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法科大学院特別委員会(第10回) 議事録

1. 日時
平成18年7月28日(金曜日)14時~16時

2. 場所
学術総合センター 中会議室4(2階)

3. 議事
(1) 評価機関の認証について
(2) 法科大学院におけるカリキュラム・アンケート調査結果について

4. 配付資料
資料1   中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(第9回)議事要旨
(※(第9回)議事録へリンク)
資料2 法科大学院年次計画履行状況調査の結果等について(平成17年度)
(※報道発表へリンク)
資料3 平成18年度法科大学院入学者選抜実施状況の概要
(※報道発表へリンク)
資料4 知的財産推進計画2006(法科大学院関連抜粋)
資料5 平成18年新司法試験(短答式試験)の結果(PDF:49KB)
資料6 認証評価機関の認証について(諮問)
資料7 評価機関の認証に係る審議の進め方等について
資料8 財団法人大学基準協会の行う評価の概要等について
資料9-1 認証基準と申請内容との対比表(大学基準協会【法科大学院】)(案)
資料9-2 申請内容と専門職大学院設置基準(文部科学省令)等との対比表(大学基準協会【法科大学院】)(案)
資料9-3 専門職大学院設置基準等(文部科学省令)と申請内容との対比表(大学基準協会【法科大学院】)(案)
資料10 法科大学院協会カリキュラム・アンケート/結果概要
資料11 今後の日程等について
参考1 中央教育審議会法科大学院特別委員会の開催状況
参考2 法科大学院関連新聞記事(平成18年3月~7月)

5. 出席者
(委員) 木村委員(座長代理)
(臨時委員) 田中委員(座長)
(専門委員) 磯村委員、井上宏委員、小幡委員、鎌田委員、川端委員、川村委員、小島委員、瀬戸委員、永田委員、中谷委員、林委員、平良木委員、山中委員
(文部科学省) 清水高等教育局長、辰野高等教育局担当審議官、小松高等教育企画課長、佐藤専門職大学院室長、齊藤高等教育企画課専門官、とく岡専門教育課課長補佐

6. 議事
事務局より資料の説明及び認証評価制度の概要等についての説明があった後、申請機関である「財団法人大学基準協会」を認証評価機関として認証することについて諮問が行われた。
事務局から申請内容の概要について説明があり、申請者からより詳細な説明があった後、以下のとおり質疑応答が行われた。

(○:委員 □:申請者 ●:事務局)

委員  実地調査は大学の規模に関わらず、常に5名で行うのか。経験上、大規模校の調査を5名で行うのは相当大変ではないかと考えるが。

申請者  今年度3校で行う予定の試行評価では、規模によらず全て5名で実施する予定であるが、その経験を踏まえてさらに検討したい。

委員  逆に、現地調査を10人等の大勢で行うことも大変である。他団体の例として、大学評価・学位授与機構の場合は二段構えとなっており、書面調査は大勢で見るが、調査に行くのは数名程度である。

申請者  本評価は規定にあるように5名で実施する予定であるが、大学基準協会の特色として、疑問がある点については事前に大学に対して質問の上、御回答いただき、それを踏まえて調査を行うことを考えている。例えば今年度、試行評価中の大学に対しては、事前に70項目程度の質問をし、書面をもってお答えいただいている。実地調査の現場での言葉だけでのやりとりだけではなく、事前に質問事項を大学が受け止め、学内で検討して一度書面で御回答いただくというプロセスを経ることで、実地調査の際の負担を減らせるのではないかと考えている。

委員  実地調査の中で、成績評価の調査について、実際の試験の答案やレポートを検討する、あるいは授業の状況を見るといった、具体的な手法やその位置付け、比重の置き方についてはどのような考え方か。

申請者  実地調査においては、過年度の様々な科目の答案の実物を、委員が専門に応じて分担して見て、可能な範囲で全てチェックしている。また、それぞれの試験の採点結果や評価の基準等については、現地で法科大学院担当教員と面談し、具体的にどういう評価基準で成績をつけているか、聞いている。また、授業についても実際に教室に入り、講義の仕方、学生からの質問に対する回答、ソクラテスメソッドによる双方向型授業、といった点を見ている。
評価の方法について、現在行っている試行評価では、それぞれの法科大学院が提起している理念、目的、目標等に即して、委員相互に審査基準との関係についての意見を出し合い、調整し、評価するという形をとっている。

委員  具体的には何日、何時間くらいかける予定なのか。

申請者  1泊2日の予定である。試行評価では1人の委員が3、4科目の授業の教室を参観するとともに、色々な科目の答案を大体500枚から800枚程度見る。また、1つの科目につき複数の委員が見るというやり方を採用している。1泊2日という日程は、評価委員をどの程度確保できるかということとの兼ね合いで決めている。

委員  1チームで何校の大学を担当するのか。

申請者  1チームにつき2大学院までである。

委員  規模の大小に関わらず、入学定員が違っても1チームは同じ人数だということだが、答案の確認や授業の見学を考えると、やはり大規模校の場合は仕事が多くなるのではないか。大規模校も小規模校も、同じ人数と同じ日数で費用も一律ということだが、どのような考えによるものか。

申請者  今年度の試行評価の際は、大・中・小規模校各1校ずつに御協力いただき、そのような方式を採用したが、規模の大小によって評価の質が変わることがあってはならないので、御指摘と実際の経験を踏まえ、持ち帰りさらに検討したい。

申請者  答案の調査に関しては、今年度の試行評価対象校のうち、大規模校の調査の際に、事前の大学とのやりとりの中で、答案に成績一覧を添付し、その下に成績順に答案が並んでいるという形式をとるよう話し合いをしたのだが、そのように、答案そのものを見ると同時に、評価のラインも一体化して見られるような工夫も考えている。

委員  認証評価分科会は複数設置するということだが、全体で何校まで対応可能となるのか。

申請者  まだ試行の段階だが、一度昨年暮れに各法科大学院に対し意向調査をした結果を踏まえると、平成20年度に大学基準協会に評価を求める大学数は多く見積もっても20程度と考えられ、その際は10の分科会を作り、受け入れ態勢を整えるつもりである。ただ、これも認証が得られたなら早速意向調査を行い、もう少し確度の高い大学の動向を調べ、体制を整えたい。

委員  具体的な審査について、各法科大学院はその目的を達成するために、それぞれ独自の考えがあって実施している事項がある。例えば授業において双方向性をどの程度取り入れるか、あるいは、法律基本科目の学生数について、告示上50人を標準と定められているが、それを超えてクラス編成がなされている場合がある等。そのような場合、一律の基準でこれに対して何らかのことを言うのか、それとも大学側に意見を求めるプロセスを経て最終的に結論を出すのか。

申請者  まず最後の点について、一律の基準で評価をするということは考えていない。それぞれの法科大学院の自己評価、自己点検結果を前提として踏まえた上で、なぜそのような状況になっているのかを法科大学院の担当の方々に聞き、大学基準協会の分科会の担当者間で意見交換を行い評価をするというシステムになっている。具体的な評価の現場については、現在試行評価を行っている最中であり、その評価自体もまだ完了していないので、何とも言えない。

委員  法科大学院認証評価の概要の1、2ページにある適格認定要件の評価の視点の問題について、個々の基準ごとに違反、不適合の程度の重大性をお考えになったものと思う。その中で、【レベル1】のまるを付した評価の視点について、重大な問題がある場合に認定の可否がありうるということだが、例えば1つ1つの問題は重大ではなくとも、問題のあるケースが多いという場合、総合的な判断として適格認定をしないというような選択肢もあるのか、あるいは個別判断となるのか。
もう1点、参考までに、実際の答案を見た場合の評価に関係して、個人的な経験から言うと、非常に多くの場合、評価は期末試験の成績が7割、レポートその他が3割というような形をとっており、期末試験だけを見ても厳格な成績評価がなされているかどうかは判断できず、レポートも含めてかなり綿密に読まないと判断が難しい。従って、調査する人数が限られているのであれば、時間を十分にとっていただく方が慎重な判断が可能となると感じる。

申請者  評価の視点について、まず質の点での重大な問題があれば、少数の項目であっても適格とは認定しない。また、量の点でも余りにも多くの問題があるときは、適格とは認定しない予定である。ただ、具体的にはやはり現場の判断となるので、現状ではそこまでしかお答えできない。
第2点の、先生の御経験は大変参考になるので、これから持ち帰り十分検討したい。

委員  認証評価に関する規程第15条、分科会の構成について、3項で「主査及び委員は・・・法科大学院を設置する正会員が推薦する当該法科大学院の教員の中から」選ぶ、4項で「会長は、正会員の教員の中から主査および委員を選出する」となっているが、分科会の委員はすべて正会員の法科大学院の教員に限られるのか。また、2項についても「原則として2名は、法曹三者または法曹としての実務の経験を有する者とする」となっているが、法曹三者の委員もやはり正会員の教員を兼ねていなければならないのか。

申請者  大学で教育経験のある委員は、正会員が推薦すると規定しているので、大学基準協会の正会員ではないところの教員が選出されることはない。しかし、第2項については、これは正会員であるかは要件としておらず、実務の経験を有する方々にお願いするということである。御指摘のとおり、読みづらい記述になっているので、検討させていただく。

委員  研究者教員に限定しているわけではないということでよいか。

申請者  法曹三者の委員は、法務省、最高裁、日弁連等に依頼するのだが、実質的には各法科大学院に派遣されている方が推薦される。全法科大学院中で大学基準協会の正会員が約9割あるので、実質的には問題ないのだが、改定をした関係で少し不備はある。ただ、評価を正会員の教員、いわゆる研究者教員だけでやるということはなく、実務家にも入っていただく。

委員  本申請については、次回の委員会で改めて御指摘いただきたい。また、本日いただいた御質問御意見以外にもお気付きの点があれば事務局にご連絡いただき、適宜事務局から大学基準協会に照会し、協会で御審議いただきたい。

委員  それでは次に、法科大学院協会におけるカリキュラム・アンケート調査の結果の概要について、磯村委員から御紹介いただきたい。

委員  それでは、資料10について、概況の報告をさせていただく。大きく5点、まずカリキュラム内容の問題、2番目が教育方法の問題、3番目が厳格な成績評価の問題、この3つの大きな柱に加えあと2つ、法学既修者、未修者の振り分けの問題、最後にFDの問題について紹介させていただく。
まず第1点目、カリキュラム内容について、2ページ以下に資料があるが、基本的には設置基準の中で大きな枠組みが決まっているので、各法科大学院ともそれほど顕著な違いはない
5ページの(2)の図、修了に必要な展開・先端科目単位数だが、偏りのない履修という観点から言うと、12単位以下という法科大学院数が9校あり、少ないと感じるところがあるかもしれない。
もう1つの問題点は、法律基本科目について、大体60単位程度以下ではあるのだが、他の授業科目名を使いながら実質的には法律基本科目に当たる科目もあるように思われる。司法試験との関係で、法律基本科目の単位数が少ないのではないかという要望があるが、そういった希望を、科目の名称を変えることによって実現しようという動きがあろうかと思う。
それから6ページ、各科目、特に展開・先端科目の履修率について、法律基本科目に近い科目は非常に履修率が高く、司法試験の選択科目に関係するものも履修率が高いが、司法試験の選択8科目のすべてで高いかというと、法科大学院の規模に応じて、その中のどれかに重点を置いて履修させているというようなケースもあるように思われる。
次に、第2点目、教育方法に関して、まず7ページの法律基本科目に関する1クラスの学生人数をご覧いただくと、標準数として50名はほぼ維持されている。ただ、特に1年次の未修者関係の法律基本科目で50名を超えるのは、教育効果という点で問題が多いのではないかと指摘できよう。
9ページ、クラス編成の内訳の表は、当該年度の入学者の特性をあらわすデータとして読み取ることができる。平成16年度には、1年次学生のうち非法学系出身者の割合が50パーセントを超える法科大学院が、43校中15校あったものが、平成17年度になると46校中11校ということで、3分の1程度から4分の1程度に減少している。
この数字からも、未修者のうちかなり多くの学生は、実は法学系出身者であることが示されているが、一つの理由としては、多くの法科大学院で既修者、未修者の枠を区別せずに入学試験を行い、その中で既修者試験に合格しなかったものはすべて未修者となるということが考えられる。
10ページ、社会人出身者についても、平成16年度は43校中の20校で50パーセントを超えていたものが、17年度には46校中12校で明らかに減少傾向にあるということがうかがえる。
大きな第3点目、15ページ以下、厳格な成績評価について。まず、成績評価に際し、例えば優を何パーセント、良を何パーセントと成績分布の割合を定めているという学校が51校中33校。ただし、割合を決めていても守られず、実際の成績評価結果がそれに適合していないというケースが少なくない。
恐らく最大の問題点の1つが18ページ以下の合格率である。そこでは、再試験を含まない合格率と再試験を含む合格率を区別している。再試験というのは、一度期末試験を受けて不合格になった者が再度試験を受ける制度であり、追試験は病気等の事情で受けられなかったときにもう一度チャンスを与えるという区別をしているが、ここでは再試験に限定して合格率を算定している。
再試験を含まない合格率でも、平成16年度で28校、17年度で23校とかなりの数の法科大学院において、90パーセント以上が合格しており、再試験を含むと更に多くなっている。16年度に比べると17年度は、やや厳格な成績評価という認識が広まっているようではあるが、まだ各法科大学院とも、どのレベルであれば合格させてよいのかという判断を確立できていないのではないか。今年度の新司法試験の短答式試験の結果において、論文式試験の評価を受けることができない比率を考慮すると、法科大学院における各科目の合格率はさらに十分に検証される必要があろう。認証評価機関による第三者評価が実施されれば、実際に答案をチェックするようになるため、状況が変わってくることもあるかと思う。
30ページに進み、進級制度について。進級制を採用している学校は非常に多いが、実際に進級できなかったか者がどの程度いるか、というデータが記載されている。単位認定に関する合格率の高さを反映して、進級できなかった者の比率も非常に限られており、特に既修者1年次生の原級留置率は非常に低い状況である。今後の動きも十分に検証する必要があろう。
31ページに、法学既修者の認定方法については、入学試験の段階で区別する法科大学院と、入学後に既修者認定試験で振り分ける法科大学院の数がほぼ拮抗している。それぞれにメリット、デメリットがあり、平成19年度以降、考え方を変えていく法科大学院もあるようなので、これも継続的にデータをフォローしていく必要があろう。
最後に、32ページ以下に、FD関係についての調査結果が記載されている。例えば学生による授業評価は、全校、51校すべてが実施している、また、教員相互の授業参観制度についても、31校というかなり多くの校で実施しているという数字になっている。しかしながら、この辺には書面調査によるアンケート結果の限界を感じており、実際にどのように授業評価が行われ、どういうフィードバックがなされているか、あるいは教員の授業参観が制度としてあっても、実際にどれぐらい機能しているかをチェックするためにはやはり実地調査を行う必要があり、アンケート結果だけでは、普及しているかどうかという判断が難しいと感じる。
今回、大がかりなアンケートとしては第1回であったが、アンケートで聞くべき項目を再検討しながら、重要なデータについては今回のみではなく、毎年度フォローして全体の動きを見ていく必要があるのではないか。

委員  今、御紹介いただいた点を中心に、質問や、今後本委員会で詳細を調査する必要がある事項の指摘等をいただきたい。
一つ、原級留置した場合の措置について、各大学で扱いが分かれているが、どのようにするのが良いか、制度的に可能かどうかという問題もあるが、何か検討されているか。

委員  基本的には、履修した単位も含めて全部その学年をやり直すという考え方と、単位を修得できなかった科目だけを再履修させるという考え方があり、どちらがより強い傾向とは言えない状況で併存している。
全ての科目を再履修させるという考え方は、各科目よりも全体としての到達度を基準として、1つ1つの単位が修得されていても、学年として全部やり直す方が望ましいということであるが、その場合は、既に修得した科目をやり直すことに対するモチベーションの問題と、再履修する学生と全く新しく履修する学生が混在することが教育効果として疑問がある。
他方で、修得できなかった単位だけを再履修させる場合、1年間全体の勉強の仕方が難しく、それぞれまだ十分に検討されていない段階にあると思われる。

委員  この点については、各大学ともどうしたら良いか迷っている。何か良いアイデアがあれば御示唆いただきたい。原級留置は、初年度は比較的緩やかであったが、2年度以降厳しくなった大学が増えたようだ。しかし、その趣旨については、各校によってばらばらである。

委員  この問題については過去にも相当議論されたが、教育の観点から具体的な分析はなされていただろうか。この際、アンケートを契機に組織的に検討することが必要ではないか。

委員  制度としてはどちらのやり方も可能であるが、教育効果としてどちらが良いかは、このアンケートではわからない。今後、継続的に調査するとすれば、各法科大学院にそれぞれの手法の結果として、プラス要素、マイナス要素を聞いていくということになるのではないか。

委員  各大学からは、原級留置にあたり、修得できなかった科目の再履修のみを必要とした場合、半年で学生が必要単位を修得した際に進級を認めるかどうかという問題があるという意見や、学生の授業料負担の観点から、原級留置の学生に1年分全額支払わせるよりも、科目等履修生のような形で必要な単位だけを取得し、揃えば年次進行できるとした方が負担が軽くなるという意見、奨学金が切られてしまうという話も聞いている。

委員  アンケートは1つの動向を示すものではあるが、この件については問題点が十分整理しきれていないという印象があるので、現実的な教育効果との関係という観点から基本的な考え方を整理し、検討した方が良い。もちろん、各大学においてはそれぞれのやり方で経験を積み、賢明な選択をするだろうが。

委員  分析はデータがないためできないが、授業料の問題については具体的な例を紹介いただくのが良いのではないか。
多くの大学では進級要件について、必要単位数の7~8割程度の修得を最低限度として設定しているが、例えば6割しか単位修得率がない学生に対して、残りの4割を取ればいいという発想なのか、そもそも十分な力がついていないと考えるか、そこの違いがある。従来の大学というのは1つ1つの科目の単位を積み上げていけば良いという発想だが、法科大学院の場合は、学生が全体として1年間でどこまで到達しなければならないかを、たまたま1つ1つの科目で判断しているだけであって、例えば6割しか到達していない人は未修者としてもう一回やり直してもらうという考え方の方が、法科大学院のプロセス、段階重視という点からはなじみやすいのではないか。
大学によっては進級制に代えて科目先履修制という、ある科目、例えば民法の応用科目を取るためには、その前提となる科目、この場合民法を取らなければいけないという形で段階的学習を実現しようとしているところもあり、そうした発想もあり得るだろう。

委員  本学では進級要件が非常に厳しく、まず定められた単位数を修得しなければならず、その中で必修科目を1つでも落とすと進級できない。また、GPAが1.5でなければ進級できないという形になっている。
一方で、本学では授業料について単位従量制、基本の単位以上を取ると1科目につき8万円の授業料が加算していくというシステムをとっており、学生、教員の双方がコスト意識を持つことを期待している。
進級できなかった学生についても、授業料負担を考えて単位従量制を適用し、A、Bを修得した単位についてはそのまま残して、それ以外の科目を履修するという形をとっているのだが、実際には進級できない学生はA、Bがほとんどなく、結果的にもう1年授業料を負担している状況である。

委員  未修者の進級の問題と既修者の進級の問題とでは若干性質が異なる。純粋未修者については、1年目では成果が現れないが、2年目で急速に能力が上がるというパターンがあり、こういった問題も、難しいが、考慮するべきだろう。
もう1つ、厳しいルールを設定したら本当に教育が厳しくなるのか、教育の質が上がるのかということは安易に結論を出せない。厳しい枠を設定したために、個別的なケースについては甘くなり、教育全体建前としての厳しさ、現実における緩やかさとなってしまうこともあり、割り切れないところがある。

委員  未修者の中で伸び率が大きく違うということは確かにあり、非常に優秀な純粋未修者は1年間で相当に高いレベルに達することができる。しかし、そのレベルに十分に達することができない学生について、将来の伸び率に期待して学年進行させることには危険性もあり、むしろ進級後に既修者と同じクラスとなり、授業についていくことがさらに難しくなる場合の方が多いのではないか。そのような学生については、2年3年と進級はしたが、結局司法試験に合格するレベルに達しないということになるよりも、もう一年やり直し、本当に法律に向いているか適性を見た方が良いという考え方もできる。
本学の教員間での議論では、伸びしろに期待して進級させたケースについて余りうまくいかなかったという認識が多かったが、他の大学での状況もお聞かせ願いたい。

委員  原級留置となった学生は実際にはほとんどが退学か休学し、もう一度やり直す学生は少ないという現状のため、教員側としても措置し難いという状況もある。
論点が変わるが、展開・先端科目の状況について、設置審査の過程で、どの法科大学院も科目数を増やし、カリキュラムが充実した形にはなっているが、増えた科目はほとんどが司法試験の選択科目である。履修傾向についても、司法試験選択科目に履修が集中している。各法科大学院ともそれぞれに高邁な理想を掲げているが、必ずしもそれに即していない現状は問題である。各大学の展開・先端科目の状況について、ヒアリングを行う必要があるのではないか。

委員  先ほど指摘があったが、組織だった知識がまだない学生でも、先端科目で触れたエピソードに熱中し、そこから法律を勉強する面白さを知り、改めて意欲を燃やすという事例はかなりあるのではないか。反面、特殊専門領域というものは個人が選ぶものでもあるが、弁護士の業務の中で形成されていくものでもあり、目的意識を強く持ちすぎて狭い領域の勉強だけをすることも、法学教育の在り方としては問題がある。評価の視点として、このような先端科目の位置付けの二面性をどのように仕切るかという問題もあるのではないか。

委員  原級留置の話に戻るが、進級率について真剣に考えなければ、法科大学院の信頼が失われる。法科大学院の入試自体が7倍程度、実際にはその半分程度という甘い状況である中で、進級率が90パーセント、あるいは95パーセント以上という法科大学院が半数以上ある。進級率95パーセントという数字は、定員300人ならば15人だが、30人の大学ならばたった1人が原級留置されるに過ぎない。法科大学院関係者はそれでも大変と言うが、従来の法曹三者の苦労と比べて、外に向けてもそう説明できるのか。問題意識が足りないのではないか。

委員  データの性質上、個別の法科大学院の合格率は出せないので、トータルでの合格率ということになっているが、傾向として初年度は他の法科大学院がどこまで厳しくするか様子を見ながら、模様眺め的にやっていたという面があるかと思う。また、従来の学部の答案等と比較するとレベルが随分高いので、その比較の中で甘めについたところがあるのではないか。ただし、答案を見る経験がある立場からすると、やはりこの進級率は高すぎる。

委員  今、委員が指摘した点は非常に重要である。司法試験予備試験のレベルは法科大学院の修了認定程度とされており、法科大学院がきちんとした修了認定を行わなければ、予備試験のキャパシティ、レベルも落ちるという制度設計になっている。各法科大学院がルーズに成績評価をしてしまうと、実質的に絞り込むのは司法試験で良いということになり、それでは従来と変わらない構図となってしまう。そこを各法科大学院に認識してもらわなければ困る。

委員  司法試験の関係では、最終的な合格者数に比して多数の法科大学院学生がいるという条件があり、予備試験との関係においてもすんなり行くのかという疑問があって、各法科大学院とも設計を迷っているという面はある。

委員  いろいろ意見はあろうが、各法科大学院できちんと勉強していれば合格できるという司法試験にするためには、まず各法科大学院がきちんとした成績評価をしなければならないというのは、前提であろう。

委員  成績評価の厳格化自体は必要であるが、どのような形で成績評価を行うか、という方法については議論する必要がある。個々の科目の成績評価を厳格にするということが、教育上良いことなのか、1年間トータルの成績で学生を評価するという視点が必要なのではないか。例えば、個々の科目で頻繁に小テストを繰り返して評価を行ったなら、最終的に不可の成績となる学生が減ってくるということもあろう。そこで、1年間が終わったところで各科目を合格点ギリギリで通った、例えばGPA1.5以下という学生は進級させないというような、明確な方法をとった方が良いのではないか。

委員  設置審査の関係で見た法科大学院においても、どのレベルの学生まで修了認定したらよいのかという到達目標についてはあまり理解されておらず、また各校とも自信がない様子だったということはある。ただ、現状のようなルーズな認定をしていては、司法試験でレベルを統一するべきという結論にならざるを得ないので、各法科大学院では、このレベルまで学生が達しておればそれを受からせない司法試験の方がおかしい、と言えるような見識を持って成績評価、修了認定を行うようにしなければならない。

委員  現実には、司法試験の成績が出てくる頃に、うちの成績評価ではとても対応できないという大学が出てきてしまうのではないか。

委員  そこに関しては、法科大学院の成績評価と司法試験の成績評価が並行しているかどうかについて急いでデータを整理して検証し、結果的に成績評価が並行していない場合でも、どちらの評価が間違っているのかという水掛け論にならないよう、安定した関係を作り上げなければならない。実際に難しい問題ではあるが。

委員  この問題は、法曹養成全体の制度、我が国における法曹の在り方との関係で評価されるべき大きな問題であり、我々としてはこの問題を背景として意識しつつも適度な距離をとり、当面は我々が考えるべきことは何かを決定して進んでいくより他ない。
成績評価、修了認定を厳格化する方向にのみ動き、司法試験受験者数が減って合格率は7、8割となったしても、それをもってうまくいったとは言えないだろう。我々としては、ただ厳格化するということではなく、法律家の能力として何が必要で、どのような者を養成したいのかということを絶えず検証していかなければならない。制度が動き出してしまうと、実際にはそうした検証は困難となり、これまでも色々な制度の中に検証事業が盛り込まれてはいても、実行されたことは少なかったが、この件に関しては、例えば無用な暗記主義に陥っていないか、絶えず疑って検証していくことが必要である。
そのためにも、法科大学院として、この程度の者には合格して欲しいと胸を張って言える基準を考え抜くということは大切であるし、本委員会もそのために存在するものだと考える。
この問題に対するには、制度全体として関係者間での意見交換が継続的になされなければならないが、現状ではそうした環境が十分に整備されていないという問題はある。

委員  今、委員が指摘した点については関係機関も認識しており、法科大学院と司法試験の関係の検証のみならず、そもそもどういう法曹を養成するかという法曹の概念の再定義から、法曹養成制度の中で法科大学院が果たすべき役割、司法試験の位置付け、司法修習の問題といった課題を総合的に再検討するため、今後文部科学省と法曹三者等で枠組みを作り、協議することも検討されていると聞いている。
この問題については、次回も引き続き検討したい。

7. 次回の日程
次回の日程は、9月上旬を目処に改めて調整することとなった。

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)