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法科大学院特別委員会(第11回) 議事録

1. 日時
  平成18年9月5日(火曜日)14時~16時

2. 場所
  三田共用会議所 第二特別会議室(2階)

3. 議事
 
(1) 評価機関の認証について
(2) 大学設置・学校法人審議会における年次計画履行状況調査の結果等について
(3) その他

4. 配付資料
 
資料1   中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(第10回)議事要旨
(※(第10回)議事録へリンク)
資料2-1 法科大学院への財政支援(平成19年度概算要求)
資料2-2 平成18年度「法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム」の選定結果について
(※報道発表へリンク)
資料3 財団法人大学基準協会の実施する法科大学院の評価に関する主な論点(案)
資料4-1 設置計画履行状況調査について
資料4-2 法科大学院に係る年次計画履行状況調査結果の概要について(平成16年度)
資料4-3 法科大学院に係る年次計画履行状況調査結果の概要について(平成17年度)
(※報道発表へリンク)
資料5 今後の日程等について
参考1 評価機関の認証に係る審議の進め方等について
参考2 財団法人大学基準協会の行う評価の概要等について
参考3-1 認証基準と申請内容との対比表(大学基準協会【法科大学院】)(案)
参考3-2 申請内容と専門職大学院設置基準(文部科学省令)等との対比表
(大学基準協会【法科大学院】)(案)
参考3-3 専門職大学院設置基準等(文部科学省令)と申請内容との対比表
(大学基準協会【法科大学院】)(案)

5. 出席者
  (臨時委員)
田中委員(座長)
(専門委員)
磯村委員、井上宏委員、井上正仁委員、小幡委員、川端委員、川村委員、小島委員、永田委員、林委員、平良木委員、諸石委員、山中委員
(ヒアリング対象者)
三井 誠 大学設置・学校法人審査会専門委員(同志社大学大学院司法研究科教授)
(文部科学省)
磯田高等教育局担当審議官、辰野高等教育局担当審議官、小松高等教育企画課長、佐藤専門職大学院室長、齊藤高等教育企画課専門官

6. 議事
 
(1) 事務局より平成19年度予算概算要求の概要等についての説明があった後、以下のとおり質疑応答が行われた。
(○:委員 □:申請者 ■:ヒアリング対象者 ●:事務局)

委員  日本学生支援機構の奨学金について、従来は学生が留年・落第すると支援は継続できなかったが、法科大学院の場合、厳格な成績評価を行うと原級留置の可能性が高くなる。経済的に苦しい学生にとって、原級留置となると授業料の負担が余分にかかる上に奨学金が打ち切られ、経済的に勉学の継続が困難となる。こうした状況は逆に成績評価に影響を与えかねないので、制度の在り方として御検討いただけないか。

事務局  どのような対応ができるか、今後研究していきたい。

(2) 事務局より資料3について説明があった後、以下のとおり質疑応答が行われた。

委員  資料3の論点12について、法曹三者の「現職」の意味は「いずれも法曹養成教育の現場に携わっている」という記述で正しいのか。

申請者  正しいが、制度の趣旨に沿うよう、裁判官は司法研修所の教官、検察官は法科大学院への派遣検察官、弁護士は法科大学院において教育活動を行っている者に特に限定した意味で用いている。

委員  並べるなら三者とも研修所の教官であるべきであるし、そうでない場合は三者とも実際に教育に携わっている者という形で書くべきではないか、この例示はおかしいのではないか。

申請者  この規定の趣旨は、基本的には実務の経験をお持ちの方々にご参加いただきたいという趣旨なので、適切な表現に改める。

委員  規程の第8条の第2項及び第3項の関係について、第2項で実務家教員を3名と規定するなら、第3項はそれとは異なる視点であるべきであり、すなわち、法科大学院教育に直接携わってはいないが、修了者が実際に送り出されるべき実務の現場の立場から見て適切な教育を行っているのか、という視点を入れるという趣旨ではないのか。

委員  第8条では、評価委員15名のうち10名は正会員の法科大学院の教員から選出され、そのうち3名が実務家教員という構造だが、これは正会員の法科大学院の実務家教員のみが第2項の実務家委員になれるという趣旨か。

申請者  第8条、第15条第3項・第4項は、正会員であるかは要件としないため、文言を「大学」に改める。

委員  第15条第4項には、会長が、正会員の教員の中から分科会の主査及び委員を委嘱できるという記述があるが、法科大学院の教員ではない大学教員が委員となりうるのか。

申請者  第3項は正会員である大学が推薦するのに対し、第4項は基準協会から依頼するという書き分けであり、どちらも法科大学院教育を前提としており、法科大学院以外の大学教員が評価委員となることはない。規定を法科大学院の教員と改めたい。

委員  資料4-1のレベル1の二重丸と一重丸について、どちらも「重大な問題がある場合には認定しない」という同一の記述となっており、適格認定の可否の基準が曖昧ではないか。

申請者  二重丸は法令等の遵守に関する事項であり、一重丸は大学基準協会が法令に準じて重要であると考える基本的事項であり、内容が異なる。したがって二重丸は、要件を満たしていなければ当然適格認定はしないが、例えば人事上緊急かつやむを得ない事情が発生した場合などに、考慮しないわけではないという趣旨である。

委員  レベル1の二重丸と一重丸は、判断基準は同じであるが、事項の内容が違うということか。

申請者  そうである。

委員  論点7について、実地視察において、レポートや小テストはサンプル調査を行うが、定期試験の答案は全数調査を行うという趣旨に読めるが、現実に答案を見た上で成績評価、単位認定の妥当性を調査するという捉え方で良いか。

申請者  大学基準協会の認証評価は、評価報告検討報告書という、それぞれの法科大学院が作成する主体的な評価報告の妥当性を問題とするという形をとっており、成績評価に関してもそれぞれの法科大学院が試験問題や評価基準が適切であるか評価し、協会としてはそれが実態に沿っているかを答案、レポートの実物と対比しながら確認する。その際、法科大学院の規模によっては答案、レポート、小テストの全てをチェックできるとは限らないと考えている。

委員  ある法科大学院が行った単位認定・修了認定が、客観的にどのレベルを確保しているかをチェックする機会は認証評価しかない。大学基準協会として、学生の答案等の原資料に当たって、学生がどのようなアウトプットを生み出したかまでチェックをするという趣旨か。

申請者  調査の趣旨はそのとおりであり、そこまでやるつもりである。

委員  教員が学生の答案を採点するにあたっては、答案を表面的に見るだけではなく、記入の仕方や内容から、学生の法的思考力まで考えた上で採点していることが多い。そのような部分まで、第三者が見て適切かどうか判断することは困難ではないか。

申請者  大学基準協会の調査は、基本的にそれぞれの法科大学院がどのようなスタンスで考えているかを報告してもらうものである。

委員  先ほどの回答は、法科大学院の単位認定が適切であったかどうかをチェックするために、原資料に当たるという趣旨だったと理解しているが、今の回答では、基本的には法科大学院の自主的な判断に委ね、その当否については全体として妥当かどうかを考えるだけで、原資料に当たってのチェックは行わないということなのか。

申請者  基準協会としては、基本としてその法科大学院の教育方針を踏まえた上で、学生の学修の到達水準を確認する意味で、実地の担当者が答案等も可能な範囲で見ることとしている。その際、法科大学院として望ましい水準と比較してどうかという評価も、付随的な結果として行うことはある。

委員  当該法科大学院の評価というスクリーニングを経ずに原資料を直接チェックするということは行うのか。

申請者  法科大学院のスクリーニングを経るということはなく、関係する科目の答案は全て用意していただき、評価の実地担当者による確認を行う。

委員  本学では、どの団体の評価を受けるにせよ答案のチェックを受ける前提で、全て各教員に保管させると同時に、成績分布に関する資料を提出させている。また、相対評価の基準を外れる場合は理由書の提出も求めており、これらの資料は評価を受ける際に全て提出するので、どのように利用するかは調査を行う委員次第である。

委員  成績評価・単位認定の妥当性を確認するにあたっては、調査対象である法科大学院に対しどのような資料を要求するのかあらかじめ告知の上、準備体制を整えてもらう必要がある。

委員  大学に対して提出を求める資料の詳細なリストはあるのか。

申請者  それぞれの法科大学院がどのような成績評価基準を採用しているかは報告書に記載していただくので、その中で定期試験のみ、あるいはレポートを加味するという、各校の基準に対応した資料を御用意いただく。小テストやレポートについても、保管を義務付けてはいないが、説明責任の観点から保管を奨励している。もし保管されていなければその対応自体が評価の対象となる。

委員  評価に当たっては、各大学が出すデータを見てから必要な資料を検討することになるので、原則として成績評価のデータは全部保管するよう法科大学院協会として申し合わせたものである。

申請者  先程質問があった第8条第2項と第3項の実務家委員の選任方法について、第2項は法科大学院の推薦によるのに対し、第3項はそれぞれの所属機関の意向を斟酌して推薦を依頼するものであり、選任の際の観点、手続が異なるということである。

委員  第2項は実務家で現に法科大学院教育に携わっている者、第3項は、例えば司法研修所教官で、現に法科大学院教育に携わっている人ということでは、推薦母体が異なっていても同じような人間になるのではないか。
第3項の規定は、教育に携った経験の有無に関わらず、新しい法曹を受入れる側の視点を、法科大学院の教育を評価する際に反映させるという趣旨で、法曹三者の所属機関から推薦を受けるということではないのか。条文とその解釈を矛盾なく整合するようご説明いただきたい。

申請者  第2項は教育現場にいる実務家教員とし、第3項は法曹としているので、そのような解釈も可能である。法曹の代表者は大学基準協会と関係機関との相談の上、決めるものなので、どのような方が選ばれるかは状況次第であろう。

委員  法曹三者に認証評価に関与していただくのは、受け入れる側から評価できるかという趣旨であり、法曹養成教育の現場に携わっているという限定は不要ではないか。

申請者  趣旨に沿うように規程を改める。

委員  資料3の論点1について、分科会委員を増員する際、実務家・法曹三者の比率をどの程度と考えているのか。また、増員分の法曹三者を確保する見込みはあるのか。

申請者  評価対象の法科大学院の規模に応じて委員の増員をする際は、委員の派遣元となる機関の事情に応じて、可能であれば実務家あるいは法曹の委員の比率を高めたいと考えている。

委員  法曹三者のそれぞれで相違はあるのか。

申請者  基本的には研究者教員と実務家教員、法曹の教員を適切な比率で配分することを考えている。実際には法曹、あるいは実務家教員を何名推薦いただけるかという問題との兼ね合いで決まるだろう。

委員  少なくとも1名は入ると考えて良いか。

申請者  元々分科会委員5名中2名が実務家であり、委員を増員する場合はできればもう1人、実務家をお願いしたいが、時々の事情によることになる。

委員  委員の人数に関して、書面調査の際は、大規模校でも書面が整っていればスムーズに調査でき、小規模校と大規模校という対比はあまり意味がないのではないか。むしろ、一泊二日という限られた日程の実地調査で、分科会委員のうち研究者教員が3名しかいないと、答案のチェックを十分にできるかという問題がある。委員を増員する余裕があるのであれば、例えば全て一律に6名体制とした方が実質的ではないか。

申請者  答案、レポートその他実際に調査する資料の分量に応じた体制を組みたい。

委員  手数料の算定はどのような考え方によるのか。

申請者  大学基準協会が従来行ってきた、機関評価等の経験をもとにしている。ただ、法科大学院の評価事業の実態についてはやってみなければわからない点もあるので、当面はこの形でスタートし、支障があれば改めて検討していきたいと考えている。

委員  論点16の委員確保の見通しについて、過去10年間の実績という記述があるが、従来の機関別評価と法科大学院の評価では大きく異なるのではないか。

申請者  法科大学院をもつ大学のうち7~8割、50校程度は大学基準協会の正会員校であり、従来機関別評価において委員の推薦をいただいているという実績があるため、法科大学院の評価に関して依頼した場合でも50校程度からは推薦をいただけるだろうと考えている。

委員  各委員から御指摘いただいた点については大学基準協会で基本的には対応するということだが、その他に意見や質問はないか。

委員  当面の修正,訂正についてはどのように行うのか。

委員  認証については特段の留意事項をつけずに了承とし、各委員からいただいた御意見の反映については、大学基準協会に御指摘を踏まえた修正を行ってもらい、私が座長として最終的に確認するという形としたい。

委員  規程の矛盾の解消は、原案を大学基準協会が作成し、座長がチェックするということでよろしいか。

委員  規程自体の改正が必要なのではないか。

委員  認証までに規程の改正も行っていただくことになる。私の方で改正された規程を確認した上で、大学分科会へ報告するということでよろしいか。

(3) 三井誠大学設置・学校法人審議会専門委員より資料4の説明及び質疑応答が、以下のとおり行われた。

ヒアリング対象者  平成16年度、平成17年度の履行状況調査の結果及び平成18年度の書面調査についてもその概要を踏まえ、資料に沿って説明させていただく。
平成16年度は法科大学院制度の発足初年度でもあり、入学者選抜、教育課程の運営、教育組織の整備、FDへの取り組み、自己点検・評価など多くの点で改善すべき点が少なからず見受けられたが、平成17年度、18年度と進むにつれ、各法科大学院においては、設定した理論・目的を実現するため、教育課程の質的充実、改善を軸に設置計画についての創意工夫ある取り組みが継続的に行われている状況であると評価できるのではないか。
ただ、一部には学生の入学状況、教員組織のあり方、施設・設備、図書の整備状況などに問題を残しているところがあるだけでなく、特に教育課程の運営状況、成績評価の状況、これらを含めたFD活動、自己点検・評価の作業等については、かなり多くの法科大学院が不十分である様相が見られ、今後の大きな課題であろう。
平成16年度に留意事項が付された内容を数的に挙げると、主要な項目としては1学生の入学状況に関してが3件、2教育組織の整備状況に関してが16件、3施設・設備の整備状況に関してが8件となっている。また、教育課程の運営状況について18件、成績評価の状況について17件、FD活動の状況について23件、自己点検評価について6件ということで、44法科大学院に対し留意事項が付された。
まず、主要な項目として3点を挙げているが、1学生の入学状況について、定員を大きく下回っている、あるいは超過している、既修者の受け入れが少ないという指摘があったが、年度が経過するにつれて、調整されているようである。ただ、応募者が激減している法科大学院も見られ、今後の推移が懸念されるところでもある。
社会人及び非法学部出身者の占める率について、16年では37.7パーセント、17年度は33.3パーセントと若干減少しているが、大きな変化はない。ただこの点は、社会人の定義自体が大学によって異なるため一概には言えず、社会人の共通の定義付けが必要だったかもしれない。
教員組織の整備状況について、法律基本科目と専任教員の配置については改善されてきたが、教員の年齢構成のバランスについては、設置以前に指摘された法科大学院で問題が解消したところは皆無であり、当初7校に対する指摘だったのが、17年度には9校に増加している程である。教員負担への配慮については、学部の講義との兼ね合い等でやや過重になっているという指摘が5件あった。
施設・設備の整備状況については、年を追って整備されているが、例えば小規模校の場合、図書の充実が十分でない、大規模校の場合、自習室の整備が不十分である、あるいは全体的に国立大学の場合は、私学に比べる見劣りするといったことは言えるだろう。今後は講義室を双方向の授業に適したものに変えていくなどの改善が望まれているのではないか。
2番目の大きな柱として、教育課程の運営状況というものを挙げている。まず最初の授業科目について、当初は余り気づかなかったが、科目分野の授業科目の分類や整理が不適切なものが目につくようになった。法律基本科目、実務基礎科目、隣接科目、展開先端科目という分類そのものが、やや不十分だということが目につき初めているのではないか。
次に、大学によっては既修者の受け入れ数が当初の思惑と違ったために、未開講科目がかなりある。このような点も将来的に少しずつ解消されるとは思うが、問題点として指摘されている。
二つ目、より大きな問題として授業運営について。法学未修者に対する初年次教育については、講義形式から脱却して双方向・多方向的手法を活用することを掲げている法科大学院ではあるが、実地調査などをしていると必ずしも十分になされていない。クラス規模との関連では、未修者教育を50人以上のクラスで行っているところも幾つか見られる状況である。
また、大・中規模校についてはクラス分けや同一科目の授業内容・方法、教材の利用等の調整が十分でないと見受けられるところがある。
また、どの科目も大量の予習時間を学生に要求するため、学生自身がパンクしているという状況も見られ、FDの問題として、全体の調整が図られていないのではないかというところも多く見受けられた。
授業運営との関係では、2点ほど指摘すべきことがある。1点は、正課外のものとして、法律基本科目の特別講座を開設する大学が地方に出てきている。受験指導講座的な役割を果たしているものもあり、今後は適切に評価する必要があろう。もう1点は修了者のうち優秀なものをTA等に採用し、未修者に対する教育支援を実施する傾向が幾つかの大学で生じてきている。こちらはプラスに評価できる事象だろう。
3つ目の履修状況では、特に展開・先端科目について、司法試験合格率に対する見込み違いも関係しているのだろうが、司法試験科目に偏りがちである、あるいは単位のとりやすい科目に集中するなど、あるべき履修状況とは異なった状況が見受けられつつある。
社会人の対応については、自習時間の確保、学習負担の考慮、個別の自習指導といった点が十分ではない事例が見られる。長期履修制度の導入のような、抜本的な対応が今後は必要とされるのではないか。
3番目の柱、成績評価の状況については非常に留意事項が多かった。一つは客観的・統一的な基準の明確化について、成績評価に当たっては定期試験の結果と平常点を勘案するところが多いが、勘案する割合が明記されていないというところが非常に多い。また、再試験制度をとる場合の再試験の位置づけのような点についても曖昧さが見受けられる。
学生に対する成績評価基準のシラバス等での事前提示に関しても、必ずしも十分ではないと思われるところもある。
成績評価基準の厳格な運用に関しては、平成17年度は大学に成績評価の一覧表の提出を求めたのだが、担当教員の成績評価に関する連絡調整が不十分なためか、科目ごとの評価の結果に格差を生じている大学が非常に多い。
成績評価の学生への通知、成績分布データの告知についても必ずしも十分ではないように見受けられる。また、評価結果に対する学生からの意見聴取も制度化されていない大学が多い。大学によっては、希望者は2週間以内に成績評価説明願を出し、教員が解答を返すという対応をしている事例もあり、かなり改善されつつあるが、成績評価のありようについては依然としてかなり大きな問題である。
修了試験の厳格化及びその内容の整備についても、修了者が出る中で更に多くの問題点が出てくるのではないかと思う。
4番目の柱、FD活動の状況について、これが一番大きな指摘事項であった。FDに関する各種委員会は概ねどこでも設置され、規程等も整備されているが、実際の活動実績は大学によって非常に乏しいところもあり、活動してはいても内容は意見交換に留まっている場合も少なくない。今後は相互の授業参観や兼任・兼担教員を含む授業方法の改善、実務家教員と研究者教員との協調体制の確立といった取組みがより積極的になされるべきであろう。
大学によっては全授業をビデオ撮影し、復習などのために学生利用に供するとともに、ビデオを素材に授業の進め方を討議するというFDを開いている例もあり、参考になるのではないか。
授業評価アンケートに関しても、FD活動の一環としてほぼ例外なく実施されつつあるようだが、組織的な分析がなされているか、教員相互でアンケート結果が情報共有されているか、結果は公表されているか、授業改善にどのように役立っているかといった部分に踏み込むと、問題は残されている。
大学によってはウェブにアンケート結果の内容をアップしたり、あるいは教員に授業改善策の明示を義務付ける大学も出てきており、状況は少しずつ変わっていくのではないだろうか。
FDの関係ではシンポジウム等が折々開かれているが、例えば数校の法科大学院で話し合いをするといった、小規模な形での展開が必要となってくるかもしれない。
自己点検・評価については各校独自の委員会が徐々に設置され、少しずつ具体的な点検項目や内容について検討が進められ、大学によってはホームページ上で内容が公開されつつある状況で、今後も少しずつ整備されていくことになるのではないか。
最後に、教育水準の確保・向上のための今後の課題について。1つは、完成年度以降の各法科大学院がどのように運営されるかという問題で、今後文部科学省の履行状況調査が終了し、教育水準確保の主体が認証評価に移っていく際に、認証評価との有機的な連携を図る必要が強く出てくることになるのではないかということである。どの大学も完成年度を向え、カリキュラムや教員編制の見直しの動きが出てきており、また履行状況調査の足かせがなくなることで、伸び伸びできるという雰囲気もあるが、特に教員審査などに関しては、認証評価でもきちんと採用し、慎重に検討していく必要があるのではないか。
2番目として、法科大学院の修了生が続々と輩出されると、かなり多くの者が法曹以外の道を歩まざるを得なくなる。実地調査の際の学生インタビューでは、必ずのように法曹になれなかった者の今後の進路についてどのように考えているか、という発言がある。直接には関係ないと言うこともできるかもしれないが、今後の大きな課題であることは疑いない。

委員  ただいまの御説明について、御意見・御質問をいただきたい。

委員  全体の状況が良く分かった。各大学が改善の努力をし、向上の方向で動いていることは大変喜ばしいが、例えば小規模校と大規模校という類型に区分すると、問題に対する対応の仕方に相当な違いが出てくる。一例として、ある科目の改善と言った場合、担当教員が一人ならその一人の努力で全体的な改善ができるとも言える一方、科目に関する意見交換は難しい。そのような実情を踏まえて、御報告されるにあたっての印象を伺いたい。

ヒアリング対象者  大きく分けると、人数的には250人以上が大規模校、100~150人程度が中規模校、それより少ないところが小規模校となるだろうか。どの規模についてもそれぞれの問題を抱えており、例えば大規模校だと50人1クラスで法律基本科目を運営させることが難しくなっており、双方向・多方向の授業ができなくなるという問題があるほか、施設面でも自習室の席数といった問題もある。
逆に小規模校だと、教員が限られていることもあり、先端科目の充実が図りにくいという難点がある他、既修者が10人未満ともなると教育の在り方自体が大きな問題となる。

委員  本調査は、設置を認可した責任があるので完成年度を向かえるまではフォローアップするが、基本的には設置認可後は認証評価に任せるというのが制度発足時の考え方であったはずであり、本来あるべき姿ではないか。

ヒアリング対象者  平成16年度開設校に対しては、履行状況調査や教員審査は終了となるが、新しい専任教員が各大学に採用される場合に、何の審査も行わないで良いのか。認証評価において、教員審査を行ってもらわなければいけないのではないかということである。その基準については、ACの場合は大学を設置した理念や目的に沿った形で運用されているかどうかであったのに対し、認証評価ではあるべき法科大学院像に沿った形で運用されているか、と変化はあろうが。

委員  法科大学院修了生の進路については、我々も悩みを感じているが、この問題は議論を行う場と方向性の問題である。アメリカのロースクールの場合も同じ問題があり、うまく法曹となった者の情報は入ってくるが、うまくいかなかった者の情報が探知できない。日本の場合も各法科大学院が修了者の実情把握に努め、法科大学院が集まる場で共通の問題を考えて、その上で議論を公の場に移していくというのが筋ではないか。従って、先に制度を改めるというアプローチの仕方は、時期尚早でもあり、慎重に考えなくてはならない。

ヒアリング対象者  恐らく小規模校の場合には、修了者のフォローアップは比較的容易であろうが、大規模校では難しい問題が出てくるだろう。

委員  授業の規模について、自分の経験ではせいぜい50人超程度が限度かと感じているが、アメリカのロースクールでは小規模校も含めて大体70~100人という多人数で、双方的な授業を行っている。日本で70人の授業がうまくいかないのはどこに問題があるのか、単に人数の問題なのか、教員の能力の問題なのか、授業のやり方の問題なのか、視野を広げて考える必要がある。

ヒアリング対象者  日本では制度自身が発足したばかりで試行錯誤しており、まずは50人あるいはそれより小さい規模から初め、徐々に多人数でもできる状況になっていくということではないか。

委員  現実には、最初は教員が足りないので大規模クラスで行い、充実してくると小さくなっていくという、逆の形となっている。

委員  履行状況調査と認証評価について、履行状況調査は完成年度で終わるということになるが、制度設計そのものに問題はなかったか。大学設置審議会でいつまでもフォローできるものではないが、非常に基本的な留意事項が多数ついているようなところについては、文部科学省として注意を払い、社会の信頼を得られるよう繋いでいただきたい。

委員  留意事項が付されている法科大学院のフォローについても全て認証評価に任せていいのかという問題については、制度設計としてはそのようになっているのだが、大学設置全般についてうまくいかないところも出てきており、再考せざるをえないのではないかという気はする。

ヒアリング対象者  留意事項自体が増えてきているわけではないのだが、平成17年度は書面調査の際に報告書だけではなく補足資料を提出させたため、比較的各法科大学院の状況を読み取れるようになり、指摘事項が増えたということはある。

委員  FDなどでも、設置計画では立派なことが書いてあるが実地調査に行くと形骸化している場合があり、設置時には問題がなかった部分に実地調査の結果留意事項が付されたという例はかなりあったと思う。

ヒアリング対象者  成績評価についても同様のことが言える。

委員  成績席次をとる事例もあるということだが、どのように行われているのか。

委員  本学では、50番までは個々の学生に席次を伝えており、それ以降については51~100番、101~150番という50単位の括りで伝えている。

委員  席次については、学生個人個人に教えているところは多いのではないか。

ヒアリング対象者  本人が希望したら教えるということはあるかもしれないが、実態はわからない。学生本人の各科目の成績については、分布の山のどの辺りに位置しているか概ね分かるだろうが。

委員  間接的に推測はできても、直接教える例は少ないのではないか。

委員  人数の問題について、制度全体として見ると、双方向的な授業を志向する新しい制度を導入するにあたり、充実した教育をしやすいという点では小規模、50人あるいはそれ以下のクラスで授業を行うことが賢明であった。この辺りも、展開・先端科目等で例外的なクラスはあるかもしれないが、当分の間は厳格に評価をする方向で進めていってよいのではないか。

委員  今の点については設置基準をつくる、あるいはそれに先立つ議論では、50人という数字もあくまで標準であって、縛るものではなく、この数で教育効果が十分上がるかを見てみようという考えであった。
平成17年度の留意事項の付し方は、50人を超えているが十分双方向教育の質が上がっているかを検証するようにという形になっており、この書き方で良いのではないかと思う。その上で、もし効果が上がっていないということなら、それを指摘すべきであって、50人という数にこだわる必要はなく、厳しく見るべきは教育の質の面ではないか。

7. 次回の日程
次回の日程は、10月中旬以降を目途に改めて調整することとなった。

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)