司法制度改革審議会第4回議事録

(別 紙)

1999年10月05日

第4回司法改革審議会へのメモ

中 坊 公 平

第1 司法改革の基本的視点 ―21世紀社会を展望して―

1 21世紀の日本社会 ― 自立と参加を基調とする分権型社会
 日本は、21世紀にむけて、官僚主導の中央集権型社会から市民主体の分権型社会へと大転換が求められている。
 分権型の社会は、自立した市民が、その創意と責任のもとに、主体的に地域社会をはじめとするコミュニテイを担い、法の支配を貫徹しつつその個性的で豊かな発展を目指すものである。

2 21世紀の日本の司法 ― 市民の司法
 21世紀に向け、わが国の司法の根本的な変革の方向を一言でいえば「官の司法」から「民の司法」への転換である。
 現在の裁判所は中央集権型の官僚組織となっており、地域社会に基盤を持っていない。官僚組織の中で育てられ、官僚組織に身を置く国家公務員たる裁判官が数年ごとに各地域を移動して裁判を行う仕組みである。それは、裁判官が、現実のユーザーたる地域住民に顔を向けてその地域社会のために裁判をするには不似合いな制度である。現に裁判は利用者である市民にとって縁遠く利用しにくいものになっている。
 日本社会の分権型への転換に対応して、司法も地域指向型にその構造が変革されなければならない。
 裁判所は地域社会にしっかりと根をおろし、地域社会もこれを支える関係が形成される必要がある。裁判官の官僚性と裁判官に対する官僚的な統制の余地はできる限りなくさなければならない。裁判官が地域社会から遊離し、官僚組織中央の意向と自らの昇進・昇給に気を使うようでは、裁判の独立は覚束ず、住民の権利の保障も危うくなる。
 市民は、わが町の、わが裁判所を作る権限と責任がある。地域志向型の裁判所は与えられるものではなく、市民が主体的に作るものである。市民は、その社会の中でわが裁判官を育て・選び・見守り・支えなければならない。法曹一元制度や陪審・参審制度の思想もここにある。

第2 審議項目の骨格についての提案

 「司法の担い手に関する改革」と「司法の利用・運営に関する改革」の二つに分けて考える。ただし、アクセスを容易にし権利実現の方策を充実させることが法曹人口をさらに必要とさせるなど、両者は密接に関係している。

1 司法の担い手に関する改革
(1) 法曹養成
(2) 法曹人口
(3) 弁護士のあり方の改革(弁護士の市民社会への責任と主体的改革)  ① 弁護士人口の増加
② 弁護士のアクセス障碍の解消
 弁護士過疎解消(公設事務所・法律相談所の全国展開)、法律事務所の法人化、共同化および総合事務所化、弁護士報酬制度等の改革。
 広告規制の見直し。広告内容の適正性を確保する施策と、弁護士情報(評価制度等の検討を含む)の公開(広報)を推進する。
 ③ 弁護士の業務範囲の拡大(弁護士法30条改正を含む)
 ④ 公益への奉仕義務の強化
 イ) 公益的職務(裁判官候補への指名を含む)就任要請の尊重義務
 ロ) 当番弁護士、法律相談、法律扶助やプロ・ボノに従事する義務
 ⑤ 弁護士倫理の確立
 ⑥ 関連資格者との協働と調整
(4) 裁判官制度の改革  ① 法曹一元制度
 ② 陪・参審制度
 ③ 裁判官の身分保障と市民的自由の確保
 ④ 裁判所の人的・物的設備の充実
(5) 検察官制度の改革  ① 検察のあり方について
 ② 起訴独占・起訴便宜主義のあり方
 ③ 新しい犯罪等への対応

2. 司法の利用・運営に関する制度改革
(1) 法律扶助の抜本的拡充
(2) 刑事被疑者弁護制度等の実現
(3) 公設事務所と法律相談所の設置策
(4) 行政に対する司法のチェック機能の充実
(5) 代替的紛争解決制度(A.D.R.)の構築
(6) 市民の権利を実現するための法律改正・制定
(7) 司法予算の増額

第3 実現へのタイムスケジュール

1.法律の改正に関しては、本審議会終了後2年以内に成立を目指す。

2.予算措置および法曹人口の増加を必要とする課題に関しては、2~3年度毎の制度の達成目標を設定して、2010年までにすべての制度の実現をはかる。

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