(別紙1)
「民事法律扶助制度改革について」
平成11年11月9日
法務省人権擁護局
1 民事法律扶助制度の意義
- ○ 民事紛争の当事者が資力に乏しい場合であっても,法律専門家である弁護士の援助等を得て民事裁判等において,自己の正当な権利を実現することができるように,弁護士費用の立替え等の援助を行う制度
- ○ 民事事件における「裁判を受ける権利」を実質的に保障する意義をもち,司法制度の基盤となる極めて公共性の高い制度
- 2 現行の民事法律扶助制度の概要
- ○ 昭和27年(財)法律扶助協会設立,昭和33年度から国庫補助開始
- ○ 扶助決定件数の増加と扶助費補助金の増加
- 3 現行の民事法律扶助制度の問題点
- ○ 民事法律扶助の需要への対応の不十分
- ○ 民事法律扶助事業の実施状況の著しい地域間格差と運営体制の整備の立ち後れ
- 4 民事法律扶助制度改革の緊急の必要性
- ○ 民事法律扶助の急激な需要の伸びに対応する緊急の必要性
- ○ 社会の事前規制型から事後チェック型への転換による司法の役割の増大
21世紀の在るべき司法制度の実現の第一歩
- 5 民事法律扶助制度改革の概要
- (1) 民事法律扶助法案(仮称)の骨子(次期通常国会に法案提出予定)
○ 民事法律扶助事業の内容の明確化と指定法人方式の採用
○ 国及び弁護士・弁護士会の責務の明確化
○ 法律補助
- (2) 民事法律扶助事業関連予算の拡充(平成12年度予算概算要求関係)
○ 事業費補助金(扶助費補助金,法律相談補助金等)
・ 法律扶助の需要に適切に対応し得る事業費(扶助費補助金)の確保
・ 生活保護受給者等に対する償還の在り方についての運用の見直し
・ 法律相談体制整備に伴う法律相談補助金の拡充等
○ 広報宣伝委託謝金,事務費補助金
(注) 現在,法務省では,平成12年度予算概算要求において,民事法律扶助事業関連予算として,本年度予算額約6億円の3.5倍強の約22億円を要求している。
(別紙2)
《法律扶助運営の現状》
1999年11月9日 財団法人法律扶助協会 専務理事 永 盛 敦 郎 |
- 1、法律扶助制度の意義
- 「国民がより利用しやすい司法制度の実現」
法律は国会で定められた社会のルール
各人が権利を適正に行使することによって実現
私権の擁護に止まらず、法に従った社会運営の実現という意味でも重要
法の下の平等(憲法14条)、裁判を受ける権利(32条)等
- 司法制度利用に伴う困難
①法律の複雑性、技術性
②膨大な判例の集積とその進歩
③法廷のルールにしたがった主張、立証
- 法律の世界と市民をつなぐ法律専門家である弁護士の援助が不可欠
裁判費用の負担に耐えられない者が受ける不利益の救済
- 法律扶助制度の構築・拡充が権利保障と社会的ルールの確立のためにも必要
- 法的手段への玄関口として法律相談の重要性。
- 2、わが国の法律扶助制度の歴史と現状
- 1952年 財団法人法律扶助協会設立
1973年 少年保護事件付添扶助開始
1974年 無料法律相談事業開始
1990年 刑事被疑者弁護援助開始
- 法律扶助の仕組み
- 全国50支部で事業を実施
- 扶助申込と審査
資力要件と勝訴要件
扶助決定と費用の支出
- 国庫補助金は民事法律援助に限定
それ以外の事業については日本財団などの民間からの補助金
管理運営費は、弁護士会の補助、市民からの寄附にたよる
- 日本の法律扶助制度は法律上の根拠を欠いた1民間財団法人による公益的事業
- 法律扶助改革を緊急に実行する必要性
- 3、法律扶助制度研究会報告書のめざす改革の内容と緊急性
- 1998年3月、民事法律扶助事業の改革を提言する報告書
法律扶助を憲法上の裁判を受ける権利に由来し、実質化するものと位置付けた
法律を制定し、制度の構築・整備を国の責務とする
事業費に対する補助金の増額のみならず管理運営費も国庫補助の対象とする
扶助事業の運営主体としては、公益法人を指定する、指定法人構想を採用した
- 現在の事業から見た改革の必要性
昨年度の民事法律扶助件数 1万79件(前年度比23.3パーセント増)。内訳 自己破産事件 49.4パーセント
離婚事件 18.7パーセント
※ 自己破産事件は原則として生活保護受給者に限定
対象者には高齢、病身、再就職困難、単身者という特徴
生活苦から消費者金融に手を出したケースが圧倒的
資金面の制約から件数制限を実施
資金不足の大きな原因
- 改革の実現はわが国法律扶助事業の将来を左右する問題
- 4.法律扶助改革の今後の課題
- 研究会報告書に基づく改革の実施を前提に、第2段階の扶助改革検討の必要性
① 民事法律扶助に関する更なる抜本的な改革
原則全額償還制を見なおし、利用者の負担の改善を図る
対象層の拡大
② 刑事被疑者の弁護活動に対する公費による援助実現
③ 少年保護事件の付添い人としての弁護活動に対する公費による援助実現
以 上
第6回議事概要