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日弁連法務研究財団は、法科大学院が法曹養成教育を適切に行い、その法曹養成機能の充実・向上に資するよう、しっかりと評価をしていく。評価については、一昨年から検討を始め、特に昨秋から認証評価検討委員会の24名の委員の先生方に6回にわたり御検討いただいた。 また全国の法科大学院68校全校を回り、要点を伺い、それらを踏まえて今回の認証申請となった。また、今年度から来年度にかけては、評価委員の研修や試行を行い、当財団の評価の質を一層高めたいと考えている。 当財団の評価の取組みの基本的な視点は2つある。 1つ目は、エンドユーザの視点を踏まえた「法曹に必要な資質・能力」の養成をしっかり実施ているかを評価すること。司法制度改革が進む中で、法曹に期待される役割、社会で期待される役割は大きく変化していくと考えている。それに伴い、法科大学院でなされるべき教育の変化をきちんと追いかけていくためには司法サービスのエンドユーザの視点が非常に重要であると考えているためである。 2つ目は、法科大学院による自己改善・自己改革の促進・支援の視点である。法科大学院の黎明期に当たっては支援の視点が非常に重要であると考えている。 次に評価基準の特徴である。 1つ目は、9分野についての多段階評価である。その分野ごとに適格認定ということではなく、5段階の評価を行う組立てになっており、5段階の評価をすることで、各法科大学院の自己改善・改革への指標になるのではなかろうかと考えている。 2つ目は、「法曹に必要な資質及び能力の養成」を分野の1つとして繰り上げ、独立して評価することにした点である。法科大学院の使命であるプロフェッショナルである法曹の養成という1点に向けて、あらゆる法科大学院の要素を集中しているという姿勢を評価することが、とりわけ黎明期にあっては重要なのではないかと考えている。 3つ目は、法科大学院による創意工夫を妨げない配慮ということである。評価基準としてはできるだけ大綱的なものに留め、設置基準を超えた細かい数値や、あるいは枠にはめるようなところというのはできるだけ避けたつもりである。各法科大学院がそれぞれの創意と工夫でやっていって、その効果を自ら検証し、改善していくというのを基本的なスタンスとして考えている。 評価方法の特徴についても3点ある。 1つ目は、法科大学院による自己点検評価である。法曹養成教育にどのように取り組んでいるのか等を法科大学院に自己点検・評価報告書という形で作成いただくということである。 2つ目は、実態の把握である。学生等に対するアンケートや現地調査を通じて現場の情報を得る。そして現場の状況を踏まえ、改善に向けてのアドバイスをしていきたい。 3つ目は、異議申立て制度をきちんと取るということである。評価の客観性の担保、評価の受け手の納得性という点から異議審査、異議の申立ての機会を設けるということである。評価報告書を作る前の事実の確認という点での法科大学院での確認プロセス、それから評価報告書ができた後の異議審査手続という二重の手続きを用意し、それを経て報告書を確定するということである。 最後に評価体制である。 1つ目は、エンドユーザ、法曹、大学人との連携である。エンドユーザを代表するという観点から、一般有識者がメンバーの3分の1程度加わる。それと法曹と合わせると過半数となるような組立てにしている。評議委員会、評価委員会ともにそうなっている。ここでエンドユーザの視点を重視する姿勢を浸透したいと考えている。 2つ目は、財団として法曹養成教育の研究をしているということである。法曹養成教育の評価をする基盤として法曹に求められる資質、能力はどのようなものであるか、内容の把握、それをどうやって養成するかの研究が不可欠であろうと考えており、これは以前から継続しているものである。 3つ目は、評価員の研修の充実である。評価員の役割は非常に重要であると考えており、これから2年半ほどの間に、多数の法科大学院の試行評価を計画している。その中に評価員がどのように現地を見るのか、どのように情報を分析するのか、どのように評価を組み立てていくのかということの研修を十分にやっていきたいと考えている。
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設置基準に関する基準と、別途に基準を立てて検討するというのは、認証評価として非常に望ましい方法だろうと思う。資料には、教員の年齢及びジェンダーに配慮がなされていることという点がある。そして日弁連法務研究財団から提出されている参考資料の42ページにもこの点があるが、関連法規定として大学院設置基準の第8条第4項というのが引用されていて、年齢構成にあまり偏りがあってはならない、というのがあるが、これは法令由来基準と読むべきだとすると、この資料5−5で1重丸になっているところのうち、ジェンダーについては確かに別個に付けられた基準だが、年齢については2重丸とするほうが適切ではないかと思うが、いかがか。
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この点については財団の検討会でも色々と議論があった。年齢構成というものが教育の中でどういう位置付けを持つものであるか。年齢層が高いからといって教育そのものに直接影響がどの程度あるのだろうかということの見極めについては、まだ様子を見る必要がある。必ずしも高齢であれば良くないということではなかろう。逆に若く経験の浅い教員ばかりでも良くなかろう。むしろ各年齢層の教員がいることが重要であるという意見もあった。いずれにしてもこれを1つの基準として打ち立てるには躊躇があり、一重丸という形で様子を見るという趣旨。法令由来とするということになると、これは明確な基準を立てて、その基準に満たないものについては不適格という形になるもの。そこまでの基準に高めるのは困難であるという位置付けである。
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趣旨はわかるが、若年者であれ、高齢者であれ、教員の年齢構成が偏ってはいけないということ自体は大学院設置基準自体の定めるところであって、これは専門職大学院についても法科大学院についても排除されていない規定。教育効果との関連でそこの議論が必要というのは、1つの考えとしてはもちろん成立すると思うが、法令基準として取り扱うべきではないか考えるが、いかがか。
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確かに特定の範囲の年齢に著しく偏ることは法令基準に違反することとなるので、その偏りをどこで捉えるのかということを再度検討していきたい。
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「大学院は教育研究水準の維持・向上及び教育研究の活性化を図るため、教員の構成が特定の範囲の年齢に著しく偏ることのないよう配慮すること」とあり、この規定の目的は、教育研究水準の維持・向上及び教育研究の活性化を図るためであるから、それに相応しい年齢構成であれば良いと理解している。単に20代何割、30代何割という構成のことではなくて、その大学院の教育と研究の維持向上と活性化に相応しい年齢構成だと思う。
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同じ箇所で、ジェンダーについて配慮がなされているという書き方をされているが、具体的にはどのように評価していかれるつもりなのか、検討されたことを教えていただきたい。
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検討の過程で、女性の教員数を半分くらいにすべきではないかという意見もあった。また一方では、女性だからといってある水準に達していない者を教員して入れるのが良いのかという意見もあった。現実を考えた場合、現状で法科大学院の教員に女性の専任教員の割合を増やせと言われ、それで評価されると言われても困るという現実論もあった。そういう議論を経て、現時点では将来を見据えた配慮という程度しかないのではないかということになった。
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それで具体的にどのように評価されることになるのか。
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例えば女性の教員の割合を増やすべく、そのキャリアルートでの配慮を行うことが考えられるのではないか。将来の法科大学院で女性が専任教員となり得るようなキャリアパスを考えていくというあたりの試みがなされているのであれば、そういう姿勢を評価していくということ。
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認証について審議する場合には、5−4の資料で4ページの(3)で「大学の教育研究活動等の評価の実績があることその他により認証評価を公正かつ的確に実施することが見込まれること」となっている。「公正かつ的確に実施することが見込まれる。」ということを審議の場で判断しなければいけないのであろう。 今回の申請で、既に行ってきた評価の実績と、今後実施していく計画の評価員の研修や訪問調査についてお聞きしたい。
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評価の研究については一昨年から検討に入り、例えばABAに行って2日間に渡って色々と教えを請うてきた。また、実際に評価に携わった方々も検討に加わっていただき、評価のやり方等について御意見を賜った。法科大学院を訪問した時にもそういう評価についての御意見を伺った。これから本年、来年と研修並びに試行評価を実施し、評価の質を高めていきたいと考えている。試行評価については法科大学院全校に素案を出しており、現在、「受けたい」あるいは「説明を受けたい」という機関が20大学ある。それを今年、来年と実施していきたいと思っている。
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法科大学院はスタートしたばかりであるから、今年や来年に受けることを考えているというところは少なく、3年目以降、4年目、5年目が多くなると思う。説明では2年か2年半以内に試行評価を行うとのことであったが、この試行評価は、評価する側の試行なのか、評価を受ける側にとっての試行なのか。あるいは双方にとっての試行なのか。また、試行評価の時には認証料というのは払うのか。
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実際、本評価はおそらく2006年、2007年に実施すると思っており、2004年、2005年の前半にかけては試行評価になると思う。これは評価の質を上げるための、財団自身の研修と考えている。そのため、これに関する費用の負担は法科大学院に一切求めないという方針。また、法科大学院にとっても、評価の練習になるということもあるかもしれない。
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カリキュラムの関係だが、資料の「科目構成」で、「各科目のいずれかに過度に偏ることのないように配慮されていること」の注が設けられており、法律実務基礎科目などについて、どのくらい必要かについての目安が書かれている。この中に、法律基本科目についての目安が触れられてないが、どのような考えがあるのか。
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法律基本科目を何単位以上あるいは以下という議論もあった。しかし最終的には、法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目並びに展開・先端科目で33単位以上との目安を設けることによって、法律基本科目の単位数が自ずと決まってくると思う。あえて法律基本科目の単位数について枠を設けなくてもよいのではないかという意見が多数を占めたので、このような表現になっている。
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エンドユーザの視点を踏まえた制度であるというのは魅力的だが、エンドユーザの定義とは何か。
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エンドユーザの定義は大変難しいが、法律の最終的な利用者という意味で、例えば、経済界、労働界、あるいは消費者など多様なエンドユーザがいると思う。そういう観点で財団の評議会あるいは評価委員会に多様なエンドユーザの方々を招いて委員になってもらいたいと考えている。
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先程の年齢構成の問題だが、これは現在の法科大学院の設置環境の中で重要なポイントだろうと思う。単に年齢構成からのバランスということを考えるのでは結局基準が見当たらないということになってくる。あるいは実態との関係で不適合になってくるという視点もあると思う。この問題は一面においては教員の立場からの問題であり、極端な場合には年齢差別の問題に対してどのように捉えるのかということでもある。反面、学生の側からの問題、教育の実質が伴うかという問題もある。少なくともこのようなことを考えながら検討していくことが重大な課題であるが、教育目標との関係で相当微妙な問題をはらんでいると思う。 また、エンドユーザの問題は日本弁護士連合会の中でもこれに対してどういう考え方を持って望むかについては、年来大きな考え方の相違もあって、現在の方向性ということについては意見の分裂が見られると思う。そういう弁護士会の中での議論の展開ということと、この評価に際しての立場とはどういう関係にあるとお考えかを伺いたい。
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エンドユーザについては色々な捉え方があると思うが、エンドユーザに色々な方々がいて、色々な考えの方がいるということを踏まえて評価に当たっていきたいと思っている。特定のエンドユーザを捉えるような偏りは法曹界においては持ち込まず、あくまで評価の場合での法科大学院における最終的なエンドユーザというものを考えていきたいと思っている。 年齢構成については、年齢差別になるのではないかという意見もあった。この基準を少し退いた形にしたのはこういう理由である。年齢は非常に高い方が多いということで、それが本当に教育にとって問題であれば、別のところで問題として出てくるであろうと考えている。教員構成だけではなく、授業やファカルティディベロップメントなど別の評価基準、評価項目で必ず問題が出てきて、それを自己改革のプロセスを通じて是正していくことではないか、それを外部から年齢の構成について意見を言うのはおかしいのではないかという意見があった。確かに現時点では非常に難しい問題だと考えているが、それは法科大学院が成熟していく中で、ある状態に落ち着いていくのではないかと考えている。
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基本的な問題提起であるが、この申請内容においては、大学、あるいは大学院が伝統的に抱えている欠陥、悩みは解決していないように思う。それは大学院長、学部長が主体的に、こういう方向にカリキュラムを持っていこうと言った時に、みんながどうやってついて来るかについて、まったくガバナビリティを欠いているということである。それがここにはどこにも出てこないのである。要するに例えば判例研修や判例勉強をさせようということ、判例批判まで突っ込んでいくのかなど、そのように決断して学部長なり大学院長がみんなにこういう方向で少しやってみようという時に、ここに出てきている教員の体制、教員の組織等々を読んでみても、どうやってやっていくのかがわからない。そこのところで強いリーダーシップやあるいは良いスクールガバナンスを発揮してくれる、作っていってくれるロースクールを高く評価する仕組みを組みこんで頂いたらもっと良いのではないかと思う。
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それについては、評価基準の1−1の基本方針の設定と周知徹底、1−2の自己改革への取り組み、並びに1−4の管理運営、この辺りで御指摘の点はかなりの部分カバーされるのではないかと考えている。
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認証評価評議会というものを作られるということだが、寄附行為との関係において、財団の委員会、事業遂行のための委員会という位置付けで理解してよろしいのか。これは組織的な問題として確認したい。
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御指摘の通り。この認証評価評議会は寄附行為上の委員会に相当するもの。
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そうすると寄附行為上の評議員会はこれとは別のものであるという理解でよろしいか。
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その通り。
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法律基本科目の単位数の件で、修了要件単位数の最低はもちろん法令で明確に決まっており、上位設定についての基準が履修科目登録の各年度の単位数上限しか入っていない。法律基本科目が少なすぎると良くないという議論がある一方で、これが多すぎると良くないという議論が色々なところで出ていたので、その上限設定について各年度だけということになると、これは110単位くらいまで取れることになる。各法科大学院は法律基本科目の単位数をむしろ増やしたいという方向で考えているのではないかと思うが、そこのところをどう考えているのか。
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法律実務基礎科目、隣接・展開科目等で33単位以上という枠を設けているので、それから逆算して法律基本科目があまり過多にならない、そういう担保はあるのではないかと思っている。
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110単位くらいが3年間の上限であるとすると、結構な単位数になるとも読める。しかも色々な議論の中で93単位の修了要件単位数というのは各年度の単位に関する時間計算をかなり厳密にやっているので、あまりそれから膨らむのは適当ではないという議論もあったかと思うが、そういう点も含めて少し考えを聞かせてほしい。
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修了単位については100単位程度までが望ましいという基準は設けている。
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本件については次回も改めて御議論頂くことにしたい。
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