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司法制度改革推進本部顧問会議(第9回)議事概要



1 日 時  平成15年2月6日(木) 18:00〜19:40

2 場 所  総理大臣官邸大会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、
森山眞弓副本部長(法務大臣)、上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)、
古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、高橋宏志司法アクセス検討会座長、青山善充仲裁検討会座長、
柏木昇国際化検討会座長、伊藤眞法曹制度検討会座長 他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 内閣総理大臣あいさつ
(3) 平成15年通常国会提出予定法案について
(4) 検討会の検討状況等について
(5) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
  1. 裁判所における手続の迅速化に関する意見募集の概要
  2. 裁判の迅速化に関する法律案(仮称)について
  3. 仲裁法案(仮称)について(概要)
  4. 法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣制度について(概要)
  5. 裁判所法、民事訴訟法及び民事訴訟費用等に関する法律の一部改正について(概要)
  6. 民事調停法・家事審判法の一部改正について(概要)
  7. 弁護士法の一部改正について(概要)
  8. 国際化検討会の議論の方向性
  9. 検討会の検討状況
  10. [法務省資料]民事訴訟法等の見直しの概要 ほか
  11. [最高裁判所資料]下級裁判所裁判官指名諮問委員会のイメージ ほか

6 会議経過

(1) 開会の後、小泉本部長から、概要、以下のとおり、挨拶があった。
 今国会では、第一審の訴訟が二年以内に終わることを目指した裁判の迅速化に関する法案を提出する。
 あわせて、司法制度改革に関する一連の法案を提出するが、その中には、民事執行制度を強化する法案も含まれている。一旦、判決が下っても、それを実行するための競売手続が迅速かつ円滑に行われなければ、迅速な不良債権の処理もおぼつかない。これまで、多くの競売物件に「占有屋」が居座り、手続の円滑な執行を妨げていることが大きな問題とされてきた。今回の法案は、頼りがいのある司法の実現に寄与するものであり、我が国の経済再生にも不可欠であると考える。
 更に、司法は「高嶺の花」にとどまらないで、誰にとっても「手を伸ばせば届く」存在にならなければならない。そこで、法的紛争を抱えた市民が気軽に相談できる窓口を広く開設し、きめ細やかな情報や総合的な法律サービスを提供することにより、全国どの街でもあまねく市民が法的な救済を受けられるような司法ネットの整備を進める必要がある。
 顧問の皆様には、司法制度改革の推進のために、一層の御支援をお願いする。

(2)(平成15年通常国会提出予定法案について)

ア 山崎事務局長から、「裁判の迅速化に関する法律案」について、「裁判の迅速化」に関する国民からの意見募集の結果の概要について報告がなされるとともに、「裁判の迅速化に関する法律案」の概要について説明がされた。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 「充実」とはどういうことであるのかを明確にすべきではないか。国民にとっても、裁判所が納得のいく審理をしてくれるのかという点が心配なはずであり、意見募集の結果でもそのような意見が相当数あったのではないか。単なる「迅速」だけでなく、「充実した審理なしに迅速化はありえない」ということを法曹三者に認識いただきたいと意味も含めて、丁寧にかつ効率よく迅速化するものであることを打ち出していただきたい。
    「迅速化に関する検証」を行うとあるが、裁判所が行うというのでは、自己評価となってしまって、ユーザー側の視点が入らないのではないか。ユーザーも参加できるような第三者的な評価機関が必要ではないか。
     「司法ネット」の整備なども含めて、どのように裁判が変わるのかということがビジュアルに国民にわかるようなメッセージを出す必要があるのではないか。
    (事務局から、「充実」については、前回の顧問会議での御指摘も踏まえ、法案の概要には相当程度盛り込んだつもりである。また、「検証」については、具体的な事件の進行状況を把握した上で実施するものであり、裁判所以外の者が行うのでは、司法権の独立に影響を与えるおそれがあるため、最高裁に委ねた上で、他の法曹二者にも協力いただくとともに、その意見を反映できるような工夫を検討する必要がある旨説明がされた。)

  • 改革を具体的に実現するためには、いかに実行するかという仕掛けが必要である。裁判の迅速化についても、充実かつ迅速な裁判の実現を具体化する制度的な仕掛けが必要ではないか。
     例えば、情報の偏在が審理が遅くなる原因となっており、両当事者が初めから証拠を共有してそれぞれの立場から判断を加えられるよう、捜査当局などの行政機関が情報の提供・開示をするような仕組みが加わると迅速化に資するのではないか。
     また、ITは強力な武器となるはずであるから、司法についてもIT戦略と連携するなどによって、具体的な方策を検討すべきではないか。
    (事務局から、刑事訴訟に関しては裁判員制度・刑事検討会で議論しているところであり、民事訴訟に関しては法務省から法案を提出することになる旨説明がされた。)

  • 弁護士の地域的な偏在の問題については、これまでも弁護士会においても努力されてきたが、行政の方でも、地方自治体の協力を要請しつつ、ITの活用や「司法ネット」の整備などについての方策を拡充する方法を考えるべきではないか。
    (佐藤座長から、迅速化の前提となるべき「充実」の具体的なイメージを示すことを考えてもよいかもしれない。
     司法改革を推進していくには長い時間がかかるものであり、顧問会議の設置期間である3年を過ぎた後も、ユーザーや国民の立場からどのように改革が進んでいくのかを見守る仕組みを考える必要があるかもしれない。
     司法ネットの整備に関しては、国民が全国で質の高いリーガルインフォメーションを受けることができるようにすることが重要であり、司法教育の問題とも関わってくる。弁護士会でも努力いただいているが、国としてもなお取り組むべき課題があるのではないかと思われるので、今後さらに議論していきたい旨発言があった。)

ウ 山崎事務局長から、その他の平成15年通常国会提出予定法案として、仲裁法案(仮称)、法科大学院への裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣制度、裁判所法・民事訴訟法・民事訴訟費用等に関する法律の一部改正、民事調停法・家事審判法の一部改正、弁護士法の一部改正、国際化検討会の議論の方向性について、概要及び今後のスケジュールについて説明がされた。

エ 続いて、房村法務省民事局長から、法務省から提出を予定している民事訴訟法等の見直しの概要について説明がされた。

オ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 「占有屋」の問題は、極めて深刻である。不良債権処理が進まない原因となっており、破綻企業の買収を専門とするいわゆる「ハゲタカファンド」も活動できない。外国の論文にも、日本は安全な国ではなく、ヤクザ資本主義の国だと指摘されているくらいである。一刻も早く法律を制定・施行してもらいたい。
     法科大学院への派遣制度については大変結構だと思うが、公務員がフルタイムで法科大学院に派遣されることによって、技術面での画一的な教育ばかり行われることになり、創造性を重視する法科大学院の趣旨と異なって、司法研修所の出張所のようになってしまわないか。実力のある大学であれば自主性を重んじることができるであろうが、力の弱い大学だとどうなるか心配である。
    (事務局から、実務の基礎的な技術については法科大学院で教えることとしており、技術面の教育を無くしてしまうわけにはいかないが、法科大学院ではさらに幅広い内容の教育をしてもらうことになる。また、教員派遣を要請するかどうかは、法科大学院側の判断である旨説明がされた。)
    (法務省から、占有屋が深刻な問題となっていることは御指摘のとおりである。今回、様々な点で制度を改善し、また、罰則を強化することとしたところであり、これによって円滑な執行が可能となるようできるだけ早期に法律を成立させたい旨説明がされた。)
    (青山座長から、大学関係者の立場から見れば、実務トレーニングが中心となっている司法研修所とは異なり、法科大学院では理論教育が中心となるはずであり、両者は区別されると考えている。法科大学院側では、どのようなカリキュラムを組むべきかを検討しているところであり、教員として実務家が派遣されたとしても、カリキュラムの体系の中で活動してもらうことになるはずである旨発言があった。)

  • 占有屋の存在は、司法に対する信頼観にも影響を及ぼす問題であり、このような商売が割に合わないものとなるよう、刑罰の程度を考えるべきである。
    (佐藤座長から、実効性の確保は司法制度改革の重要な課題の一つであり、今回の法改正でこれが具体化することを期待する旨発言があった。)

  • 大学側としては、裁判官等は大学教員とは給与に差があるため、教員として来てもらえないのではないかと不安に思っていたので、給与面が手当てされるのは安心である。
     ただ、法科大学院には規模に差があり、地方の大学などでは、優秀な裁判官等に派遣を要請しても同意してもらえない場合もあるのではないか。
    (事務局から、派遣制度は大学と個々の裁判官等が直接交渉するシステムではなく、法科大学院側が希望する経験年数・内容や科目を一括して人事当局で受けて、できるだけ希望に沿った者を派遣するよう工夫する旨説明がされた。)
    (佐藤座長から、大学は、様々な立場の先生や学生がいる中で学風を形作っているものであり、数人の実務家が教員として派遣されたからとしても、これを損なうようなことを懸念する必要はないのではないかという旨発言があった。)

  • 派遣された者を受け入れるかどうかを大学側が選択することはできないのか。実務経験があることと教える技術は別なのではないか。
    (事務局から、派遣される者に対して研修を実施することも検討している。逆に、大学の先生方に実務を知っていただくことも必要である旨説明がされた。)
    (佐藤座長から、法科大学院では教育方法が一般の大学と相当異なることになると思われ、大学側にも心配はあるが、第三者評価が行われ、教育内容が第三者に監視されることでもあり、教材も複数作成されることでもあるので、実施する中で改善していくしかないのではないかという旨発言があった。)

  • 法科大学院にとって実務家の方々を教員として迎えることは有益であると考えているが、大学側としてもいくつかの懸念がある。例えば、派遣される者が「その身分を保有したまま」教員となるというのは、派遣の期限を限って、任期の間は教員に徹して任期終了後には元の身分に戻ることができるということだけ意味しているのか、何かそれ以上の意味があるのか。また、特に私学にとっては、一般の教員と異なる待遇の者がフルタイムで来るとなると、混乱を生じるおそれがある。このような懸念を低減させるため、原則としてパートタイムに徹することにすればどうか。
    (事務局から、任期が相当程度長期になるという趣旨ではない。また、フルタイム型とパートタイム型の比率は、法科大学院側の要請や派遣元の都合等もあるので、一律に定められるものではない。現実に大学側からの要請があるまではっきりしないが、大規模な法科大学院で講義を持つとなると、フルタイム型でなければ対応できないのではないかと考えている旨説明がされた。)
    (伊藤座長から、大学関係者の立場からみれば、科目の講義のみを受け持つのであればパートタイム型でもよいのかもしれないが、実務関連教育の全体に責任を持ってカリキュラムの作成等に携わるのであれば、フルタイム型でないと対応できないのではないかという旨発言があった。)
    (佐藤座長から、中央教育審議会において検討した法科大学院の設置基準では、法科大学院の専任教員の概ね2割、最小限の人員構成でいうと、全専任教員12名のうち3名が実務家であるべきであり、そのうち1名を常勤として、残りの2名は非常勤でもよいが6単位程度を受け持ってもらいたいという仕組みとなっている旨発言があった。)

  • 実務家の割合は2割程度でよいのか。ハーバード大学のロースクールではほとんどの教員が実務家であると聞いているが、我が国もいずれはそのようになった方がよいと考えるのか。
    (佐藤座長から、実務家とはどういう者を指すのかということが将来的には相対的なものとなっていくのかもしれないが、法科大学院の立ち上げの段階における全体的な国の教育戦略として、このような数値を提示したものと理解していただきたいという旨発言があった。)

  • 国際化に向けたインフラの整備として、日本の法律を英語訳することも重要ではないか。翻訳のプロセスを通じて法律の内容が明確になり、一般の者が活用しやすいものとなることも期待できるのではないか。
    (柏木座長から、日本の法律の信頼できる英語訳がないということについては、国際化検討会においても論点整理の際に出てきた問題であり、今後検討していくことになる旨発言があった。)

カ 佐藤座長から、裁判の迅速化に関する法律案を含め、平成15年通常国会に提出予定の法案については、本日の議論を踏まえつつ、本日説明を受けた方向で立案を行うということでよいかという旨の発言がなされ、了承された。

(3) 山崎事務局長から、検討会の検討状況等について、資料9に基づいて説明がなされ、法曹制度検討会においては、下級裁判所の裁判官の任命手続を見直すため、最高裁規則で、最高裁に下級裁判所裁判官指名諮問委員会を設けることが適当ではないかとの意見となった旨説明がなされた。
 続いて、伊藤座長及び小池最高裁判所事務総局総務局審議官から、下級裁判所裁判官指名諮問委員会の件について発言があった。

(4) 森山副本部長から、概要、以下のとおり挨拶がなされた。
 本日は、顧問の皆様には熱心な御議論をいただき感謝する。皆様の御熱意が実現されるようがんばってまいりたい。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり