司法制度改革審議会

配付資料

(別添①)

「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関し今後重点的に検討すべき論点について

制度的基盤に関わる項目

○ 裁判所へのアクセスの拡充 1 訴訟費用の負担の軽減 ・提訴手数料 スライド制の見直しの要否(仮に維持するとした場合の低額化の在り方)
訴訟費用額確定手続の簡素化

・弁護士費用の訴訟費用化 弁護士費用の合理化・透明化
弁護士費用の敗訴者負担制度導入の可否

・訴訟費用保険

2 法律扶助の充実

3 裁判利用相談窓口(アクセス・ポイント)の設置

・司法に関する総合的な情報を提供できる仕組みの工夫
・窓口事務の在り方

4 裁判所の管轄・配置等

・人事訴訟の家庭裁判所への移管の可否
・簡易裁判所の事物管轄の見直し、少額訴訟の上限額の見直しの要否
・裁判所の配置の在り方
・裁判所施設の在り方

5 開廷日、時間の柔軟化

・夜間、休日法廷の可否

○ 民事裁判の充実・迅速化ー一般民事訴訟(少額訴訟を含む)

1 証拠収集手続・証拠方法等に関する手続法等の見直しの要否

2 審理期間の制限の当否

○ 専門的知見を要する事件(知的財産権・医療過誤・建築瑕疵紛争・労働関係各事件)への対応

1 専門家を裁判体に取り込むこと(専門参審制、特別裁判所など)の要否 専門家を補助機関に取り込むことの要否

2 専門家の意見を早期の段階で取り入れる特別の手続(鑑定レフェレ、独立証拠調べなど)の要否

3 弁護士の専門化

○民事執行制度の在り方

・担保権実行等についての執行妨害、少額の権利の有効な実現方法の不備等のため判決を得ても強制執行による実現が困難である場合が少なくないとの指摘を踏まえた改善策

○ 司法の行政に対するチェック機能の在り方について

○ 裁判手続外の紛争解決手段の在り方

・ADRの拡充を考えるのか、まず司法の拡充を考えるのか。
 仮にADRの拡充を考える場合、拡充をはかるADRの範囲、手続的保障、担い手、裁判手続との連携をどのように考えるのか。

○ 司法に関する情報公開の在り方

・裁判例に関する情報提供の充実
・一般情報提供の充実

人的基盤に関わる項目

○ 裁判所の執務態勢の充実(人的基盤)

○ 弁護士の数、業務態勢の充実(人的基盤)

・いずれも上記の司法機能充実の観点からその充実策を検討

以上


(別添②)
2000年2月8日

弁護士制度改革の課題(レポート骨子)
―これからの司法を担う弁護士制度改革の論点―

中坊公平

司法制度改革審議会「司法制度改革に向けて―論点整理―」に基づき、わが国の弁護士制度の現状と改革の課題につき、基本的論点を示す。

1 弁護士制度のあり方と司法制度の改革

 司法制度改革の諸課題は相互に有機的に関連した一体不可分のものである。
 弁護士制度の改革は今回の司法制度改革を「担い手」の面から実行しようとするものである。それゆえ司法制度改革の全体の目標・理念と弁護士制度改革の目標・理念とは同一である。また弁護士制度の諸々の改革はそれに結びついた他の諸課題の改革と一体として実現されなけばならない。
 その意味で、司法制度改革の諸課題は有機的・総合的に論じられなければならない。

 弁護士改革は、法曹養成制度の改革を裾野とし、検察改革、裁判所改革を貫き、法曹一元(および陪審制・参審制)へ到達する、司法の「担い手」改革の登山口に位置するものである。登山道の頂上には、司法改革の目的である「法の支配」の確立にふさわしい司法制度すなわち法曹一元の実現があるのである。
 この道程においては常に頂上をしっかりと見据えておかなければならない。

 なぜ、弁護士改革が登山口であるかはこれまで指摘してきたところである。

 「市民と司法の接点は弁護士である。しかも法曹の圧倒的多数は弁護士であるから、弁護士のあり方は司法のあり方を決定的に規定する。弁護士のあり方の改革を論ずる理由はここにある。
 その意味で21世紀の司法を支えるのは弁護士である。そして弁護士のあり方を改革することは、裁判官のあり方を改革することであり、検察官のあり方を改革することである。
 いうまでもなく、市民の権利・自由が確保され、社会正義が行き渡る開かれた質の高い社会を市民とともに作るため、弁護士は社会に対する責任を果たさなければならない。現状に安住することは許されず、弁護士制度の改革と並行して弁護士自身の主体的・実践的な改革が必要である。」(中坊公平「審議事項に関する試案」[1999年11月9日])

 司法制度改革を推し進めるには、これと併行して弁護士・弁護士会の自己改革(意識改革)の実践が必要であることを重ねて指摘しておきたい。

2 弁護士制度の現状とその問題点

(1)弁護士制度の現状とその分析
 「司法制度改革に向けて―論点整理―」や司法制度改革に関する各界の意見、「各委員の論点整理に関する意見書」などから弁護士制度の現状に関する諸種の批判を読み取ることができる。

 「弁護士も裁判所も敷居が高く、温かみに欠ける」(「司法制度改革に向けて―論点整理―」)
 「一般に、我が国の司法(法曹)の具体的な姿・顔が見えにくく、身近で頼りがいのある存在とは受けとめられていない」(「司法制度改革に向けて―論点整理―」)
 「利用者である国民の立場からみると、現状では、弁護士に気軽に相談し、利用できる状況にはなっておらず、また、社会経済の各領域にわたる多様な法的サービスのニーズに十分対応できる状態になく、司法への国民のアクセスを阻害する一因となっている。その背景には、弁護士人口の不足、弁護士の地域的偏在、弁護士報酬の予測困難性、弁護士の執務態勢や専門性の未発達、広告規制等による情報提供の不足等々の事情があるものと考えられる」(「司法制度改革に向けて―論点整理―」)

 国民の目に弁護士は、「身近にいない」「顔が見えない」「敷居が高い」「暖かみに欠ける」「信頼に欠ける」と映っている。
 その背景にあるものとして「弁護士人口の不足、弁護士の地域的偏在、弁護士報酬の予測困難性、弁護士の執務態勢や専門性の未発達、広告規制等による情報提供の不足等々」が指摘されている。
 弁護士に対する批判を整理すると
 ①弁護士へのアクセス障害に関するもの
 ②弁護士の職域の狭隘さに関するもの
 ③弁護士の職務の質に関するもの
 などがあげられる。
 そしてこれらにいわゆる不祥事問題も加わって
 ④弁護士の社会的信頼に関するもの
 が生じていると考えられる。
 総じていえば弁護士の社会的存在感はまだまだ希薄である。
 批判されている諸々の現象は同一の歴史的・構造的原因を淵源としている。それゆえ問題を解決するには、個別的な対症療法的な改革では足らず、わが国の司法制度の全体を射程に入れた抜本的・全面的な改革が必要である。

(2)問題状況の歴史的・構造的原因
 弁護士制度の現状をもたらした歴史的・構造的な原因は、弁護士の歴史的・経済的基盤の脆弱さを背景とした、明治時代以来のいわば「弁護士を必要としない社会づくり」政策にある。

 ①弁護士制度の軽視
 ②隣接法律専門職の育成
 ③非弁護士活動取締への消極姿勢
 ④公務就任の制限
 ⑤弁護士養成制度(大学法学教育を含む)の不備
 ⑥民事訴訟の抑制政策
 ⑦官僚裁判官と官僚的実務慣行
 ⑧弁護士人口増加への消極姿勢

 弁護士は広く国民に基盤を持つことができず、総じていえば「官僚による統治の補完物」たる存在に甘んじてきた。

(3)戦後50年の歩み
 戦前の母斑としての構造的原因は戦後においてもその多くは残存した。結論的にいえば、戦後50年の歩みは「官僚による統治の補完物」から「民衆による自治の伴侶」へと転換するための艱難辛苦の道程であった。
 ①あたらしい憲法と弁護士法の改正
 ②隣接法律専門職の増加と公務就任の制限
 ③弁護士養成の不十分性
 ④「利用しにくい民事裁判」の放置
 ⑤官僚裁判官制度の存続
 ⑥刑事裁判実務と刑事弁護活動
 ⑦民事裁判実務と民事弁護活動
 ⑧弁護士人口増加への消極姿勢

 司法改革運動の始動と到達段階。この流れが今回の司法制度改革につながった。

3 弁護士制度改革の論点設定

(1)現行弁護士制度の意義
 「法律事務」の意義、日本国憲法および弁護士法(昭和24年法205号)から導かれる弁護士像。
 弁護士の公益性あるいは公的性格とは何か。
 依頼者たる個人の権利・利益を確保する職務(「基本的人権の擁護」)を遂行しながら、公衆の利益の実現に奉仕すること(「社会正義の実現」)。

(2)これからの弁護士像
 「司法制度改革に向けて―論点整理―」や司法制度改革に関する各界の意見、「各委員の論点整理に関する意見書」などから導かれる弁護士像。

 「国民が自律的存在として、多様な生活関係を積極的に形成・維持していくためには、画一的な行政的規制に安易に頼るのではなく、各人のおかれた具体的生活状況ないしニーズに即した法的サービスを提供することができる司法(法曹)の協力を得ることが不可欠である。
 国民がその健康を保持する上で医師の存在が不可欠であるように、司法(法曹)はいわば“国民の社会生活上の医師”の役割を果たすべき存在である。」(司法制度改革審議会「司法制度改革に向けて-論点整理-」)
 「我々は、従来、ともすると人的諸関係に過度に頼り、また、安易に行政に依存しがちではなかったかを反省しつつ、自律的個人が共生するためのルールの在り方について、もう少し自覚的に取り組む必要があろう。そして、我々がそうした課題に取り組むにあたって、司法(法曹)に期待されているところは大きなものがあると思われる。」(司法制度改革審議会「司法制度改革に向けて-論点整理-」)
 「21世紀の我が国社会においては、国民は、これまでの統治客体意識に伴う国家への過度の依存体質から脱却し、自らのうちに公共意識を醸成し、公的事柄に対する能動的姿勢を強めていくことが求められている。そして、地方分権の推進に伴い、地域における住民の自立と参加が今後一層重要視されていくものと予想される。」(司法制度改革審議会「司法制度改革に向けて-論点整理-」)

 「頼もしい権利の護り手」で、「信頼しうる正義の担い手」たる弁護士。
 当事者性(=「頼もしい権利の護り手」)と公益性(=「信頼しうる正義の担い手」)を統一することが求められている。
 それらをとおして「民衆による自治の伴侶」として社会に根付いた存在となる。
 それは「統治客体意識」からの転換のプロセスでもある。

4 弁護士制度改革と弁護士の責務

(1)改革の基本理念と責務
 構造的原因の克服と弁護士の意識改革を断行する。
 制度改革の提案と弁護士の社会的責務。

(2)公益への奉仕と3つの責務
 公衆への奉仕、公務への就任、法曹(弁護士)養成への主体的関与。

5 弁護士制度改革の基本論点

(1)弁護士人口の増加
 良質の法曹ことに弁護士を多数確保することは、司法制度がその本来の機能を果たす前提であり、自由で民主的な社会の基盤である。
 各種の要請からの弁護士人口増加の検討
 従前の法曹養成制度の枠組みの問題性

(2)法曹養成制度の改革
 弁護士および弁護士会は、ロースクール(法科大学院)の教員の確保、教育技法の開発、カリキュラムの運営に対して、全面的に協力しなければならない。

(3)弁護士制度改革の基本骨格
 ①弁護士へのアクセス障碍の解消
 a法律相談の充実/公設(公益)法律事務所の展開
 b弁護士費用
 報酬規程の意義と改正の経緯
 c弁護士情報の公開
 ②活動領域の飛躍的拡大
 業務分野の拡大(公務員との兼職の範囲の拡大/弁護士法30条の改正)
 ③職務の質の向上
 弁護士執務態勢の改革/共同化・法人化・総合化・国際化
 ④公益への奉仕義務
 a公衆への奉仕
 b公務への就任
 c法曹(弁護士)養成への主体的関与
 ⑤弁護士倫理の確立と弁護士自治の強化
 弁護士倫理確立の諸方策
 弁護士自治の意義と強化(市民参加)
 ⑥関連資格者との協働

(4)関連制度の改革(訴訟法・実体法の改正・新設)
 証拠開示・行政事件・消費者分野に関する新規立法・労働者の救済の迅速化
 刑事司法制度の改革

以上


議事概要配付資料