事務所のブランチを使っています。
 必要な専門分野を持つ弁護士やロイヤーを特定共同事務所に直ちに揃えるのは難しいと思いますから、外国の事務所もまだまだ必要だと思っております。したがって、そこで日本の弁護士が外国のロイヤーと一緒に作業するというのも依頼者の目からはニーズがあると思います。

○柏木座長 ほかに御質問ございますか。

○下條委員 ベイツさんとしては、日本法に関するアドバイスというのは、日本の弁護士からお聞きになりたいんですか、それとも外国法事務弁護士からお聞きになりたいんですか、どちらなんですか。

○ベイツ氏 日本法に関しては当然日本の弁護士です。だからこそ、今のシステムで問題だという議論になっているのだと思います。
 たとえば日本で新たに法律が制定された場合に、その規制がGEの活動に適用されるか否かを決するに当たりある用語の定義が問題になるとします。その問題を解決するためには、これまでの日本の法令や通達だけを見ていてもなかなか結論が出ない。先例がありませんから。外国ですでに制定され適用されている類似の法律の解釈を参考にしないとうまく解決ができないことが多いと思います。100 %国内の問題であっても、最近どんどん制定されている日本の法律はまったく新しい分野を対象にしていることが多いので、外国の類似の法律を参考にしなければならないと思います。ですから、そのような問題解決を可能にするために、日本の弁護士に頼んで、なるべく外国のロイヤーと協働する必要性が高まるかと思います。

○柏木座長 ほかに御質問はございませんか。それでは、ベイツさんどうもありがとうございました。
 では、次に弁護士の長島安治先生から、ヒアリングを行いたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○長島氏 弁護士の長島でございます。あらかじめアウトラインをお配りしておきましたけれども、週末にもう少し考える時間がありましたので、先ほど事務局から新しいアウトラインを配ってもらいました。
 私に与えられている議題というのは「弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働および競争(渉外法律事務所)」とありまして、その前後を見ますと、いわゆる渉外法律事務所の立場から見た、この問題についての考えを述べることだろうと思います。
 そこで、今日は大きく分けて3つのことについて御説明をしたいと思います。
 その第1は、日本の渉外法律事務所というのは、今どのようになっているんだと、何をやっているんだということです。
 2番目が、1番目と触れますけれども、日本の渉外法律事務所は今、2つに分化してきているというふうに思えまして、1つは大型のコーポレート・ローファームが出現してきている。2番目としては、日本の大型のコーポレート・ローファームというのは、一体何をやっているか。分化というのは、大型のコーポレート・ローファームと、どっちかというとブティークの渉外法律事務所という分化だと考えておりますけれども、今日はブティークの方は触れませんで、日本の大型のローファームというのは、一体何をやっているかということを2番目にお話します。
 3番目に、これが本題でありましょうが、日本のそういう大型のコーポレート・ローファームと、外国法事務弁護士、外国法律事務所の提携・協働及び競争について話をしたいと思います。「及び競争」というのは、私に与えられた議題ではないのですが、どうしても触れざるを得ないと考えて付け加えました。
 また、遅れましたけれども、標題の議題の「外国法事務弁護士等」というのは、主としては外国の法律事務所を指しているのだろうというふうに考えて、それを前提にしてお話したいと思います。
 その3つの項目のうち、まず第1に、日本のいわゆる渉外法律事務所というのが、今どのようになってきているのかということをお話したいと思います。それを、進化と分化というふうに見出しには付けておりますけれども、まず進化は後に述べるとして、分化は何かと言いますと、繰り返しになりますけれども、大型のコーポレート・ローファームとブティークの渉外法律事務所に分化していっているように思われるわけであります。
 ここで"大型""にコーテーションを付けていますのは、大型という言葉に気が引けるからでありまして、ここに、たまたま先日自民党のある小委員会のヒアリングで、日弁連が用意した資料をもらいました、これによりますと、世界の大ローファームの規模(弁護士数)によると、トップ50がございまして、そのトップなるものが約2千700名、50番目が603 名ということでありますから、それに対して日本の大型ローファームというのは、弁護士数で言いますと、後から触れますけれども、ビッグ・フォーと言っているのが、90名以上ということで、一番多いところでも140 人ぐらいでありますから、50番目が600 ですから、140 なんていうのはどこなのか、数えるのも大変なわけです。
 にも関わらず、90でも、100 でも、140 でも、90以上というような規模の法律事務所が日本に出てきたというのは、本当にここ2年来の話でありまして、これは非常に目立つ現象であろうと思うわけであります。
 そこで、どういうふうに日本の渉外事務所が進化して、今のようになってきたかと申しますと、古典的にはいわゆる渉外の仕事というのは何を言っていたかというと、外国の企業が日本に出てくる、そのディストリビューターの契約をつくってあげる。
 日本の企業の技術力がまだ弱かったころは、外国企業からライセンスを受けるということが非常に多かったわけでありますが、そのライセンス契約を締結することについての作業。
 ジョイントベンチャー、ライセンスだけだと、期限が来ると収入がなくなるということから、外国企業の方がライセンスに合わせてジョイントベンチャーをつくる。ジョイントベンチャーですと、利益がある限りはライセンスが切れても、優先契約が終わっても、配当収入を期待できるというふうに、今の言葉で言うとビジネスモデルが変わっていったものですから、ジョイントベンチャーというものも非常に増えたわけでありますが、大体ディストリビューターシップ、ライセンス、ジョイントベンチャーというのが、古典的ないわゆる渉外事務所の仕事であったというふうに考えております。外資法関係です。
 それに加えて、外国の企業が日本に出てきたときの支店の設置であるとか、100 %子会社というのは昔はなかなか見受けられなかったんですが、子会社の設立、日本の企業が外国に出ていく場合のちょっとした助言、日本企業と外国企業の紛争処理。これは、古典的と言っても今でもあるわけですから、古典的と言うにはふさわしくないんですけれども、大体において以上のような仕事を、いわゆる渉外法律事務所はやっていたわけですけれども、今ではそうではなくなっているわけであります。
 なぜ、こういう大型のコーポレート・ローファームが日本でもできるようになってきたかというと、これは別に日本だけではありませんで、ヨーロッパでも全く同じことであります。すなわち、アメリカのローファーム式のプラクティスが優勢になってきた。もっと端的に言いますと、人によってはウォールストリート型のプラクティスであると言ったり、また学者によってはクラバス型、クラバス・アンド・モアというのは御承知でしょうけれども、極めてプレステージの高い、古いローファームがございますが、そのクラバス型のプラクティスが世界を制するに至ったんだというふうに言ってる学者もいるわけであります。
 ヨーロッパ型のプラクティス、日本もそうであったわけでありますけれども、これはどういうものかというと、依頼者から聞かれた問題についてだけ意見を述べる。学説、判例などにかんがみて意見を述べて終わりと。極端に言うと、そういうプラクティスであります。
 それに対して、クラバス型、ウォールストリート型のアメリカ型のプラクティスというのは、どういうものかというと、一言で言えば非常に面倒見がいい、積極的に面倒を見ていく、何から何まで面倒を見ようとするわけであります。
 依頼者から聞かれていないことであっても、依頼者に有益である。依頼者のビジネスに有益である。あるいは、不可欠であろうと思えば、それを積極的に調べ、助言していく。更に助言するだけじゃなくて、契約においては契約の交渉に乗り出していく。紛争であれば、紛争の処理に乗り出していくという、極めて積極的な、しかもクライアントのビジネスに最重点を置いてやっていくというプラクティスを展開していくのが、今、言いましたクラバス型であるわけであります。
 それが、やがて戦後、アメリカの法律事務所が、最初はパリだったと思いますけれども、パリに何軒が出ていくということ。やがてはEU、ブラッセルにも出て行く、ロンドンにも当然出て行くということで、クラバス型のプラクティスというのが、ヨーロッパでもよくわかるような、少なくともヨーロッパの企業はそれを経験できるようになりまして、経験してみると今までの自分たちが受けていたリーガルサービスと何という違いだろうと、報酬こそ高いけれども、何とビジネスに役に立つことであろうということから、どんどんとクラバス型が制していくようになったわけであります。
 そのクラバス型のプラクティスをつくるためには、どうしても規模が必要なわけです。専門家をそろえなければなりませんし、純粋に法律的に助言作業でなくても、やるべきことというのはたくさんありますから、どうしても規模が必要になってくるということで大型化していく。それがヨーロッパでも始まったし、日本でも始まったと。日本では、その結果ようやく2年前から100 人を超えるようなところも出てきたというわけであります。それが、この大型化の背景にあるわけだと考えます。
 2番目に、しからば日本の大型のコーポレート・ローファームというのは、一体何をやっているか、先ほどベイツさんからもお話がありましたけれども、そういう意味での日本の大型のコーポレート・ローファームというのは、非常に限られているわけです。
 その結果、ときどきビッグ・フォーという言葉があるわけですけれども、つまり大きい方から4つの法律事務所というのがございまして、これは先ほど触れました日弁連の資料によりますと、偶然かもしれませんが、弁護士総数にして90以上というのが4つなんです。それがたまたま今、ビッグ・フォーと呼ばれておりまして、ここが繁忙を極めているわけです。その結果、先ほどベイツさんからもお話がありましたように、なかなかやってもらえない。だれが今、時間を割いてもらえるかというふうなことで、頼むまざるを得ないというふうな状況になっているわけです。
 では、その繁忙を極める分野というのは、一体何なんだと、これは多分私が来る前にベイツさんからお話があったのではないかと思いますけれども、典型的にはM&A、証券化、企業のリストラクチャリング、リストラと言っても、別に従業員の解雇を言っているわけではありませんけれども、本当の意味でのリストラクチャリング、それは特に近年商法が大幅に次々に改正になりまして、アメリカに近いような、多少とも近寄ったようなリストラクチャリング、あるいはコーポレート・ファイナンスができるようになってきた結果、具体的には株式の交換、持ち株会社、会社の分割、種類株式等々を駆使してやっていくリストラクチャリングということを指しているわけであります。
 プロジェクト・ファイナンス、プライベート・ファイナンス・イニシアチブ、それから落としてはならないのが、金融関係のレギュラトリー・ワークというものも、かなりな程度向こうに集中しているのではないかと思います。
 なぜビッグ・フォーに集中するのか、こういうとビッグ・フォーじゃないところから叱られるかもしれませんけれども、どうもよくそういうことを聞くのですけれども、そしてまた取引に関与しますから、取引の相手方にそのビッグ・フォーが、こっちに座ったりあっちに座ったりということが、極めて頻繁に行われているので、あながち間違ってはいないだろうと思うわけでありますが、なぜビッグ・フォーに集中しているかというと、たまたま規模が大きいということと関連があるでしょうけれども、日本では相対的に専門化が進んでいるということも言えるでしょうし、何と言っても、特にM&Aのように、取り分けまたデューデリジェンスということになりますと、非常に大勢のそれぞれ専門を持った弁護士が一斉に取り掛かれる、短時間に集中して取り掛からなければならないという制約があるわけです。
 その結果、どうしても大きいところでないと、そういうことが能力的にはできるのかもしれないけれども、マンパワーの手でできないということもあろうと思うわけであります。そういうことで、ビッグ・フォーは繁忙を極めているわけです。
 さて、今申し上げましたような仕事の特徴というのを考えてみますと、先ほど申し上げました古典的なプラクティスというものの比重は非常に下がっておりまして、主要な仕事というのは新型の、しかも大規模な取引が多いというのが特徴であろうと思うわけであります。
 更に申しますと、新型と言いましたけれども、それは日本にとっては新型でありますけれども、特に米国のローファームにとっは、別に新型でもなくて、先ほど申しましたうちのM&Aもそうですし、セキュリタイゼーション、企業のリストラクチャリング、プロジェクト・ファイナンス、これはことごとく主として米国から始まっているわけでありますが、そういうものが日本も相当程度法律の改正もあってできるようになってきたと、加えて御承知のように、金融危機以来、特に金融機関から始まって、次々にセービングカンパニーができている。そういうものを、主としては外国の企業が買収するということが、御承知のように増えているわけであります。あるいは、不良債権を買い取るという手法も、別に日本で始めてやったわけではなくて、先例が外国にはあるわけであります。
 そういう手法というのは、始めは外国で始まったわけでありますけれども、日本に持ってきますと、別に外国企業が関与しない場合であっても十分に使えるわけであります。その結果として申し上げたいことは、そういう渉外事務所、ビッグ・フォーで扱っているのを見ますと、本当に国内案件がどんどん増えているわけです。そういう日本では新型の手法を、たまたまクライアントに外国企業があるせいでしょうけれども、逸早くものにしたところに、同種の国内案件も集中していっているというふうに思えるわけであります。
 その国内案件の比重というものは、非常に大きいものでありますから、そういう意味では私どもはもう渉外事務所と称するのは、実態に合わなくなっているであろうと思うわけであります。
 渉外事務所と言われますと、どうもうれしくないわけでありまして、と言いますと、伝統的に渉外事務所というのは、修習生を採用する上において、ハンディキャップがあったわけでありまして、渉外なんかに行くと、そこをやめた後食べて行けないよというようなことが、古典的に言われてきておりまして、ちっともうれしくない。
 うれしくないのはどうでもいいんですけれども、実態はようやくウォールストリート型の大型のコーポレート・ローファームができつつあるということを強調しておきたいと思うわけであります。
 なお付け加えますと、ビッグ・フォーと言っても、ほかの3つのことはよくわかりませんけれども、どうも傾向としては、インバウンドの仕事は、日本の経済市場もありまして、経済市場というのは、今までで言いますと日本の市場というのは、言ってみればハンティングフィルードになっているんだろうと思うんですが、いずれにしてもインバウンドの仕事は非常に増えている。しかし、アウトバウンドの仕事は減少しているように思えるわけであります。
 アウトバウンドが、なぜ減っているのかと言うと、1つは日本の企業そのものの力が弱ってきて、なかなか外へ出ていく大型案件が減ってきているということは、疑いもないだろうと、その反映であろうと思います。
 1つは、後にも触れますように、外国法律事務所ないしは特定共同事業、この実態は私にはよくわからないんですけれども、そういうところが国産の法律事務所の競争相手として、従来であればそういうところが取り扱っていたアウトバウンドの仕事が、そちらへ流れていっているのかもしれないと思っております。
 そこで3番目に、いよいよ本題の日本の大型コーポレート・ローファームと外弁、それから外国法律事務所の提携・協働及び競争について申し上げたいと思います。
 まず1番目に、提携・協働ということでありますけれども、この典型的なものは、特定共同事業であろうと思います。しかし、非常に特徴的なことは、少なくとも私が聞いている限りでは、ビッグ・フォーのいずれもが特定共同事業は持っておりません。これは非常に特徴的なことであるように思われます。
 更に、この提携・協働の姿としては、特定共同事業を越えて、日本ではまだ始まっていないはずですけれども、ヨーロッパでよく見られたところのアライアンス、1つの国で1つの法律事務所を選んで、それがかなり強いエクスクルーシブな関係を持つと、エクスクルーシブでないのもたくさんありますけれども、そういうことでアライアンスという言葉で呼ばれていると思いますけれども、幾つかの国を、それぞれ代表する、代表すると言っても必ずしも一番いいというわけではありませんけれども、1つの国で1つずつ法律事務所を選んで、それらがグループをつくって、アライアンスと称して、単なる仲良しクラブではなくて、仕事の上でそれによって仕事を増やしていくわけです。
 特に、イギリス、アメリカの大規模ローファームに、そういうことで独立の法律事務所が集まって対抗していこうということで、ヨーロッパではアライアンスというのが多くできていったわけであります。南米にもあることを知っております。
 更にアライアンスを越えて、その次の段階は何かというと、合併。実態は買収ということもあるかもしれませんけれども、合併、1つのパートナーシップになってしまうということがあると思います。
 それは、1つにはアライアンスというのは、どうしても限界がありまして、それぞれ独立性を持っているものですから、アライアンスの中でもコンフリクトインタレストが常に一致はしないわけです。そうすると、アライアンスを構成しているグループに頼んでも、ドイツのメンバーは喜んでやってくれるけれども、フランスはコンフリクトがあってだめです、イタリアもだめですということで、使い勝手が悪いということと、やはりそれぞれが独立性を持っていますと、何かと1つの組織には機動力の点でも及ばない、専門家がそれぞれ独立性を持っていますと、思うようには進まない面もあるというふうな、さまざまな限界が感じられるようになりまして、それで合併に進むという例も現にあるわけであります。
 その点で、ヨーロッパで起こったことは、既に皆さんヒアリングを済ませておられるのではないかと思いますけれども、典型的にはドイツ、この5年間でドイツの大型の法律事務所というのはことごとく、と言っても1つは確実に例外がありますけれども、ことごとくなくなってしまったと。なくなったということの意味は、ことごとくイギリスまたはアメリカの巨大ローファームの傘下に入っていったわけであります。
 それよりも早く、英米の巨大ローファームの傘下を、傘を広げると言いますか、それはフランスで起こり、オランダで起こり、イタリアで起こって、ここ5年間の顕著な現象で、我々の世界で大変に話題になりましたのは、ドイツで起こったことであります。
 そういう提携・協働の形態としては、特定共同事業、アライアンス、合併以外に何があるかというと、提携・協働と言うと、それとも協力という方が日本としては適切かもしれませんけれども、案件ごとにアドホックでもって協力していく、これは昔から幾らでもあるわけです。
 さっきもちょっと触れましたけれども、仲良しクラブ的なローファームのクラブというのは、国際的なクラブがたくさんあります。
 そこで、最後に競争についてのお話でございます。現在競争ということになりますと、恐らくビッグ・フォーと特定共同事業間の競争というのは、お互いに余り意識していないのではないかと思います。と言うのは、先ほどベイツさんもおっしゃったかと思いますけれども、まだ特定共同事業はまだ弁護士の数も少ないですし、少なければ専門家の程度も限定されてくるというふうなことで、少なくともビッグ・フォーの方は、特定共同事業が、今、競争相手であるというふうに、ほとんど意識していないだろうと思います。
 しかし、これはやがて時間の問題で変わってくると、競争は顕在化してくるであろうと思うわけであります。それは、特定共同事業だけではなくて、外国法律事務所との競争というのも、だんだん激しくなっていくだろうと思うわけです。
 特定共同事業について言いますと、特定共同事業ないしその背景にある外国法律事務所の強みというのが幾つかありまして、その1つは採用上の強みです。これは、日本の若い弁護士に対して、自分たちのところに来ることを希望するならば、東京だけでなくてニューヨークでも、ロンドンでも、フランクフルトでも、好きな金融市場で、あるいはシンガポール、香港もあるかもしれませんけれども、そういうところで数年ずつ働くことができるんだということを、オファーできるわけであります。そうすると、これは若い弁護士にとってはいい経験を積める大変な魅力になる。
 それに対して、ビッグ・フォーと言っても、中国にごく小規模な事務所を出しているところがございますけれども、それを別にすればそれぞれ一本足のかかしであるわけですから、残念ながらそういうオファーはできないわけです。それが強みの一つです。
 もう一つの強みというのは、これもベイツさんがおっしゃったと思います。それから、私も先ほど触れましたけれども、今、日本で新しい手法といっても、外国のコーポレート・ローファームにとっては、別に新しくも何ともない、既に外国で開発し、外国で実施し、それを日本に持ってきて、日本風に多少アジャストすればいいわけであります。そういう強みがあります。こういう手法というのは、今あるのでもって全部終わりということでは、決してないわけでありまして、経済の実態、ビジネスの実態が変わっていくにつれて、場合によってはそれに先駆けて手法というものが開発されていくわけでありますが、そういう手法の開発というのは、残念ながら日本にいるだけではできない。少なくとも競争力は十分ではないというふうに思います。それも外国法律事務所、ないしは特定共同事業の強みであろうというふうに思うわけであります。
 それ以外に、勿論規模の利益、規模の経済というのがありまして、取り分けシステムに対する投資というのは、今や大型法律事務所にとっては大変な重要事項になっておりますけれども、これも140 〜150 人のファームが投資できる金額と、2千何百人のファームが投資できる金額では、おのずから違ってきますし、1人当たりの負担というものも違ってくるわけですから、これも大変な強みであろうと思います。
 更に、主要ないろいろな国に展開している結果として、それらの巨大事務所は、それぞれの国の法律・法令ないし規則ないしプラクティスについて、立ちどころに情報を取れるし、いざとなればそういういろいろな国でプラクティスしている、自分の組織内の弁護士を派遣する、モビライズすることができるというのも強みであろうと思うわけであります。
 力が強いばかりかというと、そうでもないように思われます。と言いますのは、これは現に私どものあるアメリカの中型、中型と言っても200 億ドルの年収のあるところですけれども、そのジェネラルカウンセラーが言っておりましたけれども、自分の会社の各国における法律事務所の選定に当たって、いろいろな事務所をインタビューした。現に仕事も依頼してみた。ところが、どの事務所か知りませんけれども、世界的に展開を行っているところを使ってみたところ、まず報酬が非常に高い、それは高いわけでありまして、私のドイツの友人の弁護士が、ある巨大事務所の傘下に入ったわけでありますけれども、やっていることは全然変わらないけれども、報酬は断然増えたよと言って喜んでおりまして、なぜ増えるかと言うと、1つのパートナーシップでありますから、国籍のいかんを問わず、1つのパートナーシップの報酬体系に合わせなければいけないもんですから、ドイツが相対的に低かったんだろうと思いますけれども、どうしても高くなっていくわけです。
 ほかにもいろいろ理由がありますけれども、大きくなればなるほど、また世界的に展開しようと、特に既存の法律事務所をアクワイアーしていこうということになると、どうしても報酬が高くなる。そういう組織をマネージするマネージング・パートナーというのは、非常に優れたビジネスマンでなければならないわけです。そうしなければ競争に勝てなくなるわけであります。
 現に、比較的最近私が受け取りました、あるウォールストリートローファームのブローシュアを見て非常に驚いたんでありますけれども、そのマネージング・パートナーが誇らしげに、我がファームは、ついに世界で最も利益を上げるローファームのベスト・テンに入ったということを書いているので、本当に驚きました。30年、40年前のジェントルメンズクラブと何と変わったことかと思って全く驚いたわけであります。
 話を元に戻しまして、その売り上げ200 億ドルのアメリカのある企業のジェネラルカウンセルが言いますのは、報酬がすごく高いと、報酬に見合ったサービスをしてくれるかというと、そんなことはないんだと、触れ込みは、あそこの国ここの国にも事務所がありますから、完全なサービスを提供できますよと言っていたところが、中の現場ではちっともよくない、とても1つの組織とは思えないということに、非常に憤慨しているわけであります。
 彼が言うには、もうそういうところの事務所に依頼するのはやめたと、これからはそれぞれの国でベストのファームを選んで、そういうところに自分たちのビジネスを長期にわたって見てもらって、自分たちのことをよく知ってもらって、自分たちに最も合う助言をしてもらう、そういうところを選んでいくんだということで、主要国の独立の事務所を集めまして、3日間ほどの会議をやったという例もあるわけであります。
 いずれにしましても、傾向としては競争は激しくなっていく、特定共同事業というものは、規模も大きくなるということであろうと思います。そうしますと、純国産の事務所は一体どうなるんだろうかと考えて、ときには悩むこともあるわけでありますけれども、よく考えてみると本当に悩むに値することなんだろうかと、と言いますのは、しょせん弁護士の使命というのは、非常に良質のサービスを依頼者に対して提供して、その需要を満たしていくということにあるわけでありますから、その弁護士の属する事務所、その組織の国籍がどこであるかということは、二の次、三の次の問題であろうと思うわけです。どこの国籍だって構わない。要するに、出てくるサービスが非常に良質のものであって、価格も合理的である、迅速であるということこそが大事なんだろうという考え方もあろうと思うわけであります。
 とは言いながら、巨大なローファームに対しての、先ほどのある企業のジェネラルカウンセルの不平不満、批判というものを考えますと、そういう傾向はやはり否めないと、そうすると日本にある大型のコーポレート・ローファームのことごとくが、一様にそういうものであっては困るわけでありまして、日本に限らないかもしれませんが、やはり多様性というものがなければいけないというふうに思うわけであります。
 そういう点では、国産の事務所はどうすればいいかというと、1つ考えられることは、それぞれの事務所の中を多国籍化していく、より具体的には従来こういう事務所というのは、御承知のように若い外国の弁護士を2年とか3年とか短期間の契約で雇用して手伝いをさせているわけですけれども、そんなことではなくて、どこの国でも一流の、本当に有能な人を、何とかして日本に引き付けて、実質的にはパートナーの資格が与えられるように法律も変えていって、多国籍の、しかし日本を中心としたローファームというものが、それも1つや2つではなく、幾つも出てくると。
 他方、特定共同事業と言いますか、外国の法律事務所も活発にコーポレート・ローファームとして活動していく、何としてもそうやって多様化し、数を増やし、そいうことによって需要を満たしていかなければいけないというふうに思うわけであります。
 そしてまた、そういうことによって、最後に付け加えますけれども、コーポレート・ロープラクティスに限っての話ですけれども、日本の法律家が本当にやるべきことをやっているかというと、そうではないと思うんです。あるインベストメントバンクのトップの人の話を聞いてつくづく思いましたけれども、これだけ行政庁の権威が下がったようなことをマスコミは言いますけれども、実態は場面によっては決してそんなことない。行政指導、少なくとも行政の解釈というのが非常に不透明である。のみならず、場合によっては、今になってもほとんど恫喝に近いことがクローズドドアの中で、特に外国の企業、金融機関に対して行われたことがあるということも聞いております。ということは、これは日本の法律事務所では行政事件を扱うこと、行政庁を相手にして闘うということは、タックスのことについては本当に少ないです。それは、勿論依頼者が依頼してくれないとどうにもならないんですけれども、しかしそれだけではなくて、やはり日本の弁護士がそういう点で十分に力を、勉強もしていないし、そういうことを開発していこうという熱意も上がらないんだろうと思うわけです。そういうことも大型になることによって専門家も進みますし、それから経済的にも場合によっては軽微な仕事も受けることができるようになっていくわけです。そういう点でも、大型化することによって、被益することがいろいろあろうというふうに考えているわけであります。
 少し長くなりましたけれども、以上であります。

○柏木座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御発言に対しまして、御質問はございますでしょうか。下川委員。

○下川委員 少しお伺いしたいんですが、先ほど外国ローファームないしは特定共同事業の強みということで、採用上の魅力とか、新しい手法・知識・経験が生かせることとかいろいろと御指摘がありましたけれども、そのような強みがあるにもかかわらず、特定共同事業を行っている事務所、ないしはそこで働いている日本の弁護士の方が、必ずしも増えていないように思われること。
 更には、ビッグ・フォー自身がそういう特定共同事業に取り組まれていない理由。弱みの御指摘もありましたけれども、もう少し増えてもいいような気がするんですが、何が特定共同事業が、恐らく経済界にあるニーズに応えるほど大きく増えていっていないのか、その辺の理由、お考えがもしございましたら。

○長島氏 私は、特定共同事業については調べたことがありませんので、当たっているかどうかわかりませんけれども、幾つか理由は考えられます。
 1つは、外国の事務所にとって、特定共同事業は使い勝手が悪い。これは、すべての人が言っているわけであります。つまり、1つのパートナーシップでないものですから、大変使い勝手が悪い。使い勝手が悪いものですから、使い勝手が悪い組織をどんどん大きくしていこうということには、二の足を踏むだろうと思われることが一つ。
 日本の弁護士も、特定共同事業に当たっては全く新しいものですから、別にそうでなくても十分食べていけるので、新しい危険をはらんだようなことに挑戦する人が少ないのかもしれません。
 しかし、3番目に、そうは言いながら、着実に増えていると思うんです。特定共同事業の数も増えていますし、その一つひとつの特定共同事業の規模も増えております。この傾向は、着実にその方向で進んでいくだろうと思います。
 ビッグ・フォーはなぜ特定共同事業を持っていないか、それは人のことは知りませんが、想像してみますと、まず外国企業の方でビッグ・フォーは特定共同事業を結ぶには少し大き過ぎると考えているんではないかと、そういう節がありますね。
 それから、ビッグ・フォーの方は、これも想像ですけれども、一般特定共同事業を、ある特定の外国法律事務所とつくってしまいますと、そこでもってエクスクルーシブルな関係ができてしまうわけです。しかし、このビッグ・フォーがやっている仕事というのは、いろんな国の、それぞれいろんな多くの法律事務所から頼まれた仕事をやっているわけでありますから、この段階で特定の一つの法律事務所と固定的な関係に入るということは、怖いというふうに思っていると想像します。

○柏木座長 下條委員。

○下條委員 この検討会の課題は、特定共同事業を見直していこうということなんですけれども、やはり特定共同事業を見直していくとなると、どうしても日本の弁護士と外国の弁護士がより緊密な関係になっていくわけです。その場合でも私どもとしてはやはり日本の弁護士の判断の独立性というものを確保していきたいと思っているんですけれども、この両方を両立させるような点で、何か先生のお考えがありましたらお聞きしたいと思います。

○長島氏 先ほどもベイツさんに同じ質問をなさっていて、後ろで聞いておりましてすぐ思い出しましたのは、それはいい実例を見ることが大事だろうと思うんです。
 私が知っている限りでは、非常にそういう点で成功していますのは、日本の例ではありませんけれども、Clearly,Gottlied,Steen&Hamiltonという、ウォールストリートの著名な法律事務所がございますけれども、ここのブラッセルの事務所というのは、本当に多国籍なんです。勿論ヨーロッパの弁護士たちもパートナーですし、たまたま長い付き合いがありますけれども、本当にああいうふうになれたら、多国籍の法律事務所というのはいいと思います。それが一つです。
 それから、今のままでも、今、先生が懸念していらっしゃるようなことはないことはないということを仄聞しますけれども、つまりもっと端的に言うと、そういう特定共同事業に入っている日本の弁護士が、セカンド・クラスという意識を抱いているとかということは、ときどき耳にしますけれども、仮にそれが事実であったとしても、それは変わっていくと思います。
 なぜならば、巨大外国法律事務所の方が、どんどん多国籍化していっているわけです。いろんな国で法律事務所をアクワイアして、パートナーにもたくさんアメリカ人以外、イギリス人以外が入ってきているわけですから、その傾向が続くに決まっているというふうに思っていますので、そちらの方からも変わっていくだろうというふうに思っています。
 ですから、日本についても日本の弁護士がどんどんそういうところに参加していく人が増えて、今までみたいに中堅以下ではなくて、その人たちも黙っていても年を取りますから、だんだん力を持つようになっていけば、おのずから変わってくることも期待できると思います。

○柏木座長 ほかに御質問ございませんか。それでは、長島先生、どうもありがとうございました。
 この後、実は休憩を予定していたのですけれども、ちょっと座長の不手際で時間が遅れております。もし御異存がなければ、牛島先生のヒアリングに入りたいと思います。
 それでは、牛島先生、よろしくお願いいたします。

○牛島氏 牛島と申します。私は、本日有識者ということだそうで、大変とまどっておりますが、私自身は検事を2年、弁護士を23年やっております。そのうちの始めの6年は、準会員のいる大きな渉外事務所でアソシエートをやっておりまして、その後独立いたしました。
 現在、牛島法律事務所という名前で、パートナーの弁護士が7人、うち3人はニューヨーク州での弁護士資格を持っております。
 アソシエートの弁護士が23人、合計30人の弁護士がおります。
 ほかにアメリカの弁護士が、2人。この2人はいずれも外弁資格というものは持っておりません。従前は外弁資格をお持ちの方もいましたが、現在は持っておりません。
 ですから、今お話もございましたが、いわゆる渉外事務所ということになるのだと思いますが、私どもの事務所は純粋の国内の仕事、訴訟は勿論のこと、法令の解釈などをやっておりますので、ビジネス・ローの事務所だろうなというふうに位置づけております。ビジネスにかかわらない仕事は、ほとんどありません。
 内外依頼者の比率というのは、どう計算するか難しいところもありますけれども、半々かなというふうに理解しております。
 私は、日弁連の外国弁護士委員会、略称ですが、これに長く所属しておりまして、最近は副委員長という役職にもございます。ただ、有識者ということで、私はよく小説を書いてございますから、それで有識者にしていただけたとしたら、これは大変名誉なことであろうかなというふうには思っております。
 本日の私のレジュメは、別紙1、2ということで、まず別紙1で用意させていただいたんですが、今までいろんな方が説明されたことを背景にいたしますと、相当程度説明済みの部分であると存じましたので、私は1、2というのは必要ないだろうなというふうに判断いたしました。
 3の(1)(2)、レジュメでも申しますと2ページの真ん中までは、もう必要がないのだろうなというふうに思います。(3)から始めさせていただきますが、勿論ここでそれぞれまとめました各当事者の見解というのは、私の独自のまとめでございますから、間違っておりましたら大変に申し訳ないですが、私の理解を前提にして進めさせていただければと思います。
 始めに2ページの「(3)ACCJの見解」というものを、私なりにまとめさせていただいておりますが、私は少数の日弁連会員が競争上有利な立場にあるということが事実だとは思っておりません。競争者というお立場からの発言としては、いろいろな発言があり得るというのは、よく理解できますけれども、だからパートナーと認めようというのは、制度への提案としては説得力を欠いているのではないかという気がします。むしろ、総合的助言のできるパートナーシップというものは、既にローカルパートナーシップとして、特定共同事業が存在しているというふうに思っております。
 ただ、こうしたことは一種の業界内の言い合いであって、要は利用者から見てどう見えるのかということなのだろうなと、したがってそういう観点からの議論を進めていくべきなのだろうなということを肝に命じておるつもりでございます。
 「(4)USTRの見解」でございますが、私は法律事務を輸出物、これは訳でございますが、いい訳かどうかわかりませんけれども、法律事務を輸出物としてとらえているというのは、さすがだという気がしております。それから、米国輸出業者の手段としても重要だというものも、そのとおりだと思います。
 プロフェッショナルな観点ばかりの議論、つまりサービスはどうか、あるいは法律家として、どういうサービスを提供するのかという観点からばかり見られておりますけれども、USTRの言っているところというのは、実はこの問題の勘所を突いておるというふうに思います。
 ただ、それに続いて、だから米国は最優先事項として、パートナーシップと雇用についての規制撤廃云々というところになりますと、事実としてどうであるのかというふうには疑問を持っております。
 半数の州に外弁制度がないというふうに聞いておりますし、国際仲裁については、この検討会でも同じような事実が議論にあったということも、私はそのように理解しております。
 特定共同事業が少数であって、困難に直面していると、これは見方にもよるのかもしれませんが、事実が大変に増えている。そこで働く日本の弁護士も大変に増えているという事実は存在するということを御承知願いたいと思います。
 卑近なことでございますけれども、弁護士へのヘッドハンターからの電話というのは、引っ切り無しでございまして、うちの事務所にも弁護士に対してたびたび掛かってまいります。残念ながら、私に掛かってきて、私をハントしようという人はいないのでありますが、若い弁護士さんにたくさん掛かってきております。
 「(5)米国政府の見解」でございますが、特定共同事業の数については、今、申し上げたとおりでございます。
 次に、職務範囲の人工的分離ということがございますけれども、これは後でまとめて申し上げようと思っておりますが、これが私は実はこの件の一番重要なポイントで、なかなか理解しにくいところであり、あるいは理解したくない部分であるのかもしれないというふうに思っております。
 包括的助言ということも、結局同じことを言うのだろうと思います。後で申し上げようと思います。
 「(6)EC委員会の見解」につきまして、ここでも1つの包括された国際的法律事務所からの助言というような言い方が出てきまして、同じことでございます。
 共同事業の範囲が大変狭いというのは、大変かどうかわかりませんけれども、範囲が狭いというのはあり得る批判だというふうに思います。ただ、この共同事業の範囲が狭いということは、一体を何を指しているのかということになりますと、助言できる範囲が狭いということになれば、これはまた別論で、後でまとめて申し上げるつもりでございます。
 それから、独立会計が大変だということは、これは実は私は特定共同事業をしておりませんからわかりませんけれども、私の理解する限り、システムへの投資は膨大なものがあるというふうに承知しておりますし、クライアントとかマターとかエクスペンスとか、すべてこれ管理しているわけで、更に詳細な活動の状況をタイムシートを付けて、それがすべてコンピュータに載っているわけですから、そんなに3つの帳簿を付けることが難しいということは、実感としては全くわかりません。これは、私の無知かもしれません。
 第三国法について記録保存が大変だということは、私は何が大変なのかよくわかりません。つまり第三国法についてアドバイスを求めれば、記録は残ってしまうわけであって、特に最近のメールであれば、消さない限り残るわけですから、記録保存が大変だというのはよくわかりません。
 外弁というのは、勿論略称で申しておりますけれども、外弁と弁護士への報酬の違い云々ということは、これは個々の問題だろうというふうに思います。
 最後に、10件に過ぎないということでありますけれども、数が増えていることを先ほど申し上げましたけれども、私がチェックしましたところ、この4月の8日現在で23件、2倍を超えているというのが現状でございます。
 「4.まとめ」でございますが、これが実は先ほどから後回しと言っておったことのつもりでございます。つまり、職務範囲と共同事業の対象について誤解ないしかぎ括弧付きの誤解があるのではないかという気がいたします。それは、法律事務所の経営としてわからなくはありません。今から申し上げたいと思います。
 ただ、私は特定共同事業について、いろいろな非難を受けておりますけれども、その多くはこの職務範囲と共同事業の対象に齟齬がある。齟齬と言っては、ちょっと言葉がおかしいですが、違いがあるということについての誤解ではないかというふうに思います。
 総合的助言ですとか、あるいは職務範囲が人工的に分割されていないで、包括的に助言ができるようにといった言い方、あるいは1つの統合された国際的法律事務所からの助言などという言い方も、これにかかわるのではないかと思っております。これが後でまとめてと申し上げたいことでして、私は法律事務と弁護士の業務というものは、具体的に申しますと、分けて考えてみないと考えの整理にならないのではないかというふうに思っております。つまり、法律事務という言葉で私が意味いたしますのは、個々の案件においてのプロフェッショナルなサービスの中身という面でございます。それと弁護士というものは、法律事務だけをやっているわけではありませんで、事務所として仕事をして報酬をもらう、これが1つの重要な部分でございます。
 更に次には、どんな分野をあらかじめ研究しておくのか、開発体制はどうするのか、新しい需要にどう答えるのか、現在の体制での不足は何なのか、更にクリティカルな危機的な状況においては、事務所として決定的に重要な場面、例えばマルプラクティスについて客から苦情があったときに、事務所としてはどういうふうに対応するのか、その対応についての法律的見解は事務所としてどう取りまとめるのか、法律事務所のマルプラクティスですから、法律的な部分というのが当然重要になるわけで、それについての結論はだれが、どうやって、どういうプロセスで、最終的にはどう決めるのか、こういったことが実は弁護士事務の重要な別の側面でございます。
 弁護士は契約書を書いたり、法律意見を言ったり、あるいは交渉したりということだけをやっているわけではなく、弁護士事務所の経営を、零細であったり、あるいは中規模であったり、世界的なビジネス、公認会計士のビジネスと比べますと小さいし、更に日本の法律事務所であれば、残念ながら現在は小さいと思いますけれども、そういう面抜きでやっている弁護士は一人もいないと思います。
 したがって、当然私から見ますと、殊に法律事務の件、プロフェッショナルな面のみを強調するというのは、例えばという言い方で私なりに申し上げさせていただければ、弁護士なんだから何か困った状況があるときには、弁護士倫理があるじゃないか、それに反するときはその事務所をやめればいいじゃないか、仕事をやめればいいんじゃないか、それすらできないというのは弁護士としてだらしがないんじゃないかという言い方は、耳に心地よいですが、私から言いますと、人の世が人間でできているんだという現実を無視していると思います。弁護士も当然人間でございます。
 これを疑う方は、いい引用なのかわかりませんが、思い付いたので申し上げたいと思います。それは刑事訴訟法の321 条の1項2号、いわゆる検免調書、なぜ検免調書というものがあるのか、法律家であっても裁判官と検察官を区別して、検察官の前での供述というものには、御存じのとおり信用すべき特別の状況というものを要求しております。
 こういうふうに法律ができているということは、偶然ではなくて、それが人類の歴史的な知恵なんだろうというふうに思っております。
 ですから、これが法律家という者についての人類の見方なんだろうというふうに思います。ですから、弁護士はスーパーマンでも、人並み以上に意思が強固なわけでもありません。ただ、ごく普通の人間が、たまたま広い世の中のいろいろある職業のうちで法律という分野に従事している。
 勿論、それがあるがゆえの制約と義務というものの中でやっております。プロフェッショナルの中での義務というものは当然でございます。
 私が申し上げたい職務範囲と共同事業の対象の違いというのは、要するに日本法は日本の弁護士だけがやるんだということでございます。これは、母国法はその国の弁護士だけがやるということは、実はどの国でも同じことでありまして、異論は見ないと思います。
 では、抽象的に引用させていただきますと、真の意味での本邦弁護士と外国法弁護士のパートナーシップを、法律事務所経営に当たって認め、それぞれの弁護士が互いの専門性を生かしながら、1つのチームとして顧客のニーズに応えるということは、具体的に実際にどういうことなのか。
 私は、皆様に御理解願いたいと思いますのは、法律事務所というものは法律事務はしません。法律事務所が法律事務をすることはないと思います。そういうふうに考えませんと、法律事務所というものを、例えばいろいろな母国法を持っている人間が原資格国法、あるいは母国法を一緒になってやってもいいんだというときには、おかしなことになります。
 つまり具体的に言えば、外弁の方が、日本法の問題を扱うということになると、そうならないという意味では法律事務所は法律事務をしていないんだと思います。法律事務を扱うものは、あくまでも個々の弁護士ないし外弁の方でございます。
 これは、勿論個々のと申しても1人という意味では毛頭ございません。複数です。これからそれが一緒にやる、違った母国語の方が一緒にやる、当然のことでございます。このことについては、もう一回触れるつもりでございます。
 次に4ページ(2)特定共同事業の課題ということで、目的の拡大ということが1つのイシューになってくるのかという意味で、私なりの理解を申し上げたいと思います。
 基本的に現在の特定共同事業において、その事業を営むもの同士として、日本法のみが関わる事案についての収支を含めてすべての収支を共同にしたい。そうしないと、事務所としての一体感が感じられない。こういう方がいらっしゃるとすれば、そういう心理的な意味ではわからなくもないような気がいたします。
 ただ、私が素朴に疑問に思いますのは、外国法の全く関係しない法律分野について、どうして外弁の方が収益、あるいは収支をシェアするのかというのが少しわからないような気がいたしす。
 つまり、そういうふうなことがいいとすれば、実はそれはネガティブな意味で例示しているんですが、商社が弁護士と共同事業していい悪いということと一体どこが違うのかなという意味で私は疑問を持っております。
 それから、一体の事務所ということをよく言われますけれども、仮にそういう改正になったときには、会計が3つ、ポケットが3つあって大変だというのは1つになるんでしょうか。それも、外弁事務所は外弁事務所としてのポケットを持ったまま、2つになるのか、この辺も疑問としては持っております。
 「(3)日弁連の監督の問題」。これについては既に説明がなされておりますが、私は別紙の2として、報告についての規定を、特に別紙2の真ん中辺り11条、次のページの最初の12条、要するに、監督の実質について、調査に関する規則、何らかの調査権なしに監督するということは、全く絵に描いた餅だろうということを経験的に思っております
。  実体法のみでは法律は動かないというのは、法律の実務家の方であればどなたも御理解いただけると思いますが、そういった規制の必要、これはむしろ自由にするがゆえに最低限の規定の適用があるという意味で必要なのだろうと思っております。
 4つ目、弁護士の独立性、これについては、後でワン・ストップ・ショッピングということに関して若干私の見解を申し上げるときに触れたいと思っております。
 前提としては、弁護士の独立性というのは2つの場面で考えられるのではないか。これは先ほどの同じことの繰り返しでございます。プロフェッショナルな仕事、例えば法律意見を依頼者に言うとき、契約書をつくるときの独立性の場面と、そういう弁護士が仕事をする上での環境、その前提としての独立性、この2つがあるのだろうという気がしております。
 レジュメの2番、実務的アプローチというふうに名付けましだか、そこに進んでいこうと思います。私の実感といたしまして、まず依頼者との関係から見た弁護士業務、業務というのは、先ほどから申し上げております法律事務と分けて申し上げているんですけれども、ワン・ストップの話をするということは、私はMDPの話に行き着くだろうと思っています。決して肯定しているわけではありませんが、それ抜きにワン・ストップを言うということは大変に表面的ではないかという気がしております。
 例えば例として今まで出たと承知しておりますが、アメリカとの会社とのジョイント・ベンチャーの話。その場合に税務会計抜きにジョイント・ベンチャーをつくるということはあり得ない。当たり前のことです。そういう意味ではワン・ストップではないんです。実はそう言いながら、更に進めますと、MDPも中途半端なんです。それはなぜかというと、実際のビジネスに携わられている方からすれば、そんなの常識だよと思われると思います。例えば資金の調達、新しい仕事をすることに資金をどこから持ってくるのか。どういうふうに引っ張ってくるのかということ抜きにビジネスが進むはずがない。私はこれが、実際見ていまして、例えばM&Aのアドバイスの分野へ、国際的な会計事務所が必死になって進出している。従前のインベストメントバンクと熾烈な争いをしているということの理由なんだろうなと思います。比喩的に申せば、法律家村の話というのは、いささか表面的なことなんだろうなという気がします。つまり、法律家という区切りみたいなところで、それは利用者である方から見れば、ビジネスから見れば恣意的だなという気がしております。ただ、私はそれだけではないと思っております。
 というのは、今、私はそれは広げて申しましたけれども、本当に効率だけを求めてワン・ストップを進めるのがいいのかということについての疑問を持っています。これは現在は比喩でしか申し上げることはできないんですけれども、例えばコーポレート・ガバナンスの議論においては、最近、社外取締役の必要性ということがいろいろと言われております。従前は多分、社長さんが何もかも決めた方が効率的だったんだと思うけれども、それだけではすまないというのが時代の要請だと承知しております。
 それから、最近のエンロンの問題があります。アンダーセンの問題。それから、アンダーセンの今度の問題に絡んで、SECがコンサルティングと監査の分離を再び言い始めわけです。
 したがって、何もかもが一元化されるということがいいのではないんだということの問題意識があると思います。特にアンダーセンの問題というのは、公認会計士業界、つまり弁護士業務に近いところで起きたことですから、他人事ではないんではないかという気がしております。
 したがって、私は時代の要請というのは、現時点において、将来を見据えたときには、本当にどちら側にあるのか。低コストで迅速であるというのが利用者として当然の要求ではあるけれども、それでいいのか。エンロンで、例えば安い監査料と、それを超える金額のコンサルティング報酬が組み合わせになっていたということをどういうふうに評価するのか。こういったこと抜きで私は事は進まないと思っています。
 戻りまして、利用者にとって何が大事なのかということを考えますと、弁護士業務の総合化をしてほしい、私は特定共同事業が増えていることに象徴されておりますように、現在の特定共同事業というのは、それに対応しているという気がしております。弁護士がアドホックにしか出てこないということの話も聞きまして、私もそういう体験を多々しております。これは私は弁護士事務所の、いわゆる総合化なるものを進めると、更にその実態はひどくなるのではないかなという懸念を持っております。
 私はビジネスの側ないしビジネスとごく近い弁護士の立場から見ると、よくわかるような気がします。つまり、欧米の弁護士はよく依頼者は法律問題については、ある弁護士を窓口にして、その人に聞きたいんだという話を聞くことがあります。それはそれでよくわかります。
 要するにどういうことか、ビジネスマンの側から見るとどういうことかというと、例えばアメリカの企業がアメリカの弁護士、信頼する弁護士がいるときには、日本法の問題もその方から聞きたい。そういう事情じゃないかという気がします。それは向こう側に座ってみるとよくわかります。なぜか。アメリカのファンドが日本に投資したい、どうするか。アメリカの資金調達も絡んでくる。そうなると、言葉と文化、習慣の問題もあってというと抽象的です。もっと手っ取り早い話は、そのファンドの代表者というのはニューヨークに帰って上司に説明しなきゃいけない。その上司に説明するときに、だれがこう言っている。だれに聞いたらこう言ったと言わなきゃならないということを想像していただければ、事は弁護士側を中心に回っているわけではなくて、例えばファンドで日本代表に来られている方は、ニューヨークの上司、高層ビルの中で何と言うかなということを常に考えておるわけでございます。
 そこで、私は日本法についても、外弁としてはアドバイスをしたいという誘い、私、するなどとは毛頭申しておりません。ただ、そういう需要というか、誘いというのはあるということを申し上げている。世に汝誘惑するなかれということがございます。それが私は制度だと思います。そうでなければ、事務所の内部で何をやったかということはなかなかわかりにくいと思いますので、したがって、制度というのは大変重要であって、現在の特定共同事業、弁護士の独立性を限度付きとは言え、担保している制度というのは重要であると思います。
 (2)でございますが、法律家同士の関係から、すみません、(1)と(3)を一応カバーしたものでございます。
 (2)、法律家同士の関係から見た弁護士業務というもの、ここで重要なのは、弁護士業務というのは、先ほどから申しておりますとおり、2つの面を持っている。その1面は、身過ぎ世過ぎの手段であるということでございます。その観点から何と言っても依頼者が重要でございます。何法の問題であれ、弁護士というものは、依頼者に信用されたい、頼られたい、その信用に応えたい、頼られることに応えたい。私はアメリカの弁護士と一緒に仕事をしたことを思い出します。アメリカ人の依頼者というのは、その男の言うことしか信用しないんです。日本法のことであって、私が説明しても、その男が納得して、なるほどそうだと言って、そのアメリカ人の依頼者に言うと、なるほどそうかという。その友人は確かに私が日本法についてアドバイスするんだから、お前が言うことでいいんだということを理解してくれていましたから、大変スムーズだったと思います。だから、私は制度というものはきちんとつくられなければならないということを申し上げた。
 最後に(4)将来における日本人ビジネス・ローヤーの可能性という、いささか大きなタイトルですが、勿論、日本人というのは国籍のことを言っておりません。日本法についての、日本法の弁護士ということでございます。私のことを言っていわけではありませんけれども、日本のビジネス・ローヤーというのは、相当の水準に来ていると思います。同じ報酬をもらうという前提で考えたときには、欧米の弁護士に見劣りしているとは私は少しも思いません。尤もその考え方自体が実は必要のないことであって、日本法についてだれがアドバイスするかということには代替性がない。つまり、職務範囲について、日本の弁護士が日本法についてアドバイスするしかないだろうということについては、だれも世界中で異論がない。日本法を英語で扱うビジネス・ローヤーの数が少ないとしても、あるいは少ないとすれば、外弁の方々が日本に大挙してお見えになっても少しも解決にならないどころか悪化しかねない。
 私は日本法の弁護士、国際的なローヤーというものを外国からの投資を盛んにするために一層育てていく必要があると思います。ただ、それは外弁においてパートナーシップができる、それがないとできないという誤った言論が私は行われていると思います。今の現状でも、特定共同事業の中でも次々と育っていく。勿論、選択の幅はそれにしても多い方がいいのではないかという意見もあり得ると思います。一般論としてはそのとおりですけれども、弁護士というのは抽象的に存在していません。弁護士というのは依頼者との関係で存在している。そうすると、依頼者との関係の相当部分を他人に負っているビジネス・ローヤーというものが、一体ビジネス・ローヤーとして、その育つ環境としていいのかということについて、私は疑問を持っています。それは外弁事務所と特定共同事業を組んだときの依頼者が一体だれに頼っているかということで、私は特定共同事業をしておりませんのでわかりません。多分特定共同事業が終わりになったときに、依頼者がどういうふうに動くかということでわかるのだろうなという気がします。私は間違っているかもしれませんが、私は疑問を持っています。そういう環境下で日本の若い弁護士さんが仕事をしていくのかということが、将来いいのかということについては、私は疑問を持っています。
 もう一度申しますけれども、弁護士というのは、プロフェッショナルとして法律解釈が重要であると同様に、依頼者との関係というのは大変重要だということです。そのバランスを取ったところで初めて弁護士業、実務の法律家というものが成立するんだと思います。ですから、私はもっと日本の弁護士の人口が増えて、本当の意味でのパートナーシップが組めたらと思います。私には夢があるという言葉がありますけれども、私はその夢を持っております。
 最後ですが、私はいつも車のことを考えます。日本には自動車会社などは要らないと言われた時代があります。第1、日本人に車などできっこない。それにもう既に外国にすばらしい車がいっぱいあるじゃないか。何で日本で車をつくろうとするんだと言われたことがあります。そう言われ続けながら、日本は今世界一の自動車の輸出国になっていると思います。そういう先輩を私は日本人として大変誇らしく思っております。
 私は今100 %自由な競争の下で、身の周りを見回したときに、日本の車がほとんどすべてであるということは感動的なことだと思います。日本の法律家というのは、随分後ろを歩いていると思いますけれども、歩いてはいるつもりでございます。
 以上でございます。

○柏木座長 ありがとうございました。今の牛島弁護士の御説明に対して質問はございませんか。

○齊藤参事官 日本の資格法制上のことなんですが、渉外性のない日本法の案件からの収入を、日本の弁護士と外国法事務弁護士が分配するということは、制度設計は可能だというふうに先生はお考えですか。

○牛島氏 それは可能だと思います。ただ、その根拠は何なのかなと思うだけで、制度設計はあり得るんだろうと思います。

○柏木座長 ほかにございませんか。それでは、牛島先生、どうもありがとうございました。
 それでは、ヒアリングの最後の欧州ビジネス協会からのINGベアリング証券、東京支店の最高責任者兼支店長のジョン・ハウランド−ジャクソンさんにお願いしたいと思います。

○ハウランド−ジャクソン氏 【原文別添】[PDF]
 おはようございます。英語でお話しすることをお許しください。私が日本語でお話しすると、もっと時間が長くなってしまうと思いますので、英語で話させていただきます。
 私はジョン・ハウランド−ジャクソンと申します。ING証券の日本における最高責任者及び支店長を務めております。そしてまた同時に、私はイギリスでのバリスタの資格も所有しております。
 そうしたこともありまして、私はこの日本法につきましては、受け手側、あるいはそれを供給する側の経験を有しております。
 私の経歴を少し申し上げておきますと、私は過去28年間にわたりまして、日本及び日本の金融システムに非常に緊密に関わっておりました。私はまず1970年の中ごろ日本に参りまして、それからまた80年の初頭にもう一度こちらに住んだことがございます。1980年の後半から1990年代の初頭に掛けましては、ヨーロッパにおきます野村証券の社長を務めさせていただきました。そして、現在、日本では、このポジションにはおよそ2年間ほど勤務しております。
 このような経歴がございますので、私は日本のビジネスにつきましては、およそ30年ほどの経験がございます。
 INGグループはオランダの会社なんですけれども、世界的に事業を展開しておりまして、その中には保険、銀行、そして資産運用といったものがございます。日本というのは、INGのグループにとっても、戦略的な位置を占める市場として位置づけられております。そして、現在、私たちはビジネスグループを日本で8つほど展開しておりまして、その中では、生命保険、資産運用、年金管理、証券、銀行、リース、そしてITなどのサービスがございます。
 勿論、社内的にも、法的な組織はございますが、私たちはこのグループ、そして、クライアントの安全を取り扱う際にはあえて外注という形で法律的なサービスを依頼しております。
 まず始めに、日本における法的サービスは、どのような法的なサービスが必要かというお話をさせていただきたいと思います。
 私たちが必要としているような国際的なビジネスというのは、主要な法的公益をまたいだ形で、コンスタントな法律のサービスを必要としております。理想を申し上げますと、1つの法律家のチームをつくります。そして、法益がどこで起こった案件であろうと、その法的サービスにおきましては、そのチームが全責任を負っていくいう形をつくるのが一番よいかと思われます。
 通常ですと、法律サービスにおきます私たちに対する要求値というのは、非常に複雑な形でのファイナンスというのが主です。例えばその中には、ストラクチュア・ファイナンスであるとか、資本市場といったような形で、法益をまたぐような形での案件というものが非常に多くなっております。
 そのような案件を取り扱う際に私たちのチームの法益というのは、これは最も重要なことなんですけれども、相手側も次のようなことを注意しなくてはいけないということです。それはまず最初には、多国籍にわたるそういった仕組みというものをまず理解すること。そういったことに対する経験を持っていくということが第一条件です。
 そして、デューデリジェンスの際に手助けも行います。法益をまたいだ形でのさまざまな契約書、そして書類を作成し、交渉の際には関わってまいります。そして、最後になりますけれども、契約書を遂行していくということを行います。
 私たちの必要とする目的を達成するためには、法律家というのは、まず最初には、非常に国際的な経験が豊富であるスペシャリストであるということが求められます。そして、同様な法的なシステムということも熟知していかなくてはいけませんし、そこで、さまざまな義務も関わってきますので、そうした言葉も習得していかなくてはいけません。そして、さまざまな文化にまつわるやり方の違いというものも知っていかなくてはいけないと思います。
 そして、実務面のことを申し上げますと、私たちの法的なアドバイスというのは、1つの法律家のチーム、それから来るものでなくてはいけません。そして、それは1つの目的を目指すチームでなくてはいけないと思うのです。その方がばらばらの寄せ集めのものよりもずっと効果的かと思われます。
 では、次に私たちの今日までの経験のお話をさせていただきたいと思います。私は日本が国際的案件を扱う際に、法的チームが結束していかなかったからうまくいかなかったということを言いたいのでは決してありません。その点は御了承いただきたいと思います。実際に私たちの企業なんですが、過去数年にわたりまして、日本の企業、そして外国の企業、そうした企業が抱える法律家と一緒に連携してまいりまして、そして、案件を推し進めてまいりました。しかし、概して申し上げますと、そこで経験したことというのは、満足というものにはほど遠く、そして、ほかの金融市場で得られるような一貫性というものからはまるで懸け離れたものでした。
 まずここで例を挙げて少し説明していきたいと思います。日本の法律家という意味では、国際的な経験を持つという法律家は圧倒的に数の面で不足しているように見受けられます。非常に主要なM&Aの案件、そういった案件を扱う際には、経験のある法律家の数が限られているため、ある一部の企業がそうした経験のある法律家を持っていってしまうと残りの企業は、2番目の弁護士で甘んじなくてはいけないということになります。
 そして、弁護士の数を上げていこうという努力はなされていたんですけれども、そうしたことを考える際に、日本人と非日本人の企業が提携する際のバリアーを取り払ってしまうということを行えば、時間の面でも早くなりますし、また、アドバイスを与える弁護士の質というのも上がっていくかと思います。
 ここで最近の例を述べさせていただきたいと思います。ここでは非常に主要な法律事務所からアドバイスを受けた日本の企業、そうしたビジネスを私たちは扱いました。そこでの案件というのは非常に複雑なオフショアという形のものでした。その案件を扱う際に、私たちのグループも、本社にあります法律家のグループがあるんですが、そこで聞いた話によりますと、そこで弁護士の倫理の対立が起こり、そして、時間的な意味で非常に非効率だったという話です。
 そうした懸念が余りにも強かったので、実際に私たちはその後でM&Aの案件を受けるときには、やはり外国の企業を外国の法律事務所に依頼することによって誤解を避けるというアプローチを取りました。実際に私たちのクライアントというのは、非常にベースが広く、そして、私たちは世界でも有数の金融グループだと自負しておりますが、私たちの経験が語っているんですから、その点は信頼していただいてもよろしいかと存じます。
 次に、日本の司法当局で書類を提出しなければならないということがありました。しかし、司法当局というのは非常に忙しいところですし、そういったこともありまして、私たちの仕事というのは非常に時間の面で遅れを取ってしまうことになったわけです。
 司法当局には、金融とかいったことにも経験のある者が少なかったのもその一因と思われます。

○柏木座長 今の「司法当局」は「規制当局」の意味ですね。

○ハウランド−ジャクソン氏 最近なんですけれども、非常に簡単な書類を1枚作成することを依頼したんですけれども、その1枚を作成するだけで4か月も掛かってしまったということです。 最後になりますけれども、やはり1つの案件を取り扱う際に、複数の法律事務所を使うのは好ましくないと思います。勿論、コストの面でも掛かりますと、時間の面でも非効率であるということが言えると思います。
 その次になりますが、現状ということを観測してみたいと思います。私は何も法的な立場から見て、法律家の提携の自由化の促進とか、そういったことを言おうとするものでもありませんし、また、法律的資格であるとか、独立性の話をするというのもまた別の議題だと思います。
 そういったことを述べるのでなく、ここでは私のヨーロッパとアジアにおける過去30年近くの経験から、より実務的なお話をさせていただきたいと思います。
 私たちのようなグループ企業からは、間違いなく法律的サービスに関しましては、ワン・ストップ・サービスを求める声が高まっています。日本というのは世界第2位の経済大国ですから、そこでは日に日に法益をまたぐ形での取引というものが非常に重要性を増しており、また、その数というのも増えております。
 しかし、G7の経済大国の中で、法的なサービスへの規制緩和を行っていないのは、恐らく日本だけだろうと思われます。
 アメリカ、イギリス、ドイツ、そして世界の各国を見ても、こうした自由な連携を取るという動きはどんどん進んでおりますし、それによって水準が下がった、あるいは各国企業のビジネスが失われたという報告は受けておりません。
 むしろその反対に、各国の水準は上がり、そうした国々での市場というのはより魅力的なものとなって国際的なビジネスが推進されております。そうしてまた、こうした企業というのは、より新しいチャンスをつかんで成長を遂げているというのが実情でございます。
 過去30年にわたりまして、世界的な勢いでグローバリゼーションが進み、そして通信技術も発展してまいりました。それによって主要なビジネスの分野では規制緩和が進んでまいりました。というのも、やはり経済的に見てまいりますと、こうした保護政策を取り、新規参入を阻んでいくというのはもはや意味をなさなくなってきたからです。
 銀行、証券、保険、そして会計の分野で規制緩和が進んでいるのですから、日本の法律業界も緩和という波を受け入れてもいいのではないでしょうか。
 4番目になりますけれども、これは今、危険にさらされているというのは、まさに日本の企業、そして商業というものの競争力だと思います。法律事務所間の連携を進めていくということは決して外国法律事務所による一方的な陰謀ではないと思います。むしろ日本、外国の企業というものが現代化を推し進めることによって、相互に利益を得ていくチャンスだと考えています。これはまた、日本の銀行の問題にも少しつながることがあるかと思うんですけれども、規制緩和を進めていかなかったことによって、今の銀行業界は問題に直面しているのではないか。同じような問題が法律業界にも当てはまるのではないかと思います。
 最後になりますけれども、やはりこうした連携を自由に推し進めるかどうかということは、日本の法律業界が決めていけばいいことだと思います。もし連携を推し進めることに何もメリットがないと感じるのであれば、それは無理にやる必要は全くないと思います。しかし、選択肢を広げることに何の問題があるのでしょうか。
 本日は御清聴いただきまして、どうもありがとうございました。

○柏木座長 どうもありがとうございました。
 大分時間が遅れておりますので、どうしてもという御質問だけに限らせていただきたいと思います。

○下條委員 現行の特定共同事業でなぜいけないのかというのが余りよくわからなかったものですから、その点についてお尋ねしたいと思います。もし、イギリス法と日本法が関連する案件を御依頼するのであれば、イギリスの法律事務所と日本の法律事務所が特定共同事業をやっているところへ行けばよいわけで、そういう意味で、現行の制度でなぜいけないのかという点がはっきりしなかったものですから、その点をお願いします。

○ハウランド−ジャクソン氏 日本におけるハイブリッドファームと言っていましたけれども、そういったものに対する経験は余りないので、その点は御了承いただきたいと思います。でも、私の立場から言わしてもらいますと、日本における外国企業という立場なんですけれども、このハイブリッド企業にアクセスする、そのアクセスというのは必ずしも日本企業と外国の企業は同じではないということです。
 これでお答えになっていますか。

○柏木座長 要するに、ハウランド−ジャクソンさんは、特定共同事業に対する規制の内容はよくわからないけれども、双方にアプローチをしてみると、特定共同事業にアプローチするのと、総合的な法律事務所にアプローチするのとでは感覚が違うとおっしゃりたいのではないですか。彼はクライアントの立場だから、特定共同事業の中のシステムは外部の人にはなかなかわからないでしょう。

○ハウランド−ジャクソン氏 やはり外資系の企業というのは、そういった障壁というのは消えてほしいと思っているわけです。私もやはり日本の企業のためにそういった障壁は消えた方がむしろいいと思っています。現在の日本というのは、経済的に非常に苦しい立場にありますし、将来的にビジネスというのも変わっていかなくてはいけないと思います。
 日本の企業は、そういったところでいろいろな制限を受けるべきでない。逆に規制を撤廃していった方が利益を得ることになるのではないかと思います。
 先ほど申し上げたハイブリッドな会社、こういったものは方向的には正しい方向に向かっている。しかし、それがすべての解決策ではないと思います。

○乗越委員 日本のファームスとおっしゃったので、日本の法律事務所のことだと私は理解いたします。

○柏木座長 それでは、ハウランド−ジャクソンさん、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に論点整理について事務局から御説明をお願いします。

○齊藤参事官 一応本日をもちまして、弁護士と外国法事務弁護士との提携、協働というテーマについてのヒアリングがひととおり終わりました。そこで次回の検討会では、この弁護士と外国法事務弁護士との提携、協働というテーマを中心としました、外弁制度の改革に関する論点整理を行いたいと考えております。
 事務局の基本的な考え方ですが、法務省、日弁連等の説明や、これまでヒアリングした結果などを踏まえまして、まず、論点項目のたたき台を事務局の方で作成させていただければと考えております。
 次回の検討会に、そのたたき台を中心としまして御議論いただいて、その上で、論点の整理を完成させたいと考えています。
 たたき台の作成要領なんですが、基本的には事務局の方でさせていただくとしまして、たたき台は次回の検討会にあらかじめ事前に配付したいと考えております。
 そこで、委員の方々からは、事前、または事後に御意見があれば、積極的にお出しいただきたいと思います。
 事前にお出しいただければ、その御意見も参考にしながら、論点のたたき台を作成させていただきたいと思います。もしも、事後にでも結構ですので、ペーパーでいただければ、次回の検討会にはそれもすべて委員の皆様に配付させていただいて、その上で十分議論を尽くしていただきたいと考えております。
 大体そんな要領で、まず論点整理をさせていただいて、その上で本格的な制度論についての御議論などをいただきたいと考えております。

○下條委員 そのドラフトは大体いつごろできる予定ですか。

○齊藤参事官 次回が5月17日ですので、それに対してあらかじめということですので、1週間前か、早ければ2週間くらい前までに、たたき台として配付させていただきたいと思っています。

○乗越委員 もう一方意見聴取をする予定とおっしゃいますが、それは次回ですか。

○齊藤参事官 あとは小島先生なんですが、小島先生は本来実務家でもユーザーでもありませんので、どちらかというと、ある程度御意見にわたる御説明をいただけるのかなと考えておりますので、次回にというふうに考えております。

○乗越委員 一応たたき台の議論に使える時間というのは、2時間とか、そのくらいはいただけるということですか。

○齊藤参事官 はい。

○柏木座長 そのほか御質問ございますか。
 それでは、予定した時間となりましたので、次回の予定につきまして、事務局からお願いします。

○齊藤参事官 次回は5月17日でございますが、今申し上げましたように、小島先生のヒアリングと、論点整理についての御議論をいただきたいと考えております。よろしくお願いします。

○柏木座長 それでは、第5回「国際化検討会」を閉会させていただきます。本日はお忙しい中ありがとうございました。