司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第12回議事概要


1. 日時 平成12年2月8日(火) 14:00~16:50
 
2. 場所 司法制度改革審議会審議室
 
3. 出席者
(委員・50音順、敬称略)
石井宏治、井上正仁、北村敬子、佐藤幸治、曽野綾子、髙木剛、竹下守夫、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長
 
4. 議題
① 「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関する論点について
② 「弁護士の在り方」について(レポート及び意見交換)
③ 地方における実情視察について
④ 次回会議の予定

5. 会議経過

① 前回会議において、「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関し、竹下会長代理のレポート及びそれに基づく意見交換が行われたが、その中で竹下会長代理が言及した論点や委員から指摘のあった検討すべき論点につき、会長及び会長代理において取りまとめられた文書が配付された(別添①参照)。

② 中坊委員から、弁護士の在り方に関し、「弁護士制度改革の課題」と題して、我が国の弁護士制度の現状と改革の課題について説明が行われ(別添②参照、1から4まで。5の「弁護士制度改革の基本論点」については次回会議においてレポートされる予定)、これを踏まえ、以下のような意見交換が行われた。
 ○ 法曹一元の概念について弁護士から裁判官になるという考えが中心となっているようであるが、弁護士だけではなく検察官なども含めた議論はないのか。(応答:そのような議論はある。裁判官たり得る法的技術・素養があれば、例えば、大学教授なども含めた法曹一元を考えてもいいと思っている。日弁連内には裁判官の任用を弁護士からだけに限るという考えがあるようだが、それは日弁連全体の考えではない。)
 ○ 弁護士制度の現状をもたらした歴史的・構造的な原因は、明治時代以来の「弁護士を必要としない社会づくり」政策の結果であるとか、弁護士が「官僚による統治の補完物」たる存在に甘んじてきたからであるという説明がなされたが、そのことに気付いていながら、弁護士・弁護士会は自己改革ないし改革を求める努力はしてきたのか。なぜ実らなかったのか。(応答:あめとむちがあったのではないか。自治を与えられ、弁護士人口を少なく抑えられることにより経済的に余裕を持ち、訴訟は裁判所任せで裁判官に頭を下げていれば済むという「あめ」をもらって、それに甘んじてきたといえるのではないか。)
 ○ 戦前に関しては理解はできるが、戦後については、世界に類例をみないような徹底した弁護士自治を与えられたにもかかわらず、「官による支配」、「官による政策」の結果と言い切ってしまうのは、少なくとも国民に対する関係では責任を果たしているとはいえないのではないか。あめの話が出たが、戦後、特にこの10年を見ても、弁護士人口を増加させることに反対してきたのは弁護士会であろう(応答:弁護士会が特に反対したということではないと思う。日弁連会長であったときの経験では、最高裁は研修所の収容能力、受入れ態勢の限界を理由に消極的であったし、法務省にしても検察教官を出す人事面の手当てができないということでやはり消極的姿勢であった。)
 ○ 大学における法学教育は事実を捨象した概念法学中心であり、それは司法官・行政官といった官僚を養成するためであるという断定をされたが、法学教育が概念法学を中心としているのは我が国の法体系がドイツを中心とする大陸法系を受容したものであることによるのであって、結果的にそうなったかどうかはともかくとして、官僚養成を意図したものではない。大学の法学教育においても自己改革の努力はなされているところである。また、司法研修所の教育に対しても、同様の批判をされていたが、司法研修所の教育は概念法学などではなく事実に立脚したものであり、その批判は当たらないと思う。(応答:言いたいことは、大学においても司法研修所においても、法律の条文の体系的な理解ということを超えて、それらの依って立つ事実なり背景・実態への理解を重視することが大切であるということである。)
 ○ 大学の法学教育における問題は、官僚養成を意図したなどということが原因ではなく、我が国では、研究者と法曹実務家の養成過程が全くかい離しているということに由来するものというべきである。
 ○ 司法書士、税理士、弁理士などの隣接職種の問題については、それらも広い意味での法曹と捉える新たな制度は考えられないのか、考えられるとすれば、それも含めた養成の問題をどう考えていくかという視点が必要ではないか。例えば、英国のバリスター(法廷実務)、ソリシター(法廷外実務)のような区分けをして、後者に隣接職種を取り込んでいくということも考えられる。
 ○ 民事訴訟における職権進行が官僚裁判の現れであるという指摘があったが、例えば、ドイツでは当事者に訴訟進行を委ねていては遅延がはなはだしいということから職権進行主義に変えたということからも分かるように、職権進行とするか当事者進行とするかは、裁判における権利実現に関する司法政策の在り方の問題であり、官僚裁判云々ということとは無関係である。
 ○ 司法研修所の要件事実教育や事実認定に関する教育はまさに事実を中心とするものであって、概念法学とは異なるものである。司法研修所は、ロースクールができたとしても実務教育を担う機関として依然として不可欠の存在というべきである。
 ○ 個人的な印象であるが、依頼人の利益のためなら何でもやるという弁護士がいるように感じることがある。弁護士会の懲戒制度の現状はどうなっているのか。(応答:「依頼人の利益のためなら」ということもあるが、むしろ依頼人を餌食にする弁護士がいることに憂慮を感じる。弁護士の公益性が極めて重要であり、これを使命というよりむしろ責務と位置付けて改革しなければならない。また、弁護士会の懲戒制度については、弁護士自治と言いながら、実際には、手ぬるい、遅い、透明性がないなど問題がある。自治は権利ではなく義務と考えるべきである。)

③ 地方における実情視察については、地方公聴会に加えて行う関係で多くの箇所で実施することは困難であり、2~3箇所程度にとどめざるを得ないのではないかとの意見が出され、今後、法曹三者の意見等も踏まえ、日程、回数、視察先等について、実施可能なスケジュールを改めて検討することとされた。

④ 次回会議(第13回、2月22日)では、前記のとおり、今回に引き続き、中坊委員から弁護士の在り方に関するレポート及び意見交換を行った上、裁判所・法務省の人的体制の充実に関する議論を行うこととされた。

以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)

- 速報のため、事後修正の可能性あり -


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