別紙3
法 務 省
1 趣旨
弁護士が法人組織によって法律事務を取り扱う道を開き,その業務の共同化を促進するとともに,その業務提供の基盤を拡大・強化し,高度に専門化した質の高い多様な法律サービスを安定的に供給することを可能にすることによって,複雑・多様化する国民の法的需要に的確に応え,その利便性を向上させることなどを目的とする。
2 概要
(1) 設立
弁護士のみが,弁護士法第3条に規定する業務を行うことを目的とする法人(「弁護士法人」)を設立することができるものとする。設立の方式については,準則主義によるものとする。
(2) 業務範囲
弁護士法人は,基本的に、自然人たる弁護士が行い得る業務をなし得るものとする。
(3) 業務執行
原則として,全社員が,業務執行権限・代表権限を有するものとしつつ,特定の事件について業務執行を担当する社員を指定することができるものとする。指定がされた場合,指定事件については,指定を受けた社員のみが,業務執行権限・代表権限を有するものとする。
(4) 社員の対外的責任
弁護士法人がその債務を支払うことができない場合には,原則として,全社員が無限連帯責任を負うものとするが,指定事件について依頼者に対して負担した弁護士法人の債務については,指定社員(指定社員であった者を含む。)が,連帯してその弁済の責めに任ずるものとする。
(5) 従たる事務所
弁護士法人は従たる事務所を設けることができるものとする。
(6) 弁護士法人の監督
弁護士法人は,弁護士会及び日弁連の会員になるものとし,これらの監督を受けるものとする。
2 外弁制度に関する要望
我が国の外弁制度について,米国やEU諸国等から,○外国法事務弁護士と日本の弁護士のパートナーシップや雇用に係る制限の廃止,○職務経験要件の廃止ないし緩和などの要望が出されていることについては,既に第29回会議の審議の際に説明したが,その後も,欧州ビジネス協会(EBC)や英国等から法改正についての要望が出された。
(1) 欧州ビジネス協会(EBC)からの要望
昨年11月16日に,駐日欧州委員会代表部大使が法務事務次官を表敬訪問した際,欧州ビジネス協会(※1)作成の「新千年紀の課題(日本の商環境に関するEBC報告書)」と題する白書(別添資料2参照)を提出した。この白書の中で,外国法事務弁護士と日本の弁護士とのパートナーシップの禁止の撤廃や外国法事務弁護士による第三国法の取扱いの要件の緩和の問題が取り上げられており,また,我が国の特定共同事業制度の問題点として
イ 特定共同事業を組んでいる外国法事務弁護士事務所と日本の法律事務所との間に会計の分離や人的分離などのうわべだけの障壁を維持することは困難であり,このように共同事業の当事者の分離を義務づけること(※2)は,共同事業の存在理由,即ち,総合的な法律サービスの効率的な提供を事実上消滅させること
(※1) 欧州ビジネス協会(EBC)とは,13か国からなる欧州商工会議所及びその他の駐日経済団体を代表し,貿易政策を提言する機関である。
(※2) 外弁法第49条の4は,「(特定共同事業の)届出をした外国法事務弁護士は,その事務所の名称に,特定共同事業を営む旨及び特定共同事業に係る弁護士の事務所の名称を付加しなければならない。」旨規定し,また,日本弁護士連合会制定の会規である「特定共同事業に関する規定」第3条は,「特定共同事業を営もうとする弁護士及び外国法事務弁護士は,同一の場所においてそれぞれの事務所を設置しなければならない。」と規定している。
(※3) 平成13年1月10日現在の外国法事務弁護士数は149人であるが,特定共同事業の届出事務所数は10であり,特定共同事業を行っている外国法事務弁護士数は20人である。
(2) 英国からの要望
昨年12月12日付けで英国大法官(※4)から法務大臣あてに我が国の外弁制度の問題点や改善要望をまとめた書簡(別添資料3参照)が送られた。同書簡も,外国法事務弁護士と日本の弁護士とのパートナーシップや雇用に係る制限の廃止等を求めており,その前提として,我が国の特定共同事業制度の問題点について,欧州ビジネス協会と同様に,特定共同事業を組んでいる外国法事務弁護士事務所と日本の法律事務所の分離を義務づける規制による弊害を指摘している。
(※4) 大法官とは,内閣の一員であると同時に,上院議長となるほか,上院が最高裁判所の権能を有していることから,司法機関の長の立場にもある。
(3) 外国法事務弁護士協会等からの要望
法務省では,第29回会議以後も,平成10年改正法の運用状況を注視しつつ,外国法事務弁護士協会等からヒアリングを行うなどして,外弁制度に関する実情・ニーズの把握に努めているところであるが,その中で,外国法事務弁護士協会等は
イ 外国法事務弁護士による日本の弁護士の雇用の許容も含め,両者の提携の在り方を更に自由化することによって,日本の弁護士の国際性や専門性を強化し,クライアントに対し,より良質なサービスを提供することが可能になること
イ 同一場所に事務所があったとしても,異なる法律事務所(外国法事務弁護士事務所と日本の法律事務所)に所属する者の共同による法的意見書は,1つの国際法律事務所に所属する者による意見書に比べ,クライアントの信用を得ることができないこと
(※1)「規制改革についての見解」(第3次見解)は,規制改革委員会が平成12年12月12日に提言したものである。
規制改革委員会(平成11年4月6日に規制緩和委員会から名称変更)は,「規制緩和の推進等」について(平成9年12月20日閣議決定)に基づき,行政改革推進本部長(内閣総理大臣)の決定により,平成10年1月26日に行政改革推進本部の下に設置されたものであり,政府の「規制緩和推進3か年計画(再改定)(平成12年3月31日閣議決定)」に係る各事項の推進状況の監視や新たな課題への取組等の活動を通じて,規制緩和の着実な推進を図ってきた。
第3次見解は,同見解が提言した規制改革の実施を確実なものとし,規制改革を強力に推進するため,政府が平成13年度を初年度とする新たな規制改革推進のための3か年計画を年度内に策定すべきである旨提言している。
(2) 第3次見解の内容
弁護士の報酬規程について,「あくまでも目安であるとされているが,
i) 弁護士が報酬全額を免除することができるのは,依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるときに限られる
ii) 依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるとき以外は,民事事件の場合で,着手金及び報酬金の増減の範囲を基準額の30パーセント以内としたり,着手金の最低額を10万円としている
など,問題がある。」とし,結論として
公認会計士,弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士及び社会保険労務士の6資格についても報酬規程を会則記載事項から削除すべきである。 |
(※2)行政書士及び弁理士については,既に関係法律が改正され(平成11年7月に行政書士法が,同12年4月に弁理士法がそれぞれ改正),報酬規定を会則記載事項としないこととされている。
2 強制入会制度,懲戒の在り方等について
(1) 第3次見解までの流れ
弁護士等の専門資格者の強制入会制度については,規制改革についての第2次見解において,「法律により強制入会制を採ることについては,以上述べたほか,様々な基本的な法制上の問題等もある。こうした事情を十分勘案した上,現在,法律による強制入会制を採っている各資格について,この問題についての検討を深めるべきである。」旨指摘された。また,これと関連して,同見解において,「弁護士会の懲戒の在り方についても,より公正で透明な判断手続を担保するという観点から,抜本的に見直しすることについて検討すべきである。」旨指摘された。
これを受けて,規制緩和推進3か年計画(再改定)においても,「法律による強制入会制を採っている各資格について,その入会制度の在り方について検討を深める。」とされた。
その後,「強制入会制を廃止すべきではないか」が,論点公開で取り上げられた上,「資格者団体の使命と公益性にかんがみ,強制入会制に密接に関連する事項として,資格者団体におけるチェック機能の充実等についての検討が必要ではないか。」として,弁護士の懲戒制度の在り方の見直しも論点として摘示された。
(2) 第3次見解の内容
強制入会制度について,
強制入会制は本来廃止すべきであると考える。 |
強制入会制の在り方については,当面資格者団体における競争制限的行為の排除の状況,チェック機能の強化方策の進捗状況,本来の品位保持と資質の向上に関する業務の実施状況等を注視することとし,その状況を踏まえて改めて検討することが適当であると考える。 |
国民の信頼を確保するための弁護士の懲戒制度が有効に機能するよう,当面の措置として,早急に透明化,迅速化,実効化のための所要の措置を講ずるべきである。 |
○綱紀委員会・懲戒委員会の委員構成の見直し(会員,学識経験者以外の者の参加,外部委員の過半数化等 ○外部委員に対する評決権の付与 ○懲戒制度への市民参加の実施 ○綱紀委員会・懲戒委員会の公開等透明性の確保 ○懲戒処分の標準処理期間の設定 ○懲戒処分内容を不服とする懲戒請求者に対する司法審査請求権の付与 ○綱紀委員会の調査の対象となった弁護士に対する調査協力義務の明確化 ○弁護士会に対する会員への強制調査権限の付与 ○懲戒処分の客観的な判断基準の作成 ○懲戒処分の官報,ホームページなどへの公表 |
弁護士の懲戒制度については,当面,上記の運用改善のための措置を早急に講ずるべきであるが,それらの措置を講じた後も懲戒制度有効に機能していないと認められる場合には,弁護士の担う公益性・公共性の大きさにかんがみ,国民の意見が反映されるよう弾劾構造化を含め,弁護士の懲戒制度の在り方そのものを抜本的に見直す必要があると考える。 |
※ 資料2~4は既存資料のコピーであり掲載できず。