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司法制度改革推進本部顧問会議(第11回)議事概要



1 日 時  平成15年7月1日(火) 17:00〜19:15

2 場 所  永田町合同庁舎2階第1会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
森山眞弓副本部長(法務大臣)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、井上正仁裁判員制度・刑事検討会、公的弁護制度検討会座長 他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 司法ネット(仮称)について
(3) 司法教育について
(4) 今後の立法課題等に関する検討会における検討状況について
(5) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
事務局資料
1−1 司法ネット(仮称)について
1−2 司法アクセス検討会・有識者懇談会における主な意見
1−3 司法ネット(仮称)に関する有識者懇談会議事概要
2    検討会の検討状況
3−1 裁判員制度・刑事検討会について
3−2 検察審査会制度について
3−3 裁判員制度について
3−4 刑事裁判の充実・迅速化について(その1)
4−1 公的弁護制度検討会について
4−2 公的弁護制度について(1)
4−3 公的弁護制度について(2)
4−4 第6回公的弁護制度検討会における論点(案)
 
文部科学省資料
司法や法に関する教育について
平成16年度開設予定の法科大学院の設置認可申請(計画)状況
 
法務省資料
移動教室・出前教室・刑事裁判傍聴プログラムについて
 
最高裁判所資料
司法教育の試みについて
裁判所へ行こう
法廷ガイド
裁判所ナビ
 
日本弁護士連合会資料
弁護士・弁護士会による法教育の取り組みと試み
市民のための法教育シンポジウム2003 [ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ]
 
小島顧問提出ペーパー

6 会議経過

(1) 司法ネット(仮称)について

ア 司法ネットに関する状況について、司法制度改革推進本部事務局(山崎事務局長)から、6月5日に開催された「司法ネット(仮称)に関する有識者懇談会」の報告も含めて、資料(1−1から1−3)に基づいて説明があった。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 先日の司法ネットに関する有識者懇談会は有意義なものであった。特に松本弁護士の公設法律事務所での実体験に基づいたお話、片山鳥取県知事のお話はよかった。司法ネットについては、法務省における検討や自由民主党における検討が本部の検討にどのような影響を与えるか気にかかる。司法ネットは、ユーザーにとって使い勝手がよいことを重要視してほしい。アクセスできて、安心できるイメージが必要。そうは言っても、国民・住民が自立しないと、なんでも紛争を司法に持ち込まれたら、弁護士、裁判官をいくら増やしても仕方がない。どのように意識づけをしていくかについても明確な考え方を出していく必要があるのではないか。また、片山知事等もおっしゃっていたように、住民に近い自治体が積極的に前に出て対応するなど、地方分権の発想をもった方がよい。さらに、IT化も必要。地域のアクセスポイントについては、独立行政法人という意見が強く出ているようだが、意見が分かれるところであると思うので、しっかり議論していただきたいし、また、地域に近づけば近づくほど、アメリカのように、NPOを活用することも考えるべきではないか。
    (事務局から、司法ネットに関する法務省の方針が決まったということではなく今後の検討課題という段階であると承知していること、自由民主党はこの件に限らず当方が検討している課題について同時並行で議論しているということであって、政党の意見も含め様々な意見も踏まえて検討会で十分議論していただきたいと考えている旨説明があった。)
    (佐藤座長から、現状認識として、かなり法的需要があることを前提として考え、その需要にどのように対応していくということでよいのではという旨発言があった。)

  • 今までの日本の国の運営は、国民のニーズが沸きあがってくる前に過度に保護・干渉し、国民の個の力をそいでいるというのが私の認識。司法へのアクセスについても、本来個人で解決できるところを個人で解決せず、国がなんでも与えることになることを心配している。司法へのアクセスのニーズはあるのだろうから、困っている人に対する案内は必要だろう。ただ、あまねく常設のものをつくるとなるとまたお金がかかるので、例えば月に一回キャラバンのような形で法律相談することや、インターネットで誰かに相談できるようにすることなど、やり方の工夫が必要だろう。

  • 独立行政法人という形で打ち出すには工夫がかなり必要であろう。また国が出てきた、行政機関が出てきたということになると、国民の意識との間で難しい面、例えば一種のパターナリズムが再生産されるなどの問題が出てくるのではないか。あくまでも司法ネットであり、その点でも仕組みづくりのところでは、自治体との摺り合わせが重要と考えられ、ぜひお願いしたい。また、すべて整然と整備したところには、かえって厄介なことに巻き込まれるのではないかということでなかなか行きにくい。厳かなところにどうぞと言われても、相談に行きにくい面もあるのではないか。
    (佐藤座長から、自治体との関係は重要であるということには全くの同感であること、また、司法ネットの主体を独立行政法人にするとしても、例えば、NPOを組み合わせることや日本弁護士連合会や司法書士会などの民間団体の努力を引き出していくようなやわらかい仕組みを考える必要があるのではないかという旨発言があった。)

  • 作るものが立派なものであるために利用者が駆け込めないと困るので、気楽に入っていけるようなものにしないといけないという面はあるが、整然としたものにしていただく必要があるのではないか。司法過疎の解消はいつまでもボランティア活動では対応できないのではないか。いわゆる自治医科大学方式、費用は持つので、一定期間過疎地で勤務してもらいましょうというようなことに意気を感じるような人を育てることが重要ではないか。このことは次の議題の司法教育につながるのではないか。
    (佐藤座長から、司法ネットは、ユーザーにとって使いやすく、町医者のように、そこに行って相談すれば安心できる拠点のような役割を果たさないといけないし、たらい回しにならない仕組も必要である旨発言があった。)

  • 司法へのアクセス段階では、この人の問題は次にどこに行ったらよいかだけについて相談にのり、あまりコミットせず、お金もあまりかからないというようにして、その次の段階ではもっと整備したところに相談するように二つの段階に分けることが必要ではないか。また、過疎地の対応は非常に大事なことではないかと思う。

    (佐藤座長から、司法へのニーズは顕著な現状であることを前提として、アクセスポイントを中心とする、ある種のネットワークを構築する必要があること、それは国民が自律的な生活をする上で法を使うことができるようにするためのものであること、地方を含めた利用者のニーズに合わせて、情報、人、具体的なサービスを有機的に結びつけるようなものであること、そこに行けば自分の状況が分かって安心できるようなものにすることが必要であるというのがほぼ一致したことである。具体的な仕組みについては、国が一定の役割を果たす必要はあるが、上から固いものとして実施するのではなく、すでに司法サービスを展開している地方自治体や弁護士会、司法書士会その他関係する民間団体が自発的にかかわれるような仕組みにすることが重要であること、設置主体として独立行政法人が一つの方法であるが、採用する場合には利用者の立場にたって仕組みを早急に詰めていかなければならない旨発言があった。)
    (事務局から、本日の議論を踏まえ検討会で議論をしていただき、次回の顧問会議ではもう少し具体的なもの、イメージをもっていただけるようなものをなるべく提出したい旨発言があった。)

(2) 司法教育について

ア 司法教育に関する検討状況や具体的な取組状況について、文部科学省(金森大臣官房審議官)、法務省(寺田司法法制部長)、最高裁判所事務総局(小池審議官)、日本弁護士連合会(鈴木広報室長)から配布資料に基づいて報告がなされた。また、文部科学省(小松主任大学改革官)からは併せて法科大学院の設置認可申請状況等についても報告がなされた。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 法務省、最高裁判所から、小中学生等に対する司法教育の充実のための施策についてたくさん参加者がいますというような説明があったが、私はこれだけしか参加者がいないのかと感じた。
    (法務省から、参加者は多いと考えているわけではなく、いろいろな制約があるので現状ではこの程度にとどまっているという認識であり、進めていく上でもう一段別の工夫が必要であると考えている旨説明がなされた。最高裁判所から、司法教育について、司法制度改革を踏まえ、数年前から始めたばかりで参加者はまだ多くないので、また努力してまいりたい旨説明がなされた。また、両機関から、初・中学生への司法教育の取組みはホームページで紹介している旨説明がなされた。)
    (佐藤座長から、法務省が新たに立ち上げる司法教育のための研究会に期待する旨、一般的に教科書は司法の仕組み、図式のみ教えているだけで、生きた法の使い方についての教え方が不足しているとの意見がある旨発言があった。)
    (文部科学省から、学校現場に司法の専門家の方に来ていただいたり、有益な教材等を作成していただいて助かっており、法務省の研究会に積極的に参加して協力したい。教科書は主たる教材であり、特に社会科、公民科では司法の仕組みということを中心に記述しているが、司法や法に関する教育全体としては、生活科や特別活動では単なる知識ではなく実際に生活の中で生かされるように工夫が行われているし、特に総合的な学習の時間を活用して、司法教育についても例えば裁判所の傍聴に行ってみるなど実際に身につくような教育が行われることを期待している旨説明がなされた。)

  • 確かに総合的な学習の時間を活用して、司法について体験的に学習するというのはよいことだが、学校現場では時間が足らないという問題もある。学力低下の問題も指摘されており、総合的な学習の時間を司法教育だけに使うことについては難しい問題もあるだろう。本来は土曜日などを活用して、大人と子どもが一緒にやらなければならない。この種の教育については、同じ世代の者のみを集めて行うことには限界があり、特に司法を考えるときにベースにある問題ではないか。世代間を超えていろいろなことが感じられるような仕組みを考えることが課題ではないか。
    (佐藤座長より、学校だけではなく、コミュニティとの連環ということが重要なのかもしれないという旨、この点は司法ネットの話にもつながる旨発言があった。)

  • 少ない時間でいろいろな知識を与えようと、教材等も工夫されており、それはよいことであるが、知識を与えようとするだけでは中途半端になるし、モチベーションをつけることにもならないのではないか。「知識より感動を、感動より実践を」と私は常々主張しているところであるが、法律を勉強してみよう、自立しようなどというモチベーションを読み物や教育で与えるようにすることが重要ではないか。だいぶ工夫がされていることを心強く思うが、さらに子どもたちに感動を与えるよう、読み物や映画などを使ってさらに工夫をしていたたければと考えている。

    (佐藤座長から、司法教育については、やり方につき図書館や公民館を活用しコミュニティと連携するなどの工夫が必要であること、司法教育のコアには、教育の目的や、立法、行政ではない「司法」固有の役割という根本的なものを含めて検討する必要があること、裁判員制度について教え方を考える必要性があることなどを踏まえ、法務省が設置する研究会でこれらについて議論していただきたい旨発言があった。)

(3) 今後の立法課題等に関する検討会における検討状況について

ア 司法制度改革に関する法案の審議・立案状況等について、司法制度改革推進本部事務局(山崎局長)から説明があった後、裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護制度検討会における検討状況について、両検討会の座長である井上正仁教授から資料(資料3−1から4−4)に基づき説明がなされた。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 裁判員制度、検察審査会について意見募集をされたようであるが、どのような意見が提出されてきたのか。募集方法としては具体的なイメージを示してされたのか。
    (井上教授から、たたき台を示して意見募集し、意見の内容については、いろいろあって一言では申し上げれないが、例えば裁判員制度について真っ向から反対という意見もあったし、国民の関与が少ないのではないかという意見など幅広い御意見があった旨説明がなされた。)

  • 裁判員制度について、裁判官と裁判員が一緒になって評決すると説明を受けたが、裁判員の数が裁判官の数より多くすべきという意見はどういう考え方に基づいているのか、決定方法はそれぞれの裁判官、裁判員のグループごとに決定するのか、それとも全員で決定するのか。
    (井上教授から、裁判員より裁判官の人数を多くすべきという意見については、裁判員が参加する以上、裁判員の数が裁判官の数を上回ることが制度の在り方としてよいのではないか、裁判員は専門家の裁判官よりある程度多くしないと主体性を発揮できないのではないかという考えから主張されている一方、ある程度以下の全体の規模でないと詰めた議論ができないのではないか、人数が多くなると参加する人が無責任になるのではないかという意見がある。評決の方法については、最終的に決定していないので、裁判官と裁判員を分けて行うことも理論的にはあり得るが、審議会意見書の「バックグラウンドの異なるものが一緒に協働して事実認定を行い、刑の決定も行うべき」という趣旨を踏まえると、一緒に協議をし、評決するという方法を多くの委員は考えているのではないかという旨説明がなされた。)

  • アメリカの陪審員制度のように、裁判官と裁判員が役割分担をするという制度はどうして否定されたのか。
    (井上教授から、審議会の議論では、陪審制度も一つの在り方であるが、現在の裁判官の裁判のもっているよいところに加えて、国民の健全な社会常識を反映させるため、両者が別々に仕事をするのではなく、コミュニケーションをとりながら、ある結論を出していただくのがよいというのが基本的な発想であった。現在の検討では、そういうことを基本にしながらも、例えば、法律問題の判断、訴訟手続上の判断について裁判員に参加していただくことが適当かという論点があるが、この点については、基本的には裁判官に任せてもよいのではないかという方向の議論になっている旨説明がなされた。)
    (佐藤座長から、日本の場合このような形でスタートしてみようじゃないかということ、将来はアメリカのような形になるかもしれないが、国民の理解の得やすい形でスタートしてみようということで出来たのがこの裁判員制度である旨説明があった。)
    (井上教授から、裁判官と裁判員の数は最大の争点の一つではあるが、この点のみではなく、裁判員が参加しやすい、参加して意味のある、参加、審理の在り方、仕組みを併せて総合的に御議論していただく必要があるのではないかという旨説明がなされた。)

    (佐藤座長から、審議会意見をとりまとめた立場から、裁判員制度の趣旨、国民主権との関係について説明があった。裁判員制度は、国民が主体的、実質的に参加すること、国民自らの制度と受け取ってもらうようにするというのが審議会意見の趣旨である。新聞等で国民主権との関係が議論になっているが、国民主権といってもいろいろな意味があるので、国民主権という大きな言葉でこの問題を論ずることは必ずしも適当ではないと思うが、他方、根底にあるもの、刑事裁判、社会の秩序というのは、他人事、自分たちの問題でないと思われてきたものを国民自分自身の問題に変えようとしているところはあるわけで、その意味では国民主権の理念とつながっているともいえる旨発言があった。)
    (井上教授から、国民主権との関係は難しい問題であって、審議会意見も非常に慎重なものの言い方をしている。司法権も主権者である国民の主権に源をもっており、そこから負託されていることを行うものであることは間違いない、国民にも責任の分担をしてもらい、司法にも参加していただくことは司法にとってもよいことであるし、そのことを通じて国民の方が自覚を強めていっていただくということは審議会でも一致したとらえ方であったのかなと思っている旨説明がなされた。)

(4) 森山副本部長から概要以下のとおり挨拶がなされた。

 いろいろお話をたくさん聞かせていただき感謝する。司法ネットについては、私も先日の有識者懇談会も傍聴させていただき、座長もおっしゃられたように運営のやり方が非常に難しいと思っている。既に、日本弁護士連合会、市町村等による自主的な取り組みが行われており、それがさらに普及することが望ましいので、政府が行うに当たってよい方法を考えなければならないと思っている。司法教育については、それぞれの機関が工夫されているようで、これからさらに協力してよりよいものにしていただきたいと思っている。裁判員の問題については、いくかの論点についてお話して下さったが、それらを集中議論、審議などしていただき、整理し、よい結論を出していただければと思っている。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり