5 会議経過
① まず原田次官から「司法制度の現状と改革の課題」の説明が行われ(別添1参照)、次に泉事務総長から「21世紀の司法制度を考える-司法制度改革に関する裁判所の基本的な考え方-」の説明が行われ(別添2参照)、最後に小堀会長から「新しい世紀における司法のあり方と弁護士会の責務」の説明が行われた(別添3「参照)。
以上の説明に関して、以下のような質疑応答があった。
○ 陪審制・参審制についてはどのように考えるか。 (回答・原田:理念としては良いが、制度として導入する以上十分機能させなければならないので、国民が受ける負担等に関し国民全体の意識改革が前提となろう。)
○ 弁護士任官の数が期待されるほど増えないのはなぜか。 (回答・泉:弁護士業務の在り方として弁護士個人が事件を受任する形が中心となっていること、我が国の裁判官は主体的に争点整理を行い、証拠を緻密に検討して詳細な判決を書くことが求められており、これに習熟するにはかなりの訓練を要することなどが理由ではないか。) (回答・小堀:弁護士という比較的自由な仕事から裁判官に変わることへのとまどい、依頼者との関係の整理が大変なことなどが理由ではないか。)
○ 本人訴訟が多い理由はどこにあるのか。 (回答・泉:簡裁事件については訴額が安く弁護士の仕事としてペイしないからではないか。地裁事件については理由がよく分からないが、費用が不透明ということもあるのではないか。)
○ 法曹一元実現のための条件としてはまず何が必要か。 (回答・小堀:質の高い法曹を増やしていくこと、弁護士が公益的役割を担わなければならないという考え方を徹底することなどが必要である。)
○ 我が国の刑事手続について国際人権規約委員会から種々の勧告がなされているが、これについてどのように考えるか。 (回答・原田:この問題は大きな問題なので、ここでは十分説明する時間がないが、同委員会は、我が国の手続の全体を見るのではなく、一部のみを取り上げて問題点を指摘しているという印象を持っている。)
○ 我が国の裁判官任用制度(キャリアシステム)の欠点は何か。 (回答・泉:裁判官と弁護士との間で信頼関係が醸成されていない面があるかもしれない。)
○ 弁護士の公益的使命や弁護士倫理が重要であるというが、実際にどのようにしてこれを実現していくのか。 (回答・小堀:公益的活動の範囲は広く、また、当番弁護士制度の実施で弁護士の間にかなり公益的使命の認識は広まっていると思う。また、弁護士会として定期的な研修を実施しているし、市民のための苦情相談窓口を設けるなどしてきている。)
○ 法曹養成のための法学教育としてはどのようなものが期待されるのか。 (回答・泉:現在の大学教育は理論教育が中心となっているが、事実関係の重要さを認識させるためケースメソッドを取り入れることや、ディベートの能力を高めるためソクラテスメソッドを取り入れることなどが考えられるのではないか。)
○ 弁護士任官が十分進まない現状がありながら、法曹一元を実現できると考える根拠は何か。 (回答・小堀:法曹一元が実現された後では裁判官に任官することについて弁護士の認識も変わってくるはずである。裁判官推薦委員会で推薦されて裁判官に任官することである種の名誉感を持ち得るのではないか。)
② 論点整理について、前回の会議の議論を踏まえて、会長試案骨子を文章化した「論点整理に関する会長試案(司法制度改革に向けて-論点整理-)」(別添4参照)が配付され、これについて意見交換が行われた。
その中で、以下のような意見があった。
○ Ⅲ(2)(ウ)の被疑者・被告人の公的弁護制度の在り方の部分は論点の比重の割に分量が少なく、バランスを欠くように思う。
○ 全体的に格調が高く文章が難しいので、一般の国民が理解しやすいように、もう少し表現を易しくしてはどうか。特に、Ⅱ(1)の部分は難解なので簡略化した方がよい。分量が多いので、要約したものを用意してはどうか。
○ 全体の書き方として、当審議会が抜本的な改革を考えているということを国民に理解してもらうためにもこれくらい大上段に書いてもよいのではないか。
○ Ⅲ(3)(イ)の「この提言の根底には…思われる。」部分について、臨時司法制度調査会の理解がこのようなものであったかについては疑問の余地があるので、表現を工夫してはどうか。
○ Ⅱについては、論点整理にしては長過ぎるという意見もあろうが、今回の司法制度改革の意義を理解してもらうためには必要であろう。
○ 裁判官の独立等の論点について明記すべきであるという意見もあるが、法曹一元の説明等の中で法の支配について触れられており、審議の中で取り上げられるという趣旨は表れているので、このままでよいのではないか。
○ 少年事件の公的付添人制度についても検討課題になることを本文の説明の中で触れてはどうか。
意見交換の結果、本試案の内容について大筋で委員の了解が得られ、さらに、会長が各委員の意見を踏まえて本試案を訂正し、次回審議で各委員の最終的な了解を求めることとなった。
③ 予備日の12月14日(火)については審議会を開催せず、次回は、開催時刻を繰り下げ12月21日(火)午後3時から開催することとし、このときに、審議の傍聴の取扱いについても議論することとなった。
以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
- 速報のため、事後修正の可能性あり -