司法制度改革審議会
司法制度改革審議会 第42回会議議事概要
- 1 日 時 平成12年12月26日(火) 13:30~16:40
2 場 所 司法制度改革審議会審議室
3 出席者
- (委員、敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子
(事務局)
- 樋渡利秋事務局長
- 4 議題
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「司法の行政に対するチェック機能の強化」について
5 会議経過
(1) 竹下会長代理から、「『司法の行政に対するチェック機能の強化』に関する問題状況の整理」と題する資料(別添1)に従い、問題の所在、検討すべき課題等についての報告が行われた。
(2) 髙木委員及び吉岡委員から、各々が提出した意見書(別添2及び3)に従い、その趣旨等についての説明が行われた。
(3) 竹下会長代理による報告等を踏まえて、「司法の行政に対するチェック機能の強化」について、以下のような意見交換が行われた。
- 検討すべき課題は極めて膨大であり、個々の課題すべてについて結論を出すことは困難であることから、問題の所在を踏まえて「改革の基本的方向性」とでも言うべきものを定め、ある程度課題を整理した上で、個別の具体的課題についてどのような方向で検討を進めていくのかを議論するのが適当である。その際、一方で「現行制度に既に内在していた問題点」と「現行制度では対応が困難な新たな問題点」、他方で「手続法に関する問題点」と「実体法に関する問題点」という分類に従って方向性を定め、その上で具体的方策について検討するのが適当である。
- 行政訴訟制度の改革を検討するに当たっては、単純に諸外国における勝訴率を我が国のそれと比較することなどに止まらず、住民と行政の関係の在り方など様々な背景事情をも考慮して、多面的でバランスのとれた議論を行う必要がある。住民と行政が対立関係にあり、住民の側に常に理があるというような一面的な見方に立って改革を検討するのはいかがなものか。
- 無名抗告訴訟としてのいわゆる義務付訴訟や予防的救済訴訟も、判例において認められてきてはいるものの、法律の立案過程における行政庁とのせめぎ合いの産物である行政事件訴訟法を改める必要があることは間違いない。ただし、それだけで解決する問題ではなく、実体法をも改めねばならない。いずれにしても、根本的な考え方を改めないと、表面的な改革では意味がなく、しかるべき検討機関において、具体的な検討を進めることとする必要があるのではないか。
- 最終的には司法による救済機能を強化すべきことが前提ではあるが、司法に至る以前の、例えば行政委員会の準司法的機能の強化等を重視すべきではないか。裁判では違法を争うことしかできないが、行政内部の前審的処理機関では、当・不当の問題を含めて審査可能であり、専門性も高められるので、国民の救済に役立つのではないか。
- 司法による行政に対するチェック機能をどのように強化するかを議論すべきであり、行政内部の前審的処理機関は、行政庁の優越的地位を前提とするもので、その機能の強化は当審議会における議論の基本的な方向になじまないのではないか。
- 個々の課題について、当審議会において最終的な結論を得るに至るまで議論することはできないが、中間報告において「行政訴訟制度の改革が不可避」としている以上、何らかの検討の方向性を明らかにする必要がある。その上で、当審議会に匹敵するような位置づけのしかるべき検討の場に委ねることとしなければ、十分な検討はできないのではないか。
(4) 以上のような意見交換を踏まえ、「司法の行政に対するチェック機能の強化」についての審議の進め方に関し、今後、個々の課題について最終的な結論を得るに至るまで議論することはできないが、「国民の期待に応える民事司法の在り方」についての審議の一環として、中間報告における「行政訴訟制度の改革が不可避」との取りまとめの内容を具体化するよう検討を重ねていくこととされた。
(5) 次回は、1月9日(火)午後1時30分から開催し、「国民の司法参加」について、藤倉皓一郎帝塚山大学法政策学部教授、三谷太一郎成蹊大学法学部教授及び松尾浩也東京大学名誉教授による説明と、それらを踏まえた意見交換を行うこととされた。
以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
- 速報のため、事後修正の可能性あり -
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- (別添1)「『司法の行政に対するチェック機能の強化』に関する問題状況の整理」(竹下会長代理報告資料)
(別添2)「『司法の行政に対するチェック機能』に関する意見」(髙木委員意見書)
(別添3)「『司法の行政に対するチェック機能』に関する意見」(吉岡委員意見書)