ADR検討会(第1回)議事録
(司法制度改革推進本部事務局)
- 1 日時
- 平成14年2月5日(火)10:00~12:00
2 場所
- 司法制度改革推進本部事務局第2会議室
- 3 出席者
- (委 員)青山善充、安藤敬一、髙木佳子、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎(敬称略)
(関係機関)最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、関係省庁等
(オブザーバー)日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会、日本弁理士会
(事務局)山崎事務局長、松川事務局次長、小林参事官
- 4 議題
-
- 開会
- 事務局長挨拶
- 議事運営ルール等
- 検討会における討議項目
- 自由討議
- 今後の進め方
- 閉 会
- 5 配布資料
- 資料1-1:論点メモ(ADRの拡充・活性化)
- 資料1-2:説明資料
-
- (1)ADR(Alternative Dispute Resolution):裁判外紛争処理制度
(2)民事訴訟手続とADRとの比較
(3)わが国のADRの分類
(4)主な裁判外紛争処理機関
(5)裁判と主なADRの新受件数の状況(平成12年度)
(6)裁判上の和解(即決和解を除く)の状況(平成12年)
(7)主なADRの新受件数の推移
(8)主なADRの利用状況(諸外国比較)
(9)諸外国における最近のADRを巡る動向(未定稿)
(10)紛争処理の流れ(イメージ)とADRの問題点
(11)時効中断(停止)効の付与
(12)執行力の付与
(13)法律扶助の対象化
(14)ADRと裁判手続との制度的連携
(15)専門家(隣接法律専門職種等)の活用
- 資料1-3:参考資料
-
- (1)司法制度改革の三つの柱
(2)司法制度改革審議会意見書(抄)(「ADRの拡充・活性化」部分)(略)
(3)「司法制度とADRのあり方に関する勉強会」について(司法制度改革審議会報告用レジュメ)
(4)司法制度改革審議会意見書(抄)(「隣接法律専門職種の活用等」部分)(略)
(5)隣接法律専門職種の活用等(司法制度改革審議会意見のポイント)
(6)アンケート調査用紙
- 資料1-4:ADR検討会の進め方(案)
- 6 議事
[開会]
【小林参事官】改めまして、おはようございます。ただいまから、第1回「ADR検討会」を開会いたします。本日は、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。後ほど座長をお決めいただきたいと思いますけれども、それまでの間は、私、参事官の小林が議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いします。
これ以降、着席させていただきます。
まず、議事に先立ちまして、司法制度改革推進本部事務局長の山崎からごあいさつを申し上げます。
[事務局長挨拶]
【山崎事務局長】どうも、おはようございます。事務局長の山崎でございます。よろしくお願いいたします。
開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。皆様方には、ADR検討会につきまして、御出席いただけるという御承諾を賜わりまして、誠にありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。
この改革推進本部でございますけれども、内閣に昨年の12月1日に設けられまして、司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとりまして、司法制度改革を総合的、集中的に推進をするということになっておりまして、3年以内ということを目途に関連法案の成立を目指すこととされているわけでございます。
具体的な法令案の立案に関しましては、私ども事務局が中心になって行うということになろうかと思いますが、その際には、このADR検討会を始めといたしまして、主要なテーマごとに有識者等による検討会を開催いたしまして、意見交換を行いながら事務局と一体となって作業を進めると、こういう方式を取ることとさせていただいているわけでございます。
司法制度改革は極めて広範なテーマを対象にしているわけでございまして、事務局全体で10の検討会が設けられております。実は、本日は、このうち3つが入っておりまして、今日ここでやっている反対側で、また10時半から行われますし、午後もあるという状況で、場合によっては1日に4つぐらい重なることもあり得るんではないかというぐらいに、かなりハイスピードで動いているという状況でございます。
それはさておいて、このADR検討会におきましては、ADRに関する共通的な制度基盤の整備に関しまして、いわゆる「ADR基本法」の制定をも一応視野に入れまして、必要な方策について御検討をお願いしたいというふうに考えておるところでございます。
このADRにつきましては、これが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、その拡充・活性化を図っていくという目的から、総合的なADR制度の基盤を整備するということを図っていかざるを得ませんし、ADRの利用の促進や裁判手続との連携強化等のための具体的な方策について検討するということなどが求められているわけでございます。また、一方では、十分にその実態が把握されているとは言いがたいという面もあるわけでございます。
このため、この検討会におきましては、ADRの現状とその問題点をきちっと検証した上で、ADRのあるべき姿を見据えた必要な制度上の整備に関して御議論をいただくという大変難しいお願いをすることになろうかと思いますけれども、この重要性にかんがみまして、皆様方には是非忌憚のない御意見をお聞かせいただきますよう、よろしくお願い申し上げたいと思います。
はなはだ簡単でございますが、以上でごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いをいたします。
[議事運営ルール等]
【小林参事官】ここで、傍聴を含めまして議事の公開などにつきまして、委員の皆様方の御了解をいただくまで、報道機関の方は退室をお願いしたいと思います。
(報道関係者退室)
【小林参事官】それでは、ここで委員の皆様方を御紹介させていただきたいと思います。私の右手の方からになりますが、青山善充委員でいらっしゃいます。
【青山委員】成蹊大学で民事訴訟法を講じております、青山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【小林参事官】安藤敬一委員でいらっしゃいます。
【安藤委員】蔵前でかばん屋を、製造卸しをやっております、株式会社松崎の安藤でございます。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】高木佳子委員でいらっしゃいます。
【高木委員】弁護士をやっております。ちょうど今年で30年目になります。所属は第二東京弁護士会でございます。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】原早苗委員でいらっしゃいます。
【原委員】所属が大学の名前になっておりますけれども、25年消費者グループに所属をしておりまして、消費者活動とか、消費者運動ということで、消費者の立場から参画をさせていただいております。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】平山善吉委員でいらっしゃいます。
【平山委員】日本大学で建築を教えております。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】廣田尚久委員でいらっしゃいます。
【廣田委員】弁護士で大東文化大学で教員をやっております。よろしくお願いいたします。 【小林参事官】三木浩一委員でいらっしゃいます。
【三木委員】慶応大学で民事訴訟法を教えております、三木と申します。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】山本和彦委員でいらっしゃいます。
【山本委員】一橋大学で民事手続法を担当しております、山本でございます。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】横尾賢一郎委員でいらっしゃいます。
【横尾委員】経団連事務局で、事務局員をやっております、横尾です。よろしくお願いいたします。
【小林参事官】また、本日は、所用のため御欠席されておられますが、龍井葉二委員、綿引万里子委員にも御参加いただいております。
なお、事務局の出席者は、冒頭ごあいさつ申し上げた事務局長の山崎と、事務局次長の松川でございます。
では、引き続きまして、委員の皆様の互選により、座長を御選任いただきたいと思います。御推薦等がございましたらお願いしたいと思います。
【廣田委員】誠に恐縮ですけれども、青山委員が座長に適任だと思いますので、青山委員を推薦したいと思います。
【小林参事官】ただいま、青山委員を座長に推薦するという御意見をいただきましたけれども、いかがでございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
【小林参事官】それでは、青山委員にADR検討会の座長をお願いしたいと存じます。今後の議事進行は青山座長にお願いをいたしたいと思います。
【青山座長】皆様に御推薦いただきましたので、それでは座長のお役目を務めさせていただきたいと思います。
先ほど山崎推進本部事務局長のごあいさつにもありましたけれども、このADR検討会の任務は、司法制度改革審議会の報告書にうたわれておりますところの、ADRが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるように、その拡充、活性化を図ること。そのためには何をするかと言えば、一つには、ADRの関係機関相互の連携を強化すること。もう一つには、先ほどもお話がありましたように、ADR基本法の制定を視野に入れたADRに共通な制度基盤を整備すること。それがADR検討会の任務であろうかというふうに心得ております。先ほどのお話にもありましたように、これは極めて困難な課題でございますけれども、21世紀の日本社会において増大することが予想される紛争の解決を、裁判と並んで引き受ける受け皿としてのADRを充実させることは極めて重要なことであるというふうに心得ております。
本日、ここにお集まりいただきました委員、及び後から御紹介します関係機関及び隣接法律専門職種団体の関係者の皆様は、いずれもADRについて深い造詣と見識をお備えである方ばかりでいらっしゃいます。私としてはそのパワーを最もよい形で最大限に結集させて、困難な任務を遂行して参りたいというふうに思っております。この司法制度改革の推進は、国民が我々の周りを取り囲んで注目しているというふうに心得ております。そういう中で、緊張感を持ってガラス張りの審議をこれから進めさせていただきたいというふうに思っておりますので、どうぞ皆様方よろしく御協力のほどお願いいたします。
それでは、議事に入りたいと思いますが、最初にひょっとして私の都合がつかないような場合に備えまして、座長代理を指名させていただきたいと思います。座長代理には、山本委員にお願いしたいと思っておりますが、是非よろしくお願いいたします。
【山本委員】承知しました。
【青山委員】それでは、山本委員に座長代理をお願いすることにいたします。
(議事の公開について協議の結果、次の取扱いとすることとなった。
- 毎回の会議の議事概要及び議事録を作成し、公表する(議事録には発言者名を記載する)。
- 検討会で使用した資料については、議事終了後公表する。
- 傍聴については、報道機関に限って認める。
- ただし、公開により公正・円滑な議事運営に支障が生ずるおそれがあると考えられるような場合については、この限りでない。)
(報道関係者入室)
【青山座長】報道機関の方、お待たせいたしました。議事録等はなるべく早期に公開していくという方向で決まりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、引き続き議事運営につきまして、もう一つ関係者の出席につきまして御紹介させていただきます。事務局で開催される検討会の共通の議事規則というものがございます。これは、簡単なものでございますが、その中で座長は必要に応じて関係者の出席を求めることができるというふうにされております。そこで、事務局とも相談をいたしまして、私といたしましては、当面次の関係者に毎回出席をお願いしたいというふうに思っております。
まず、法務省、最高裁判所及び日本弁護士連合会。この3団体につきましては、関係機関として2名ずつの検討会への出席をお願いしたいというふうに思っております。
また、日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会及び日本弁理士会。この6つの団体につきましては、オブザーバーとして1名ずつ検討会への出席をお願いしたいというふうに思います。
以上の関係機関及び隣接法律専門職種団体のオブザーバーの方々には、毎回の議論の流れの中で御説明等をいただくことが、この検討会の議論に資すると考えられる場合には、私、座長から適宜指名して御発言いただくことができるという位置づけであるというふうに御理解いただければと思います。
なお、それ以外の関係省庁につきましても、希望がある場合には、1名ずつの出席を今後認めていきたいというふうに思っております。
ただいま御紹介いたしました皆様は既に御着席でございます。一人ひとりのお名前を本来は紹介すべきところかもしれませんけれども、時間の関係で省略させていただきますことをお許しいただきたいというふうに思います。
では、次の議題に移ります。本日は、第1回目でございますので、この検討会で検討すべき事項につきまして、その背景等も含めまして事務局から説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしく。
[検討会における討議項目]
【小林参事官】それでは、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料の中に、A4の横の紙で「論点メモ(ADRの拡充・活性化)」というのが1枚あります。その紙をご覧いただきながら、少し厚めの資料になりますが「説明資料(第1回ADR検討会)」という資料集がございますが、この資料集の順に沿って御説明を進めさせていただきたいと思います。
まず、論点メモでございますが、これは改革審の意見書の内容をコンパクトにまとめさせていただいたものでございます。大きく3つの部分に分かれておりまして「現状」「検討の視点」「今後の課題=ADRの拡充・活性化」ということでございますが、意見書の中では「検討の視点」「今後の課題=ADRの拡充・活性化」ということでまとめておるわけでございます。
まず、はじめにやや順番が前後いたしますが、一番右の「今後の課題=ADRの拡充・活性化」というところにADRの拡充・活性化についての課題が掲げられているわけでございますが、この中で上の方の半分、「関係機関等の連携」につきましては、別途私どもの方で準備を進めております「関係省庁等連絡会議」「関係諸機関連絡協議会」、こういったものを通じまして、検討を進めていきたいというふうに考えております。
下半分の「共通的な制度基盤の整備」につきましては、「仲裁法制の早期整備」と「ADRに関する総合的な制度基盤の整備」という2点が大きく挙げられているわけでございますが、このうち「仲裁法制の早期整備」につきましては仲裁検討会、「ADRに関する総合的な制度基盤の整備」につきましては、当検討会で御検討をお願いしたいということでございます。
以上が、当検討会での大きな項目ということになるわけでございますが、まずADRとは何かというところから御説明の方を進めさせていただきたいと思います。
この1枚の資料でいきますと、左側の「現状」というところの御説明になるわけでございます。説明資料の1ページを開けていただきたいと思います。こちらでADRについての簡単な御説明をさせていただいております。ADRは、一般的には裁判外の紛争処理というふうに訳されておりますが、判決などの裁判によらない紛争解決方法というものを幅広く差す用語でございます。
具体的な内容といたしましては、この資料にございますように、民事調停、家事調停、あるいは訴訟上の和解なども含まれるということでございますが、最近、世上でよく議論されているのは「仲裁」でありますとか「和解」でありますとか、あるいは「あっせん」ということが特に議論されているところでございます。ただ、裁判上のものにつきましても、ADRの対象として含まれることが多いということは申し上げておきたいと思います。それでは、更に「仲裁」「調停」「あっせん」でございますが、これにつきましてもいろいろな定義の仕方がございます。これは、論者によってかなり幅広いもの、かなり厳格に定義される方、いろいろおられますが、ここでは公害紛争処理法で「仲裁」「調停」「あっせん」という3つのタイプのADRを扱っておりますので、そこでの解説の中から引用させていただいております。
「仲裁」につきましては、ここにございますように、当事者双方が紛争の解決を第三者に委ね、その判断に従うということによって争いを解決するということでございます。この大きな特色としましては、こういった旨の合意、仲裁契約をすれば、司法裁判所に出訴する権利を失うことになるということでございまして、まさに裁判と並び立つような大きな制度的な仕組みということが言えるかと思います。
次の「調停」と「あっせん」でございますが、実は「調停」と「あっせん」がどのように違うのかということについては、私自身もなかなかクリアーに御説明ができないわけでございますが、こちらの定義を引用させていただければ、「調停」の方は第三者が当事者間を仲介し、双方の互譲に基づく合意によって紛争の処理を図るということでございますし、「あっせん」の方は、当事者間の交渉が円滑にいくように、その間に入って仲介する行為の一切を言うということでございまして、言葉としては一応区別はされているわけでございますが、ではどこが違うのかということになりますと、なかなかクリアーに割り切るのは難しいところがあります。
ただ、気持ちとしましては、この「あっせん」のところに書いてありますように「調停」と比較すると、「あっせん」は、当事者間による自主的解決の援助、促進を主眼とするもので、当事者の自主性に比重がより置かれているという点に差があるということで区別される方が多いように感じております。
更に申し上げますと、当事者間の間に入って、いろいろなことを行っていくことを幅広く「あっせん」というふうに考えていけば、それでは相談というのはどういうことになるのかという御議論があろうかと思います。この相談というのも当事者の一方からだけ話を聞いて、その疑問点にお答えしたり、あるいは何らかのアドバイスをするということになりますと、これは一当事者だけとの関係だけになりますけれども、その一方当事者の言い分でありますとか、話を他方当事者に伝えるということになりますと、これも一種の仲介になるわけでございまして、世上言われているような相談機関という考え方に立てば、このADRの範囲に入ってくるんではないかというふうに考えております。
これから、皆様に御議論していただく際に、そもそもADRとは何かと、ADRの範囲はどこまで考えていくのかということも議論にはなるかと思いますけれども、私どもとしては、できるだけ対象を幅広く紛争解決の手段として機能しているもの、こういったものを視野に入れて議論を進めていきたい。
勿論、それぞれにいろいろな法的効果との関係、あるいは国の責務との関係、こうなりますと当然それにふさわしい対象というのも考えられると思いますので、その辺りについては議論を深めながら更に検討していただければというふうに考えております。ここでは、一応一般的な御説明にとどめさせていただきたいと思います。
続きまして、2ページでございますが、これもかなり理念的な整理ではございますが、改革審議会に出した資料でございます。裁判所手続とADRとの比較ということでございまして、この辺りにつきましては、論点メモの1枚紙の中ほど下の方にございます「ADRの特色」ということで、意見書の方では取りまとめておりますけれども、それを
もう少し項目別に細かく見たものがこの資料でございます。1枚紙の方で見ますと「利用者の自主性を活かした解決」。これは、例えば2ページの資料で言いますと「利害関係人の参加」でありますとか、そういったところでかなり幅広くADRの方は参加することになっておりますし、「手続を主宰する構成員」につきましても、裁判官に限定されないということで幅広いことになっております。
2番目の特色であります「プライバシー等を保持(非公開)」ということでございますが、これは2ページの資料でいきますと、2つ目の項目にございます。
また「簡易、迅速、廉価」ということでございますが、これも理想形と言いますか、理念形としてでございまして、現実に本当に「簡易、迅速、廉価」であるかどうかというのは、まさにADRによって異なるわけでございますが、この辺りも例えば2ページの資料でいきますと、一番下に「手続に必要な費用」ということで、訴訟であれば一般的には弁護士費用や鑑定費用が必要でございますが、ADRは、場合によっては弁護士費用、鑑定費用は不要ということで廉価になるということがございますし、勿論手続的にも民事訴訟法によって厳格な手続が必要となる裁判手続に比べれば簡易、迅速になる可能性があるということは言えるのだと思います。
また、4番目の「専門家の知見の活用」ということにつきましても、先ほど申し上げましたように、2ページの資料では「手続を主宰する構成員」は、訴訟の場合は裁判官でございますけれども、ADRの場合には、幅広い専門家の活用が可能ということでございます。
また、最後に「実情に沿った解決」という項目がございますが、これも何が実情に沿った解決かというのは、議論すれば難しい問題がございますが、この2ページの資料で言えば、例えば3番目の項目として「紛争の解決基準」というのが、裁判の場合は当然実体法であるわけですけれども、ADRの場合には、必ずしも実体法にとらわれなくてもいい、一般的な条理というのを解決基準として採用することは可能でございますし、またその下の「事実の存否に対する判断」ということについても、裁判の場合には、事実があったのかなかったのか、一義的に確定する必要があるわけでございますが、ADRの場合には、必ずしもそこまで厳格に要求する必要がないということがあろうかと思います。
ただ、これは先ほど来申し上げていますように、あくまでも理念形による差異ということでございますので、現実のADRが果たしてこういう姿になっているのかどうかというのは、また別の問題でございます。
資料の3ページをご覧いただきたいと思います。それでは、もう少し細かくADRというものを見ていったらどういうことになるのかということでございます。
このADRの分類につきましても、これは論じる目的、あるいは論者の方によって、かなりいろいろな分類の仕方があるわけでございますが、ここでは一般的な分類といたしまして、一つは「手続の構造に着目した分類」ということで「調整型」「裁断型」というふうに分けさせていただいております。
「調整型」の方は「紛争の解決を図るため、当事者間の合意を調達しようとするもの」、合意を尊重して、合意を目的とするというものでございます。具体的な例としましては、「民事調停」あるいは「裁判上の和解」「調停・あっせん」といったものがございます。右側でございますが、もう一つのタイプとしては「裁断型」というものがございます。これは、あらかじめ第三者の審理・判断に従うという、その点については合意があるわけでございますが、実際の判断は第三者が行うというものでございます。これの典型的な例は、「仲裁」でございますが、似たような例として「裁定」というのがございます。
「裁定」も幾つかタイプがあるようでございますが、例えば、公害等調整委員会で行われている裁定につきましては、第三者が法律的な判断を下すということになるわけでございます。原因者はだれかといったような判断を下すわけでございますが、これにつきましては、更に争う余地が残されているということで、「仲裁」とはやや性格を異にいたしておりますが、第三者が法律的判断を示すということでは、この「裁断型」に属するかなというふうに考えております。
次は、下半分の方にございますが「設営機関に着目した分類」ということでございます。これは、大きく分けて3つに分けられるのが一般的でございまして「司法型」「行政型」「民間型」というものでございます。「司法型」につきましては、文字どおり「裁判所内で行われるもの」ということでございまして、「民事調停・家事調停」あるいは「裁判上の和解」というのがあります。
すぐ後に御説明しますが、日本の現状では、「司法型」が件数的には割合が非常に大きいということが言えるかと思います。
次に「行政型」でございますが、これは独立の行政委員会、あるいは行政機関などがADRを行うということでございます。具体的な例としましては、今少し御紹介いたしました「公害等調整委員会」、あるいは「建設工事紛争審査会」、特殊法人ではございますが「国民生活センター」。こういった例が挙げてあります。
最後に右が「民間型」でございますが、これは民間組織の一部でありますけれども弁護士会、業界団体等が運営するものということでございまして、この例につきましては、「国際商事仲裁協会」あるいは「弁護士会仲裁センター」「各種PLセンター」、こういったものが例として挙げられるのではないかというふうに思います。
更に具体的に、我が国の現状ではどんな機関が含まれているのかというのが資料で申しますと、4ページ以降でございます。必ずしも一般にはなじみの薄い機関もございますし、また、これは一応参考文献から私どもが拾わさせていただいたものでございますので、必ずしもすべてを網羅しているわけではございませんが、御参考までに列挙させていただいたものでございます。
先ほどの分類の中で御説明したもの以外に、例えば「行政型」で申しますと「中央労働委員会」あるいは「地方労働委員会」といったものもございますし、「行政型」の下から3番目「消費生活センター等」というのがございます。これは、消費者保護基本法に基づきまして、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするために設けられているものでございます。
「民間型」には、先ほど申し上げましたPLセンター、あるいは弁護士会の仲裁センターのほかに、例えば「(財)交通事故紛争処理センター」といったものは、かなり利用されているようでございます。
それでは、今申し上げたのがADR機関と言われているようなものでございますが、果たしてこれらが現在どういったような現状にあるのかということに話を移したいと思います。資料で申し上げますと、6ページになります。こちらに「裁判と主なADRの新受件数の状況(平成12年度)」ということでグラフを示させていただいておりますが、一番左が訴訟でございます。一つ飛んで民事調停、それから家事調停ということでございまして、今申し上げた2つが司法型ADRに入るわけなんですが、それ以降、行政ADR、民間型ADRの主なものを挙げさせていただいております。
これをご覧いただきますとわかりますように、司法型ADRがかなり利用されて、件数的には非常に多いわけでございますが、それに比べますと行政型ADR、民間型ADRは、少なくとも数の面でやや少ないということが言えるかと思います。
ただ、注の3にございますように、国民生活センター、交通事故紛争処理センターの数値には、先ほど申しましたような相談あるいは苦情の受付も含まれている。そういう意味で言いますと、狭義のADRについては、更に少ないということになるわけでございますが、他方、注の4にございますように、全国に453か所ある消費生活センター、こちらでは約75万件の相談・苦情の受付があるということでございまして、必ずしもこの数だけでは簡単に判断できない。こういった紛争解決に対する潜在的なニーズというのはかなりあるのではないかということが言えるのではないかと思います。
1ページめくっていただきまして、7ページでございますが、これは先ほど資料の中で出てきました裁判、訴訟の中でも実は和解で解決しているものがかなりあるということをお示ししたものでございます。比率的に申し上げますと、裁判所あるいは訴訟の種類によって若干ばらつきがあるわけでございますが、3割から4割程度のものは、裁判上の和解という形で解決をされているわけでございまして、必ずしも裁判という形式のみならず、こういったADR的なものに類するニーズというのはあるのではないかと、これも一つの数字ではないかというふうに思います。
更に1ページめくっていただきたいと思いますが、ごく最近の動きはどうかということでございまして、平成10年度と平成12年度の数字を拾ったものがこの資料でございます。機関によって必ずしも数が少ないところがございますので、かなり数の多いところの傾向を見ますと、例えば司法型ADRの民事調停につきましては、1.3倍ということでございますし、民間型ADRでも数の多い弁護士会仲裁センター、あるいは交通事故紛争処理センター、国民生活センター、消費生活センターにつきましては、かなり件数が伸びているということが言えるかと思います。このように、潜在的にニーズがかなりあると思われますし、現実に最近はかなり数が伸びてきているということが言えるのではないかということでございます。
以上が、我が国の現状、特に最近の動きということでございますが、これを諸外国と比較して見たらどうかというのが、次の9ページの資料でございます。この数字はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの主なADRの利用状況を比較したものでございますが、ざっとご覧いただきまして、中ほどにございますアメリカの数字が非常に大きいというのがお気づきになられるかと思います。このアメリカの数字の中で、左側の「アメリカ仲裁協会」、これは、民間の団体でございまして、紛争解決サービス、今申し上げたようなADRですが、そういったものを提供したり、あるいは業界ごとの仲裁規則の作成をしたり、あるいはADRに関する教育を行っている、そういった機関でございますが、こちらでの受理件数は、14万を超えるという数字でございます。
また、その隣りの「ジャムス」でございますが、これは営利目的の言わばADR会社という性格のものでございまして、主に国内の商事紛争を中心に扱っている組織でございますが、これも受理件数が3万ということで、かなりの利用が行われているということがご覧いただけるかと思います。
アメリカは今申し上げた状況であるわけでございますが、では、右側のイギリス、ドイツ、フランスの方はどうかと申しますと、すべてを網羅しているわけでございませんで、主なものということで挙げてございますが、例えばイギリスで申しますと「紛争解決センター」というところがございます。これは、裁判所から付託をされて調停などを行っているような機関であるようでございますが、件数的には550ということでございます。
その隣りの「ロンドン国際仲裁裁判所」。これは、文字どおり仲裁を行うところでございますが、これは60件。
ドイツでございますが、「ドイツ仲裁協会」は、ドイツでは最大の仲裁機関ということでございますが、受理件数でしますと数十件ということでございます。
また、フランスの「国際商業会議所国際仲裁裁判所」。これは、国際商事紛争を扱っているところなんですが、442件。その隣りの「パリ調停・仲裁センター」。これは、パリの商工会議所に置かれているようでございますが、主に商事紛争を扱っていますが、これも件数的には30~50ということでございます。
日本と比較しますと、日本の「民事調停」をどう位置づけるかという問題がございますが、それをおいて、例えば弁護士会の仲裁センターと比較しましても、イギリス、ドイツ、フランスについては、それほど大きく状況が変わるものではないというふうにも、この資料は見えるわけでございます。アメリカは確かに非常に盛んに行われているということが言えるかと思いますが、他の国につきましては、我々が感じるほど件数的には出ていないということが言えるのではないかと思います。
更に1枚めくっていただきます。それでは、政府の対応を含めまして、もう少し各国どういうような状況になっているのかということで整理させていただいたのが次の資料でございます。
まず、アメリカでございますが、アメリカの場合は非常に件数が多かったわけですが、内容的にも非常に多種多様にわたっております。最初のマルにございますように、裁判所附属型のADR、これも非常に多様な形態のものがございます。仲裁、調停だけではなくて、早期中立評価、少しわかりにくい名前なんですけれども、どういうものかと申しますと、中立の第三者から成るパネル、これは当然裁判官のOBの方にもあり得るんだと思いますが、中立の第三者から成るパネルが争点の法的評価、または事実関係の評価を行うということで、実際の裁判手続に入ってくる前に、これについてはこうだ、ああだということを評価していただくということでございまして、当事者はその評価を基にして和解をするのか、あるいは引き続き裁判に訴えるのかということを判断していくということになりまして、どの道を選ぶかについて非常に参考になるということになるわけでございます。
次のミニトライアルですけれども、例えば会社同士の紛争があった場合に、それぞれの和解権限を有する、それぞれの会社の役員が中立の第三者としてパネルに参加して、それぞれの代理人である弁護士さんからの攻撃、防御のやりとりをヒアリングするというものでございます。
その結果、どうなるかと言いますと、それぞれの会社の役員の方は、相手方の言い分、それから自分の側の言い分、それをやや客観的な目で、冷静な目で見ていただくと。そうしますと、これは現実には、和解協議がスムーズにいくということがあるようでございまして、その手続の仕方をミニトライアルというふうに呼んでいるわけですが、そういった形式の手続というものも試みられているようでございます。これは、裁判所附属型として多様な展開をしているものでございます。
また、次のマルにございますように、裁判所附属型だけではなくて、先ほど申し上げました機関もそうですけれども、ビジネスとしてADRを扱っている機関を含めまして、民間型のADRが非常に盛んに行われているということでございます。
3番目のマルにございますように、方式としましても、オンラインADR、これは当事者がEメールや、あるいはオンライン上のやりとりで議論をし、ADRを利用していくというスタイルでございますが、このオンラインADRというのも非常に進展しているということでございまして、非常にアメリカの場合には、活況を呈しているということが言えるかと思います。
ただ、これは非常にポジティブに申し上げると、今申し上げたような状況になるわけですが、これをややシニカルに申し上げますと、例えば裁判所附属型の場合について申し上げれば、アメリカの場合には非常に訴訟の数が多くて、こう言っては言い過ぎになるかもしれませんが、かなり裁判所の機能が麻痺しているという指摘もございます。
そういった状況もございますし、またアメリカの裁判の場合には、少なくともある当事者からすれば、懲罰的損害賠償でありますとか、あるいは陪審制ということで必ずしも専門の方が入っておられないということもありまして、余り一般論で言うと非常に語弊があると思いますけれども、ある当事者からすれば、やや裁判所の利用を躊躇するというような事情がございます。そういったこともあって、ビジネス型も含めて民間型のADRが非常に活用されているということがございます。
あるいは、裁判所の方から言っても、訴訟以外で紛争解決をしてほしいという要請が非常に強くなっているということもございます。
また、アメリカの場合には、伝統的にコミュニティーによる解決というのを尊重する慣習があるようでございまして、そういった背景もあって、隣人紛争とか、家庭問題など、あるいは学校の問題など、そういった紛争をコミュニティー調停センターで解決をするということもあるようでございます。必ずしも日本との状況とそのまま比較することはできないのではないかと思います。
次にイギリス、ドイツ、フランスでございますが、これらにつきましても、かなりADRの育成ということには力を入れているようでございまして、中ほどから下にございますように、いろいろな改革が行われているということでございます。例えば、イギリスの場合ですと、1999年の「新民事訴訟規則」で、裁判所に対しまして、ADRによる紛争解決が適切な事件について、当事者にADR利用を奨励することを裁判所に義務づけているという例がございます。
また、ドイツの場合でいきますと一定の民事事件につきましては、ADR前置、これは日本でも一部調停前置というのがございますが、訴訟に入る前にADR手続を行うことを義務づける、そういったことを可能とするような規定が制定されております。
フランスの場合ですと、1996年でございますけれども、当事者の合意がある場合に、裁判所からADRへの事件の回付。日本の場合でも付調停というのがあるわけでございますが、そのADR版で、ADRへの事件回付を認める改正を行っておりますし、また、1998年の一番下でございますが、訴訟前の交渉等も法律扶助の対象にしているということで、イギリス、ドイツ、フランスともADRを育てていこうという動きをしていることは間違いないと思います。
また、前後しますが、アメリカの場合も1998年「連邦ADR法」というのができておりまして、これも裁判所附属型ADRの導入を義務づける。あるいは、これは当然ながら「検討」だけなんですが、当事者にもADRの利用「検討」を義務づけるということで、押しなべてADRを育てていこうと、支援していこうというのが諸外国の動きということが言えるかと思います。
以上が、ADRの諸外国を含めた現状ということでございまして、この論点メモでいくと一番左側の現状のところの御説明をしています。
最後に、これから何を議論していくかということとか、今ADRでは何が課題かということについてお話を進めていきたいと思います。
資料で申し上げますと、11ページになります。こちらの方では、紛争の発生から最終的な解決がなされ、その解決結果に従って権利が実現するまでという紛争の流れを左側にお示しをしまして、右側でそれぞれの段階におけるADRの問題というか課題を整理させていただいております。
意見書の方は、かなり羅列的に問題点が列挙されておりますし、また現実の運用面の問題と、それから法的な基盤整備の問題と分けて記述されておりますが、ここではADRについての全体像を御理解いただきたいということで、それらを全部ひっくるめまして、現実の問題も含めまして問題を再整理させていただきます。
まず、ADRにつきましては、裁判手続と並ぶ紛争解決手段というふうに位置づけられているわけでございますが、最初の段階でどちらの方法を選択するのかという段階での問題点は何かということでございますが、右側にございますように、2つ大きく考えております。まず、1つは選択肢ということであるわけでございますが、そもそも多様なニーズに基づいて選択肢を比較衡量できるような環境にないのではないかという問題でございます。
これも更に大きく2つに分かれまして、これを言うと身もふたもないと言いますか、やや厳しいところがあるわけでございますが、1つはそもそも多様なニーズに対応できるだけのADR機関が現実問題として必ずしも十分に存在しないのではないかということがございます。
2つ目としまして、仮にそういったADR機関があったとしても、これは例えば機関でありますとか、手続とかいろいろあるわけですが、そういったADRに関する情報になかなかアクセスができないのではないかという問題がございます。
更に次の白丸でございますが、これはそういった情報を入手したという段階に至っても最終的に裁判を選ぶか、ADRを選ぶかというときに、ADRへ選択することを躊躇する、あるいは妨げになるような要因があるのではないかということで、一つは裁判所外のADRに対する認知度・信頼性が不十分という問題があるのではないかという御指摘があります。例えば裁判ではなくてADRに訴えて仮に負けてしまった場合、ADRを選択した当事者が責められるというような問題も含めまして、認知度・信頼性が不十分ではないかということでございます。
やや、フェーズは異なるんですが、諸外国の場合では、先ほど少し御紹介しましたように、裁判手続からADRに流れてくるという道筋があるわけでございますが、そういった中で自然とADRを選択していくというルートがあるわけですけれども、日本の場合には、民事調停を除けばそういった制度がございませんので、そういう問題点もあるのではないかというのが選択段階での問題です。
次に、仮にADRを選択した場合の手続段階での問題ということでございますが、これは4つほどあるのではないかというふうに思います。
1つは、ADRの少なくとも現状では弱いところということでございまして、これからいろいろ御議論いただく点ではございますが、ADRで解決を試みている間にも時効期間が進行してしまうということが一つございます。なかなか安心してADRに申し立てができないという問題がございます。
2つ目の問題としましては、資力の乏しい者へのADR関連費用の扶助制度が必ずしも明確ではないという問題がございます。これは、後ほど御議論いただく点ではございますが、現在の民事法律扶助法では、民事裁判等手続に先立つ和解の交渉で特に必要と認められるものも扶助の対象にはなっているわけでございますが、これはADR機関一般での手続を対象にしたものではございませんし、和解ということで仲裁が対象になるのどうかといところにも御議論があるところでございます。必ずしも完全に排除されているわけではございませんが、一般的に対象にされているわけでもございませんので、この辺りが課題になるのではないかということでございます。
3番目には、裁判手続との連携に関する制度的枠組みが存在しないという、先ほどは裁判から裁判外のADRへの引継ぎでしたけれども、こちらはADRから裁判への引き継ぎという問題でございます。せっかくADRでいろいろ議論をして解決を図ったとして、不幸にして解決に至らなかった場合、裁判に訴えるというケースがあるわけですが、その場合には、またゼロから議論を始めなければならないのかという問題がございます。
勿論、これは全部引き継げばいいということではございませんで、ADRでの交渉だったから、ここまで話したとか、あるいはADRでの交渉でまとまると思ったからここまでカードを切ったというようなケースもあるわけでございまして、そういったものがすべて裁判の場にそのまま引き継がれていいのかという議論もございますが、いずれにしてもADRから裁判へ手続を円滑に引き継いでいくという仕組みが存在しないということが、ADRの一つの弱みになっているということは否めないかと思います。
次の点は、ADRの欠点と言いますか、むしろADRの特徴を十分生かし切れてないという点でございますが、本来ADRというのは、冒頭御紹介しましたように、幅広く専門家が活用できるというところが一つの強みになっているわけでございますが、日本の場合だけではありませんけれども、日本の場合には、いろいろ制度的な制約がありまして、必ずしも非法曹の専門家の方を活用しきれていないのではないかという御指摘があるところでございます。
以上が手続段階での問題でございます。
最後に、権利実現段階での問題でございますが、これはADRでの交渉がまとまって最終的に履行という段階になって、相手方がそれを履行しなかった場合、これをどうやって実現していくのかということでございまして、現状ではADRの合意をそのままの根拠として強制執行することはできないということがございます。勿論、これも両面の議論がございまして、強制執行ができるのではあれば、逆にADRの手続になかなか乗りにくいという御指摘もございます。ですから、こういった執行力を与えればいいという問題ではございませんが、そういう御指摘もあるのは事実でございますし、また、強制執行が認められていないというのがADRの信頼性に対して、どうしても最後はADR機関に頼り切れないという評判、風評、認知、そういった問題とも絡むという御指摘もありますので、これも一つの課題ではないかというふうに思います。
以上が、実態の問題も含めてADRの課題として考えられるものでございます。
次の12ページ以降は、これは意見書で挙げられているような、それぞれの項目につきまして1枚ごとに、それぞれの「議論の背景」、これは今申し上げたような話で、それから「主な参考例(現行)」、これは本当に参考になるかどうかは、これから議論していただかなければ判断できないわけですが、少なくとも外形的に見て似ているとか、参考になるのではないかという事例でございます。
「主な留意点」というのは、これはどちらかというと、意見書の内容は、新たな効力を与えたり、あるいは新たな対象にしたりということで、恩典を与えるような内容になっているわけでございますが、その恩典を付与する場合に注意すべき点、逆に留意しなければいけない点、この点について現段階で私どもとして考えなければいけないと思っている点を挙げさせていただいております。それぞれの説明は時間の関係がございますので割愛させていただきますが、これから各論を議論していく際の御参考と思いまして、この段階で極めて乱暴なものでございますが、まとめさせていただいたものでございます。
以上、駆け足でございましたが、御説明の方を終了させていただきます。
[自由討議]
【青山座長】ありがとうございました。ADRの現状、問題点やユーザー側のニーズの把握、更には個別項目の検討は追って次回以降、順次行っていくことにしたいと思います。本日は、最初の機会でございますので、自由討議、フリートーキングということで、約五十分ぐらいでしょうか、11時50分ぐらいまでの間に、特にテーマを定めませんで、委員の方々、お一人ずつ日ごろADRに関してお持ちの御意見等を御自由に御発言いただければというふうに思います。その中で、ただいま事務当局から御説明のあった資料等に関しても御質問があれば、意見表明の中で適宜加えていただければというふうに思っております。こちらから、特に指名するということではなくて、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。挙手をしていただければと思います。
どうぞ、山本委員。
【山本委員】それでは、第1回ということですので、この機会に私の基本的な検討会での審議の進め方についての意見を申し上げたいと思います。
私自身は、司法制度改革審議会が述べておられるADRを、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢にすると、その前提としては、勿論裁判制度の充実がADRの発展の契機になるという認識は極めて妥当なものであって、これが前提になっていくんだろうというふうに思っております。
魅力的な選択肢ということの具体的な意味について、私なりに考えていますのは、1つは、従来裁判制度で解決されてきた紛争について、他の解決方法を選択肢として与える。それは先ほど参事官からADRの御説明のあったさまざまな利点、裁判に比べて迅速に紛争が解決ができる、あるいは専門的な紛争について適切な解決ができる、あるいは裁判に比べて廉価な解決ができるといった個々の点について、言わば紛争解決のサービスの幅を全体として広げる。それによって国民の利便に適合するという点に大きな意味があるのではないかということがあると思います。
第2点としては、従来、必ずしも裁判で適切に解決できていなかった紛争に解決の選択肢を与えるということもあろうかと思います。例えば、いわゆるBtoCなどと言われる消費者関係の紛争とか、金融関係の紛争、あるいは電子商取引関係の紛争などについて従来必ずしも裁判での解決に限界があったところをADRで何とか解決していく。それによって社会全体の正義の総量を増大させるということもあるのだろうというふうに思っております。
そういうような魅力的な選択肢を付与するに当たって、国がどのような役割を果たしていくかということでありますけれども、1つは裁判との関係でADRを利用する基盤を整備していくということが必要となるんだろうと思います。先ほど最後に参事官から御説明がありましたADRを利用するについて、具体的にさまざまな障害があるんだろうと思いますが、時効とか、執行力の問題とか、あるいは裁判所との連携とか、そういったような問題を除去していくということによってADRの利用を促進するということは一つあるんだろうと思います。
それと並んで、私は、従来、ADRの利用が必ずしも十分促進されなかったことの一つの原因として、裁判とADRの双方に対する利用者の信頼のギャップというものがあったのではないかというふうに思います。日本は、しばしばお上に頼むというふうに言われますが、裁判に対する国民の信頼というのは非常に高いものがあるんだろうと思います。他方で、ADRに対する、そもそも認知度の問題の御指摘がありましたけれども、従来、その信頼というものが必ずしも高くなかったんだろうと思います。
したがって、そういう状況の中でADRを紛争解決の選択肢で選ぶというのは、当事者が、例えばその当事者が企業である場合には担当者個人にとっても、非常に、ある意味でリスキーな選択にならざるを得なかった。安全を見れば、やはり裁判を利用するということではなかったのだろうかと思います。
そういう意味では、やはりADRに対する信頼の基盤を醸成していくということ。それに対して国が一定の関与をするということは、私はそのこと自体に大きな意味があるんだろうというふうに思います。そういう意味では、国がADRの適切な発展に対して一定の関与をしていくんだということを正面から認める。それがADR基本法という形であるかどうかはともかくとして、そのようなことを正面から認めていくこと自体に私自身は非常に大きな意味があるんだろうというふうに思っております。
第2点として、先ほども御指摘がありましたが、やはりADRの多様性を重視する、尊重するということが非常に重要であろうというふうに思います。先ほども言いましたように、やはり、ADRが魅力的な選択肢となるためには、多様なADRが相互に競い合っていく中で、多様な選択肢を提示していくということが非常に重要だと思うからであります。この検討会の作業でも私はこのような多様性を尊重するということに十分に意を用いる必要があるというふうに思いまして、過度に一律の規制を及ぼすような規律はできるだけ避けるべきであって、ここでは必ずしもADRの望ましいルールというものを直接つくるという作業をするのではなくて、作業自体は、むしろ各ADR機関の自助努力に委ねるということでよろしいのではないかというふうに思います。
最低限のルールをつくるとしても、そのルールは原則としては責務規定のようなものにとどめて、各機関の努力を促していくという態度で、可及的に多様性を締め付けるような方向は避けるべきであろうというふうに思います。
勿論、利用者の利益を保護するために、どうしても規制が必要だという場面はあり得ると思います。その場合には、規制法的な規律もやむを得ないと思いますけれども、その場合であっても、なるだけ最近の消費者保護の議論にかんがみて、情報の開示等のような形で緩やかな形の規制を掛ける。あとは、基本的には利用者の自己責任に委ねて、ADR機関自体は市場の淘汰に委ねるような方向性で考えていくべきなのではないか。なるべく自由な競争に介入しないで必要最小限の規律を行っていくという方向性が妥当なのではないかというふうに認識しております。
とりあえず以上でございます。
【青山座長】どうもありがとうございました。どうぞ、ほかの方も御自由に御発言してください。原委員どうぞ。
【原委員】消費者からということで幾つかなんですけれども、これまで消費者保護の中で、こういう司法をどういう取り上げ方をしてきたかなんですけれども、まず、60年代には、消費者の4つの権利というのがありまして、アメリカのケネディ大統領が一般教書で使ったのが最初なんですけれども、この4つの権利の中の1つに被害を救済される権利というのがありまして、消費者問題の中では、もう1960年代から大きな課題です。70年代に入りまして、そういう訴訟は何度も経験がありまして、団体訴権といったようなテーマにも取り組み、そして90年代からはPLセンターが今幾つか御紹介がありましたけれども、そういう製造物責任法の制定などを通じて、今ここで議論になっているようなADR、裁判外の紛争処理のシステムというところに関心を寄せてきております。
あとは、全体を通じて訴訟へのアクセスの容易さということは、30年間を通じて、課題としてやってきておりまして、特にこれからの紛争解決、先ほど各地の消費生活センターと併せると国民生活センターが75万件トラブルを抱えているということになるんですけれども、これからの紛争解決のシステムとして、やはり裁判だけに頼らないADRというところには大変な期待を寄せております。それが、前段として申し上げたいことなんです。それでは何を期待をしているかということなんですけれども、3点なんですが、1つは多様な解決方法の充実と、それを選択したいということです。これまでの訴訟というのは、訴えるとか、訴えられるとか、勝つとか、負けるとかという感じなんですが、私どもの感じとしては争いをよりよい形で解決するというのが本来の趣旨なので、そこで勝つ負けるということには、訴訟の概念と少しなじまないタイプの争いごとが増えているということも多いというふうに思います。
2つ目なんですけれども、私どもも裁判の傍聴に行ったりすると、最終的には判断を裁判官に預けているという感じがするんですけれども、そうではなくて自分たちが主体的に解決をしたいという気持ちが大変強いです。弁護士さんに依頼をして、弁護士さんに一任したから、それで争いを収めてもらいたいということでなくて、もっと自分たちが主体的に解決したいと、そのための援助をしていただきたいというふうな感じの機運と言うんでしょうか、そういうのが大変盛り上がってきておりまして、それをADRには期待をしたいというのが2つ目です。
3つ目なんですけれども、既存のADR、それからADRに似た形のものというのが幾つかあるんですけれども、それぞれ年数も長いんですけれども、必ずしもうまくいっていないんです。金融関係でも幾つかあるんですけれども、歴史としては長いけれども、ほとんど機能不全に陥っている。やはり、これは何なのかということの分析も丁寧にしていただきたいというふうに思っております。
国民生活センターなどは相談とかを通じてかなりあっせん的なところまでやりかけてはいますけれども、でも業務としてはどこまで乗り出していけるのかというのは、いつも躊躇しているようなところがございますので、この75万件の解決に何ができるかということです。
東京都の被害救済委員会というのも御紹介されていましたけれども、ここも歴史が26年あります。26年間ここで案件を取り上げてきておりますけれども、その工夫なんかもここで紹介していただけたらというふうに思っております。
前置きと、全体的に何を期待しているかということと、それから3番目なんですけれども、では具体的に何を検討していただきたいかということで、今回幾つか挙げられているんですけれども、私は法律の専門家ではないのですが、見た感じが非常に法律の範囲とか、そういった中に話が収まっているような感じがして、まず第1点としては、ADRの議論をしているということを世の中に広く知らしめてほしいということが第一です。ほとんどの人はADRという言葉自体知らない状況で、できればADR基本法をということになって、早ければ来年ということになるかと思いますけれども、そのためにはADRの議論をしているということの認知度をまず上げる工夫をしていただきたいというのが第1番です。
2つ目なんですが、ADRの担い手の部分ですけれども、今、司法、行政、民間型ということで、民間型はほとんど業界がつくっているものになりますけれども、そうではない形で、アメリカなんかを見ると、かなり民間のビジネスとしておやりになっていらっしゃる部分があるんですけれども、そういう第三者の可能性みたいなことも念頭に置いて議論していただきたいと思います。
3つ目ですが、山本先生と金融関係のモデル案をつくるところで御一緒させていただいているんですけれども、執行力の付与のところは、結果の情報開示辺りとも絡めて議論していただきたいというのが3つ目です。
4つ目なんですが、先ほど海外の状況を聞いていますと、裁判との関係でADRの前置主義だとか、そういったことを取り上げていらっしゃっていましたけれども、ここも私としては、裁判所との手続連携の促進というところに入るかと思いますけれども、スムーズにお互いが交流できるような形を望みたいと思います。
最後なんですが、この中には挙がっていないんですけれども、アメリカではかなりネットでの手法というのが最も今進んできているというふうなお話だったんですが、たしかe-コマースについては、経済産業省の方でも議論を進められているというふうなことになっておりまして、ここの中に項目としては挙がっておりませんけれども、e-コマースの話も是非どこかで取り上げていただきたいというふうに思います。そういうことを通じて最終的には、山本先生もおっしゃられたように信頼性の確保をどう図っていくかということに向かっていけばと思います。
少し長くなりましたけれども、以上でございます。
【青山座長】どうもありがとうございました。どうぞ、ほかの委員の方々。どうぞ、高木委員。
【高木委員】こういう機会があるとは思っていませんでしたので、全くまとめてこなかったんですけれども、改革審の意見書の目指しているADRに関しては、ほとんど異論がありませんし、それはそれですばらしいことだと思いますし、ADRがこういうふうな形で議論になってきたことについて、私自身もADRを実施する機関の仕事をやっていたことがあって、大変うれしいとは思っているんです。
ただ、今の議論の中で、これをどういうふうにつくっていくかということになるととても難しい問題があって、心配性なのかもしれませんけれども、少し心配になりまして、何を懸念しているかというと、やはりADRというのは私的自治をベースにしているかもしれないけれども、準司法機関的な、少なくとも出てくるアウトプットに関しては、司法機関と共通するところがあって、やはり準司法機関であることの性格もやはり強調して強調し過ぎることはないのではないかという気がしております。
今般の司法改革というのは、何を考えたかというと、これまでの日本社会の紛争解決の方法が不透明であったこと、特に、業界の申し合わせ事項であるとか、行政指導とか、やくざみたいなところによらないで司法によりましょうと、こういった大きな法の支配という観点が貫かれてできてきたもので、これがADR機関のつくり方によっては、ADRが従来の不透明な解決方法を全く名前を変えて存在するというようなことになりかねない危険というのが、やはりあるんではないかということが心配で、業界でいろいろ行われているものも、一定の役割を果たしていることはわかっているつもりなんですけれども、そこにある程度の認知度を与えて活性化した場合に、別の紛争を生んでくる可能性とか、そういったことがとても気になってきています。それは、業界だけではなくて、専門家の関与というところにも、それと同じような危険があるのかなというふうに感じているところがありますので、そこは少し注意して仕組みをつくっていきたいなというふうに思っています。
ですから、山本先生の御意見の中で、少し気になったのは市場の淘汰に任せるという部分が若干気になっておりまして、そこからまた大きな紛争が起こってこなければいいなという懸念を持ちながら聞きました。
今日のところはとりあえずこのくらいです。
【青山座長】どうぞ、御自由に。三木委員どうぞ。
【三木委員】この事務局の用意していただいたペーパーで、基本的には日本国内における紛争の解決の手段としてのADRということが主として念頭に置かれているんだと思います。それ自体は正当なことで、議論の中心が国内の紛争解決を意識してなされるというのは結構だと思いますが、他方でADRというのは、最近国際的な紛争の場面でも非常にクローズアップされておりまして、もともとADRという言葉がポピュラーになったのも我が国の中から発信されたというよりは、海外の議論が日本に波及してきたという側面が強いと認識しております。
国際紛争の解決の手段としては、従来は仲裁が最も中心であって、仲裁もADRの一つなんですが、最近では調停とかあっせんのような裁断型ではないADRが国際的な取引、あるいは民間の紛争の解決に利用されるということが拡大してきております。国際取引と言いますと、これも従来は企業間の取引が中心だったんですけれども、先ほど原委員のお話でも出ましたe-コマースなどを例に取りますと、普通の市民が意識するかしないかは別にして、国際的な商取引の一方当事者になっているというケースも増えてきております。そういう動きの中で、こうした国際的な視点というのも多少は意識して議論を進めていただきたいというふうに思います。
現在、国際連合の国際商取引法委員会でも、主として国際商取引の紛争解決をターゲットとして調停のモデル法の作成が進んでおります。ほぼ最終段階に入っておりまして、恐らく今年の夏ごろには完成するんではないかと見られておりますから、そうした動き等にもある程度の意を払って、日本国内の内向きの議論だけで終止せずに、国際的に見ても評価に耐えるような内容の議論がされるように希望しております。
【青山座長】原委員どうぞ。
【原委員】補足なんですけれども、今の高木委員のお話について、私もそのように思ったんですが、民間型というか、私たちだってやりたいという話をしまして、確かにやりたいといろいろ出てきて、質の確保というところの議論が、この項目を見ると少し手続的な話が多くて、私たちは最終的には信頼性確保と思っていますが、そのためには質の議論というのもどこかで入れておく必要があるというふうに思います。
【青山座長】どうぞ。横尾委員。
【横尾委員】検討の進め方について、幾つか要望があります。それから感想もあるんですが、経済界と言いますと、先ほど原委員の方からBtoCの話もありましたけれども、それはそれとしまして、ビジネス型のADRというものがあろうかと思います。これについては、必ずしも現状でADR機関というのがかなり活発に活動しているというわけではございませんが、むしろ潜在的な需要があるということだと思うんです。したがいまして、現状を前提に議論いたしますと、なかなかそういったものが浮び上がってこないんではないかと思いますので、是非そういったものもすくい取っていくような形の議論をお願いしたい。
昨日、総理から施政方針演説がありましたけれども、やはり知財を国家戦略の中に位置づけるという観点で、ADRを御検討いただきたいと思います。全体から見ますと、必ずしも中心的課題ではないかもしれませんけれども、国際競争と言う観点から是非議論していただきたい。そうなりますと、やはり専門性の活用という点が重要ですので、是非お願いしたいと思っております。
1つわからない点、これは質問という形になるんですけれども、裁判とADRとの距離感と言いますか、その位置づけをどう考えるのかという点です。その点も含めて、まずあるべき姿というものを議論するのか。もし、そうなってきますと、現状の把握も必要なんですが、ADRというものが必ずしも利用されていないということになりますと、むしろ皆様の知見によりまして、本来こうあるべきではないかということを議論しないといけないのではないかと思います。例えば先ほどの事務局の説明で、司法型のADRというものがかなり使われているということなんですが、これが使われているからいいということになってしまうんではないかと。むしろそういったものを、裁判所の中で捉えていくのか、あるいは民間型など別の形にもっていくのかという議論も必要ではないかと思います。
したがって、現状を前提とする議論もあるかと思いますけれども、むしろあるべき姿というものも考えながらやっていく必要があるんではないかと。そのときに、是非ADRと裁判の関係についても御議論いただきたいと思います。
以上です。
【青山座長】今の3番目の問題は、質問という意味も含めてということなんですけれども、何かお答えありますか。
【小林参事官】民事調停も含めた司法型ADRの位置づけという御質問だと思いますが、冒頭での御説明の際にも申し上げましたように、ADR全般についての議論というのは、勿論あるべき論を議論するべきだと思いますけれども、あるべき論を議論する際に、司法機関で行われているADRについても視野に入れて議論する必要があるというのは、今の現状における位置づけの大きさから見ても当然ではないかというふうに考えております。
ただ、その中で民事調停、あるいは司法型ADRそのものの中身をどれぐらい議論していく必要があるのかということについては、むしろ皆さんの御議論の推移を見て検討を進めていけばいいのではないかというふうに思っております。私どもとしては、あくまでもADR全般、あるいは共通の議論を進めていくということでありますが、その中で当然視野に入れて議論しなければいけないことは間違いございません。
【青山座長】私から一言申しますと、今の横尾委員の御指摘は極めて重要なことだと思いますけれども、そのADRと裁判との関係はいかにあるべきかという、そういう大上段の議論を最初にやろうとすると、それで結論が出るわけではなくて、神学論争になってしまう。したがって、それは当然そのことは念頭に置きながら御議論をいただく。そして場合によってはかなり議論が進んだときに、またその問題をやるということで、最初にそれを取り上げるのは、私としては、余り生産的ではないというふうに思っておりますが、それでよろしゅうございますか。
【横尾委員】はい。
【青山座長】どうぞ、廣田委員。
【廣田委員】私は、弁護士会の仲裁センターの設立とか運営などに関与しましたし、またADRに関していろいろなものを書いたりしてきたのですけれども、ADR基本法というところに一つの目標があるとすれば、ADR基本法については、書いたこともなければ発言したこともないのです。というのは、これはなかなか難しい問題だからです。どこで割り切れるかということになると、なかなか割り切れない問題があります。
今、お話を伺っていて山本委員の方からは、できるだけ規制はしない方がいいのではないかというお話と、高木委員の方からは、それには心配があるというお話が出てたのですが、これは一例で、このような難しさがあるのです。私は、どちらかと言うと規制はできるだけしない方がいいという頭があって臨んで来ていますが。
つまりなぜかと言うと、規制とか、そういうことをしますと、ADRの最もよいところがなくなってしまう可能性があるからです。しかし、よいところを生かしながら、しかも高木委員が言われているような心配がないという方向で位置づけるというのは大変難しい問題になります。そこが、なかなか自分でもわからないところだったものですから、今まで書かないで過ごしてきたのですけれども、私はやはり議論をしてみて、一から勉強しながらやってみたいという気持ちでこの検討会に臨みました。
今、お話を伺っていて、小林参事官の方からお話があったように、たくさんADRの機関があるにもかかわらず、事件数は余りない。この非常にリアルなところをどういうふうに受け取るかという大きな問題があると思うのですが、そういうことをいろいろ議論しているうちに、今いろいろな方がおっしゃったことや、横尾委員もおっしゃったことも結局、制度をどうするかということを頭に置いておかないと、この議論はなかなかうまくできないと思います。結局そこにつながっていくものだと思います。
しかし、だからといって制度を全部にらんで、この基本法をつくるということになると、また一段と難しい問題になるかと思いますので、結局、この基礎をどうやってつくってゆくか、どうやらこの辺の基礎ができればADRというのが利用されていいものになるだろう、などというところが、やはり最小限度我々が頭に置いておかなければならない問題ではないかというふうに考えております。
最も大事なことは、先ほど原委員がおっしゃったように、やはりADRのいいところを国民の皆さまに知っていただきたいと思うのです。ですから、これは絶好のチャンスだと思いますので、いいところを生かしながら、これを知っていただいて利用されるようなものにしていく。そういう相互のフィードバック作業をしながら、何かいいものをつくりたいと思っているのですけれども、先ほど言いましたように、そうは言いながらまだわからないことがたくさんありますので、一から勉強したいと思っております。
【青山座長】どうぞ。安藤委員。
【安藤委員】とうとう発言していないのが、私だけになってしまいましたので。私はこういう先生方の席に出て発言をするのに、内容の細かいところというのは、まだまだこれから勉強しなければいけないわけてして、一応何でここに出てきたかと言いますと、庶民と言いますか、地域に密着したもの、ビジネスに密着した状態、これをどういう形で生かしていけるかだと。簡単に言いますと、漢字と横文字、これをなくして平仮名にどうやって表現できるような制度ができたらいいかと。
基本的に考えますことは、あくまでも裁判、法律で制定されたものというのは、一つの高速道路ではないかと。我々地元に密着しているものは路地しか知らないんです。そうすると、そのうちの国道であり、県道あり、市道であり、こういったものを網羅されたのがADRではないかなと、そういうふうに考えていますので、いわゆる高速道路と路地をつなぐ間では広い範囲であるのと同時に、それぞれの段階というのがしっかりないと、路地しか知らない人が幾ら相談しようと思ってもどこに相談したらいいかわからない。これはまず第1番に区道ですとか市道へ入っていく。それから順番に上がっていって最後には高速道路である裁判までいくんだと。こういう手順をやるのに、今、ゴッドファーザー、大家さんがいない状態になっているので、それをやっていただくのがADRの下部組織であって、それに中部、上部、裁判という形で持っていければ一番いいんではないかなと、そういうふうに考えているわけでございます。
簡単に言いますと、会社でもって私はADRというのをやりましたら、社員がADRとは何ですかと言っていて、私の顔をじっと見たらアダルトですかと言われまして、その程度の理解しかありませんので、やはりそういった面では、余りにも今ばらばらになり過ぎていると。それを一本の糸にどうやって持っていくかということ。
例えば、商売をやっておりますと、当然のことにおいて、消費者センターからの苦情、PLの問題、税法上の問題、商標権、公正取引委員会とか、あらゆるところからぽつんぽつんと来るんですが、全部それが細い糸ばかりなんです。ですから、それを総合的にぽっと相談できるように。
確かに私が所属している商工会議所というのがありますけれども、これも縦割なんです。ですから、例えば税理士さんの問題でどうだろうと、今、うちで使っている税理士さん、顧問でやっているのが、どうもこの部分においては少し足りないだろう、どこかいい先生いないかなとなって支部へ行きますと、本部へ行って相談してくださいと、こういう話になっているわけです。ですから、そういう窓口がいっぱいあることによって、どこに行けば何でも相談できると。松戸のすぐやる課ではないですけれども、そういう相談窓口。
それと同時にある程度、各省庁の通達という形でも一つ生かせるんではないかなという気はするんです。何かの慣習法的なものでこれは当然進むべきなんですが、こういう事例があったとか、こういう場合はこういう解決がありましたよというような通達が各省庁で出されていれば、それがどんどん伝わっていくことによって、ある程度先例があちこちに出てくるというような考え方もあるんではないかなと、まだ漠然としておりますが、一応基にはそういった形で考えております。
【青山座長】どうぞ、平山委員。
【平山委員】まさに私だけ発言していなかったのですけれども、私は皆さんのお話を大変興味を持って聞かせていただきました。実は、私は皆さんと違って、建築という別の世界にいましたので、わからなかったわけでございますが、まずADRという言葉をもう少しいろんな方に知っていただくということが大事ではないかなと思いました。
建築の紛争というのは、非常に専門性が高いため、昨年辺りから裁判所に協力しようという形で、建築学会の中に、司法支援建築会議というものをつくり、そこが窓口になって、最高裁判所から依頼された鑑定人あるいは調停委員を推薦しております。現在、司法支援建築会議には、200人ほど人々が登録しておりまして、各裁判所からの要請に応じて、これらの人達を推薦しているのが現状でございます。
裁判と建築というのは、なかなか食いつきが悪く、建築学会でも長い間裁判所に協力するというのは何事だというような意見もありました。私自身も何回か証人に呼ばれてさんざん怒られて、裁判所なんてとんでもないところだと思ったときもありましたが、現在は、それが一つの大きな協力関係になって非常にスムーズに事が推移しております。また、その成果もかなり上がっておりますので、先ほど申し上げましたように、もう少しADRという言葉をPRしていただくといいのではないのなかと思います。
ただし、非常にうまくいっていると言っても、なかなか鑑定や調停の引き受け手がいないので、それに対するサポートとして、建築学会は大変な仕事をしております。また、これらのサポートと共に、鑑定・調停に対してこれを業績として評価しようということをしております。これは我々が裁判所に協力して、その結果として、その成果を建築学会にフィードバックし、結果として紛争を減らせればという大きな目的があるわけでございます。これが私達が現在携わっている、司法型の民事調停でございます。
この他、建築紛争では、各市町村に建築工事紛争審査会というのがございます。御存知のようにこれも建築関係のADRで、裁判所とは別の選択肢となっております。このようなことから、くどいようですけれども、ADRという言葉を是非一般的な言葉にしていただきたいと思います。
【青山座長】どうもありがとうございました。御出席の皆様から一通り御意見を賜わりました。私の感じでは、さすがにADRに御造詣の深い、あるいは御関心を持たれている方の御発言だというふうに思いました。改めてこれだけの人々を集めていただいた事務局の見識に敬意を表する次第です。
今日、御欠席の委員が2人いらっしゃいますけれども、そのうちのお一人の龍井委員からは、意見を託されているということでございます。連合総合労働局の長谷川さん、いらっしゃいますでしょうか。メッセージをお願いします。
【発言者(連合総合労働局長長谷川氏)】連合労働法制局長の長谷川でございます。今日は貴重な時間に龍井が欠席して大変申し訳ございません。
それでは、龍井から、本来ならばこの席で発言したかった原稿を預かってきておりますので、それを申し上げます。
一つは、司法制度改革審議会の最終意見書はADRについて、ADRが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、その拡充・活性化を図るべきであると。また、多様なADRについて、それぞれの特徴を生かしつつ、その育成、充実を図っていくため、関係機関等の連携を強化して統一的な制度基盤を整備するべきであるという提言をしていることについては、まさに私もそのとおりだというふうに受け止めております。
我が国におけるADRは、ほんの一部を除いて十分に機能していないとの認識もこの審議会の中でありました。司法制度改革審議会は、このような我が国のADRの現状を認識した上で、司法の中核たる裁判機能を拡充し、その上で国民にとって裁判と並ぶ魅力的な紛争解決制度としてのADRを拡充することを提言いたしました。
本検討会は、そのような意味では多くの課題が私ども委員に託されているわけでありまして、私はADRを簡易で迅速な紛争解決機関として、国民の信頼を得られるようなADRの制度基盤を整備しなければならないと考えております。
今後の検討課題として、何点か挙げられておりましたが、私は、ADR基本法の制定と、ADRと裁判との連携に関して大きな関心を持っております。特にADR基本法については、とかく基本法は宣言的なものになりがちでありますが、ADR基本法に関しては実効性のあるようなものにつくり上げなければならないというふうに考えております。
なお、私は、労働組合の仕事に携わっておりますが、労働事件は別の分科会では検討されておりますが、労働関係のADRとして労働委員会と、紛争調整委員会などがあります。
労働委員会については、時間が掛かることや、労働委員会命令の取消訴訟が裁判のところで負けてしまうだとかという五審制の問題も指摘されております。そのような意味では、ADRと裁判所の連携及びADRで活用した証拠の扱いなど、この検討会で検討しなければならない課題はあるというふうに思っております。
なお、紛争調整委員会は、まだ昨年の10月から始まったばかりでありますので、その評価は定かではないので、これ以降長い目で紛争調整委員会を見ていきたいというふうには考えております。
最後に、我が国でADRが育たない原因が幾つかあるわけですが、その一つの中に人材の問題があるのではないかというふうに考えております。ADRの担い手についても法科大学院における法曹養成と関連しながら、今後の我が国のADRの担い手の育成についても更に深く検討する必要があるのではないかと考えております。
以上です。
【青山座長】長谷川さん、どうもありがとうございました。
時間も迫っておりますが、私も一委員として一言発言させていただきたいと思います。私のADRについての基本的な考え方は、最初に言われた山本さんの発言に一番近い感じを持っております。私はこれまで民事訴訟学者として民事訴訟法や裁判法の中で、ADRについていろいろな思索を巡らせてまいりましたし、若干のADRの機関にも委員として関与したことがございます。東京地裁の民事調停委員を務めさせていただきましたり、先ほど平山委員がおっしゃった、中央建設工事紛争審査会の委員だとか、あるいは国際商事仲裁協会の仲裁委員候補者とか、あるいは日本海運集会所という組織がありますが、そこの仲裁委員になりまして、何件か仲裁をやったこともあります。それから、今、国土交通省の中にあります、船員中央労働委員会というのがありますが、そこの公益委員と会長もやらせていただいております。
そういう私の学問経験なり、あるいは実務、というほど足を突っ込んだわけではありませんが、身近な経験から見ますと、日本にはこれだけADRの機関がたくさんあり、そしてそれぞれ熱意を持って活動をしているのに対して、先ほどから御紹介がありましたように、どうして利用件数がこんなに少ないんだろうかという、その疑問でございます。
これに関しまして、3点だけ言わせていただきたいと思いますが、第1はADRに関する情報の決定的不足です。先ほども原委員から、ここでADRの検討をしているということ自体をもっとPRしてほしいという発言がございましたけれども、私もADRに関する情報が決定的に不足している。これが、信頼の確保とか、そういうことにつながっている。情報の不足が解消されて、国民が自分の抱えている紛争の解決にふさわしい裁判所なり、ADRの機関をたやすく見つけることができるようになることが急務だろうというふうに思います。それぞれの機関は窓口を持っておりますけれども、その窓口は、こういうと非常に差し障りがあるんですが、特にそれがビジネスとして運営されていればいるほど、おいしい事件は自分で引き取る。難しくて時間が掛かる事件は、こちらでは解決できませんからよそに行ってくださいということになりがちです。しかし、よそに行ってくださいという場合に、横の連絡がありませんから、どこに行けばそれが解決されるかということについては、何のアドバイスもできないのが実情だろうと思います。
そういう意味では、この意見書で言われているように、ポータル・サイト等を構築して、国民がたやすく、まず最初にどこに行けばいいのか、病院に行っても内科なのか脳神経外科なのか、その辺を間違えたら大変なことになる。それと同じように、一番最初にどこに行けば、その相談を最も適切に解決してもらえるのかということを教えてくれるシステムを、やはり充実する必要があるのではないだろうかと思います。
第2番目は、ADRが利用されるためには、意見書でも言ってますように、何らかの法的効果を与えるということがやはり考えられる。それが基本法の制定までつながるかどうかは、まだ今の段階ではわからないと思います。ただ、先ほどの説明でありましたように、時効の中断とか、あるいは執行力の付与だとか、あるいは法律扶助をそれに与えるというようなことは、これは法律の改正によってできることです。できることですけれども、先ほどお話がありましたように、これは割合小さなことなんです。全体のADRをどう活性化していくかという中では、割合こじんまりしたことであると思うんです。我々が願っているのは、単にそういう法律面の手当をするということだけではないだろうと思うんです。
3番目に、したがって最も必要なことは、お金と人の問題です。今日、御発言がなかったんですが、ADR機関を運営していくためには、実は大変な財政的な裏付けがなければできないことだろうと思うんです。先ほどありました、アメリカのAAAという機関は、先ほど14万件の事件を抱えている。ニューヨークに本部がありますが、そこへ行きますと、チラシがありまして、紛争の解決はAAAへというビラがありまして、それを配っている。それで事件を呼び込んでいます。14万件もあれば、依頼者からの手数料によって、十分運営できる。何ら公的な財政的な支援もありませんし、それ以外の基金等も大して持っていなくてちゃんと運営できている。しかし、事件の数が少ないところで、良質な紛争解決をしようとすれば、やはりお金の問題を考えずにはできないだろうと思うんです。
もう一つは、これもそれと並んで困難な課題ですが、先ほどまさにおっしゃったADRを担う人材の養成ということだと思います。幾ら制度や手続が完備されても、その担い手、あるいはその動かし手、それが立派でなければ、制度もワークしないというふうに思います。そういう財政的な問題とか、あるいは担い手という問題も含めて、多分この検討会では議論していただくことになるんではないだろうか。それは多分、一つの法律をつくることよりもはるかに困難な課題を我々は負わされているのではないだろうかというふうに思っております。
【青山座長】何か、追加的な発言はございますでしょうか。廣田委員どうぞ。
【廣田委員】先ほど安藤委員から言われた平仮名でということと、平山委員からADRという言葉の問題ですが、何かADRが日本語に置き換わるということを念頭に置いておかないと、PRというか、浸透度も大分違うと思うのです。私は、ずっと前から考えているのですが、なかなかいい日本語が見当たらないので、これがいいのかどうかというのは、一つテーマとして頭に置いておいたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。皆さまの御意見はどうですか。どうもADRである限りでは浸透しないのではないという心配が私はあるのですけれども。もっともこれは世界標準ですから、そういう意味ではADRでいいのかもしれませんですけれども、どちらがいいのかということも含めて。
【青山座長】着地点の近くになったらということではいけませんでしょうか。意見書の中でも結局「ADR基本法」という言葉が使われていますね。それは、やはり審議会でもさんざん考えたんではないかと思っているんです。言葉の問題は重要なんですけれども、それをもう少し皆さんお考えいただきまして、いいアイデアがありましたら是非その段階で御議論をいただければというふうに思っておりますので。
ほかにありましたらどうぞ。
【原委員】1点だけ。先ほど2点目で、先生の方で利用件数がなぜ少ないかというお話があったんですが、消費者から見ると3つポイントがあって、一つは、やはりPR不足です。家電PLセンターなんかも、家電の取扱説明書に自社の相談窓口は書いてありますけれども、PLセンターのPRはしていないし、金融関係も、ホームページのトップを見ても出ていないんです。圧倒的にPR不足。
2つ目がたらい回しです。たらい回しは両方にあります。企業間と事業者団体とでごちゃごちゃして、事業者団体間でのたらい回しがありますし、だけども消費者側もそこで一旦事業者団体のところに行って切られてしまうと、今度はどこに行っていいかわからなくて、消費者センターへ行ったりとか、本人自身が、自分自身でぐるぐる回っているような状況が2つ目です。
3つ目が、預けても、直接企業に預けたのとほとんど変わらない。そのままの資料をそのまま企業のところに持っていかれて、結果としてそこを利用した意味はほとんどないというような認識があって、その3つがすごく大きな壁になっているところです。
[今後の進め方]
【青山座長】どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。残り時間も少なくなってまいりましたので、ここで事務局から、今後の検討の進め方について、まず御説明をいただき、そしてお諮りしたいと思います。
【小林参事官】それでは、お手元に「ADR検討会の進め方(案)」ということで、資料の1-4でございますが御用意させていただいておりますので、それに基づきまして今後の進め方について、事務局として考えていることを御説明したいと思います。
本ADR検討会の進め方を考えた際に、私どもの方として考慮した点が2点ございまして、一つは、先ほど横尾委員からございました、現状に拘泥するなということではあろうかとは思いますけれども、やはり現状ADRの姿はどうなっているのかということは、いろんな方から御指摘をいただいて、なぜADRが利用されていないのかということを分析し、それに基づいてADRのあるべき姿を模索していくというためにも、是非必要かと思いますので、現状分析には力を入れたいというのが1点でございます。
それから、今日お集まりいただいている皆様もそうなんですが、できるだけ幅広い観点からの御意見を賜わって進めていきたいということでございます。ADRに関しましては、まだ件数的にも少ないということもございまして、かなりいろんな考え方の方が、これは勿論立場上もございますし、考え方としてもございます。そういった考え方の違いが、勿論意見書で掲げられているような、いろいろな法的効果を付与する際に、どこまで対象となるADRを絞っていくのかという議論にも当然反映されます。ある方は非常に緩く広げるべきではないかという方もおられるでしょうし、非常に限定されたところに狭めるべきだという御意見もあるでしょうし、そういう要件を考える際にも当然そこで差が出てくるわけでございます。
更にさかのぼって考えれば、そもそもADR基本法をどのようにつくっていくのかというところにも影響があるかと思います。先ほど基本法というのは得てして実効が上がらないのでということで、実効性をという御意見もありましたが、他方、御紹介がありましたように、国が姿勢を示すことだけで随分違うんだという御意見もございます。そういう意味からすれば、基本法的なタイプというのも当然あり得るでしょうし、これもお話がございましたように、質の確保が大事だということであれば、ADR全般に適用されるような通則法的なタイプの議論ということも必要になるでしょうし、あるいは意見書で掲げているようなADRの今の弱い点を補強する点があるということであれば、一定の要件を掛けた上で、こういった新しい効果を付与していくという、促進法的なタイプという議論もあるでしょうし、ADRをどう考えるかによって、法律の姿というものもかなり変わってくるのではないかなということがございますので、できるだけ幅広い方の御意見を伺いながら進めていきたいということでございます。
やや、前置きが長くなってしまいましたが、具体的なスケジュールとしましては、3月予定、4月予定の第2回と第3回と、こういったADRの現状でありますとか、ADRについてどう考えるのかという御議論をさせていただきたいというふうに思っております。
そのために、第2回につきましては、ADR機関からのヒアリング。それから、今日お配りした参考資料の方の最後に、かなり分厚いものですけれども、アンケートをお配りしておりますが、このアンケートを1月末に、民間型ADRが中心でございますが、送付させていただいておりますので、この結果を2月中には回収いたしまして、3月の第2回には御報告したいというふうに考えています。
ADRのヒアリングの対象機関につきましては、これから調整をさせていただくことになりますけれども、先ほどe-コマースの関係もございましたし、PLのお話もありましたので、その辺りは是非参考にさせていただきたいと思っております。
第3回目でございますが、これはむしろユーザーサイドからのいろいろな御要望、あるいは御意見を賜わりたいというふうに考えております。具体的には、経済団体、あるいは消費者団体、労働団体といったところを考えております。
第4回目以降、5月以降になりますが、ここから意見書で掲げられているような、原先生から言われている少し細かい点になるかもしれませんけれども、いろいろな法的効果の付与の面につきまして、それぞれ議論を重ねていきたいというふうに思っております。
4回目、5回目辺りで時効中断でありますとか、あるいは執行力の話、この辺りを議論させていただきまして、第6回は裁判手続との連携ということになりますので、その際併せて最高裁、あるいは法務省、あるいは日弁連の方から御意見を賜わる機会を設けたいというふうに考えております。
その次の第7回でございますが、意見書の項目の中で、専門家の活用ということが掲げられておりますので、ここでは想定し得る専門家の方々に御意見を賜わる機会を設けたいと思っております。その際には、今日オブザーバーとして御出席いただいているような隣接法律専門職種の方、あるいは消費者相談窓口で実際に業務を行っておられる消費生活アドバイザーその他の方々、あるいは場合によっては、法曹OBの方、そういった方々からの御意見を賜わりたいというふうに思っております。
10月に予定しております第8回でございますが、ここで法律扶助の問題を議論しますと、大体各論についてひとわたり議論をするということになりますので、この辺で一旦どういう形で制度基盤の整備について考えていこうかという大きな議論をする機会を設けさせていただきたいというふうに思っております。
これは、一応各論は一巡するということと、恐らくこの時期になりますと、並行して検討を進めております仲裁検討会の方で仲裁法制の整備についてかなり姿が見えてくるのではないかというふうに思いますので、この時点で仲裁も一つのADRの大きな柱でございますので、仲裁法と、いわゆるADR基本法になるかわかりませんが、ADRに関する法的整備との役割分担のようなもののイメージをつくっていきたいというふうに考えております。
それ以降は、言わば2巡目になるわけでございますので、全体の方向性を踏まえて更に議論を深めさせていただきたいというふうに考えております。法案を提出する時期という御議論もあろうかと思いますが、この辺りでの議論を見極めてどういう方策が適当であるかということについて考えていきたいというふうに思っております。
基本的な考え方としては、非常に重要な問題ですので、事務局としても拙速は是非避けたいというふうに思っております。そういう意味で、そうは言いつつ、なかなかタイトな日程になっていまして非常に恐縮ではございますが、是非こういう形で進めさせていただけたらというふうに思っております。
以上です。
【青山座長】ありがとうございました。この原案によりますと、毎月開催ということで大変でございますけれども、このように進めさせていただきたいと思っておりますが、何かこの進め方について御意見があればお伺いしておきたいというふうに思っております。
【原委員】この項目に沿わない形の御意見が今日たくさん出ておりますが、必ずしもこれだけではない、日程的には月1回かもしれませんけれども、内容的には変わり得るということはあるんですか。
【小林参事官】一応、意見書で掲げられているテーマを消化しなければいけないと言うと、変な言い方ですけれども、検討はしなければいけないので、それを割り振ったということでございまして、これ以外の検討ができないということでは勿論ございません。
それから、第2回、第3回は何とも表現のしようがなかったので「ADRに関する基本理念A、B」とさせていただいておりますけれども、ここでは幅広く、今日出たような問題も含めて、今日持ち帰りましてもう少し整理させていただいて、検討項目がうまく検討できるように項目を設定したいと思います。が、いずれにしても今日いただいた御意見は、御議論いただけるようにしたいと思っております。
【青山座長】先ほど廣田委員が勉強するというふうに発言されましたけれども、我々も勉強しながら考えていこうというのが、私の姿勢でございます。ここで最初の2回ぐらいは、今日の続きのような議論、それが「ADRに関する基本理念A、B」ということでございますが、それにヒアリングとかアンケート調査を交えて勉強もしながら共通の認識を大体3回ぐらいの間にできれば、あとは少し個別問題に入っていって、また基本理念に返ってというようなことをしながら議論していければいいかなというふうに思っております。
私はきちんとスケジュールに従って、それを少しでも狂わせてはいけないというように、そんなふうに考えておりません。ですから、柔軟に審議を進めさせていただきたいというふうに思っております。よろしゅうございますか。
【山本委員】1点だけ、みんなで勉強するということに関係するんですが、先ほど三木委員から国際的な視点が非常に重要であるという御指摘があったかと思うんですが、先ほど御指摘があったように、UNCITRALのモデル調停法が来年の5月か6月ぐらいにできるというふうに承っておりますので、勿論、国際的側面については、日本も国として尊重義務を負うということになるのだろうというふうに認識しておりますので、三木委員は、その会議に日本政府代表として参加されているというふうに承知しておりますので、一度三木委員からまとまった形でモデル法の概要について御紹介をいただく機会を持てば、我々としても非常に勉強になるのではないかというふうに思います。
【青山座長】どうもありがとうございました。そういうことをお願いすることになると思いますがよろしくお願いいたします。
それでは、大体進め方はよろしゅうございますか、随時また進め方について御意見をいただきます。
それでは、次回以降の具体的な開催日をお諮りしたいと思います。この案では「3月予定」「4月予定」と書いてありますが、ここでは、5月までの第4回までを決めさせていただければありがたいと思っておりますが、そこで私の原案を申しますと、次回3月でございますが、3月18日の月曜日の午前10時半から2時間程度。4月15日月曜日の午後に、これはまだはっきりしませんが、2時間程度。5月13日の月曜日の午後にやはり2時間程度お時間を取っていただきたいというふうに思っております。不確定要素が少しありまして、何時からということがまだ言えない状態でございますけれども、いかがでしょうか。とりあえず、3月18日午前10時半から2時間程度ということで、第2回目を開催させていただきたいと思いますが、お願いできますでしょうか。
どうしても都合のつかないという方もおられるかと思います。大変恐縮でございますが、そういう場合には、先ほどの龍井委員の意見を長谷川さんがここで御発言いただきましたような形でテーマを事前にお伝えいたしますので、ペーパーを用意していただければ、こちらはそれをしんしゃくして、ここで公表するということができますので、そういうことも併用させていただきたいというふうに思います。
今、大体4回まで提案させていただきましたけれども、その後につきましても、基本的には月曜日の午後であれば月1回程度、委員全員の方の御都合がつきそうだというところまでは、事務局の方で確かめていただいております。例外で御出席できない場合はやむを得ず、しかし原則としてADR検討会の開催は月曜日の午後ということを定例とさせていただきたいというふうに思います。お忙しい方ばかりで大変恐縮でございますが、これで承認をいただけますでしょうか。よろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)
【青山座長】それでは、そういうふうにさせていただきたいと思います。
場所は常にここということでしょうか。
【小林参事官】この建物の中ではございますが、会議室は幾つかございますし、冒頭局長の方からお話し申し上げましたように、他の検討会との関係もございますので、場所は移動するかもしれませんが、いずれにしてもこのフロアということでお願いしたいと思います。
【青山座長】もう一つ、私から、先ほどの議事概要と議事録ですが、次回は3月18日ということですと、1か月と少し時間がありますが、議事概要はいつごろ出て、議事録はいつごろというようなことを、おおざっぱで構いませんけれどもお話し下さい。
【小林参事官】議事概要は、先ほど少し触れましたけれども、数日内ということでインターネット上に公表させていただきたいと思います。議事録は、1か月程度はいただきたいということではありますが、私どもの方から皆様の方にチェックも兼ねて最初のバージョンをお送りできるのが10日ぐらいという目途で考えていただきたいと思います。いや、失礼しました。安全を見込んで3週間までには何とか最初のバージョンをということでございますので、早ければ早いほど、これは急ぎますので。
【青山座長】3週間ならば上できだと思います。次回には十分間に合って御自分の御発言を確かめて、また出席していただいて御発言をいただくということができますので、そういうふうに進めさせていただきたいと思います。
[閉会]
【青山座長】それでは、本日の議事はこれにて終了いたします。本当にどうもありがとうございました。
なお、本日の検討会の議論に関しまして、私の方から夕刻に記者レクをするということになっているようでございます。さっきのADRの検討会をやっているということを大いに知っていただきたいという意味で、私から記者レクをさせていただきますので、その点も御承知いただければというふうに思います。
本日は、本当にどうもありがとうございました。御苦労様でございました。
|